Title Author(s) 半導体の電子線照射効果の理論的及び実験的研究 安田, 匡一郎 Citation Issue Date URL 1994-01 http://repo.lib.nitech.ac.jp/handle/123456789/413 Rights Type Textversion Thesis or Dissertation author ・名古屋工業大学学術機関リポジトリは、名古屋工業大学内で生産された学術情報を 電子的に収集・保存・発信するシステムです。 ・論文の著作権は、著者または出版社が保持しています。著作権法で定める権利制限 規定を超える利用については、著作権者に許諾を得てください。 ・Textversion に「Author」と記載された論文は、著者原稿となります。 実際の出版社版とは、レイアウト、字句校正レベルの異同がある場合もあります。 ・Nagoya Institute of Technology Repository Sytem is built to collect, archive and offer electronically the academic information produced by Nagoya Institute of Technology. ・The copyright and related rights of the article are held by authors or publishers. The copyright owners' consents must be required to use it over the curtailment of copyrights. ・Textversion "Author " means the article is author's version. Author version may have some difference in layouts and wordings form publisher version. 半導体の電子線照射効果の 理論的及び実験的研究 平成6年1月 (January,1994) 安田 匡一郎 序 第1章 論 本研究の背景と目的 1.1 2 1. 本研究の概要 第1章の香考文献 線型電子加速器と線量測定 第2章 緒 2.1 言 2. 2 線型電子加速器(電子リニアック) 2. 3 電子照射量の測定法 2. 4 照射電子線のパルス数制御装置 2. 5 結 昌 第2章の参考文献 第3毒 SiCの電子線照射損傷とアニール特性 25 3.1 緒 3.2 実験方法 26 3.3 実験結果及び考察 28 3.3.1 電子線照射による光学的特性の変化‥-‥-‥-…=‥= 28 3.3.2 等時アニールによる回復 33 3.3.3 3. 口 4 150℃及び6 結 5 0℃回復ステージと活性化エネルギー 昌 第3章の参考文献 第4章 Si中の電子線照射による欠陥生成率 緒 4.1 4. 2 実験方法 4. 3 実験結果 口 (i) 37 考 4.4 察 47 4.4.1 荷電中性の条件式からの欠陥生成率の決定 47 4.4.2 比抵抗一電子照射量曲線の計算 52 4.4.3 欠陥生成率の不純物濃度及び電子エネルギー依存性 結 4.5 ‥ 58 昌 第4章の委考文献 第5章 55 59 Si中の電子線照射による欠陥分布 5.一 緒 5.2 実験方法 5.3 実験結果 5.4 考 口 察 5.4.1 Si中の欠陥分布 5.4.2 全欠陥数 5.4.3 n形及びp形Siの電子線照射による比抵抗変化 結 5.5 口 第5毒の季考文献 第6章 モンテカルロシミュレーションによる欠陥の研究 緒 6.1 言 81 6.1.1 モンテカルロ法によるシミュレーショ 6.1.2 プログラムの概説 rう・2 ンの原理 82 84 モンテカルロ法による電子のエネルギースペクトルの計算 97 6.2.1 計算方法及び入力データ 97 6.2.2 Si中の透過電子のエネルギースペクトル 99 欠陥分布の計算 6.3 1いし) 6.3.1 計算方法 1(川 6.3.2 欠陥分布の計算結果及び実験結果との比較 101 6・4 一次はじき出し原子のエネルギースペクトル 6・4.1 計算方法 1()こi lO3 (並) Si中の一次はじき出し原子のエネルギースペクトル 6.4.2 6.5 非電離性エネルギー損失と損傷係数 6.6 電子ビームドーピングにおけるはじき出し原子の挙動 6.6.1 電子ビームドーピング(超拡散)(E 6.6.2 注入不純物濃度の電子エネルギー依存性 6.6.3 はじき出し原子のエネルギースペクトル 結 6.7 ロ 第6章の参考文献 第7章 総 括 謝 辞 本研究に関する発表 (拉) 104 B D) 第1章 序 1.1 本研究の背景と目的 エレクトロニクスはあらゆる分野において利用されており、その機能を支配 する半導体素子の役割は益々重要なものとなっている0 半導体の放射線照射効果 の研究は主として3つの点から進められてきた。その第1は原子力施設、宇宙空 間及び研究等の放射線利用施設などいわゆる放射線環境下で使用する半導体デバ イスに対する放射線損傷に関するもので、放射線損傷の評価、解明及び耐放射線 素子の開発などが重要視されている1 4)。第2は格子欠陥の研究という物理学上 の動機であり、中性子によるクラスターのような大量の照射欠陥と共に電子線照 射による単純な格子欠陥の導入によって金属をはじめ材料の格子欠陥に関する基 礎的な研究が行われてきた。一方、前の2つが初期からの動機に対して、第3は 最近特にその重要性が見直されているものであり、イオンビームや電子ビームさ らにX綿の照射が、不純物の注入や露光など、材料の改質や素子作製プロセスの 手段として利用できるという放射線照射効果の積極的な利用である。5 10) 原子炉が臨界に達したのは1942年であるが、それ以前では意識的に照射の 効果を調べたものは少なく、むしろ天然現象の解明に注意が向けられていた。1 947年Lark-Horovitzによって、初めて中性子による半導体の照射が行われてか ら1950年辺りまでは、主に中性子照射によるデータの集積がなされた。その 後、Ge、Si、In S b、CdT e等の材料に対し、各種の放射線を種々のエ ネルギーや照射条件で照射し、電気伝導度、ホール係数、ライフタイム、光学的 特性などの測定実験が、格子欠陥についての定量的な結果を得るためになされたQ この頃の半導体の放射線損傷の研究は、わずかな欠陥(imperfection)によって電 気的性質が著しく変化すること、すなわち構造敏感な性質を利用し_て発展した0 先のGeの中性子照射における抵抗やホール係数の変化が、核反応による不純物 の増加のみでは説明できなかったことに始まる。一般にGeは照射量の増加に対 してついにはp形となり、Siではintrinsicに近づく。このような変化は照射に ょり生じた原子空孔(vacancy)や格子間原子(interstitialatom)がアクセプ タあるいはドナーの作用をするためと考えられ、JamesとLark-Holovitzll)は欠陥 -1- の準位に対するモデル(James and Lark-Holovitzモデル)を1951年に提案し た。このモデルは照射されたSiやG eの電気伝導の定性的な説明には成功した が、理論的基礎づけもなく、多くの実験結果を十分説明できなかった。1959 S 年噴からG.EのWatkinsら12・13)のE Rの研究により、Siについてミクロな構 造など格子欠陥の詳細な知見が得られるようになり、従来の考え方の再検討が行 われるようになった。そして1965年以降Siにおけ、るさらに詳しい知見の展 開と、他の半導体の研究も進んだ。 LevelTransient of magnetic T S(Deep 格子欠陥のエネルギー準位や捕 Spectroscopy)法が発明され、 獲断面積をより詳しく測定することも可能となった。 detection L 1976年頃Lang14)によりD 最近O DM R法(optical resonance)15)でも欠陥の同定が行われ、またホッピン グ伝導による複空孔(divacancy)の観察16)なども行われている。対象材料もSi やG eに限らず、G aA s、G a d P、C S、SiC、などの化合物半導体に対 しても、多くの手法による実験が行われてきた。 現在までに、半導体の照射に関しては多くの研究が行われ報告17-22)されてい るが、特にSiに対して詳しく調べられている。ここでは本研究で扱う半導休と して、 SiC及びSi、 照射効果の積極的利用面からの電子ビームドーピング (超拡散)、さらに照射欠陥の理論計算など電子線照射効果の研究の現状の概略 と背景について述べる。 SiCは最も古い半導体材料の一つで、広いバンドギャップを有し、青色発 光材料として、また耐放射線材料としても期待されている。SiCの放射線照射 に関する研究23)では、1960年Aukermanら24)がSiC結晶及びダイオードに 連中性子及びγ線を照射し、電気的特性の詳細な結果を報告して以来、多くの研 究がなされてきた。Canepa ら2E・)はSiCの粒子検出器の電子線及びプロトン照 射を行い、アニール特性をも考慮した場合、Siの検出器より約100倍耐放射 線性であると報告した。またMitchelら26)は電子線照射したn形及びp形SiC 結晶のキャリア濃度の変化と照射電子量の関係をアクセプタ準位で説明し、n形 に対してよい結果を得た。さらに20∼1000℃までの等時アニールにおいて 4つの回復ステージを観測している。Makarovら27〉は種々の多形のSiCのカソ ードルミネセンスの照射効果を最初に報告し、多くのfine Balonaら2己;)は電子緑照射した6H及び3C structureを見つけた。 SiCに対し、7つのE ー2- S Rスペク 伊藤らニ⊆りはC トルを見つけ、これらのスペクトルに関係したモデルを提案した0 SiCエピタキシャル成長膜にIMe vD法による3C V電子線を照射して、 キャリア濃度、電子移動度、電気伝導度の照射量依存性を測定し、Siの数倍の しかしながらSiCの照射効果については、尚 耐放射繚性があると述べている0 十分明らかでなく、性能のよい試料の開発とともに、多方面からの基礎的な研究 が必要である。 ∵次にSiについて述べる。電子線などの放射線を照射すると、結晶を構成して いる原子がはじき出されて、原子空孔と格子間原子のフレンケル型の格子欠陥が 生成される。しかしこのような一次欠陥は低温を除いて安定に存在せず、室温で は互いに衝突して消滅したり、原子空孔が不純物原子に捕獲、あるいは原子空孔 同士が結合して複合欠陥を生成して存在する。また格子間原子は、不純物に捕獲 されたり、他の格子間原子と結合して複合欠陥を作る。これらの一次欠陥や複合 欠陥は禁止帯にいくつかの欠陥準位をつくり、主としてアクセプタ型あるいはド ナー型として働き、半導休に構造敏感な性質を与える。 格子欠陥の形態とともに、欠陥のエネルギー準位は重要で、Carrier S RやD L T 光学吸収バ ライフタイムの温度依存性、 rate、キャリア濃度の温度依存性、 ンド、さらにE removal Sなどからエネルギー準位が決定され、欠陥のミク ロな構造との対応が行われた。酸素の格子間原子と原子空孔の対(V-0)はA一 S 中心13,∋0)と呼ばれ、Watkinsらにより、最も古くから赤外吸収やE 調べられた。モデルもE S Rによって Rによる研究で確定され、エネルギー準位としてE c Vが報告されている。原子空孔と不純物のりん(P)の結合したE一 -0.17e 中心(Ⅴ-P)1ヱl三こ1三‥・ご=一に対しては、Ec-0.4ev付近のいくつかの傾が、 また divacancy(Vニ)3三=・ヨ4〉に対してはE c-0.4e V及びE V v+0・25e などが報告され、他にも種々の欠陥について調べられている′l古,=二三・。最近Londos 35〉はD 28、E L T S法で5つの欠陥準位(E c-0.33、E c-0.45e c-0.15、E c-0.21、E V)を求め、従来報告されている欠陥と の関連等を述べている。 さらにこれらの欠陥準位の生成率ほ、A一中心(A-Center)に対してはCorbett3 4)やFan36)によって、divacancyに対してはCorbett三;4二やBrownら37)によって求め られている。Abdusattarovら::=三=一はp形Siに電子線を照射し、K一中心(V-0 一3- c-0・ -C)の生成率が電子線のパルス幅と共に減少することを報告している。しかし照 射されたSi中に生成されるいくつかの欠陥準位を同時に求め、評価した例は見 あたらない。 一方、欠陥の分布に関しては、電子線を照射したSi中の深さの関数としての 欠陥濃度分布が Vavilovら39)、FlickerとLoferski40)、及びHitchcock41)により 実験で調べられている。Stevense42)は実験で得た電子のエネルギースペクトルと 欠陥生成率を用いて欠陥分布を計算した。しかし、これらの実験は数100k V以下の比較的低いエネルギーの電子線を使用して行われており、高エネルギー 最近、Bermanら43)は欠陥形成のしきい値エネル の電子線によるものは少ない。 ギー付近の低エネルギーの電子によるA一中心の欠陥生成率及び濃度分布を、高 感度容量法を使って求め、フレンケル欠陥の生成率の計算値と比較している。 またはじき出し原子の数やエネルギーなど理論計算からの照射欠陥の研究は、従 来放射線損傷の理論から原子のはじき出しに対し、散乱断面積としてラザフォー ドの散乱公式が相対論的に変形されたMcKinley-Feshbachの式が電子線の場合によ く用いられ、Kinchin and Pease の模型によるカスケード的はじき出しに対する はじき出し損傷関数及び各原子固有のはじき出しエネルギーなどを考慮して損傷 形成量の算出が行われている。Cahn44)はこれらの式から欠陥生成率を求める式を 作り、SiやG eに対して欠陥生成率の電子エネルギー依存性及び生成される欠 陥の総量などを報告している。また物質内の電子のエネルギースペクトルとエネ ルギーの関数としての欠陥生成率から欠陥分布を求める試みがなされ、月田60 几l】H p O b4与-はモンテカルロ法によって透過電子のエネルギースペクトルを求め、 Flickerの実験による欠陥生成率を用いて、500k e Vの電子に対する欠陥分布 を報告している。和田ら46・47〉はモンテカルロ法によって電子のエネルギースペ クトルを求め、Cahn G a A s,G a の理論式による欠陥生成率を開いて計算した欠陥分布をSi、 Pなどに対して報告している。今後実験との比較では、種々の条 件を考慮にいれた計算が必要である。 さらに半導体の電子線照射効果の積極的利用の面からの研究盲・4古・41ヨニ・は半導体 に電子線を照射すると高抵抗層が生成されることを利用した発光ダイオードのア イソレーション50J、トラップ準位に捕獲されている電子を対象としたImpact Ionizationによる負性抵抗51)、G eの電子線照射によるp-i-n醸造5三)など -4- e がある。Kulpら53)はSを蒸着したCdS結晶に100keV電子線を照射し、照 射後UV.励起による発光を、またMyer54′)は電子ビームプラズマドーピングとして、 Al箔で包んだn-Siに電子ビーム溶接機を使用して100keV電子ビーム を照射し、基板の溶解も加わった不純物の注入を報告している。特に1980年 和田55)によって始められた電子ビームドーピング(超拡散)(E BD)は半導体 デバイスプロセスとして期待されるばかりでなく、半導体物理の面からも興味が もたれている。E BDはSiなど基板の上にG eなどの不純物シートを乗せ、そ の上から電子線を照射すると、室温付近の低温でも、不純物原子が基板に注入、 拡散する現象である。この研究は電子ビームドーピングら,5ら)として基礎的な研究 電子ビーム酸化5さ)及びダイオード が続けられる中で電子ビームエビタキシ57\∴ の作成59)などの応用も試みられ、多くの実験的及び理論的結果の報告がされてい る。しかしながらその機構についてはまだ十分明らかにされていない。これに対 してはじき出し原子の数やエネルギーなど理論的な計算結果なども含めて、多方 面からの考察が必要となっている。 以上照射研究の背景及び研究の現状について述べてきたが、半導体の照射効果 をより一層理解し、現在課題として挙げられている耐放射線性の素子の開発、ま た照射効果の積極的利用などに資するためには、広範囲に照射効果に関する基礎 的研究を行う必要がある。 電子線は半導体結晶等に照射した場合、ターゲット原子に対し、単一はじき出 し過程のみを誘起するため、イオンや中性子がクラスタやポイドを作ることと比 較して、点欠陥など単純な格子欠陥を生成する。このため電子線照射は、そのエ ネルギーや照射量を比較的容易に変えられることも含めて、素子等の損傷評価の みでなく、基礎的損傷過程の研究の立場からも重要な位置付けにある。 本研究では、半導体の電子緑照射効果を、実験的及び理論的考察によって得た 欠陥生成率、欠陥分布、はじき出し原子の数及びエネルギーなどから明かにする こと、またこれらの結果を用いて、電子ビームドーピング(EIiD)(超拡散) の機構の解明に寄与することを目的とする。すなわち電子リニアックからのM V領域の電子線をSiCやSiなどの半導体に照射し、照射効果を電気的及び光 学的特性などの測定結果から欠陥生成率及び欠陥分布を求める。またモンテカル -5一 e ロ法によって物質中の透過電子のエネルギースペクトルを求め、それを用いて欠 臨分布やはじき出し原子のエネルギースペクトルを計算する。そしてこれらの計 算結果を考慮にいれて電子ビームドーピング(EI∋D)におけるはじき出し原子 の挙動について考察する。 1.2 本研究の概要 本論文は7章より構成されており、以下に各章毎の概略を記す。 第1章は序論として、半導体の照射効果に関して一般的な歴史的経過を述べ、 本研究で対象とするSiC,Siの電子線照射及びその照射効果の利用としての 電子ビームドーピングなどの研究の現状を概略し、研究の目的を述べる。 第2章では、本研究で使用する電子線源として、線型電子加速器(電子リニア ック)の原理、構成、性能及び照射実験、また照射電子の線量測定法として開発 した電子フルエンス測定装置、そして電子リニアックの制御技術として開発して きた照射電子線のパルス数制御装置について述べる。 第3章では、半導体の照射効果として、まず広いバンドギャップ半導体で、ま た耐放射線素子材料としても期待されている化合物半導休のSiC結晶の電子線 照射効果について、光学的特性特に吸収係数の変化及びそのアニール特性、さら にアーバック裾部分の吸収による吸収端への影響について述べる。 第4章では、半導休として最も基本的な材料であるSiを対象として、電子線 照射したSi中に生成される複合欠陥の生成率の新しい決定方法について述べ、 得られた欠陥生成率を不純物濃度依存性及び電子エネルギー依存性などの点から 考察する。 第5章では、欠陥の研究及び実用的な点からも重要な物質中の照射欠陥の濃度 分布を、同様Siを対象に実験的に研究する。2-9M e Vの電子線をSi単結 晶に照射し、比抵抗の変化から欠陥分布や全欠陥数などを求め、理論計算の結果 などと比較する。またn形及びp形Siに電子線を照射した場合の比抵抗と電子 照射量の関係を、実験式として導いた結果について述べる。 第6章では、半導体の照射効果の計算による研究として、モンテカルロシミュ レーションによって物質中の透過電子のエネルギースペクトルを計算し、それを 使用して欠陥分布を理論的に計算すること、またはじき出し原子のエネルギース -6- ベクトルを計算し、その応用として非電離性エネルギー損失と損傷係数の関係を、 Si中の比抵抗変化に対して適用する。さらに照射効果の積極的利用としての電 子ビームドーピング(E B D)に対して、本章で得られたはじき出し原子濃度の エネルギー依存性及びエネルギースペクトルにより、E 原子の挙動について述べる。 第7章では前章までに得られた結果をまとめ、本論文の総括を行う。 -7- B Dにおけるはじき出し 第1章の参考文献 応用物理、55,225(1986)・ 1)後川昭雄、大西一功: 硯:日本の科学と技術、 2)児島 25,82(1984)・ 電子通信学会誌、66,786(1983)・ 3)前口賢二、丹呉浩郁: Trans.Nucl.Sci.NS-27.1674(1980)・ 4)D.M.Long:TEEE 5)G.Ⅰ)earnaley,J.H.Freemann,R.S.Nelson (North-Holland.Amsterdam 6) 和田隆夫: 7) T.Wada:Nucle.Instrurn.& andJ.Stephen:IonImplantation London,1973). and 応用物理,45,435(1976). Methods182/183,131(1981). JpnlJ・Appl・Phys・261531 HITamura‥ 鱒)S.Hosaka,T.Ishitaniand (1987). 9) 泉 応用物理.58,1202(1989). 勝俊: 10)田村誠男:応用物理、58,1192(1989). 11)軋M.James E.Lark-Horovitz:Z.Physik and Chem.198,107(1951). R.M.Walker:J.Appl.Phys.30.1198 12)G.D.Watkins.J.W.Corbett,and (1959). 13)G.D.Watkins andJ.W.Corbett:Phys.Rev.12l.1001.1015(196]). Y.Leung:J.Appl.Phys.47,3587(1976). 14)D.Ⅴ.Lang.L.C.Kimerling,and B.Monemar:Phys.Rev.B 15)軋M.Chen.0.0.Awadelkarim,H.Weman.and 40. 10013(1989). 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度の縦型であるが、米国スタンフォード大学の電子リニアックは横型の2マイル (3k O m)リニアックとして有名である。最近電子リニアックはS Rの入射用 としての利用が増している。 名工研の電子リニアック7 1いほ、国産の電子リニアックの実用器第1号として、 1960年東京芝浦電気株式会社から、当初6M e Vリニアックとして納入され た。その後電子リニアックの性能向上の研究を行い、現在の12M アックとなっている。この間各種の照射実験を行うと共に、照射実験に必要なエ ネルギー分析表示装置、Ⅹ-Y移動試料照射台、試料冷却照射装置、パルス数制 -11・・- e V電子リニ 御照射装置、照射電子フルエンス測定装置、各種の照射実験補助装置の開発や照 射技術について研究してきた。 本章では、2.2において線型電子加速器(電子リニアック)の原理、構成、性 能及び照射実験方法等について概要を述べる。2.3に電子照射量の測定法につい て、2.4にリニアックの特徴であるパルス電子ビームの照射量をパルス数で制御 できる照射電子線のパルス数制御装置の開発について述べる。 2.2 線型電子加速器(電子リニアック) 以下に線形電子加速器の原理、構成及び性能について述べる。 (i)原 理 電子が電場の中におかれると、電場の方向に力を受けその方向の加速度をもつ。 F=q (mev E e) (2-1) ここで、Fは電子に働く力、qは電子の電荷、Eは電界の強さ、meは電子の質 量、V eは電子の速度、及びtは時間を示す。したがって q E△ t = △(m ev e) (2-2) すなわち強い電場の中を長い時間走り続けるほど、電子の運動量は大きくなる。 Magnetic いま進行方向に電場成分を有する電磁波すなわちTM波(Transverse Wave)の中に電子を送り込み、電波を常に電子と等しい速さで走らせることがで きれば、加速電場とともに出発した電子は常に加速電場の中を走り続けることが できる。このためには先ず電子と電波の出発時の速度(それぞれv ei,Ⅴ-.人.′i)が 等しくなければならない。 V V ei (2-3) tノ、Ji 次に電子は加速電場の中で次第に速くなるから、電波もこれに伴って速くなら なければならない。両者の進行方向にzをとれば、 ∂v e ∂ Ⅴ、ノ√ (2-4) ∂ z ∂ -12- z ただしⅤて.耳は電波の速度である。このようなTM波をつくるためには、電磁波と して波長10cm程度のマイクロ波が利用される。 実際には電子の速度は、その質量が′トさいために、エネルギーの増加とともに 急速に光速に近づく。したがってその速度Ⅴ亡とエネルギーEとの関係は、よく知 られているように次式で表される。 moec2 (2-5) [1-(v e/c)2]1′′′`′2 ここに、m。.eは電子の静止質量、Cは光速である。例えば、2M e れた電子は0.98cの速さを持っている。したがって2M e Vに加速さ V程度以上のエネル ギーに達した電子はほぼ光速で運動するものと考えてよい。すなわちこの領域で は (2-6) と近似できる。すなわちこの領域では ∂ Ⅴ,.人.′ ∂ z 0, Vl.人.ヱ=C(一定) と呼ぶ。この として加速管が設計される。加速管のこの部分をRegular・SeCtion 部分には花/2モードが採用されていた。 はz方向に適 加速の初期の段階では、式(2-6)の条件は成立しないから、Vw 当に増加させる必要がある。この部分を Buncher se■ct,ion と呼んでいる。 式(2-2)は、電子の運動量の増分は電界との相互作用によっていることを示す。 すなわち電子がどれだけの強さの電界により加速されているかによってこの増分 は異なる。 加速管内のz軸方向の電場は軸上では E==Em e x p[jiu J t-(花/2d)z+ki] 虚数単位 ー13・-・- (2-7) Em: 電界の振幅 t ■時間 d : マイクロ波の位相速度調整用の穴あき円板の周期 定数 k: で表される正弦波であるから、電子は電界との位相関係によって加速される場合 も減速される場合もある。したがって、入射部のごく近傍(半波長≒5c ∂ v ∂ z m)で vJ =0, V,人,1= V ei (2-8) とすると、∂=0で入射された電子はそのまま進むが、一花<∂<0の電子は加 速されて前の電子に追いつこうとし、0<∂<花の電子は逆に減速されて、電子 は集群(bunch)される傾向を持つ。以後徐々にvwを増大させるのである(図2 -1)。Bunchされた電子線を最も能率よく加速するために、Regular 普通0=-7t/2で動作するように設計されているから、Buncher sectionは sectionの終端 部で電子が-7T/2の位相角にbunchされるように∂vw/∂zが選ばれる。 Buncher sectionの中間部では、電子に半径方向の電場が作用する。したがって 軸方向に磁場をつくって電子流の拡散を防ぐ必要がある。またBuncher び Regular section においても、電子銃の放出電子線の拡散角を常に′トさく保つ ことが困難なこと、電子が相互に反発して拡散しようとすることなどの理由から、 加速管に集束線輪が設けられる。 図2-1 加速管及び加速電場の位相角 ー14- 入射部及 成 (ii)構 名工研のリニアックは、照射用であることを重視して縦型であり、前述したよ うに当初6MeV程度の加速電子エネルギーであったものが、その後の改造によ Vに性能向上されている。加速器実験施設は制御室、本体室、 り、現在12Me 照射室、電源室及び準備室からなり、照射室は地下室にあって、漏洩Ⅹ緑の遮蔽 を容易にしている。現在の電子リニアックの構成図を図2-2に、また電子リニ アック本体の写真を図2-3に示す。 すなわちリニアックの構成は、電子入射 部、加速部及びど-ム取り出し部が、それぞれ電子銃(Bombarded (Accerelating MH tubu)、照射胴(Scanning cone)からなる。マイクロ波は2856 z、数ワットの発振出力を、クライストロンの中間及び終端電力増幅管を用 いて、最大4MWに増幅し、加速管に供給している。終端増幅管の大型クライス トロンは、技術的にCWの動作が困難なために、パルス幅5FLSeC、繰り返し周波 数数100H zのパルス動作を行っている。したがって電子銃から加速管への 図2-2 Gun)、加速管 名工研電子リニアックの構成図 ー15- 図2-3 線型電子加速器(電子リニアック)の本体 16- 電子入射もパルス的に行われ、マイクロ波電力パルスと同期した場合に、電子ビ _ムは加速される。この同期信号はトリガ信号発信器によって発生され、位相制 御回路を通って電子銃変調器(Gun pulser)及びクライストロン変調器(klystron pulser)に送られる。このようなパルス動作のために、電子リニアックから放射さ れる電子ビームは2重にパルス的である。すなわち、先ず(i)の原理のところで述 べたように、マイクロ波の1周期の7[/2付近にbunchされた電子のみが加速され 放射されるため、数10psec程度のパルス電子ビームが2856MH zの周期で 放射される。そしてさらにこれが5〃SeCのパルスに変調されて放射されるのであ る。 加速管の中でマイクロ波電界によって加速された電子ビームは照射胴を経て、 0.1mm厚のTi箔の窓を通過して大気中に放射され、照射実験等に利用される。 電子の加速に費やした残りのマイクロ波電力は高周波負荷の水に吸収される。そ Buncher の際温度上昇からマイクロ波電力の測定がなされる。改造後の加速管は section Regular と section が一体で作られ、7t/2モード加速管の欠点であ るパルス短縮硯象を避けるため、2/3花モード形の加速管が採用されている。 加速管系はイオンポンプで排気され、真空度は10 E・∼10 うP a程度に保たれ ている。 加速電子線のエネルギー測定は、照射胴の途中に設置したエネルギー分析用マ R グネットによって偏向し、磁場の強さと軌道から決定され、C Tあるいは記録 用紙に、励磁電流を横軸に電子ビーム強度を縦軸に、エネルギースペクトルを描 かせて行っている。 (iii)性 能 名工研のリニアックは、最初に6Me Vリニアックとして設置以来、その後の 科学技術の進歩を受け継いで、電子銃、加速管、真空排気装置、制御装置、各種 電源及び測定器を新たな性能のよいものに改造、変更し、加速器としての性能向 上を行ってきた。 現在のリニアックの性能は以下に示すようなものである。 加速電子線エネルギー: 2 最大ピーク電子線強度: 300mA 最大平均電子線強度 300〃A ∼ ー17- 12 M (7M e V e V) パルス幅 0 繰り返し周波数 37 5 ∼ ∼ J⊥SeC 320 H z (iV)照射実験 名工研のリニアックは照射実験用に開発されたもので、各種の照射実験に使用 される。試料は小さなものから大きなものまで種々のものが持ち込まれるが、′ト さなものには加速されたど-ムをそのまま照射する。そして大きな試料の場合に は、掃引コイルでど一ムをⅩ方向に掃引し、さらにY方向に試料台を機械的に移 動させて照射する。 照射実験において注意すべきは、電子線照射に伴う試料の温度上昇であり、融 点の低い試料では容易に溶解も生ずる。したがって試料の冷却が必要であり、場 合に適した種々の冷却法が採用される。空冷では、フアンなどで送風して冷却す るが、ビーム強度が比較的弱い場合に可能である(図2-4)。水冷では、冷却 した蒸留水などを循環させ、水中に試料を置いて照射するもので、最も確実で容 易な方法である(図2-5)。また水分などを嫌い、さらに低い温度で照射する 場合には、液体窒素を使用することがあり、この際液体窒素を気化させて、低温 の窒素ガスを吹き付ける方法、及び液体窒素中に浸して照射する方法がある。後 者の場合、開口で大気が容器内に入りやすいと、電子線の照射で生成したオゾン などが液体窒素中に溶け込み濃縮されて、可燃物などが触れた場合、爆発的に燃 LINAC L】NAC Cコた∴!竺≡≡手_?‥ 「SAMPLE BLOWER EAH COLLECTOR 図2-4 空冷による電子線照射 図2-5 -181一一・ 流水冷却による電子線照射 このため密閉式で、かつ試料上の液面を一定に保ち、長時間 焼する恐れがある0 の照射が可能な照射装置が作製されている(図2-6)。 液体窒素中電子線照射装置 図2-6 電子照射量の測定法 2.3 半導体等の電子線照射の実験では、照射線量として単位面積当りの電子数すな わち電子フルエンス¢(electrons/cmニ)が用いられ、照射量の表示と共にその値 で電子線照射を制御できれば便利である。従来カレントインチグレータは種々開 発されているが、このような仕様のものは見あたらない。通常、電子線照射線量 は図2-7のように、電子加速器から放射された電子線を一定の大きさのスリッ トを通して照射容器内の試料に照射し、その電流を積分して行う。電子フルエン ス¢は次式で与えられる。 ¢ = (2-9) itノ(e・S) ここでiはスリットを通過した平均ビーム電流(A)、tは照射時間(s Sはスリット穴の面積(c mニ)、及びeは電子の電荷(1.60×10,1与C) である。 本研究においては、電圧一周波数変換器を用い、演算回路を試作して、任意の スリットに対して線量を測定、制御できる装置(電子フルエンス測定装置)を作 ー19- e c)、 製した12う。そのブロック図を図2-7に示す。スリットを通過して試料容器内に 入射したど-ム電流は標準抵抗Rによって、電圧に変換され、さらに電圧一周波 数変換器によってパルス信号となり、演算回路で処理される。電圧一周波数変換 器には5mV∼2Vのフルスケール電圧に対し、106H zの信号が得られるもの を用いた。本装置は円形の穴のスリットの場合穴の直径が2∼60mm、また矩 形の場合穴の面積が1∼999mm2によって、0.1∼100〃Aのビーム電流 に対し、0.01×1013∼×9.99×101日electrons/c 電子リニアックと、連動させて照射線量を測定、制御することが可能である。 図2-7 2.4 電子フルエンス測定装置のブロック図 照射電子線のパルス数制御装置1ヨ・・ユ⊥ト' 先に述べたように、リニアックの放射する電子ビームは、通常パルス幅及びパ ルス放射の周期がそれぞれ数JISeC及び数msec程度のパルス電子線であり、この特 徴を生かして、興味ある照射実験が期待される。このため、名工研リニアックか ら任意のパルス数の電子ビームを放射できるパルス数制御電子線照射装置の開発 を行った。 本制御は、電子リニアックから電子線を必要なパルス数だけ確実に放射できる こと、すなわち電子放射の際、各部の過渡的な動作変動によって、放射されるパ ルス電子ビームの強度や綿質などの変動を生じないよう、加速器のほとんどの部 分を定常的に動作させておいて、1∼数パルスのような短時間照射でも常に安定 -20- m2の測定ができ、 そのため本装 した電子ビームパルスを放射できることを目的とするものである0 置は、電子銃と加速管の間に設けた空心コイルによる電磁シャッターと、入射電 子パルスとマイクロ波電力パルスの位相の一致、不一致によって電子ビームの放 (。ト」] _□ l 」 L 電子線のパルス数制御の原理図 図2-8 (a)電子銃から放射された電子ビームパルス、(b)シャッターコイルの電流、 (c)加速管へ入射された電子ビームパルス、(d)マイクロ波電力パルス、 (`e)加速電子ビームパルス。 射と停止を行う、二重の制御で行った。図2-8に原理図を示す。電子銃から放 射された電子ビーム(a)は電磁シャッターが開いていることによって(b), 加速器の中へ入射し(c)、さらにマイクロ波電力パルス(d)と位相が一致し た時加速電子ビーム(e)として放射される。図2-9 にブロック図を示す。 本装置の動作は、ビーム発生前、電磁シャッターのコイルに電流を流して、電子 電子入射変 銃から加速管へ電子入射を止めておき、さらにトリガ信号発振器から 調器(Injection pulser)へ供給されるトリガ信号の位相を,マイクロ波増幅用の マイクロ波変調器(Microwave modulator)へのトリガ信号のそれとずらして、入射 電子パルスとマイクロ波電力パルスの位相をずらし、散乱などによって入射する 電子があった場合にも加速されないようにしておく。次に switchlを押すと、 自動的にパルスの休止期間に信号が供給され、電磁シャッターが開くと同時に、 Injection pulserへのトリガ信号の位相が正規の状態となり、入射電子は加速さ れ放射が開始される。同時にカウンタが放射される電子パルス数を計数し、所定 量の放射の後、同様にど一ム放射を停止する。この装置によって数パルス程度の ー21- 放射の際にも、定常的に放射されているときと同様な強度並びに線質の安定した パルス電子ビームを所定パルス数放射できるとともに、電子放射の前後の停止期 間中において、漏洩電子およびⅩ緑の放射を実験的に支障をもたらさない程度に なく すことができた。 図2-9 2.5 結 パルス数制御電子線照射装置のブロック図 吾 電子線は、他の放射線と比較して、容易に低エネルギーから高エネルギーまで の広範囲のエネルギーの電子線を発生させることが可能で、任意のエネルギーの 電子線を利用することができる。名工研のリニアックは当初最高6M たものが性能向上により12M できる2∼12M e e Vリニアックとして安定に動作している。発生 Vはリニアックとして最も低いエネルギー範囲であるが、結 -22- e Vであっ 晶中の欠陥生成率などに対してはエネルギー依存性が著しく、興味ある範囲であ る。本章では、リニアックの原理、構成、性能、そして照射実験のために開発し てきた照射容器、照射電子量測定法としての、電子フルエンス測定装置を、さら に電子リニアックからの電子線照射をパルス数で制御できる装置の開発等につい てまとめた。 -23- 第2章の参考文献 E.0.Lawrence:Phys.Rev.38,53(1931)1 1) D.H.Sl云an 2) P.T.Demos,A.F.Eip,andJ.C.Slater:J・appl・Phys・23,53(1952)・ 3) M.Chodorow 4) L.W.AIvarez 5) T.Nishikawa,J.Tanaka,A.Miyahara,and and et al.:Rev.Sci.Instr.26,134(1955)・ et.al.:Rev.Sci.Instr.26.111(1955)・ H・Kumagai:J・Phys・Soc・ Japan,16,1817(1961). 6) S.Okabe,et al.:AnnualReport of the Radiation Center of Osaka Prefecture,3,54(1962). 金持 徹、生田史朗、安田匡一郎、′ト島千代:名古屋工業技術試験所報告、 10、 269 8) 金持 徹、生田史朗、安田匡一郎:応用物理、30,578(1961)t 9) 金持 徹:応用物理、31,350(1962). 7) 10)金持 (1961). 徹、生田史朗、安田匡一郎、武田道彦、水原祐三:名古屋工業技術 試験所報告、16.326,(1967). 11)安田匡一郎、生田史朗、武田道彦、増田晴穂:JAERI1205(1971)p・110・ 12)M.Takeda.K.Yasudat S.Ikuta.and H.Masuda:Rev・Sci・Instr・49, 1743(1978). 13)T,Kanaji,K.Yasuda,S.Ikuta and M.Takeda:Jpn・J・aPpl・Phys・7.102 (1968). 徹:名古屋工業技術試験所報告 14)安田匡一郎、生田史朗、武田道彦、金持 17.60(1968). ー24- 第3章 SiCの電子線照射損傷とアニール特性 緒 3.1 言 本章では半導体の電子線照射効果として、最初にSiC結晶の電子線照射損傷 及びそのアニール特性について述べる0 シリコンカーバイド(SiC)は歴史的には最も古い化合物半導体であり、機 化学的に安定な物質として古くから知られ、硬度を利用した研磨材 械的、熱臥 や高温用発熱体、赤外光源、また電気的には避雷器やパリスタとノして使田されて きた。広いバンドギャップ(wide gap)はp-n接合の動作を高温まで可能にし、 青色発光ダイオードなど可視域での発光を可能にする魅力に富む性質である。耐 熱、耐化学薬品、耐放射線性に優れていることは、高温や機械的衝撃、放射椋環 境下など過酷な条件下でも使用できる特徴であり、核燃料や核融合炉壁の遮蔽材 等として、また粒子検出器等を含む耐放射線半導休素子など耐環境半導体材料と して注目されている。ト4) SiCの放射緑照射の研究は、.中性子、電子及びイオンビーム等の照射による 物理的、電気的及び光学的特性等への影響について多く行われている2)。 緑照射効果に関しては、従来バルクSiCの電気伝導度の変化5,6ニ'、放射線検出 素子7・8′〉、カソードルミネセンスウ・1(〕、E しかし、最近は化学的気相成長法(C S V Rl′1二 などいくつかの研究がある。 D)などによって良質なSiC膜4,:■が生 成されてきたが、従来は純粋且つ均質で、ある程度の大きさの材料を得ることの 困難さなどもあって、十分解明されているとは言えない。光学的特性の変化の測 定はルミネセンスに関して比較的よく行われている。しかし発光素子などで問題 となる光吸収に関しては、Makarovウーがp-tyPe 6H-SiC結晶に中性子を照射 して吸収端のシフトを報告しているが、SiC結晶に電子線を照射して可視光吸 収特性を測定したものはなく、吸収端のシフトなど吸収係数の変化を電子線照射 及びそれに続くアニールなどに対して、系統的かつ定量的に扱った研究はない。 半導体結晶において、バンドギャップの縮′ト(Gap (band tailing)などのバンド端(band でなく、heavily shrinkage)やバンドテイル edge)の変化は、照射損傷の面ばかり dopedの半導体レーザーの避けられない問題であり、またバンド -25- 電子 端の拡がり(band edge broadening)や局在準位密度(localized of state)は アモルファス半導体の基礎的な特性を理解する上からも重要である。12) バンド端への照射効果を扱った初期の研究は、Siに対してFan Ramdas13) and によってなされ、照射によって吸収端近傍に連続的な吸収の増大('near-edge'吸 収)が生ずること、そして吸収端のシフトが照射欠陥によるバンド端の変形によ ることが指摘された。Vavilov14)は照射Siに対して、照射による欠陥レベルが Kalma 禁制帯中に連続して分布するtailstateの概念を初めて提案した。 and Corelli15)はバンド端の変形がdisorder領域による格子の周期性の破壊に因ると 考え、それによる状態密度の模式図をVavilovの結果を基に提案した。Massarami and Belot16)は欠陥クラスタ(defect cies)による局所歪が"near またG a A a の増加を引き起こすことを指摘した。 edge''吸収 照射欠陥によるバンド端の変形などの報告がある17)。 sに対して、 遠藤ら12)は、G cluster)あるいは多重空孔(multivacan- Pに10M e バンドギャッ V電子線及び連中性子を照射し、 プの縮′ト及びバンド端付近の局在準位分布(densit,y を吸収端スペクトルの変化から検討した。梨山ら4・18 Of ユ(:1)は化学気相成長法によ M る3C-SiC単結晶膜及び3C-SiC distribution) states O Sトランジスタの照射効果を調 べ、電子スピン共鳴、イオンチャネリング、ホール効果などの測定から、Si格 子位置にある欠陥が、電気特性の劣化と関係していること、及び3C-SiCの 高い耐放射線性を示唆する結果を得ている。 本章では、6H-SiC結晶(緑色)にリニア、ソクの7M e V電子線を照射し て、可視光に対する透過光スペクトルを測定し、照射量に対する吸収係数の変化、 吸収端のシフト、さらにアーバック則(Urbachls rule)21,2ニ∵一に従った吸収係数 の部分を考慮したバンドギャップ等について検討する。また50℃間隔で、30 分の1000℃までの等時アニールを行い、透過率の回復、吸収係数の変化及び バンドギャップ等について照射の場合と同様な検討を加える。さらにアニールに よる欠陥の消滅に対し、その活性化エネルギーを求め考察する。 3.2 実 験 方 法 試料には、Acheson法で製作した緑色SiCのインゴットから板状の結晶部分を 取り出し、振動式自動研磨機によりカーボランダム(320#、1000#、2 -26- 000#)を使って、0・016∼0・02cmの厚さにし、さらにダイアモンド ペ_ストで鏡面研磨したものを使用した。電子線照射は名工研電子リニアックに ょり、7MeV電子線を10∼25FLA/cm2(6・2×10J13∼1・6×101 4e/Cm三・S e C)の線量率で最高3×101さ まで照射した0 e/cm2 照射 中の温度上昇を避けるために、井戸水または10℃に温度制御した蒸留水を流し ながら冷却した0 等時アニールは、図3-1のような石英の炉心管に石英パイプを切って作った ポートを使用し、水素ガス中において、50℃間隔で30分ずつ最高1000℃ まで行った。 図3-1 アニール炉 可視光透過スペクトルの測定は日立製作所製の二波長自記分光光度計(556 形)を用いて行った。測定は予め照射前の試料に対して行い、その後所定量の電 子線照射と透過率の測定を繰り返した。またアニール実験では、各温度のアニー ル後に透過率を測定した。なお水中での照射における酸化を調べるために、H による酸化膜のエッチングを行って検討した。すなわち照射後そのままの状態の 試料の透過率と、照射にひき続いて30℃のH F中で、5分間エッチングした後 の透過率を比較した。その結果両者の間に差がなく、照射中の酸化の影響はない ことが確認された。一方アニール実験において大気中ではもちろん、特別に酸素 -27- F を除くことなく、ボンベから導いたアルゴンガス中で.はアニールすると透過光量 が異常に増大した。これは試料表面が酸化して、反射率などが変化するものと考 えられた。したがってアニール中の酸化を防ぐため水素ガス中でアニールしたと Fでエッチングを加えた測定結果に ころ、アニール後そのままの状態とさらにH 差がなく、水素中でアニールすれば酸化の影響を無視しうることから、アニール はすべて水素ガス中で行った。 実験結果及び考察 3.3 電子線照射による光学的特性の変化 3.3.1 (1)可視光の透過率の変化 SiC結晶は電子線照射による欠陥の生成によって黄褐色に着色し、可視光に 対する透過率が変化する。図3-2は0.016c mの厚さのSiC結晶に7M Vの電子線を照射した際の・透過率の波長依存性で、照射量をパラメータにしたも のである。透過率は、5×101缶e/c m三の照射ではっきり変化が認められ、ひ き続く照射によりほぼ波長全域にわたって一様に減少している。しかし照射量が 増大し、2×10ノ1t=e/c m三以上の照射では、600nm付近の透過率の変化よ りも700∼750n mでの値の変化が大きく、わずかながら波長依存性が認め られる。 (。、○) 60 山UZくトト≡SZく∝ト り 20 3(X) 100 WAVE 図3-2 500 LENGTH 600 Ⅷ 入(nm) 各照射量における透過率の波長依存性 ー28- 800 900 e 山UZdドヒ王SZく∝ト 0 0 0 01016 10I7 ELECTRON 図3-3 1018 Fしし忙NCE 1019 ¢(eLcFTtll 各波長における透過率の照射量依存性 図3-2を透過率と照射量の関係に書き直すと図3-3となる。390∼50 0nmの波長に対しては5×1016e/c のに、800∼850n m2付近から透過率の低下が顕著である mのそれは3×1017e/c m2付近まで低下が認められ ない。この範囲の波長を使用した場合、それ以下の波長の場合に対して若干耐放 射線性となることがわかる。 (2)吸収係数の変化 次に、図3-2の結果を吸収係数の変化として調べる。吸収係数αの値は透過 率Tの測定値から(3-1)式によって計算した。 (1T R)三 exp卜αd) (3-1) = 1- Rニ exp(-2ad) ここでdは試料の厚み、Rは反射係数である。この計算においてRには、6HSiCの屈折率としてn=2.6482三 を採用して、(3-2)式で計算した値 を波長依存性を無視して使用した。 n R -1 (3-2) ≒( n†1 -29- 図3-2の透過率の波長依存性の測定結果から計算した吸収係数αとhlノの関 係を図3-4に示す。吸収係数は照射量の増加と共に増加している。特に基礎吸 収端より低エネルギー側の部分は、hγに対して指数関数的な変化をし、通常言 われるアーバック別にしたがった形で増加している。この増加によって、見かけ 上の吸収端が低エネルギー側にシフトしている。 図3-4の破線は1xlO18 v曲線に対し、アーバックの裾の部分を高エネルギー側に electrons/cm2のa-h も延長して差し引いた後のα-hγ曲線である。他の照射量の曲線に対しても同 様な操作をした後のα-hγ曲線は、いずれもこの破線に近いところに来る。 (「∈U) る トZ山】U【山」山OU ZO-トd∝OS皿く 2・8 3・0 3・2 hレ(eV) 図3-4 電子線照射によるα-hγ曲線の変化 ー30- 3.4 (3)吸収端の変化及びアーバックの裾を考慮したバンドギャップの評価 ここで見かけ上の値であるが、吸収端の変化を次式で調べてみる。物質の間接 遷移による吸収係数αは、hlノ〉EG†EFノ α = A(hlノ に対して ー EG - Er,)コ (3-3) で表される。ここでAは定数、hlノは光子のエネルギー、E ギー、E G は吸収端のエネル MacFarlane一 pはフォノンのエネルギーである。三l,三4125・=.したがって 月obert′S2ら=・タイプのプロットすなわちhlノに対しal/;'をプロットすると直線と なり、α=0すなわちhlノ軸との交点からEG+E ることにより、EG が求められる。ここでE 2.6 図3-5 F′∼0.05e 3・0 2.8 hレ 図3一-4のα-h F.が決まり、さらにE。を与え Vエコ)とした。 3・4 (e〉) 、3・2 (コ1ノユーhγ曲線 yの結果から(3-3)式に従ってα1ノ′ニーhγの形に書き直 ー31- すと図3-5となる。α1′′/2-hγは直線上にプロットされ、hγ軸との交点から E gが求められる。直線部分は照射量の増大によって短くなっている。図3-5 において、直線部分を延長してhlノ軸との交点から求められる見かけ上の吸収端 のエネルギーは照射前約2.9e Vであった値が電子線照射によって減少し、3 Vまで減少している。これら吸収端の変化は、 ×1018e/cm2では約2.7e 電子線照射によって欠陥が生成され、バンド端付近に準位ができ、アーバック別 に従うような吸収が生じたことによるものと考えられる。 ;○)ロ山dくり 凸Nく瓜 1017 1018 ELECTRON 図3-6 FLUENCE 1019 (e/cm2) バンドギャップの電子照射量依存性 さて次に図3-4の1xlO18e/c m2の照射量に対するa-h v曲線から、 アーバック別に従う裾の部分を差し引いて、(3-3)式に従って計算したα1 二'-hγの関係を図3-5に破緑で示す。この図からバンドギャップE 93e Vと計算される。同様に各照射量に対するa-h gは約2. v曲線から求めたE 照射量との関係を図3-6に示す。この結果は、バンドギャップが電子線照射に よってほとんど変化しないことを示している。2×101看e/c 増加の傾向を示しているが、これは差し引く際の影響が関係していることが考え られる。 -32- m2以上でむしろ gと 結局、SiC結晶に電子線を照射すると、フレンケル欠陥(interstitial-Va cancy対)のような比較的単純な欠陥で、しかもエネルギー準位が広く分布してい るような欠陥がバンド端付近に生成される。そしてエネルギーに対して指数関数 的に変化するような吸収が生ずる。その結果、見かけ上の吸収端は減少する。し かしながら格子の骨格に損傷を与え、結晶の基本的な周期性を乱し、真にバンド ギャップに変化を与えるような損傷は生じていないことが分かる。 3.3.2 等時アニールによる回復 (1)アニールによる透過率の回復 V電子線を 照射欠陥は、加熱によってアニールされ消滅する。ここでは7Me 照射したSiC結晶をアニールすることによって、可視光に対する透過率の回復 について調べる。7M e V電子線を3×1018e/c m2 照射したSiC結晶に 対し、水素雰囲気中で30分ずつの等時アニールを50℃間隔で1000℃まで 行った際の透過率の変化を図3-7に示す。この結果は図3-2に示した透過率 に及ぼす照射効果を打ち消すように回復している。しかし400nm近くの吸収 端付近の波長に対する透過率の回復が遅く、図3-8に示したα-hl′の関係は 図3-4の照射前の場合と比較して、1000℃でもなお完全には回復していな い。 しかしこのように1000℃までのアニールによって、アーバックの裾の 回復が生ずること、そしてE gの変化は起こらないことなど、照射前とほぼ同じ 状態に戻ることば、照射によって結晶構造が変化するような大きな損傷が生じて いないこと、またアニールによって他の結晶構造に変わることなく、6H-Si Cのままで照射欠陥のみが生成し、消滅したことを示している。 -33- 400 500 WAVE 図3-7 6(X) 7(泊 入(nm) しEHG†H 等時アニール後の透過率の波長依存 (2)吸収係数の変化 図3-7から計算したα-hγの関係を図3-8に示す。アニールによって 吸収係数が減少し、同時に曲線が高エネルギー側にシフトしている。これはアー バック則に従う吸収に支配的に影響していた欠陥がアニールによって消滅したこ とを示している。しかしながら1000℃のアニール後でも図3-4の照射前の 状態までには戻っていない。 二の項でも、先ず3.3.1と同様にアーバックの裾を差し引く前の吸収係数 の変化を吸収端の値の計算も含めて調べてみる。図3-8の各アニール温度の曲 線に対し(3-3)式によって計算したα.L/ニーhγの関係を図3-9に示す。ア ニールによって欠陥が消滅し、直緑部分が長くなると共に・吸収端が高エネルギー 側にシフトしている。 -34- 一世5 2.8 3.0 3・2 3・0 2・8 hレ(eV) 図3-8 3・2 hレ(eV) 図3-9 各アニール温度に対する 各アニール温度に対する α1′ノ′ニーhγの関係 α-hγの関係 見かけ上の吸収端の値はアニール温度と共に回復し、アニール前約2・72e vであったものが、1000℃までのアニールによって2・89eV辺りまで回 復している。しかしながら1000℃においても完全に回復せず、なお欠陥が残 っていることを示唆している。 さて次に同様アーバックの裾の部分を差し引いた吸収係数を用いてバンドギャ ップの値を計算する。 図3-9の破線は603℃のα-hγの曲線に対し、ア ーバックの裾の部分を差し引いた後のαi′ニーhγの関係である0 度に対するαトニーhγの関係も、この破線の近くに来る0 る回復過程においてもアーバック別に従う吸収に関係した欠陥が支配的であるこ とを示している。 -35- 他のアニール湿 すなわちアニールによ 3・▲ (烹こ-芯 dくり 凸Zく血 0 200 ANNEALtNG 図3-10 400 600 TEMPERATURE 800 1∝氾 T(OC) バンドギャップのアニール湿度依存性 図3-8の603℃のα-hγの曲線を(3-3)式に従ってαレ2-h】ノの関 係としてプロットすると図3-9の破線となり、バンドギャップとして約2.9 4e Vの傾が得られる。 さらに図3-8の各アニール温度のα-hγからアーバックの裾の部分を差し引 いた後、図3-9と同様にして計算したバンドギャップの値をアニール温度に対 して図3-10に示す。バンドギャップにはほとんど変化は見られない。 結局、3・3・1でも述べたように電子線照射によって、アーバックの裾の部 分に支配的に影響するような欠陥が生成され、それによって吸収端が変化する。 しかしそのような欠陥に起因するアーバックの裾の吸収を除いた場合には吸収端 には変化がなく、結晶の基本的な周期性を乱しバンドギャップに変化を与えるよ うな損傷は生じていないことが分かる。 ー36- 3,3.3 150℃及び650℃回復ステージと活性化エネルギー 図3-7の等時アニールのデータをアニール温度と透過率の関係として表すと 図3-11となる。まず150℃付近で大きく回復し、続いて650℃付近に回 復がある。欠陥濃度Nが吸収係数αに比例すると仮定し、照射により励起された 欠陥の fraction not fを次式により定義する。 annealed αT f α 0 α 0 (3-4) = α R はそれぞれ照射前、照射後及び各温度のアニール後の吸 ここでα。、αR及びαT 収係数である。fのアニール温度依存性を図3-12に示す。図において150 ℃及び650℃を中心に回復ステージ5・二三ら)が存在する。 Mit 等時アニールの測定結果から活性化エネルギー及び反応次数を求めるには らの方法によった。 chel15て・及びIshino27=■ いまCを考えているステージで消滅するような欠陥の濃度とすると、 一 ここで (3-5) R(T).f(C) f(C)は欠陥濃度の関数、K(T)は rate constant であり、一般に次式 で表される。 K(T)= いま簡単に γ f(C)= Eo (3-6) Em/kT) exp(- Crとすると、 =1の場合 1 E(Ti)= (3-7) -1n(Ci-′t/Cl) △ t γ ≠1の場合 1 1 △t l- 1-γ 1一γ (Cトノ1- E(Tl)= γ ー37【 Ci ) (3-8) Tiはi番目の等時アニールの温度、Ciはそのアニール後に残っている ここで 欠陥の濃度、△tは各温度のアニール時間で一定である。Ciを実験から得れば、 K(Ti)vsl/Tiが直線になるように適当に選べば、そ γだけが未知数である。1n の傾が反応次数となり、その勾配から活性化エネルギーEmが求められる。 訂∞∞ 88 5 (。、○) ム弧 ∽ 0 山UZくトヒ三のZく∝ト 41 0 0 0 200 400 ANNEAuNG 図3-11 600 1000 8(X) 透過率のアニール温度 fraction 図3-12 600 800 TEMPERATURE fraction f not 4∞ ANNEALTNG 依存性 さて 200 0 T(OC) TEMPERATURE not T(●C) annealed とアニール温度の関係 fは(3-4)式のように表すことができるが、いま一 annealed つのステージで回復するような特定の欠陥について考えるので、(3-4)式において、 αFこをそのステージの始状態でのαÅで、α。をそのステージの終状態でのαBで、 αTをそのステージのi番目のアニールでのαiで置き換える。すなわち αi fま ● α E. (3-9) = αA αE. さらにfiがCに比例した値であるとすると、Ciをfiで置き換えて、(3-6)及び (3-7)式から、γ=1の場合、 -38- ー00O K(:,△t 1nln(fjri/fi)=1n Em (3-10) - の値は1nln(fi_1/fi)vsl/Tiの直線の勾配から求められる。 一方γ≠1の場合、(3-6)及び(3-8)式から 1-γ 1-γ rト′エ ー fi )=1rlRゥ△t 1- 1-γ (3-11) - γ 1-γ fl_1- fi ) 同様に1n( 1- vsl/Tミ からEⅢが求められる。 γ 150℃及び650℃付近の2つの回復ステージは近似的にγ=1で表される。 したがって(3-10)式に従い1nln(fi_1/fi)vsl/Tiのグラフの勾配から活性化 を求めた。その結果150℃及び650℃の回復ステージに対し、 エネルギーEm Em はそれぞれ0.16e V及び1.3e Vであった。これらの結果は単純な点欠 陥が第1のステージでアニールされ、より複雑なクラスタのような欠陥(complex defects)が第2のステージでアニールされることを示唆している。 cluster-1ike Makaro\rニ7=・はカソードルミネセンスのクエンチングから活性化エネルギーとして 0.09∼0.11e Vを求め、これに関係した欠陥準位をE v+0.2∼0.4e Vはこれに Vのアクセプタレベルとして報告している。われわれの得た0.16e 近い値であり、互いに関係している照射欠陥は等しいものであることが考えられ る。 3.4 結 音 SiCの放射線照射効果の研究として、SiC結晶に7M e 350∼900nmの可視光スペクトルを測定し、照射による吸収係数の変化、 さらにアニールによる回復を調べた。その結果、 (1)SiC結晶に電子線を照射すると、格子欠陥が生成され、それが着色中心 ー39- V電子線を照射し、 となって可視光を吸収し、見かけ上の吸収端が低エネルギー側へシフトする。照 射前2・91e ×1018e/cm2 Vであったものが5×1016e/cm2辺りから減少し始め、3 では2.71e Vまで減少する。 (2)一方アニールによって欠陥が消滅し、透過率が回復する。すなわち水素雰 囲気中、室温から1000℃までの等時アニールによって吸収端は2.89e で回復した。さらにこの温度でもなお回復しない欠陥の存在を示唆した。 (3)これらの吸収端の変化は電子線照射によって格子欠陥が生成され、低エネ ルギー側のアーバックの裾を生ずるような欠陥によるものである。実際にアーバ ックの裾の部分を差し引いて計算したバンドギャプの値は照射によってもまたア ニールによっても変化しないで、約2.93e Vの値であった。 (4)150℃及び650℃に回復ステージが存在し、これらステージにおける 活性化エネルギーはそれぞれ0.16e V及び1.3e Vであった。 (5)結局、SiC結晶に電子線を照射すると、SiC中に欠陥が生成され、バ ンド端付近に局在したエネルギー準位などが生成され、それを介して吸収が生ず る。この吸収はアーバック別に従ったものであり、これによって吸収端がシフト する。しかし生成される欠陥は、電子線の場合に通常いわれるフレンケル欠陥の ような単.純な欠陥であり、実際に結晶のバンドギャップを変化させるような損傷 は生じていないことが明らかとなった。 -40- Vま 第3章の参考文献 1) L.H.Rovner G.R.Hopkins:Nuclear 2) W.J.Choyke:Proc.Int.Conf.Radiation and Technology.29 Effectsin 274(1976). 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V及びE c-0.39e c-0.54 vのレベルがdivacancyと関係していることを明らかにした。 一方CorbettとWatkinsl(つ)はSiに室温で電子線を照射し、divacancyの生成率 の照射電子エネルギr依存性を調べ、divacancy及び0Ⅹygen-VaCanCy 率の電子エネルギー依存性が0.5<E<1.5M を見いだした。またドナー不純物濃度が101らc pairs?生成 e Vの範囲で相互に異なること m 3=以下の試料の場合、A一中 trapの生成率は酸 心の生成率が酸素の量に若干依存していること、逆に他のdeep 素濃度が小さいほど大きいことを明らかにした。しかしながらこれらの複合欠陥 と関係した欠陥レベルやその生成率に関して十分解明されているとは言えない。 本章では、半導体の照射効果において重要な電子線照射による欠陥生成率を、 最も基本的な半導休であるSiに対して明らかにする。すなわちn形Si単結晶 に高エネルギー電子線を照射して比抵抗と照射量の関係を測定し、この曲線に、 l ー43- 既知の複合欠陥のエネルギーレベルを導入した荷電中性の条件式を対応させ、両 者が一致するよう、に各複合欠陥の生成率を同時に求める方法について述べる。さ らにこの方法で決められる複合欠陥の生成率及び特性を不純物濃度及び電子繚エ ネルギー依存性として考察する。 実験方法 4.2 実験に使用した2種類の試料の詳細を表1に、また形状を図4-1に示す。そ の1つば矩形で2Ⅹ7Ⅹ20mm∋の寸法をもち、他は図4-1(b)に示すよう なブリッジタイプで前者と同一の材料から作った。表面は(111)平面に平行 である。 表4-1 実験に使用された試料 矩形試料 比抵抗(Qcm) 不純物濃度 (P atolⅥS/cm3) C Z or F Z (0Ⅹygen/cm3) 厚さ(mm) 移動度(cm2/Vsec) 120 10 0.9 0.15 10 4.1xlO】3 5.0Ⅹ101d 6.1Ⅹ1015 5.4Ⅹ1016 5.OxlO14 FZ CZ CZ CZ CZ lO】5-1016 1017-1018 lO17-10川 1017-1018 10】7-1018 3 1 1 1 1 1250 1250 〃∩ 460 〃p 図4-1 ブリッジタイプ 1250 1140 770 460 450 390 試料の形状 (a)矩形、(b)ブリッジタイプ 電子線照射は名工研のリニアックを使って行い、パルス幅5〃SeC、繰り返し周 波数200pps、平均電流密度10JIA/cm:'で、2×7mm2の面積の面から照 ー44- 460 射した。使用した照射装置を図4-2に示す。本実験では欠陥の深さ方向の分布 を同時に調べるため、試料に側面から散乱緑が入射しないよう両側を鉛ブロック で遮蔽した。照射中の温度上昇を避けるため、流水中に試料を置いて冷却し、電 子ビームを試料に一様に当たるように十分な幅に掃引した。 ゝ】芯じむ]U一芸こd一巴 0 SamPle 図4-2 電子線照射容器 eIectronenergy(MeV) 図4-3 電子線のエネルギースペクトル 照射量は、図4-2に示すように試料の上の黄銅板のスリット(孔径10mm) を通過してくる電子ビーム強度を測定して求めた。電子ビームのエネルギースペ クトルを図4-3に示す。半値幅は約10%である。比抵抗の測定は、試料に電 子線を一定量照射した後、アニール効果を除くため、30分程度室温で放置し、 その後に室温において、4探針法で測定した。測定値に対し、形状に対する補正 をValdes11ノの方法で行った。比抵抗の測定値はPauwの方法12)で得た実験値と一 致した。 4.3 実験結果 図4-4は、9MeV電子線を照射したn形Siの比抵抗pと照射量¢の関係 (p-¢関係)で、一定量の電子線照射と比抵抗測定を繰り返して得たものであ る。パラメータは不純物濃度で示されているが、照射量¢=0において、照射前 の比抵抗p。を知ることができる。比抵抗は深さ方向に変化しておりt照射面から 1mmの位置での測定値を記入した。 -45- Si単結晶に電子を照射すると幾つかの深い欠陥準位が生成され、伝導帯の電 子がそれにトラップされるため、比抵抗は照射量の増加と共に増加する。 (∈U讐 喜>〓S芯む∝ 図4-4 図4-5 不純物濃度の異なるSiの 比抵抗と電子照射量の関係 電子線エネルギーに対する 比抵抗と電子照射量の関係 この曲線の形は生成される複合欠陥の準位及び数などによって影響され、照射量 に対して最初はゆっく り、途中から急激に増大して、最終的には不純物のPの濃 度の値にかかわらず、真性半導体の比抵抗(室溢で約3xlO5日c p>5xlO4日c mでは、測定値のバラツキが比較的大きく、図には平均値を記 入した。これらの曲線の様子はn形及びp形SiにA 計算したA m)に近づく。 uの濃度と比抵抗の関係の曲線13 uをドープした場合に対し 1ら〉の様子と非常によく似ている。 図4-5に照射電子のエネルギーをパラメータとして照射量と比抵抗の関係を 示す。各々の曲線は同様な傾向を示し、各曲緑の横軸の値に係数を掛けて平行移 動することによって各曲綿を重ね合わすことができる。この結果は電子のエネル ギーが変わっても、複合欠陥の準位や各複合欠陥の生成率りの間の比がほとんど 変わらないことを示唆している。 -46- 4.4 考 4・4・1 察 荷電中性の条件式からの欠陥生成率の決定 Si単結晶に高エネルギー電子線を照射すると、原子空孔が他の原子空孔や不 純物などと結合した複合欠陥が形成され、これらの複合欠陥は図4-7に示され るように禁止帯に深い局在準位を生成する。これらの準位は、フェルミレベルの 位置によってアクセプタあるいはドナーとして振舞い17)、伝導帯の電子をトラッ プする。したがって照射量を増加するとフェルミレベルが下がり、比抵抗pが増 加し、さらに照射すると比抵抗は真性半導体のそれに近づく。すなわちSiの比 抵抗は生成される欠陥準位の位置及びその数、さらに準位における電荷分布の統 計などによって決まる。そしてこの各欠陥準位の数を電子線照射量¢とその準位 の生成率叩の積として表すと、比抵抗と電子照射量との関係(p-¢関係)を荷 電中性条件式を使って表すことができる。そして荷電中性条件の式に、図4-7 の既知の欠陥準位を採用して得られるp-¢曲線と実験で得られたp-¢曲線を 一致するように各欠陥準位の生成率叩の値を選ぶことによって、各欠陥準位の生 成率を同時に決定することができる。 一般に比抵抗は次のように表される。 p (4-1) =1/(e〃。n†e〃。P) ここでeは電子の電荷、n及びpはそれぞれ伝導帯、充満帯における電子及び 正孔濃度、〃。及び〃p はそれぞれ電子及びホールのドリフト移動度である。した がって比抵抗は伝導帯及び充満帯のキャリア濃度及び移動度の変化によって影響 される。 一方、照射量¢(e/cm2)とキャリア濃度の関係は荷電中性の条件式として、 つぎのように与えられる。16:■ = nI¢∑TIEAfAe EA p†¢∑77EDf EE. Dp + (4-2) Ndh (4-2)式を変形して ¢(∑TIEAfAe EÅ - ∑TIEDf EE. ′ Dp):P+Ndh-n -47- (4-3) ここで叩は各欠陥の生成率(c m 1)である。添字EA及びEDはそれぞれ欠陥のア クセプタレベル及びドナーレベルを意味する。 Ndbは照射前にドナー不純物レベルに存在するホール濃度で、ドナー不純物レ ベルをE dとすると、 Nd Ndb (4-4) 112 exp[(Ef-Ed)/(kT)] Ndはドナー不純物濃度である。フェルミエネルギーE fは、ここではn形Siを 対象としており、近似的に次式で与えられる。 Ef E,= kTln(n/N。)+ = (4-5) N。は伝導帯の有効状態密度、E。は伝導帯の底である。fはフェルミ分布関数 であるが、欠陥レベルの荷電状態を考慮に入れて、次のいくつかの場合がある。 1価の荷電状態(single charge state)の欠陥に対しては: 欠陥のアクセプタレベルが1個の電子で占められる確率fAe EA fAe:[1I2 - Ef )] exp( は19〉 (4-6) 1 kT 欠陥のドナーレベルが1個の正孔で占められている確率fD。は Ef [1†2 fD。= - ED )] exp( (4-7) 1 kT で表される。 複空格子点(divacancy)のV+Vに対して: divacancyのdouble EA2 fAe≡ = 11+ 一方divacancy は acceptorlevelを2個の電子が占める確率fA,2 2 Ef EAl- )[1十 exp( の - kT Single Ef 2exp(一-)]〉 1 kT acceptorlevelを1個の電子が占める確率fA∈1は ー48- (4-8) 2 fAel= Ef)/(kT)]1(l/2)exp[(Ef exp[(EAl- イ1† -EA2)/(kT)] (4-9) lI(1/2)exp[(Ef-EA2)/(kT)] そして = り EA2 (4-10) 叩 EAl これらのdivacancyのエネルギーとして、EA2 8)が対応する。 eV = E。-0.39 EAl:E。-0.54 eV, なお本計算において、フェルミの分布関数の中の準位の多重 度を表すgには、素性の明確でないE Vの準位を含めて計算に用い c-0.3e た全ての準位(図4-7)に対して、2を採用した。 divacancyに対して式(4-6)を使って、近似的に計算したfの値と、(4-8)式あ るいは(4-9)式によって計算したfの値の差は、290Kではp-¢曲線にほとん ど影響しない。しかし低温においてiよ、これら両式の計算による差が現れる。 Si中のそれぞれの複合欠陥のレベルが既知であるとして、欠陥レベルの生成 率叩に適当な値を用いることによって、上記から計算したp-¢曲線と実験で得 たp-¢曲緑を一致させることができる。すなわちこうして両曲線を一致させる ように選んだ叩の値が、求めようとする各欠陥レベルの生成率であり、各生成率 が同時に求められることになる。これらの値は不純物濃度の異なる場合や測定温 度の異なる場合に対する計算値と実験値の比較から、さらに精度の高い値として 求めることができる。 (1) 照射による移動度の変化 式(4-1)における移動度〃は試料の中で生ずるいろいろなキャリアの散乱過程に よって決まる。 Brooks-Herring20)の理論による移動度は次式で表される。 b AT3′ノ′2 [1n(1†b)一 〃Ⅰ (4-11) -] 1 1+b NI ここで 27′/2Jく2 A E3/′`2 6 b = ′花3ノ/′2 mnl/′′ノ2 = 一 花 e-・ NIは1価に荷電した散乱中心の濃度、Kは誘電定数である。 照射された試料に対するNIは近似的に次のようになる。 -49- T2 m。k2 尺 n h2 e2 NI- (N.ゴ ー Nv十。)+ (4-12) ¢∑り.fAe A ここで Nv+PはE-Centerの濃度、¢∑T7.fAe はイオン化した欠陥中心の濃度 ノ1 である。 結局、照射した試料の移動度は、(4-4)式のイオン化した不純物による散乱及 び格子振動による散乱から決まるそれぞれの移動度の組合せによる総合的な移動 度として近似的に得られる。不純物濃度をパラメータにした全移動度の計算値を 全照射量の関数として図4-6に示す。不純物濃度が5×1014P/cm3程度の試 料の移動度〃は全照射量が約1017e/…2まで変化しない。 10帽 圧帽diation 図4-6 仙x 10け 中(e/Cm2) キャリアの移動度の電子照射量依存性 約6・1×1015p/cm≡=及び5・4×101FIP/cm三の試料の移動度は約5×10 17e/c和2の照射で約15%変化している。○印はブリッジタイプの試料を使って得 たホール移動度の実験結果から推定した値を示す。5×1014P/cm∋の試料の実 験値は理論値と大体一致している。 ー50- (2) 欠陥のエネルギー準位 放射線を照射したSi中の欠陥の形態およびエネルギー準位などは多くの研究 者によって調べられてきた。図4-7は室温における電子線照射によってSi中 に生成されるエネルギー準位で、報告されているものである21)。E Ec ∩-Si(P) 〟′////////∠ Ec-0.17ト・・・・ c-0.17 P-Si(B) ∠∠//////// ・・一V◆0 Ec-0.30____.. 8.9) Ec-0.39…… …●V◆V 丁) _●_V●P 9) Ec-0.47‥___ E⊂-0.5ムー・-… 5545383530 ◆ ・・・Ev V◆B.... ● ー・.b・ ◆ かbb ◆ ◆ nun"ααα =ニy.t.V三;;: ∵、・て∨・0.21 Ev 図4-7 e 照射されたSi中の欠陥のエネルギーレベル Vの準位は原子空孔と酸素が結合したⅤ+0(vacancy-OXygen 中心に困り、またE Vの準位は原子空孔と不純物のりん(P)が結 c-0.47e 合したⅤ+P(vacancy-Phosphorus pair)7)のE一中心に基づく準位である。A ZのSi中に生成される欠陥のう 一中心は高エネルギー電子線照射によ?て、C ちで多数を占めるものであり、酸素が pair)6ニ・のA一 vacancy のトラップとなって、VaCanCyが 複空孔(divacancy)となることを抑制する。E一中心については、何人かの研究者 7,22 24′〉によって若干異なった準位が報告されているが、今回の実験で得られた 欠陥生成率の不純物濃度依存性ではE一中心として、E いることによってよい結果を得た。E c-0.39e 準位はⅤ+Ⅴの複空孔(divacancy)に基づく 荷電状態をとる9ノ)。E 存し、Ev+0.55e c-0.3e Vの値を用 c-0.47e V及びE c-0.54e もので、それぞれ2価及び1価の負の V25)は、後にも述べるように不純物濃度に依 V21,:三5〕は比抵抗が飽和する部分において寄与する。 ー51- Vの 比抵抗一電子照射量曲線の計算 4.4.2 本項ではp一¢曲線を、曲線の勾配の大きな部分と飽和する部分に分け、荷電中 性条件式に各値を入れてp--¢曲線を計算し、実験曲線と比較しながら生成率り を決定する。 (1)曲線の勾配の大きな部分 今照射されたn形Si(6.1×1015P/cm3)の禁止帯の中に1種類のアクセプタレ ND ベルのみが生成されると仮定すると、欠陥濃度 5つの欠陥レベルのそれぞれに対する曲線は図4-8 とpの関係は次式で与えられ、 に示すようになる。 rl pINdll- (4-12) N亡.= fÅe 欠陥レベルの位置が伝導帯の底から深いところにあればあるほど、P-¢曲線 の勾配は急になる。 (∈UC)q言>こS芯遥 (∈Uq) ■ヽ 1臣 ゝ二>〓S芯む∝ 1015 10】6 101T lO柑 1015 ND(cm-3) 図4-8 各単一欠陥レベルに対する 1016 101T Irradiation□ux≠(e/cm2) 図4-9 比抵抗と欠陥濃度との関係 単一レベルによる曲線 の合成による実験曲線の再現 一-52-- lO川 図4-9において点線は実験曲線であるが、図4-8の5つの曲線のそれぞれに 対して、横軸の照射量に適当な係数を掛け、横軸に沿って、それぞれの曲線が実 験曲線に接するように移動させると、5つの曲線の連続として、実験曲線が再現 される。この係数が近似的にそれぞれの欠陥レベルの生成率となる。 しかしながら Ec-0.54 に対するp-¢曲線は実験曲線から離れている。こ eV のずれは後に述べるように、Ev+0.55 eV2E・二■ の欠陥レベルを考慮に入れることに より打ち消される。 EA 叩、E[)及び にそれぞれ適当な値を用いることによって、P-¢の計算曲 線が、図4-10に示すように、異なった不純物濃度の実験曲線に対してもよく 一致するようにすることができる。○印は実験値であり、実線は計算結果である。 図4-7の概算による移動度の値を用いて計算した比抵抗と照射量の関係を図4 -11の中で点線で示す。実線は移動度が変化しないことを仮定して計算したp -¢曲線を示す。結果は移動度の変化が曲線にあまり影響を与えない。 (∈Uq)ヽ (∈Uq)も 0 ご一>〓S芯む∝ 身>鵬芯芯屋 10ほ 1015 1016 Irradiation†l… 図4-10 1017 1018 ¢(e化m2) 図4-11 比抵抗と照射量の関係の 移動度の照射量依存性 を考慮した場合(点線ナとの比較 実験結果と計算曲線 -53- (2)p-¢曲線の飽和の部分 n形Si結晶に対し、Pの実験値を用いて式(4-1)及び式(4-5)から得られたフ ェルミレベルの位置と全照射量の関係を図4-12に示す。 ■{ヽ. > ■l ヽ■_■■ lL LJ ハu 5 一む>む一膚∈しむL 0 庸一 1016 Irradiation 図4-12 1018 ¢(e/⊂m‡) 仙x 種々の不純物濃度のSiのフェルミレベルの照射量依存性 全照射量を増加していくとフェルミレベルの最終的な位置は、照射前のn形あ るいはp形の結晶に関わらず真性半導休の値に近づく。 Lark-Horovitz この計算から、James- model2ら)で予想されたように、電子が占有されたレベルと空にな ったレベルがそれぞれ禁止帯の中央の上下に対照的に存在することが示唆される。 本計算では、Ec-0・54eV8)及びEv†0.55eV25)の欠陥レベルを考慮した。室溢での P-¢曲緑が¢の増加に従って、最終的に主としてEc-0.47eVとEc-0.54eVの2 つのアクセプタレベルとEv+0・55eVの1価に荷電したドナーレベルだけがp-¢ 曲線に寄与する。したがって飽和の部分での中性条件は近似的に次式で与えられ る。 ∑ ¢ 77ED fAe ¢ 二= 77Ev+O.55 fDp Ec-0.47 Ec-0.54 叩、Eロ及びEAにそれぞれ適当な値を用いることによって、計算で得られたp -¢曲線は、図4-10に示すように異なった不純物濃度の実験値とよく一致し た。 -54- (4-14) 4.4.3 欠陥生成率の不純物濃度及び電子エネルギー依存性 4.4.2で得られた欠陥生成率を不純物濃度及び電子エネルギーに関して考察 する。 (1)欠陥生成率の不純物濃度依存性 図4-13はp-¢曲線の計算に採用した各欠陥準位の生成率叩の値、すなわ ち本研究において求めようとした欠陥生成率の値を不純物のりんの濃度に対して 表したものである。ここでE V及びE c-0.30e はドナー不純物濃度の増加と共に大きく増加する。E c-0.47e c-0.30e 欠陥はこの結果からりんと関係しており、V+P(phosphorus-VaCanCy が第2のvacancyを捕獲してV+V+P27)(phosphorus-divacancy Vの欠陥のT7 V2与-rの複合 COmplex) complex)を形 成していることも考えられる。 Donor 図4-13 denslty(P/cmつ) 各複合欠陥の生成率の不純物濃度依存性 一方他の欠陥に対する叩は不純物濃度にほとんど無関係である。A一中心の叩は、 9Me 0.55e るいは Vの電子に対して約0.5crn Fanら2∈∴=一の結果と一致している。E 1で Vの欠陥の生成率はほとんど不純物濃度に無関係であり、Ⅴ+Ⅴ+0あ trivacancy21・=・であることを示唆している。 ー55- v+ ここで1つの複合欠陥に対する平均実効断面積を(4-15)式2g)のように定義する と、欠陥の生成率は(4-16)式で与えられる。 ∑.ユ り ここで dN/d¢ = (4-15) N(E。.)/n。X。 = = (4-16) n。∑d N(E.コ)は初期エネルギーE。の1個の電子が試料中で停止するまでに生成 する全複合欠陥数、n。.は物質の原子濃度、X。.は電子の初期エネルギーに対す る飛程である。 の値はC A一中心に対する∑v+0 c m2となる。 Z結晶(n。=5xlO22 Cahnの計算値2L3ノ=■Tl=9c する∑Frenkel.iefe。tの傾が約1.8xlO m cm-3)に対して約10.23 1を用いると、9M 22 e Vの電子に対 cm2(∼T7/n。)と推定される Z結晶に対して約18となる。 ので、(∑Frenkel.iefe√=t/∑v+C.)の比はC りんと酸素をそれぞれ5.4×1016 p/c m∃ 及び2×1017 0/c む試料に対しては図4-13から次の関係が得られる。 ∑v+0 ≒ 2 (4-17) ∑v▼+F) ∑「..′十.コ>∑E。_〔,∋(コer.て.・T>∑v十P>∑v十V>∑Ev十(二=・.E.らeV (4-18) そして ∑v+〔〕 8∑v+V 式(4-19)の関係はCorbettJら1(:1・二1、=■ Z結晶(101与から101ら0/c いことから、C さい。一方F (4-19) の結果と近似的に一致している。ここでF m!=)に対するA一中心のTlは、酸素の濃度が低 Z結晶(∼2×10170/c m3)に対するものよりもわずかに′ト Z結晶に対する他の欠陥のT7はC Z結晶に対する値よりも大きくな る。 (2)欠陥生成率の照射電子エネルギー依存性 りんの濃度が5×1014P/c m≡:の試料に対する欠陥生成率叩の照射電子エネ -56- mヨ 含 ルギ一俵存性を各欠陥のエネルギーレベル毎に図4-14に示す。図にFanら28), Brownら30)及びCorbettら10〉(●印)、及びAlmeleh ら∋1)(E-Center、×印)の 実験結果、及びCahn2一〕)、Flickerら32)(divacancy)及びGotodetskiiら33)(di vacancy)の理論計算結果を示す。Flickerら32)及びGorodetskiiら33)の理論式は それぞれ次式で与えられる。 Tm ! Tm (g-1)dロ ‡ 及び 2Td (2g-1)do 2Td ここでTdははじき出しエネルギー、Tmは最大の反跳エネルギー、g(T)はは じき出し原子の数、そしてdロは微分散乱断面積である。図中の一点鎖線及び点 1.0 (丁∈U)ト 空空 UOこリコPOJlu- 0 2 Elect「0n 図4-14 6 ム 8 10 energy(MeV) 各複合欠陥の生成率の電子線エネルギー依存性 ●印はCorbett に関してAlmeleh Watkins、×印K-Center and Goldsteinのデータ、(a)曲線及び(b)曲線はそれぞれ Tm Tm 及び (1/120);(g-1)do ! 2Td 2Td ーー57- (2g-1)do and 緑は理論曲線(Flickerら)で実験結果と一致するように1/120してある。A一 中心の11の亀子エネルギー依存性は、Corbettら10)の結果と一致しているが、約 4M e V以下のエネルギーにおいて他の欠陥中心の叩のエネルギー依存性と若干 異なっている。しかしこの電子エネルギー以上では同じエネルギー依存性を示し ている。A一中心に対するエネルギー依存性は図に示されるように、Frenkel欠陥 に対するCahnの理論計算の結果29)と一致している。 結 4.5 吾 本章で得られた結果を以下にまとめる。 (1)比抵抗が0.15、0.9、10E2c 2∼9M のn形Si単結晶に、 Z)と120E2c m(以上C e m(F.Z) Vの電子線を全照射量約1018e/c m2まで 照射し、一定線量照射する毎に、四探針法で比抵抗を測定した。比抵抗は照射量 の増加と共に増大し、最終的には不純物濃度に関係なく、真性半導体の比抵抗に 近づいていく。この場合キャリアの移動度の変化はわずかである。 (2)全照射量に対する比抵抗の実験曲緑は荷電中性条件と電荷分布の統計を考 慮することにより、定量的に説明できる。この計算によってE C-0.3、E 55e c-0.39、E c-0.47、E c-0.1.7、E c-0.54及びE v+0. Vの各複合欠陥の生成率が同時に決定され、不純物濃度及び電子エネルギ ー依存性としてまとめられた。 (3) E。-(∴三;(二,e 体に近い範囲ではoccupied Vの欠陥準位はりん原子と関係していること、また真性半導 stateとvacant stateがそれぞれ室温におけるエネル ギーギャップの中央の上下に対照的に位置しているべきであることが示唆された。 E.=-0.3e Vのcenter及びE-Center以外の複合欠陥の生成率は不純物濃度にほ とんど依存しない。りん及び酸素濃度をそれぞれ5.4×1016p/c ×10170/c m3 m∃及び2 含んだ試料の場合、複合欠陥生成に対して、A-Centerの平 均断面積はE-Centerのそれの約2倍、divacancyの約8倍である。 centerの生成率の電子エネルギー依存性はフレンケル欠陥に対するCahnの理論と 一致している。 一58- Si A- 第4章の参考文献 1) G.Bemski.G.Feher 2) G.D.Watkins,J.W.Corbett,and E.Gere:Bull.Am.Phys.Soc.3,9135(1958). and R.M.Walker:Bull.Am.Phys.Soc.4. 159(1959). 3) K.Lark-Horovitz:Phys. 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E.B.Kreinin,Sov.Phys.-Dokl.13,660(1・969). -60- and 第5章 Si中の電子線照射による欠陥分布 緒 5.1 言 Si単結晶に高エネルギー電子線を照射すると、電子の運動エネルギーは、結 晶中において電離、励起そして制動放射などによって大部分が失われるが、一部 分は原子変位など格子欠陥の生成に費やされる。Siに原子変位を生ずる入射電 子のしきいエネルギーは約145k e Vl)であり、エネルギーが高いほど欠陥生 成率が大きい2)。厚い試料に電子線を照射すると、電子は前述の過程によってエ ネルギーを失い、各深さに対してエネルギースペクトルが変化し、それに対応し た欠陥生成が行われて、深さ方向の欠陥分布が生ずる。欠陥分布は欠陥の研究や 実用的な点からも重要である。 電子線を照射したSi中の深さ方向の照射欠陥分布は、Vavilovらち).Flicker Loferski4)及びHitchcockら∈・)によって測定されている。Vavilovらは電子線 and を入射した面からの距離の関数として比抵抗を測定し、FlickerらはSiのP-n 接合の前に種々の厚さのAl板を置いて、それぞれの厚さのAl板を通り抜けて きた電子線で誘起される電圧の変化を測定した。そしてVavilovらの結果に若干の Hitchkock 検討を加え、その結果と彼らの結果が一致したことを報告している。 は、交流及び直流の電場を印加しておいて、接合容量の変化を測定している。 は、実験で得た電子線のエネルギ,分布と欠陥生成率から、欠陥分布 Stevens6一 を計算し、Hitchkockの結果と一致することを示した0 100k e これらの研究はいずれも数 e V以下の比較的低いエネルギーの電子線に対して行われており、M V領域の高エネルギー電子線を照射したSi中の欠陥分布を調べた実験ほ少ない。 なお計算による欠陥分布の研究は、第6章で取り扱うが、刀旧60几l】=p O b7) 及び和田吉・ウ)らによってモンテカルロ法によって透過電子のエネルギースペクト ルが計算され、欠陥生成率に前者は実験値4)を、後者はCahn2)の理論式を用いた 欠陥分布の計算が行われている。 一方、放射線照射による比抵抗の変化は、材料の格子欠陥や半導体デバイスの 放射線損傷の研究において重要であり、しばしば測定の対象とされるo 抵抗と照射量の関係については、中性子照射に対してClelandら10)の報告がある0 -61【 Siの比 V電子線を照射したもの、 一方電子線照射に対しては、Steinら11)の1.7Me Sigfridsonら12)による照射前の比抵抗が高いSiに2.5Me V電子線を照射し た実験がある。しかし電子線エネルギー、比抵抗及び電子線照射量の広い範囲に わたって実験した報告はない。比抵抗と照射電子量との関係は、照射欠陥のエネ ルギーレベルや生成率などを考慮することによって、定量的に説明することがで きる。しかしその計算では、任意の照射量に対する比抵抗の値を知ることば、必 ずしも容易ではない。Buehler13)は、耐放射線半導体デバイスの設計の資料にす るために、Siの中性子照射に対して、照射による比抵抗の増大が余り大きくな らない範囲(約103日c m以下)における比抵抗と中性子フルエンスの関係の実 験式を導いている。 本章では、2∼9Me Vの電子線をSi試料に照射し、電子の入射面かう測定 した比抵抗と深さの関係から、前章で求めた欠陥生成率を用いて、深さ方向の欠 陥濃度分布を決定し、また電子が停止するまでに生成する全欠陥数などについて も検討を加えた。さらにn形及びp形Si単結晶に9M e Vの電子線を照射し、 任意の照射量¢に対して変化した比抵抗pの値を推定できるp-¢関係の実験式 を導いた。 5.2 実 験 方 法 欠陥濃度分布の実験は2つのタイプ(A、B)のSi試料を用いて行った。タ イプAの試料は図5-1(a)に示すように0.7×0.2x2cm3の板状のn 形Siで、照射前の比抵抗p(〕が22E2c m(不純物のりんの濃度2.2xlO14 0・2 0,05寺 2W 9 a `-1 e トS (a) 図5-1 (b) 試料及び比抵抗測定回路 -62- Cm 〕)である。電子線照射は電子リニアックにより、図5-1(a)に示すよ うに、0.7x O.2c m2の面に最大3.6xlO17e/c イプBの試料は同じくn形Si(p うに、厚さ0.05c m2まで行った。タ m)で、図5-1(b)に示すよ o∼10〔2c mのウエーハーを29枚重ね、その上から6M を7.7xlO15e/c V電子線 e m2まで照射した。試料の側面から散乱緑が入射するのを 防ぐため、両側面をAlブロックで支持し、照射中試料の溢度上昇を避けるため 流水で冷却した。比抵抗の測定は4探針法により、タイプAの試料では図5-1 (a)に示すように照射面からの距離の関数として室温で行った。この測定方法 で0.2mm離れた点の比抵抗の差を十分区別することができた。比抵抗の測定 値はPauwの方法14)で得た実験値と一致した。試料の形状に対する比抵抗の補正を Valdes15)の方法で行った。一方タイプBの試料では、積み重ねた各ウエーハ一に 対し電子線の入射側(表)及び反対側(裏)の両面において、比抵抗を同様に四 探針法で測定した。 また比抵抗p一興射量(電子フルエンス)¢の実験式の対 象となるp-¢の関係を得る実験は、タイプAと同様の方法でn形Si(0.11∼ 15E2cm、3.2 ×1014∼5.4×1016p/cm3)、及びp形Si(0.15∼ 10E2cm、1.35×1015∼2.7×1017B/c e m3)単結晶に9M Vの電子 線を照射し、一定の深さでの比抵抗の値をプロットした。 実 5.3 験 結 果 照射前の比抵抗が22日(川のn形Si単結晶に9,7,4.5,3.9,及び2 M e Vの電子線を照射した場合の深さ方向の比抵抗の変化を図5-2(a)∼ (e)に示す。パラメr夕は照射量で最大3.6×1017e/c m2まで照射した。 電子線照射によってvacancy-related-defectsが生成され、それに基づいて図4- 7のような欠陥レベルに伝導帯の電子がトラップされる。したがって照射量を増 すことによって試料の比抵抗は増加し、最終的にはintrinsic resistivity(29 0Kで∼4×105ecm)にほぼ等しい値になって飽和する。電子線照射によって 変化した比抵抗の値は前章16)で述べたように安定である。図5-2から試料に比 Vの電 抵抗の変化が観測される最大の深さは、2,3.9,4.5,7及び9Me 子線を照射した場合、それぞれ約5、10、11.4、17・4及び22mmであっ ′ た。 -63-- 0 DEPTH 2 z(mm) 4 6 DEPTH 8 10 12 (mm) z (∈U (∈U ∈工○) ′} ′が q ∈工○) q 2 0 2 4 DEPTH 図5-2 6 8 10 >ト;一トS一S山∝ 0 3 >トこ二トS前山∝ >ト;一卜S一S山∝ q 0 0 Z(mm) 2 DEPTH 4 6 03 10 8 ー64- 2 DEPTH z(mm) 各電子線エネルギーの照射量に対する深さ方向の比抵抗の変化 (a)9.(b)7,(c)4.5,(d)3.9 0 及び(e)2 MeV. J● z(mm) 6 一方タイプBの試料に対して測定された各深さの比抵抗を、電子線照射量をパ ラメータに、深さz(mm)及びウエーハーの数に対してプロットした結果を図 5-3に示す。ここで白い丸は各ウエーハーの表側の面、また黒い丸は裏側の面 の測定値を示す。比抵抗はいずれの場合も深さと共に減少している。 Topmost 20 0 2 Depth 4 6 from Bombarded 8 25 10 Face 12 14 Z(mm) 図5-3 積み重ね試料の照射量に対する深さ方向の比抵抗の変化 図5-4 各電子線エネルギーに対する比抵抗の照射量依存性 `-65- 図5-4は照射前の比抵抗が22E2cmのn形Siに種々のエネルギーの電子を 照射した場合の全照射量と比抵抗の関係である。曲線の形はエネルギーが変わっ ても全く同じで、各エネルギーに対して横軸の照射量にそれぞれ一定の値を掛け ることによって、各点を重ね合わすことが可能である。図5-5は試料の電子線 を照射した面からの深さz(mm)をパラメータにした全照射量と比抵抗の関係で ある。また図5-6にタイプBの試料に対する同様な照射量と比抵抗の関係を示 す。 図5-5及び図5-6の曲線は図5-4と同様に各深さに対する曲線の形 が同じであり、上記の欠陥生成率の比が、◆ 深さが変わってもほとんど変化しない ことを示唆している。これらのことから試料内で位置が異なっても、比抵抗の値 が等しい場合には、欠陥濃度がほぼ等しいと考えることができる。 0 1015 1RRAD[ATJON 図5-5 1016 FLUX 1017 め(eLectrons/cm2) 各深さに対する比抵抗の照射量依存性 ー66- Irradiation Retative 図5-6 5.4 5.4.1 考 VaLue Flux of ¢i(electrons/cm2) Defect Concentration ND 各深さに対する比抵抗の照射量依存性 察 Si中の欠陥分布 電子線照射によって半導体の禁止帯にいくつかの局在準位が生成され、その局 在準位はキャリア濃度を変化させる。室温における照射によって生成される欠陥 は、図4-7に示すような、VaCanCy-OXygen pairs,VaCanCy-phosphorus pairs. その他vacancyと関係した欠陥17′)である。これらの欠陥がアクセプタあるいはド ナーのいずれとして振舞うかばフェルミレベル1ろ〕■の位置に依存する。 の移動度への電子線照射の影響は本実験で照射された程度の照射量では少ない16)。 電子線照射したSiの比抵抗と照射量の関係は、前章で述べたように欠陥準位 としてE.ニー0.17(E。1)、E,ニー0.3(E。2)、E.=-0.39(E.ニ3)、E 。一0.47(EE=4)、E{=-0.54(E(二5)のアクセプタレベルを、またEv+0. 55(Evl)のドナーレベルを考え、さらに荷電中性条件を考慮することによっ 一67--- キャリア て定量的に説明することができる。そしてこの計算から各欠陥の生成率が同時に 決定される16)。また欠陥生成率77が照射量に依存しないと仮定すると、VaCanCy に関係したすべての欠陥数の和としての欠陥濃度NDは次の関係から推定できる。 ND = ∑ ¢ (5-1) 叩 E。1∼E。5 Eし1 上のようなND の値と比抵抗の関係を、りんを2.2×1014cm 3ドープした n形Siを照射した場合に対して、図5-7に示す。この関係に対しては、主と、 0 5 (∈U∈工○) ′㌻ q >ト;一トS誘山∝ 0 3 101 10】ム 1015 1016 1017 1018 N(:i=7)(defects/cm3) 図5-7 欠陥濃度に対する比抵抗の変化 して不純物の種類、不純物濃度及び比抵抗の測定湿度などが決まれば、一つの曲 線が決まる。すなわち図5-4、5及び6の実験結果を考慮し、また単純にりEC lのエネルギー依存性と叩E.=2あるいはその他のレベルの叩川二> 性の間に差がないと仮定すると、上記の曲線を、比抵抗の傾から近似的に試料中 一68- のエネルギー依存 の任意の位置のND 図5-2 の値を得るために、一般的に使うことができる。 (a)∼(e)の実験データと図5-7の結果を使って種々な照射量に対して得 た欠陥の濃度分布を図5-8(a)∼(c)に示す。 (㌔U㌔lこ 0 ∼ く 6 D〔PTH 図5-8 8 10 z lム 1∼ O 16 Z (mm) 6 8 10 0・2 MeV 及び(c)2 0・4 0.6 FractionalRange 0.8 1.O Z/R 0.7×0.7cm2試料の欠陥生成率の深さ依存性 -69- 0` 2 DEPTH Z(mm) 種々の照射量に対する深さ方向の欠陥濃度分布、 (a)9,(b)4.5 図5-9 く DEPTH ( 6 Z(rnrn) 8 タイプBの場合には、図5-6の比抵抗一照射量の関係を近似的に比抵抗一欠 陥濃度として、相対的な値の欠陥分布を求めた。 その結果を図5-9に示す。 図5-9の分布は図5-8の板状の試料の場合に比し深さに対して緩やかな曲線 まで欠陥が分布している。この差は、第6章で詳しく述 となっており、より深く べるように、試料の形状、寸法に依存している。すなわち試料面積が′トさいと、 途中から飛び出す電子線が多く、それだけ欠陥の分布は少なくなる。また図中に Flicker4)の500k e Vの実験曲線及びStevens6)が電子のエネルギー分布と欠 陥生成率の実験値を用いて計算した400k e V電子の場合の計算結果を示す。 エネルギーが低いため欠陥は浅いところに分布している。 を対数で表示した一例である。また図5-11は異なった電 図5-10はND とzの関係を示す。 子エネルギーの場合に対して、Z=0の位置で規格化したND (c▲∈U) (?∈U) .付U 凸Z 5 凸Z 0 2 4 DEPTH 図5-10 6 8 5 10 DEPTH z(mm) 図5-11 対数目盛りの欠陥濃度 10 Z(mm) 表面の濃度で規格化 した欠陥濃度分布 の深さ方向分布 が指数関数的に変化している。 これらの結果では深いところにおいて、ND -70- 15 一般に、電子の連続減遠近似による飛程は次式で与えられる。19,20) To ; R(T)= l dE [-( O -)] d w (5-2) 1dT z ここでTは電子の運動エネルギー、WはSiの密度そして1/w(dE/dz)は質量 阻止能である。Berger及びSelzer19)によって計算された飛程を図5-12の中の 実線で示す。丸印は今回の実験で、比抵抗の変化が観測された最大深さであるが、 Berger及びSelzerの計算値とよく一致している。 図5-8などから得た各エネルギーに対するND(z)vs z/R て記すと、図5-13のようにほぼ一つの曲線になる。 計算による欠陥分布は第6章で述べる。 ( ∈ ∈ ) X可∈ N 0 d 山口Zく∝ 0 0 2 4 ELECTRON 図5-12 6 8 ENERGY(MeV) 理論計算及び実験で得られた電子の飛程 ー71- 10 曲線を規格化し 0・5 DEPTH 図5-13 5.4.2 Z/R R:Range 飛程Rで規格化した深さに対する欠陥濃度分布 全欠陥数 電子による原子変位に対して、SeitzとEoehlerの簡単なモデルを用いると、初 期エネルギーEo の電子によって生成される全原子変位の数は次式で与えられる 2) NA Nt(E(二,)= E(〕 -! A V(EB)o d(EB)dE (5-3) (一dE/dR) E.ユ ここでγ(E)は1個の電子の1回のクーロン衝突によって生ずる原子変位の平均 数、Od(EB)は電子の散乱断面積、Aは原子量、NA はアボガドロ数、(-dE/dR) は電子の阻止能である。Si単結晶の原子変位に対するしきいエネルギーを15 e vと仮定して計算したN t と入射電子のエネルギーの関係2:'を、4M e Vにお いて実験結果と一致するように規格化して、図5-14に実線で示す。 実験値すなrわち電子線照射によってSi中に生成された 欠陥の総数は、(5-4)式で表され、図5-8のND vacancy VS と関係のある Z曲線と縦軸及び横軸で囲 まれた面積から得られる。 Xmax NE,(E<:=.,Z)dz Nt(E〔‥.)=! O -72- (5-4) ここでxmaxはEoの電子によって欠陥が生成される最大深さである。Ntの実験 値を図5-14に丸印で示した。Ntのエネルギー依存性は Cahnの理論式による 計算結果2〕とよい一致を示している。しかしながら、Nt(Theo.)/Nt(Exp)は約2 0であり、これはT7t(frenkeldefects)/T7t(complex defects)に原因している。 すなわち室温で照射によって生成されたSi中のfree Si--k vacancy に移動し、あるいは点欠陥と作用し、より安定な複合欠陥をつくる。 0 2 4 6 ELECTRON 図5-14 8 10 ENERY(MeV) n形Siに対する欠陥生成率の理論及び実験結果 …73- は disl。Cati。n 5・4・3 n形及びp形Siの電子線照射による比抵抗変化 放射線照射による比抵抗の変化は素子の耐放射線性等を考える上で重要である。 Si単結晶の比抵抗と照射量(電子フルエンス)との関係は、4.4でも記したよ うに欠陥準位やその生成率、さらに電荷分布などを荷電中性の条件式に入れて計 算することによって得ることができるが、この計算は複雑である。 この項では、任意の照射量の電子線を照射した際の比抵抗の値を予測できる簡 単な実験式を求める。 5・3と同様な実験方法で得たn形及びp形Siに対する比抵抗と電子フルエ ンスの関係を図5-15に丸印で示す。 (1) 初期キャリア濃度の変化率 図5-16(a)、(b)はn形及びp形Siに対する初期キャリア濃度変化 率(initialcarrier-remOValrate)の照射前のキャリア濃度依存性である。こ れらの値は図5-15(a)及び(b)の結果から(5-5)式を使って得られ た。 △n △o n。 △¢ △¢ ロ。, (5-5) ここで△n、△¢及び△0はそれぞれキャリア濃度、電子フルエンス及び電気 伝導度である。n・コは室温では不純物濃度Niに等しいとし、さらに比抵抗と不純 物濃度の関係は1rvi□の曲線ニ1,ユニ∵ から求めた0 またキャリアの移動度の電子線 照射による変化量は、照射量が小さいことから無視した16}。initialcarrierremovalrateはキャリア濃度nlつと共に増大し、nOの1014∼1017cm-∃の範囲 において、0.1∼1cm 1の値である。 ー74- ll 105 lJ lI lI ted (∈Uq) 0 1 Ⅷ l P-Si Io n 9Me〉electron 府 一 f 3 u JlO I l! -Cal⊂Ula l u OeXPeriment ト JO JO Calculated. _ ト 問 103 ○ J ○ J ●●●● (∈Ue) も 鳥=15Jつ ヽ>ト;一トS一S山∝ >ト;一トS一S山∝ 。m-/ ・∴・・● 102 0.9 0 0.25 0 0.11 ○ F.・ 尾=10のCmO ノ ○ 7 柑 0.9 ○ 0・ ・二 0 - 冨;・●・・● √l 9 ←- ヽ′ 凸 lヽ ヽ′ ヽ′ u 1015 0 1016 ELECTRON 1017 FLUENCE 1018 0 1015 1016 ELECTRON ¢(e/cm2) FLUENCE (a) 9M 図5-15 1017 中(e/cm2) (b) e V電子線照射Siの比抵抗の照射量依存性 (a)n型Si、(b)p型Si ○一実験結果、実線一計算結果 (丁2U)山一く∝ 5 」く>〇三山∝ ∝山一∝∝くU 」く∈≡ 1014 1015 PRE-IRRADJAT]ON 図5-16 1016 CARRIER 10怜 1び7 CONCENTRAT10N n。(crh-3) 初期キャリア濃度変化率の照射量依存性 (a)n-Si、(b)p-Si -75- 1018 (2)比抵抗一電子フルエンス(p-¢)の実験式 Buehler13一は、中性子照射したSiの比抵抗と中性子フルエンスの関係が一つ の指数関数で表されるとして、P-¢の実験式を導いた。それに対して本実験にお いて電子線照射したSiのp-¢曲線は近似的に二つの指数関数で表すことが適当 であり、その一つはBuehlerと同様の方法で求めた式がそのまま当てはまることが 分かった。もう一つは実験曲線から第一項を差し引いた差を、同様に指数関数で 表すこととした。 図5-16のinitialcarrier まずBuehlerと同様な方法で第一項を求める。 removalrat,eのキャリア濃度依存性を直繚で近似すると、 -(dn/d¢)= noO・447/2.84Ⅹ107 一(dp/d¢)= p。0-∋20/3.00xlO5 次に P.-11= P。(::.eXp(¢/k。) P P pl= F,C,eXp(¢/kp) とおく、ここでp。0、P。0、P。1及びp。1はそれぞれ照射前、彼のn形及びp形 はdamage Siの比抵抗、kn、kp constantである。初期照射ではキャリア濃度 だけが変化し、移動度の変化を無視できるとすると、k-、,kFノ は次のように表さ れる。すなわちキャリアが一種類の系では、 d p d 1 (--‥-) d ¢ d p eJ⊥。(コ ¢→0 1 e〃。0( -) d¢ ¢→0 ( n ) 叫 d ¢ d p (5-10) ¢→0 -‥---) d ¢ ¢→0 (5-11) ここでeは電子の電荷、〟。0、〃。0は電子及び正孔の移動度である。以上の式か ら k。= k.′ 2.84Ⅹ107 = no(:一・与∈・三= 3.00Ⅹ10E・p亡.し=■・亡、こゴし ー76- (5-12) (5-13) (5-12)及び(5-13)式を(5-8)及び(5-9)式に代入すること によって、第1項はn形及びp形それぞれに対して、 P。1= P。OeXp(3.52Ⅹ10 8no 0・553¢) (5-14) P。1= P。OeXp(3.33Ⅹ10 6po 0・680¢) (5-15) となる。 次に第2項すなわち実験曲線と第1項の差を次のように置く。 △p A = (5-16) exp(B¢) ここでA及びBを図5-15(a)及び(b)の各曲様に対して整理した結果、 A、Bはno及びpoの関数として、An = a。nOm,Bn = bnn。n,Ap = a。p。m,B,= b。pOnの形で近似できることが分かった。 結局、照射前の比抵抗がp oのn形あるいはp形Siに電子線を照射した場合の p-¢の実験式は(5-14)、(5-15)式と(5-16)式の和として次の ようになる。 n形Siに対して、 p。= P nc.eXp(3.52Ⅹ10 2.66xlO4no 8n(〕 0・ら33¢)† O・371exp(5.91xlO-4no C■・782¢), (5-17) p形Siに対して p。= P。(コeXp(4.66Ⅹ10 4.63xlO8p(〕 6po 0・6∈=〕¢)† 〔}・64=exp(7.32xlOIOpo (:〉・4ココ¢). 計算曲線と実験曲線との比較を図5-15(a)及び(b)に示す。Buehlerは、 p。及びp。共に10∃Qcm辺までの計算を示しているが、(5-17)式のn形 Siの場合には104E2cm近くまで、 一方p形Siの(5-18)式では103E2 -77- (5-18) cmまでは、比較的よく一致している。 このような照射による比抵抗の増大の積極的な応用として、n-G a A sに電 子線を照射して高抵抗層を作製し、接合デバイスを分離する応用も試みられてい る23)。 結 5.5 ヨ 本章で得られた結果を以下にまとめる。 (1)りんを約2.2xlO14c 7及び9M e m.〕含むn形Si単結晶に、2、3.9、4.5、 Vの高エネルギー電子線を照射し、Si中に生成される複合欠陥の 濃度分布を電子の入射面からの距離の関数として求めた。照射した試料の深さ方 向の比抵抗の変化は4探針法で測定し、欠陥濃度NDは先に求めた各複合欠陥の生 成率を用いて、ND=¢∑叩の式から推定した。 Berger (2)電子線照射し.たSiの比抵抗の変化から推定した電子の飛程は び Seltzer の理論値とよい一致を示した。 (3)Siに照射した電子によって生成された N 及 vacancy と関係のある欠陥の総数 tを欠陥濃度分布から推定した。Ntのエネルギー依存性はCahn の理論計算結果 と一致した傾向を得た。 (4)半導体デバイスの放射線損傷や欠陥の研究に重要な比抵抗と電子線照射量 の関係を、n形Si(0.11∼15E2cm)、及びp形Si(0.15∼10E2cm) 単結晶に高エネルギー電子線(9M e V)を照射して調べ、任意の電子フルエン スに対して比抵抗の変化を予測できるような実験式を導いた。 -78≠ 第5章の参考文献 1)H.Flicker,J.J.Loferski.andJ.Scott-Monck:Phys.Rev.,128 2557 (1962). 2)J.H.Cahn:J.Appl.Phys.,30,1310(1959). 3) Ⅴ.S.Vavilov,Ⅴ.M.Patskevich,B.Y.Yurkov,and Phys.- Solid P.Y.Glazunov:Soviet State.2.1301(1961). 4) H.Flicker 5) A.J.Hitchcock:J.Appl.Phys.,37,2726(1966). 6) P.R.C.Stevens:J.Appl.Phys.,39,1561(1968). 7) A.M.J7K)60朗H n P oⅢyⅢp 8) T.Wada.and 9) T.Wada,S.Uemura 34,2146(1965). andJ.J.Loferski.,J.Appl.Phys‥ O O b n.6.Ilo3 H 3H e e 日 b:◎H3 T e x B.4,1117(1970). 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E.「 dE 〃。(E) -(dE/dx)E。 ー84-- 図6-1 モンテカルロ法による高エネルギー電子及び 光子の物質透過の主プログラム を計算しておく。Cご=Eこ/E、 E二はカットオフエネルギー。 ここで 1/2 dロ (- NZ‡ 〃。(E)= † - 27te2/mv2、 1 )2(- 1( - l一 E = E 1 1 C H(E。) dE E.1 H(E.二)= NZC ト1dE 己 T=E/mc2、 て-1 2て†1 一 己)- 2 -1Il( (て+1) EはEを単位として散乱電子に与えられるエネルギ 、E。<E<1/2、Nは単位当りの原子数、Zは原子番号。 6) この他に補助計算に必要なデータとして、実際に計算する場合には入力デ ータから必要なエネルギーに対応した値を補間して使用する。 本計算において用いられたSiに対する入力データの一覧は表6-1に示す。 (2)初期入射条件の設定 入射放射線が電子であるか光子であるか、また物質への入射点や入射角を指定 する。本計算では入射放射線は電子で物質に垂直に入射すると設定した。入射点 は、 Ⅹ=a(2 Rl-1) Y=a(2 Rニー1) Z = 0 によって決まる。aはど-ム半径、Rl、Rコは一様乱数。X及びYの組を発生さ せて、X2十Y三≦a三を満足する組だけを採用すればよい。(棄却法) (3)飛程と衝突位置の指定 (a)光子入射の場合 光子が境界面あるいは衝突点から次の衝突点までに進む距離すなわち飛跡は、 全滅弱係数を〃とすると、〃e 1一己 X p(-〃1)という確率で分布している。それ でこの分布に従う乱数Lは直接法によって -86- - ) L Rl=‡ FL e X P(-FLl)dl O から L=-1n(Rl)/〟 であることがわかる。 ここでRlは一様乱数。 (b)電子入射の場合 ①入力データとして読み込んだf.(E')及びg(E')と一様乱数Rlを用いて f(E2)=f(El)+1n(Rl) あるいは g(E:,)=g(El)+1n(Rl) から得られたエネルギー差(El-E2)と連続減遠近似での飛程とエネルギーの 関係を用いて制動放射光子あるいは∂線の発生を起こすまでの距離を求めておく。 実際にはその距離は f(E2)+g(E2)=f(El)+g(El)+1n(Rl) から求めて、f(E)/(f(E)+g(E))の割合で制動放射、g(E) /(f(E)+g(E))の割合で∂緑の発生とすればよい。 ②次に、別に予め決めた方法で、例えば電子の平均エネルギー損失が対数的に減 少していくような微′ト区間にpathを分割して、エネルギー損失の揺らぎを考慮し 実際によく使われるの た電離損失△Eを伴う多重散乱計算をその区間で行う。 は電子のエネルギーが半減するまでをmステップに分割するもので、通常m=8∼ 16が選ばれる。一方杉山8)は高エネルギー電子の追跡においては平均エネルギ ー損失△Eが一定となるように選んだ方がよいことがあり、△E=0.2∼0. 3M e T Vとするとよいとしている。1=△E/S P(E)。S 子の阻止能。(本計算ではこの方法を採用した。) ③電子の走った距離∑1が①で述べた制動放射あるいは∂線の発生を伴う距離に 達したら、制動放射ルーチンまたは∂線発生ルーチンにゆく。 -87- T P(E)は電 衝突位置の座標(Ⅹn,.yr,Z。)は衝突前の電子または光子の座標(x。,y 。,Z。)と方向(Z軸との方位角を∂。,ゆ。とする)及び飛跡Lを用いて、次式で 与えられる。 Ⅹn = yn = Zn = Xq L・Sin + O yq†L・Sin O Zq e + L・COS q・COS q・Sin tL/q ゆ q 以下に本プログラムの各確率過程に使われている断面積等について述べる。 (1)光子の衝突の型の決定 光子の衝突の型を一様乱数Rを用いて決定 する方法を右図に示す。〃。b、〃い 〃。 Compton SCatte「ing はそれぞれ光電効果、コンプトン効果そして Photoete⊂t「i⊂ 電子対生成による減弱係数を表している。た だし effect である。 〃=〃。b+〃。+〃。 Pai「P「∝1uctlon (2)コンプトン効果 コンプトン散乱では光子が原子内電子と衝突して散乱され、電子が反跳される。 この過程の散乱断面積はKlein-Nishinaの式として知られている。エネルギー単位 をm c2で表すと、次式のように書かれる。 2一花rcr三(w)2(-,lα -1†〃2) α (コ ここにr(‥.は古典電子半径、〃は光子散乱角の余弦である。散乱光子のエネルギー α'は入射光子エネルギーαと次の関係にある。 α'=α/(1+α(1-〃)) この分布に従う乱数をサンプルして散乱光子のエネルギーを決める方法はいくつ -88- か知られているが、ここでは軋Eah□三ヨjの方法に従っている。 (3)光電効果 この場合光子は全エネルギーを失い、原子内電子は入射光子のエネルギーから 結合エネルギーを引いた運動エネルギーで放出される。 70k e V以下では、光電子の散乱角0は次のFisher24)の分布でよく記述され る。 2∂ sin d ¢1= (1IE/2m。C2-βcosO)4 70k e V以上ではSauter25)の分布が知られている。 (1-β)1/′ノ2 [ト(1-β2)1′′′2] d¢2=βsin三Oi (1-βcosO)4 2(1-β2)1′/三(1-βcosO)∋ [1-(トβ2)L/2]2 2(トβ■三)(トβcos∂)∋ (4)電子対生成 1.02M e V以上の光子は物質中で消滅して電子と陽電子の対を生成するこ とができる。 10M e V以・下のエネルギーではBethe ある。式は次の分布で与えられる(Zerby and 1 f2(x). - 1で、E_及びαはm 8 - 0≦x≦1 cニを単位とした電子及び光子のエネ ルギーである。 fl(x)= Moranによる26))。 1+トl 1+M ここでⅩ=(E_-1)(α-2) の式を近似したHoughの式が M fl(x)† f(Ⅹ)= Heitler and Xl′/′2(1-Ⅹ)1′′′2 ′打 -89- f2(x)= さらに 30x(1一Ⅹ)(1-2Ⅹ)2, ≦ P=Q-0.52(α>4.2のとき),P=0(2 M=P/13.91花で α≦4.2のとき)、 4 Q=(1-2a 1)[-(1-a-2)(L-1)-4α 2F(F-1)一16a-4F(L-F)]. 3 L=2α2(α2-4)-11n(α/2) そして F=α(α2-4) し/21n[(α/2)†(α2/4-1)1//ノ2] 高エネルギーについてはBethe-Heitler27)の微分断面積を使用する。 l 4αoNZ2ro2p 1[E2 ¢。(α',E)= +(ト 2 †一 3 ここでα● E=E E2)]Ⅹト Fl(γ)- ー 4 1 己(1一己)[ F2(r)- -1n 3 Z]† は光子のエネルギーで、放出される電子のエネルギーは a,、aO=1/137、 Nはアボガドロ数、r(コは古典電子半径、A及び Zは質量数及び原子番号であり、Pは密度そしてその他の記号は次のようである。 γ=100/[E(1一己)E Zl/3] ∂ く1 Fl(∂)=20.867-3.242∂10.0625∂2 F2(∂)=20.209-1.930∂-0.086∂2 Fl(∂)=F2(∂)=21.120-4.1841n(∂†0.952) Fl(0)=41n183, ∂>1 F2(0)=Fl(0)一2/3. (5)衝突後の方向決定 ここでは次貢の図に示すように、衝突前後の光子または電子の方向をVl(∂1,ゆ 1)及びV2(∂2,ゆ2)として、散乱角(山tゆ)が分かったとき、VlからV2を決 めることが課題である。ゆの決定は[0,2花]間で一様と考えて一様乱数Rlから 一90- 111Z] = COSゆ = COS(2花Rl), SintU sin(2¶Rl) Neumann とするか、あるいはvon の棄却法に よるとよい。 立体三角の余弦公式を使うと COSelCOS山IsinO・Sinu・COS¢t COSO2== sinO2=(1-COS202)1/2 また立体三角の正弦法則によって sin(ゆ2-7L11)= Sinゆ・Sinu/sine2. 再び余弦法則によって COSu-COSOl・COSO2 cos(ゆ2-ゆ1)= Sin∂1・Sin∂2 von Neumannの方法 これらの公式から sinゆ2=Sin[ゆ1+(ゆ2一砂1)] =SintLJl・COS(ゆ2-¢1)Icosゆ1・Sin(ゆ2-ゆ1) costLJ==COS[ゆ1I(ゆ2-ゆ1)] =COSゆ1・COS(tLJ?-tPl)一Sinゆ1・Sin(tk2-7L)1) Vの光子を放出する場合 陽電子が静止後0.511Me には等方散乱としてもよいので、Rを一様乱数として cose2=2R-1, SinO2=(]-COS202)1/''2 とすることができる。 (6)電子一電子散乱(∂緑) 電子一電子散乱に関するM¢11er2古‥・の公式は次のように善かれる。入射電子の運 動エネルギーをEとすると、微分断面積は d (-) d o 1= E l C 1- l + † C (1一己)2 -91- (- )2 て+1 2て†1 1 (t+1)2 c(トc) ここでcはEを単位とした、散乱電子に与えられるエネルギーの割合で、C=2 花e2/m v2(mは電子の質量、Vは速度そしてeは電荷)である。 t=E/m c2でEのとり得る範囲はE。≦8≦1/2である。 E。はEの下限で、通常0.01∼0.1がよく使われる。 (7)電子の多重散乱 エネルギーE(M e V)の電子が厚さt(g/c m2)のエネルギ.一損失が無視 できる物質を透過するときに受ける散乱角0の分布f(0)はMoliere理論を補正 したBethe理論2g}では次のようである。 sin() f(0)=E( 1 )レノ2 8[2exp(-∂2)†- f(1′)(0)+‥.] B Kは定数、∂ Ⅹ,= ㊤/(Ⅹ,二Bl′/三)、 22.7(p t Z(Z+1)/A)1/2/P v(度) また Zは質量数、Aは原子番号、f(1〕(∂)は表になっている2■〕-。 P v=E(E+2m c2)/(E+m B=1n B/1n Ⅹ且三 =6.8×10 c2),m e C2=0.511M Vであり、 X。2/1.116Ⅹa2, 5z2ノ/ヨ(1.13+3.76 a2=Z/137β、 β2=E(E+2m α2) c2)/(E+m である。(Bは通常の物質では5∼15位) (8)エネルギー損失のゆらぎ エネルギーEの電子が物質の薄い層を1だけ通過するとき、電離に△Eだけの エネルギーを失うものとする。このとき△Eはある分布をもつ。ここで△E<< -92- c2)2 Eと仮定する。 これは Landau 効果30)として知られているが、ここではもっと精密な Blunck- Leisegangの分布式31)を用いることにする。 この分布f(九)は 4 c γ (九-ん γγ f(ん)=∑ 2)レ′2 γ=1(γγ2+b γ)2 exp(γγ三+b と善かれる。ここに E △E-△E +1n( -)-1.116 NZC・1 △E NZC・1 は平均エネルギー損失である。 さらに Z p A βご NZC=0.154-・- Cγ、γ [MeV/cm] γそして入γほ表になっており、また g・△E・Z4 b ≡ E(E+2 β -= (NZC・1) でg≒2 0e Vである。m m c ご) -= (E e C2=0.511M +mc2)二 V。 計算の手順としてはE,△E、そして1が指定されたときに、f(ん)の分布か ら九をサンプルして、それから△Eを求めることになる。 (9)電子の多重散乱理論とエネルギー損失のゆらぎ理論との相互関係 電子が物質を透過するとき、有限のエネルギーを失う場合には理論的に必ずし もはっきりした答えが出ているわけではない。多重散乱理論では電子は連続的に エネルギーを失うと仮定しており、エネルギー損失のゆらぎは考えていない。逆 にエネルギー損失のゆらぎ理論は一次元的考察から導出されたもので、多重散乱 ーー・93-・ による角度変化は無視している。モンテカルロ計算の場合に特にこのことは大切 であって、実験データとのくい違いの生ずる最大の原因の一つと考えられている。 この困難を逃れる方法として電子の飛程を十分に短くすることが考えられる(エ ネルギー損失△E→0)が計算時間の増大は避けられない。そこでこの間の結合 を次のような近似式で行われた。 0 = Om・(△E/△E) この式は散乱角が大きいほどエネルギー損失△Eが大きいと仮定したことになる。 △Eは平均エネルギー損失である。 (10)制動放射光子の発生 電子が物質中で制動を受けて光子を発生する微分断面積についてはいくつかの 公式が知られているが、ここでは簡単のため、Bethe 公式(2Me and Heitlerの高エネルギー V以上でよく用いられる32))が使われた。 l 4α8NZ2γ82p ◎ヒ.(E,E)= -1[1+(トc)2]・[ E f2(γ)- ー ー(トE)・[3 1n Z]〉 4 E、(0≦E≦1)を光子のエネルギー ここでEは電子のエネルギーで、α'=E とする。またα田=1/137、Nはアボガドロ数、r8は古典電子半径、Aは質 量数、Zは原子番号、Pは密度であり、その他の記号の意味は次のとおりである。 γ =100E/[E(トE)Zlノ3] ∂ =136γ/100, Fl(∂)= 20.867 F三(∂)= 20.209 Fl(∂)= F2(∂)= Fl'(0)= 41n183. - 3.242∂+0.625∂2 - -1.930∂ 21.120 - ∂く1 0.086∂2 4.1841n(∂†0.952), F2(0)=Fl(0)-2/3. -94- ∂〉1, (11)陽電子の消滅 陽電子は電子と同様に制動放射で光子を放出するほか、静止してあるいは飛行 中に消滅して2個あるいはそれ以上光子を放出する。 陽電子の消滅断面積はDiracによると次式で与えられる32)。(エネルギー単位 はm c2)。 1 ◎。= E+†4E†1 E+†3 1n(E+l(E+2-1)1′′ノノ2 昔ro⊥ E+11 E十2-1 - (E+2-1)12 ここにE+は陽電子のエネルギーである。 Eの間にある陽電子の消滅の確率w(E)は次式で与え エネルギーがEとE+d られる。 NZ◎a(E)dE w(E)dE= -(dE/dx) 運動している間に消滅する確率W(E+)は E+ W(E+)=‡ O w(E)dE (12)カスケード的追跡 カスケードシャワーのように枝分かれを ともなうもの・を追跡する技術は2種類知られ ているが、ここではProcess generations trees by の方法が用いられている。この 方法では右図に示すようにシャワーの世代ご とに追跡していく。 w95- (13)カウンターの構成(電子透過の場合) 物質を幾つかの層L o、Lい L2、...に 分割する(右図)。層のとり方は電子の飛程に よって適当に選ぶ。 几 各層を横切る電子数をエネルギーで分類して全人射電子数で除したものがエ ネルギースペクトルであり、透過電子数を全入射電子数で除したものが透過係数 である。後方散乱係数は物質表面から反対方向に散乱される電子数を全電子数で 除したものであり、各層間で失われるエネルギーを全入射電子エネルギーで除し たものがエネルギー散逸量である。 試料を深さ方向に分割し、分割された区間に入ってくる電子をエネルギー別に 分類してエネルギースペクトルを得る。分割の大きさは求めようとする空間分布 内に十分な点がとれるようにする。その際入射直後の電子のsteplengthが第1層 の区間を越えないように△Eを設定することが望ましい。 ー96一 6・2 モンテカルロ法による電子のエネルギースペクトルの計算 6.2.1 計算方法及び入力データ 本計算では、杉山8-の高エネルギー電子及び光子の物質透過に対するシミュレ ーションのプログラムを基本とし、電子入射用として使用した。すなわち杉山の アルゴルプログラムがパスカルに移植、拡張され、Cahn14)の欠陥生成率の理論式 が組み込まれ、電子のエネルギースペクトルの他、欠陥生成率及び欠陥分布など が計算されるようになっている1ト1ヨ,20・21:)。 計算時間の短縮のためにも、予め計算しておいて計算機へ読み込んでおくSi に関する入力データを表6-1に示す。 電子のエネルギースペクトルは試料の形状や寸法、入射電子ビームの形状等の 影響を受ける。ここでは直方体の試料を用い、その一つの面に、面全体に均一に 照射する場合と直径20〃田の細い電子ビームを面の中央に照射する場合について 計算した。カットオフエネルギーは50k e V、モンテカルロシミュレーション において電子の軌跡を区分けするための平均エネルギー損失△Eには、主として 2M e Vの場合0.1M e Vを、また4、7及び9M e Vの場合には0.2M e Vを使用した。電子のエネルギースペクトルに区分けするエネルギーの間隔は入 射電子のエネルギーE(〕を80分割した値で、また深さの間隔は0.05c た。ヒストリーは104∼10巨-で行った。 入射電子ビームの形状ほ、6.1の初期入射条件の設定において、X=a(2 とし、四角形のど-ムの場合には Rl-1),y=b(2R2-1)及びZ=0 面積が2a X2bとなるように、a及びbを決定して行った。円形のど-ムの場 合には6.1で記されたと同様にa(=b)が電子ビームの半径である。 ≠97- mとし 表6-1 電子エネルギー mcと 光電効果による 滅弱係数 cmごg 1 cmとg i 電子対生成に よる滅弱係数 cm三g 1 連続減遠近傲 制動放射X禄 の飛程 の発生率 g・Cm 阻止能 デルタ線の 発生率 hkV・Cm2・g-1 2 8.4329 nU nV nU 6.6474 nU 8.5237 8.4066 nU nU nU 4.8502 ▲nV 8.299【) 8.3950 nU ■nV nU 4.1105 ▲‖V 8.1199 8.3741 ハリ nU nU 3.5396 ∧〓V 0.0598 8.3564 nU ▲n nU 2.9687 (り 0.0867 0.2935 nU 0 0 2.0511 0 0.8020 0.2550 nU 0 8 1.7366 0 8.0088 0.2281 nU 0 0 1.5913 0 8.8085 0.2084 nV 8 0 1.5093 0.8801 8.1523 (U 2.8723 ・・・・∽∞- コンプトン数乱 による減弱係数 人力データ 0 8.866 8.012 1.3868 0.1700 ハリ 0.1233 8.00【沌 0.133 0.023 1.3785 0.3400 nU 0.1854 8.8020 0.201 0.042 1.3約9 0.4376 nU 8.8826 8.0054 0.325 0.884 1.4290 0.5833 nU 0.8692 臥8887 8.434 8.127 8.8594 0.8115 0.542 0.170 1.4449 1.4719 0.6807 nU O 0.8528 8.0142 0.673 0.250 1.4918 0.8414 nU 0.0432 8.0189 0.934 0.410 1.5240 0.9691 nU 8.0367 8.8226 1.197 0.518 1.5528 1.8977 nU 0.8271 8.0296 1.868 1.222 7.4888 1.27鍋 nU 8.0218 0.0346 2.524 18.74 7.5()81 1.4572 0.7771 6.2.2 Si中の透過電子のエネルギースペクトル (1)試料の面積依存性 図6-2は0・1×0・1から4×4cm2まで種々の面積を持つ試料の照射面 に6Me V電子線を一様に照射した場合の、モンテカルロ法によって計算した電 子のエネルギースペクトルである。パラメータは照射面からの深さである。スペ クトルは深さが増すと電子のエネルギー及びピークの高さが減少し、同時にスペ クトルの幅が、広くなっている。試料の面積が減少すると、ピークのエネルギー は高エネルギー側にシフトする。これは′トさな面積の試料では、電子が容易に試 料の側面から飛び出し、低エネルギーの電子の発生が少なくなるためと考えられ る。 SUOLIUむ一むー0」むq∈⊃u聖;巾一む∝ 4 Electron 図6-2 (2) energy 電子のエネルギースペクトル 試料面積依存性 入射電子のエネルギー依存性 図6-3は入射電子のエネルギー依存性としての、2、4、7及び9M 子線に対する透過電子のエネルギースペクトルである。試料面積が0.7×0.2 c m三、厚さが2c mの試料に一様に電子線を照射した場合として計算した。エネ ルギー軸は電子の入射エネルギーで規格化してある。またパラメータは照射面か -99- e V電 らの深さで、入射エネルギーの電子の飛程Rで規格化されている。入射電子のエ ネルギーが増加すると、スペクトルのピークが高エネルギー側にシフトし、ピー クの高さが減少する。特に試料の′トさい場合に顕著である。これは図6-2の場 合の一定エネルギーで試料の面積が減少した場合の逆で、一定の大きさの試料で エネルギーが増加したために側面から飛び出す電子が増加するためである。この 場合、△E=0.005M 図6-3 6.3 6.3.1 e Vである。 電子のエネルギースペクトルの入射エネルギー依存性 欠陥分布の計算 計算方法 エネルギーEoの電子が物質中に入射し、Zの深さにおいてn(Eo,EB,Z)のエネル ギースペクトルの電子が欠陥生成率り(EB)で欠陥を生成する場合、深さzにおける 欠陥数Nd(E(〕,EB,Z)は次式で与えられる。ノ1う=- Nd(E(:.,Z)= Emax ∑ EB=Ed [n(E(〕.EB,Z)・Tl(EB)] ここでE巳は深さzにおける電子のエネルギー、Em。.X -100】 (6-1) はEB中の最大値、Edは原子の はじき出しエネルギーである。叩(EB)は電子のエネルギーの関数である欠陥生成 率で、本計算ではCahnの式14)をモテカルロシミュレーションのプログラムの中に 組み入れて計算した。刀は深さの関数としての欠陥濃度の微係数であり、散乱断 面積口及び一次はじき出し原子によって生成される欠陥数yから次式で計算され る。 Tl=(dN/dz)= (6-2) n。・0・V ここでnoは単位体積あたりの原子数である。 6.3.2 欠陥分布の計算結果及び実験結果との比較 欠陥分布は電子のエネルギースペクトルの影響を受けるため、電子の入射エネ ルギー及び試料の形状及び寸法によって変化する。図6-4は6.2で得られた電 子のエネルギースペクトルを用いて計算した深さの関数としての欠陥分布 m12まで変化させ、厚さ2c (〕.Z)である。試料面積を0.1×0.1から4×4c の試料に6M =25e e Nd(E m Vの電子を試料の面に一様に照射し、はじき出しエネルギーE d Vで計算した。欠陥濃度は試料の面積が′トさいほど、深さと共に速やか に減少している、これは先にも述べたように、深いところで電子が試料の側面か ら飛び出すからである。一方大きな面積をもつ試料では深いところにおいても、 多くの電子が原子のはじき出しに寄与し、欠陥濃度は深いところまで分布してい る。また実験結果として、0.7x O.7cm2の面積をもつ試料に6M e Vの電子 線を一様に照射して、比抵抗の変化から算出した欠陥濃度分布を図中にプロット した。 図6-5は欠陥分布の電子線エネルギー依存性である。試料の面積が0.7× 0.2c m2、厚さが2、4及び7M e Vの場合2c Vの場合2.5c m、9Me の試料に対し、試料の照射面に一様に2、4、7及び9M e V電子線を照射した 場合として計算した。また同様な試料を用いて行った実験結果(図5-11)を、 それぞれのエネルギーに対して表面で計算結果と一致するようにして、図に破線 で記入した。実験結果との比較では浅いところで一致しているが、深くなるにし たがって実験値の方が若干大きくなる。これには電子線の照射中における欠陥の -101- m 0.7 図6-4 〇.7 C m 欠陥濃度分布の試料面積依存性 6M e V、 実線:計算値、 破線:実験値 拡散あるいは試料を保持するために使用したAlブロックやP bのブロックから の散乱が考えられる、このような場合実際の試料よりも若干大きい試料に対して 計算すべきである。ちなみに図6-4では実際の試料面積(0.7×0.7c の曲線よりも1×1c m2の試料の曲線が実験結果とよく一致している。 ー102- m2) (む>;巾一巴) SIUむーむPむひ巾∈巾凸 -0l 図6-5 欠陥濃度分布の電子エネルギー依存性 芙緑:計算値、破緑:実験値 6.4 一次はじき出し原子のエネルギースペクトル 半導体の電子線照射効果には、はじき出し原子の数ばかりでなく、はじき出さ れた原子のエネルギーも影響すると考えられる。一次はじき出し原子(P のエネルギーは、はじき出しエネルギーEdから最大エネルギーEmまで分布し、そ の分布から平均エネルギーE。が決まるヨヨ・34)。 本項でほモンテカルロシミュレーションで得た電子のエネルギースペクトルか ら一次はじき出し原子のエネルギースペクトルを計算した。その際、EBのエネル ギーの電子によって平均エネルギーE。の一次はじき出し原子が放出されると仮定 し、一次はじき出し原子の数N。と一次はじき出し原子のエネルギーの平均値Epの 関係として求めた。 -103- KA) 計算方法 6.4.1 ここでは、モンテカルロシミュレーションによる電子のエネルギースペクトル の計算を、スペクトルが試料の大きさに影響されないように、電子の飛程に比し て十分大きな試料を対象とし、2∼9M Vで直径20JJmの電子ビームを試料面 e の中心に照射した場合について行った。試料は2、4及び7M が4x4c c m2で厚さが2 Vの場合 e m、また9M Vの場合に面積 e 5x5c で2.5c m2 とした。 K 一次はじき出し原子(P E。= Ed(1n Em/Ed A)の平均エネルギーE。は次式で与えられる35・36) (6-3) -11花α) ここでα=Z/137、Zははじき出し原子の原子番号、Edは原子のはじき出しエネ K ルギーである。P Aの最大エネルギーEmは 560.8 Em(eV)= X(X+2)/A (6-4) ここでAははじき出し原子の質量、X=EB/mc2,mC2=0.511M e Vである。 よって一次はじき出し原子の平均エネルギーE。及び深さzの関数としての一次はじ き出し原子のスペクトルN。(Eo,Ep,Z)は NF,(E。,Ep,Z)= (6-5) n亡.0(EB)n(Ec.,EB,Z)(dEB/dEp) ここでn(〕ば原子密度、0(EB)三6・∋7)は散乱断面積で次式で与えられる。 Em -1)- β21n 一 + 花α β(2[( Ed )1ノ′2 -1] Em -1n ここで冗b'2/4 = β2=Ⅹ(Ⅹ+2)/(Ⅹ+1)ご 2.495xlO 14J、 25z2/(β4γ2)、 Ed=25 e -)], Ed γ=1/(トβ2)1/:、 V∋5〉。 -104- (6-6) m 6.4.2 Si中の一次はじき出し原子のエネルギースペクトル 図6-6に7M e Vで、直径が20〟m¢の細い電子ビームを4×4×2c m3 の試料に照射した場合に対し、モンテカルロシミュレーションで計算した電子の エネルギースペクトルの例を示す。 (lゝ呈)u.su21U葛-。J且∈コ∪聖篭一度 5 Electron 図6-7はP K e EB(MeV) 電子のエネルギースペクトル 図6-6 7M energy 試料:4×4×2c V、20FLm¢ビーム m3 Aの平均エネルギーの関数としての一次はじき出し原子のエネ ルギースペクトルを、入射エネルギー2、4、7及び9M e Vの電子ビームを照 射したSiに対して計算した結果を示す。パラメータはSiの表面からの深さで ある。スペクトルは図6-6の電子のエネルギースペクトルに類似しているが、 入射エネルギーの減少と共にはじき出し原子の数が減少し、ピークの高さが/トさ くなっている。 -105- 0.04 2 MeV depth z=ひ05cm 0.1 0・35 0・3 0.25 0・15 0.2 0 (丁>むl篭U)dZ 20 30 40 50 4MeV o.2 0.3 0・7 0・6 0・4 0.5 〇 S∈Ol巾Pむじ可-ds石ちL名∈コU宣;巾-屋 50 60 80 0.35 7 〇.〇` 0.18 MeV 0.53 0.7 1.23 0・88 1.05 〇 t l 1.1 1.3 90 100 Average 図6-7 70 110 transfer energy K 一次はじき出し原子(P 2,4,7及び9M e V、2 120 Ep(eV) A)のエネルギースペクトル 0J上m¢電子ビーム 図6-8は図6-7のエネルギースペクトルにおいて、各深さのスペクトルの ピークのエネルギーE。。を、入射電子の飛程Rで規格化した深さ(z/R)に対して示 した一ものである。E。。は深さと共に減少し、飛程に近くなるにしたがってより速や かに減少している。750k イオンプレーティ e Vに対してSiの表面で計算した値も記入した。 ングでは100e V付近のエネルギーのイオンの寄与が多いと されているが、図はかなりの深さまで10-100e Vのはじき出し原子が生成 されることを示し、このようなエネルギーのはじき出し原子の電子ビームドーピ ングへの寄与が考えられる。 -106- ;ヱ dd山 葛乱l帽」むーSU空一㌫Lむuむむ訝L空く 0 0・2 0.4 0.6 Depth 図6-8 0.8 1.O z/R ピークエネルギーの深さ依存性 20〃m¢電子ビーム 6.5 非電離性エネルギー損失と損傷係数 半導体など電子材料や素子は、異なった種類のしかも広範囲のエネルギーの放 射線によって、放射線損傷などの照射効果を受ける。このような場合、照射効果 が一つの尺度で表されることができれば、異なった放射線による照射効果の相互 の比較が容易にでき有利である。Summersら17)は、半導休などの放射線照射効果 が、放射線が入射した際の非電離性エネルギー損失(Nonionizing (以下「NIE energyloss) L・」と記す)と非常に広い範囲にわたって直線関係にあることに 着目し、半導体素子17)や超電導体38)など種々の試料に対して照射効果を調べて いる。 本項ではSiの内部での照射効果に対してこれの適用を試みるもので、先に求 めた試料内部でのP ネルギーNIE K Aのエネルギースペクトルから深さの関数としての損傷エ Lを求め、一方先に実験で得た電子線照射したSi中の比抵抗の 変化の測定結果から損傷係数Eを求め、相互に比較した。 -107- L NIE S Sは次のように計算される。38) (6-7) =(N/A)∑ロiTl ここでNはアボガドロ数。ロi及びTiはi番目の相互作用の散乱断面積及び原子のリ and コイルの平均エネルギーで、電子の場合Seitz Eoehler36)の式で与えられる 38) L、S(E。,Z)を(6-3)式のEp及び(6-5) ここでは深さの関数としてのNIE 式のN。(E。,E。.Z)を用いた以下の式で近似的に計算した。 E。maX S(E。,Z)= (6-8) [(1/p。トN。(Eo,E。,Z)・E。] ∑ Ep=E。mi。 E。ml。はそれぞれE。の最 ここでp。はターゲット物質(Si)の密度、E。maX及び 大及び最′ト値である。 図6-9は9M V電子ビームを試料の面(0.7×0.2c e したSi(厚さ2c L m)に対して、NIE m2)に一様に照射 S(Eo,Z)を深さの関数として計算し た結果である。S(Eo,Z)は深さと共に減少した分布を示す。 第5章の図5-5 は上記と同様の試料及び方法で9M e V電子線を照射した Siに対して、種々の深さにおいて測定した比抵抗と電子フルエンスとの関係で ある。高エネルギー電子線3ウ′)あるいは中性子40)を照射したSiの比抵抗と粒子 フルエンスの関係は、低照射フルエンス域において経験的に次式によって表され る。 P = P (6-9) oleXp(R¢) ここでp。1はSi試料の照射前の比抵抗、Eは損傷係数、¢は電子フルエンスであ る。図5-5のP一¢曲線は深さの変化に対して相似形をしており、任意の深さ の曲線に対して、上式が適用できる。図6-10は図5-5から(6-9)式に L よって計算した損傷係数KとNIE 料に種々の放射線を照射して、NIE Sとの関係である。Summersらは各種の試 L Sと損傷係数の間に直線関係があるこ とを報告しているが、ここで計算した照射Si中で電子のエネルギーが変化して いる場合にも比例関係にあることがわかる。 -108- (ぞN∈U・>ヱSSO】㌫L2むぎ芯モ0モON 0 0・5 1・0 Depth 図6-9 9Me 1.5 (cm) z V電子線照射Si中のNIELと深きzの関係 0. 7 × 0. 2 c m2 10 NonIonlzing 図6-10 2.O energy 102 toss 損傷係数KとNIE 右縦軸:Damage S(eV-Crn2/g) L Sとの関係 factorに対応した深さ ー109- 6.6 電子ビームドーピングにおけるはじき出し原子の挙動 6.6.1 電子ビームドーピング(超拡散)(E B D)4ト52) 電子ビームドーピング(超拡散)はSiなど半導体基板の上に不純物シートを 乗せ、あるいは蒸着によって不純物層を形成し、その上から高エネルギー電子線 を照射すると、不純物が基板の中に注入し拡散する現象である。1980年和田 によって発見されて以来18)、電子ビームドーピング41・43)、電子ビームエビタキ シ46)、電子ビーム酸化51)及び超拡散48)など基礎から応用まで多岐にわたり多く M の報告がなされている。それらは電子のエネルギーとして0.75(JlO 試料の組合せもG e/Si、Z n/G a A s、G a A s/Z a n/G A e sなど各 種の元素に対し、2層あるいは3層構造の試料を、真空、大気中、水中の各種雰 囲気で実験している。基礎的な実験結果には濃度プロファイル、照射量依存性、 電子エネルギー依存性及び拡散係数などがある。注入効率は、基板に不純物シー トを重ねて乗せただけの2層構造よりも、蒸着膜などの堆積被覆層の場合に大き く、さらに3枚を重ねた3層構造の場合に効率が最大である。E B Dは①室温で 注入されること(拡散係数が非常に大きく、特に表面拡散は体積拡散の1010倍 も大きい)、②電子線による照射損傷が少なく、アニールによって容易に消滅す ることなどが特長である。E B Dは半導体プロセス技術として期待されるばかり でなく、半導体物理においても重要な事実を含んでいる。しかしながら未だ_電子 ビームドーピングの機構については十分明らかになっていない。 本項では、G e/Si及びZ n/G a A sの試料に対する実験から得られた注 入不純物濃度の電子エネルギー依存性を、はじき出し原子の濃度のエネルギー依 存性と比較し、また一次はじき出し原子のエネルギースペクトルを計算して、電 子ビームドーピングを考察する。 -110- V、 6.6.2 注入不純物濃度の電子エネルギー依存性 電子ビームドーピングによる注入不純物濃度の照射電子ビームエネルギー依存 性の実験はこれまでG e/Si及びZ A n/Ga sの各試料に対して行われてい る。その実験条件を表6-2に示す。図6-11にG 表6-2 a A s中のZ n原子の濃度 注入不純物濃度の電子エネルギー依存性の実験条件 試料 不純物シート 基板 湿度 電子エネルギー ℃ Ge/Si l● Zn/GaAs Si Ge(0.5mm) l● M ●● l● l● Zn(0.2mm) e/c打12 3 60(水中) ll M 50(..) GaAs 照射量 MeV 100 5Ⅹ1017 5 ●● 7 M 7 1Ⅹ1017 0.75 2Ⅹ1017 0.75MeVの電子線照射は日新ノ\イボルテージ株式会社の バンデグラーフ加速器による。 (S〓u⊃.qL巾) (巾りのこl、(UN誌〓 ■0 100 200 Depth 図6-11 G a A (a)7M s中に注入されたZ e V、 一一111- (Å) n原子のプロファイル (b)0.75M e V プロファイルを、SIM Sの信号強度の比Ⅰ(64z n)/Ⅰ(69G a)で示す。 曲線は主として2つの曲線からなっており、2種類の拡散を示している。それら 2つの拡散に対する拡散係数は7M m2/s e Vの場合、約10 e c、0.75M V電子線の場合、約10-16及び10-14c e 17及び10 15c m2/s e 注入された不純物濃度の電子エネルギー依存性を基板表面のⅠ(74G (28Si)及びⅠ(64z n)/Ⅰ(69G 6-13に示す。Z a n/G A cである。 e)/Ⅰ a)の値で、それぞれ図6-12及び図 sの場合、7M e Vの注入効率は0.75M の約3.8倍である。 〓S詔〓二むqヾトご (S〓⊂⊃・q」ヱ (Sご⊂⊃.qLヱ ▲‡ 10 ELectron 図6-12 注入G energy(MeV) e原子濃度の電子エネルギー依存性 実線:計算値 ○印:実験結果、 叩¢ 次にはじき出し原子の濃度の電子線エネルギー依存性を計算し検討する。はじ き出し原子の濃度は欠陥生成率17(c m-1)と照射量¢(c m-2)の積Tl¢で与 えられ、叩は次式で与えられる14)。 叩 = dN/dx = (6-13) n(〕0γ -112- e V ここでnoは原子密度、ロとγはそれぞれ散乱断面積及び一次はじき出し原子によ ってはじき出される原子の平均数である。原子のはじき出しエネルギーには25 図6-12の実線はGeの夕⊥ゲットに対して、電子のエネルギ evを用いた0 ーの関数として計算したはじき出し原子の濃度である。注入された不純物濃度の 電子エネルギー依存性は計算によるはじき出し原子の濃度のそれによく一致して いる0 また図6-13の実線はZ nのターゲットに対して計算したはじき出し Zn原子の濃度の電子線エネルギー依存性である。この場合も実験値は計算曲繚 と一致した傾向を示している。これらの結果は、電子線照射によって生成される はじき出し原子が電子ビームドーピングに寄与していることを示唆している。 ①F (ぷ邑〓(UN誌)- (Sl盲⊃.q」ヱ (Sl盲⊃.qJヱ 10 Electron 図6-13 注入Z ○印: energy(MeV) n原子濃度の電子エネルギー依存性 実験結果、 ー113- 美禄:計算値 6.6.3 はじき出し原子のエネルギースペクトル 電子ビームドーピングに一次はじき出し原子のエネルギーが寄与することが考 K えられ、P K Aのエネルギースペクトルを計算して考察する。P Aのエネルギ ースペクトルの計算は、6.4で記したと同様の方法で、エネルギーが0.75 及び7M e Vで、ビームの直径が201Lmの電子ビームを面積が4×4cm2で、 厚さがそれぞれ0.2及び2.O c mの試料に照射した場合について行った。図6 -14にその結果を示す。 (lゝむl15)dZ S∈01dPむじ呈s石-OJむq∈⊃u宣=言∝ 図6-14 80 Average 100 transfer energy 110 Ep(eV) 一次はじき出し原子のエネルギースペクトル (a)0.7 図6-14は0.75M 90 e 5M e Vの場合(a)、0.005c -114- V、 (b)7M e V mの深さにおいて約1 7eVのエネルギーのはじき出し原子が生成されること、7MeVの場合(b)、 不純物シートの厚さが1mm付近において約110eVの平均エネルギーを有す る一次はじき出し原子が生ずることを示している。。薄膜形成法として有用性が 認められているイオンプレーティングの場合、100e V付近のエネルギーの原 子が最も多く寄与しているとされている。したがって0.75や7Me V電子線の 場合にも、このようなエネルギースペクトルの不純物原子が物質中を移動して、 電子ビームドーピングに寄与していることが考えられる。 6.7 結 昌 モンテカルロシミュレーションによりSi中の透過電子のエネルギースペクト ルを計算した。その結果から欠陥分布及び一次はじき出し原子のエネルギースペ クトルを計算し、非電離性エネルギー損失と損傷係数との関係、さらにはじき出 し原子の数及びエネルギースペクトルを考慮して、電子ビームドーピングにおけ るはじき出し原子の挙動について考察した。その結果についてまとめる。 1)モンテカルロシミュレーションによって、Si中の透過電子のエネルギース ペクトルを、試料の形状、寸法及び電子ビームのエネルギーや形状に対し、入射 エネルギー0.75∼9M e Vの範囲で計算した。 2)透過電子のエネルギースペクトルにCahnの理論による欠陥生成率をかけて深 さ方向の欠陥分布を計算し、実験結果と比較した。欠陥分布は電子ビームのエネ ルギー、形状、及び試料の形状、寸法を考慮することによって実験曲線と大略一 致する。 3)透過電子のエネルギースペクトルから、一次はじき出し原子のエネルギース ペクトルを、一次はじき出し原子の平均エネルギーの関数として計算した。電子 の飛程Rで規格化した深さz/Rが0.1付近のピークエネルギーは、2、4、 7及び9M e Vに対して、それぞれ約53、82、108及び120e Vであっ た。 4)このエネルギースペクトルから計算した非電離性エネルギー損失NIE S(e V-C m2/g)とSiの損傷係数の間に比例関係があることが認められた。 ー115- L 5)電子ビームドーピングにおいてG 0.75M e e/Si及びZ n/G a A Vの場合の電子ビームドーピングの注入効率は7M s試料に対し、 e Vの場合の約 1/4であった。注入不純物濃度の電子エネルギー依存性ははじき出し原子のエ ネルギー依存性の計算結果とほぼ一致し、電子ビームドーピングにはじき出し原 子が寄与していることを示唆した。一次はじき出し原子のエネルギースペクトル から、10∼100e Vのエネルギーをもってはじき出し原子がE ていることが考えられる。 ー116- B Dに寄与し 第6章の参考文献 1)D・Ⅴ・Hebberd P.R.Wilson:AustralianJ.Phys.8,90(1955). and 2)T・Sidei.T・Higashimura K.Einoshita:Memo.Fac.Eng.Kyoto. and Univ.19,220(1957). 3)J・E・Leiss,SIPenner 4) E.Hayward 5) M.J.Berger:'An in andJ.Hubbell:Phys.Rev.93,955(1954). 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V(深さ0.005cm)及び約110e m)の平均エネルギーの原子がはじき出され、そのE B Dへの寄与が示唆さ れた。 Si及びSiCにMe V領域の電子線を照射して、比抵抗及び光吸収を測定し、 複合欠陥の生成率、欠陥分布、吸収係数の変化及びアニール特性などを得た。ま たモンテカルロ法によって欠陥分布、はじき出し原子のエネルギースペクトル等 を計算した。このように主として欠陥の生成率及び分布などの点から半導体の電 子線照射効果を明らかにし、さらに電子ビームドーピングに対しはじき出し原子 の挙動について考察した。 電子線照射の特徴である単純な欠陥は、照射効果が比較的容易に消滅すること をも意味する。これに対して電子ビームドーピングでは注入及び拡散によって効 果が安定に存在し、利用の面からはこのような照射効果が期待されていたもので ある。電子線照射効果の研究は、今後もその特徴を生かして新たな発見や利用を 求めて進められると思われ、その一層の発展が期待される。 ー122- 謝 辞 本研究を行うにあたって終始御懇切な御指導と御鞭燵を賜りました工学博士 和田隆夫名古屋工業大学教授に深く感謝の意を表します。 本研究の遂行ならびに論文作成に際し、数々の有益な御教示および御激励を 頂きました工学博士佐治学名古屋工業大学教授、工学博士中嶋堅志郎名古屋工業 大学教授に深く感謝します。 さらに本研究を行うにあたり、何かと御便宜、御教示を頂きました工学博士宇 佐美晶助教授をはじめ名古屋工業大学電気情報工学科の各先生に深く感謝します。 線型電子加速器及びその実験について御教示、御激励を頂きました工学博士金 持徹神戸大学教授、またSiCの照射について御教示、御討論を頂きました工学 博士吉田明豊橋技術科学大学教授に深く感謝致します。 コンピュータ計算の御便宜及び親切な御指導を頂きました工学博士井戸敏之中 部大学教授、同じく中部大学学術情報センター技師補岡部仁氏に、また同様理論 計算にご討論頂きました名古屋工業技術研究所主任研究官工学博士湊進氏に感謝 致します。またバンデグラーフ加速器による電子線照射をして頂きました日新ハ イポルテージ株式会社技師長鈴木光顕氏及び部長向井貞喜氏に.深く感謝致します。 本研究を進めるにあたって当初から御協力を頂き、終始ご援助、御激励いた だきました名古屋工業技術研究所主任研究官故武田道彦氏、同じく主任研究官増 田晴穂氏、.元職員生田史朗氏に心から感謝致します。また終始何かと御教示、御 激励頂きました名古屋工業技術研究所材料プロセス部長工学博士加藤誠氏に深く 感謝します。 また多くの御協力を頂きました名古屋工業大学大学院生橋居賢治氏(現ホン ダ技研工業株式会社)、大橋拓夫氏、正野緩一氏をはじめとする和田研究室の方 々に感謝致します。 最後に、終始何かと御指導、御便宜頂きました名古屋工業技術研究所の旧放射 線部の方々をはじめ皆様に厚く御礼申しあげます。 -123- 本研究に関する発表 X-ray 1.Title:,pulsed with electronlinear accelerator(Ⅰ) accelerator' electronlinear controlof .precise Toru radiography Yasuda,ShiroIkuta Eanaji,Kyoichiro Michihiko and Takeda Jpn.J.Appl.Phys.7,102(1968). 2.Title:'I)istribution of bombarded high the with Yasuda,Haruho Eyoichiro rate radiation-damage energy depthin with silicon electrons" Takeda Masuda,Michihiko and Takao Wada Jpn.J.Appl.Phys.16.387(1977). Siby defectsintroducedinto 3.Title:'complex irradiation:Production Takao rates n-Si' Takeda 48.2145(1977). for 4.Title:"Empiricalequations for fluence Kyoichiro Takao predicting resistivity silicon' electron-irradiated Masuda.ShiroIkuta Takeda,tlaruho Yasuda,Michihiko changes Wada phys.stat.sol.(a)57,Ell(1980). 5.Title:'changes of the band electronirradiation Kyoichiro Akira and Masuda J.Appl.Phys. and defectsin electr.on Yasuda.ShiroIkuta,Michihiko Wada,Kyoichiro Haruho of high-energy Yasuda,Michihiko gap and of SiC crystals by high annealing' Takeda,Hahuho Yoshida phys.stat.sol.(a)71,549(1982). -124- Masuda.and energy with 6.Title:'Defect distributionin high-energy siliconirradiated with electrons Masuda,Michihiko Wada,Haruho Yasuda.Takao Eyoichiro Takeda Ikuta Shiro and crystalline phys.stat.sol.(a)88,543(1985). 7・Title‥'Depth profile defectsin of Monte - electrons Yasuda Kyoichiro with simulation high energy -' Wada 18,133(1993). 81Title:'Displaced Siirradiated atomsin Kyoichiro Carlo Takao and Mater.Letters Siirradiated Yasuda high energy electrons, Wada Takao and by phys.stat/.SOl.(a)140.E67(1993). 9.Tit,1e:'Energy spectra irradiated ・- Ryoichiro of displaced high-energy atomsin electron Si Views on Yasuda Jpn.J.Appl.Phys. beam electron and Takao doping and Wada (under -125- review) darnage factor ● -
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