12/15/2006 Ver. 2.00 産業エネルギー政策論 日時: 教室: 第四回講義 工業国家としての離陸 -明治、大正期の産業育成策 ‡:このマークが付してある著作物は、第三者が有する著作物です ので、同著作物の再使用、同著作物の二次的著作物の創作等につ いては、著作権者より直接使用許諾を得る必要があります。 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 [email protected] 封建社会を形作る制度の撤廃 華族、士族、平民の三族籍に単純化 移転及び職業に対する制限の撤廃 • 株仲間による諸制限の撤廃(1868~1872) • 田畑勝手作の許可(1871) • 田畑永代売買禁止令の解除(1872) • 分地の制限撤廃(1875) © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 2 商業交通に対する制限の撤廃 • 道路及び橋梁の建設 • 関所の除去(1868) • 伝馬制度の廃止(1871) • 津留の廃止(1871) • 郵便制度の創設(1871) • 鉄道の開業(1872) © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 3 殖産興業に関する大久保利通の建議 「大凡国ノ強弱ハ人民ノ貧 富ニ由リ人民ノ貧富ハ物産 ノ多寡に係ル而シテ物産ノ 多寡ハ人民ノ工業ヲ勉励ス ルト否ザルトニ胚胎スト雖 モ其源頭ヲ尋ネルニ未ダ嘗 テ政府政官ノ誘導奨励ノ力 ニ依ラザルナシ・・・・」 岩倉使節団の帰国後、明治7年5、6月頃 ‡ 制限資料 写真:国立国会図書館 『近代日本人の肖像』 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 4 当初は国家が主導 •鉱山の官営化 •インフラの整備 – 徐々に払い下げ – 道路、橋梁 →現在でも国 •官営工場の設立 – 徐々に払い下げ – 鉄道 →国鉄→JR – 電信 →電電公社→NTT – 郵便 →郵政公社→日本郵政(株) © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 5 明治初期の主な官営鉱山の払い下げ 鉱山名 払下年 払下先 備考 高島鉱山 1874 後藤象二郎 1881三菱に譲渡 油戸鉱山 1884 白勢成熙 佐渡 中小阪鉱山 1884 坂本弥八 群馬 小坂鉱山 1884 久原庄三郎 藤田組(同和鉱業)、金山、銀山 院内鉱山 1885 古河市兵衛 三池鉱山 1888 佐々木八郎 幌内鉱山 1889 北海道炭砿鉄道 佐渡鉱山 1896 三菱 生野鉱山 1896 三菱 1889三井に譲渡 出所:有沢広巳監修 『日本産業百年史』から作成 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 6 明治初期の主な産業施設の払い下げ 施設名 払下年 払下先 備考 堺紡績所 1878 肥後孫右衛門 広島紡績所 1882 広島県 深川セメント 製造所 1884 浅野総一郎・ 西村勝三 浅野セメント 品川硝子製造所 1885 西村勝三 結局解散 兵庫造船所 1886 川崎正蔵 川崎重工業 愛知紡績所 1886 篠田道方 長崎造船所 1887 三菱 岸和田紡績堺工場 三菱重工業 出所:有沢広巳監修 『日本産業百年史』から作成 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 7 粗鋼及びセメントの生産量の推移 10,000 粗鋼 1,000 セメント 千トン 100 官営八幡製鉄所 操業開始 10 19 40 19 30 19 20 19 10 19 00 18 90 18 80 18 70 1 0 出所:日本エネルギー経済研究所 『エネルギー・経済統計要覧』 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 8 鉄鋼業の推進 • 列強諸国の脅威の中、日本では 軍艦や工場の建設のための鉄鋼 需要が増大 著作権処理の都合で、 この場所に挿入されていた 図を省略させて頂きます。 写真:http://www.net-ir.ne.jp/ir_magagine/ pioneer/vol066_5401.html © kenji kurata 2006 • そこで政府は、1897年(明治30 年)2月、福岡県の八幡村に、官 営製鉄所の建設を決定 • 1901年(明治34年)2月、日本最 初の大型160トン高炉に火入れを し、官営八幡製鐵所は操業を開 始 • これが現在の新日鉄八幡製鉄所 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 9 製造業生産額と実質GNPの推移 製造業生産額 20 40 実質GNP 0 0 1934 10 1924 5 1914 20 1904 10 1894 30 1884 15 実質GNP(兆円、1990年価格) 50 1874 製造業生産額(十億円、1934-1936価格) 25 出所:篠原三代平 「鉱工業」 『長期経済統計10』 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 10 輸出入収支の推移(~1945) 800 4 輸出 3 輸入 2 600 400 200 1 0 1943 1938 1933 1928 1923 1918 1913 1908 1903 1898 1893 1888 1883 1878 1873 -1 0 -200 収支(百万円) 収支 1868 輸出入額(10億円) 5 -2 -400 -3 -600 -4 -5 -800 出所:大蔵省 『財政金融統計月報』 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 11 輸出入収支の推移(~1913) 800 200 輸出 600 輸入 400 100 1913 1908 1903 1898 1893 1888 1883 -200 1878 0 50 1873 200 0 -50 -400 -100 -600 -150 -800 -200 収支(百万円) 収支 1868 輸出入額(百万円) 150 出所:大蔵省 『財政金融統計月報』 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 12 生糸の輸出(金額、数量) 金額(百万円) 800 金額 35 数量 30 600 25 20 400 15 数量(千t) 40 10 200 5 1943 1938 1933 1928 1923 1918 1913 1908 1903 1898 1893 1888 1883 1878 1873 0 1868 0 出所:大蔵省 『日本外国貿易年表』 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 13 金、銀、銅の産出量 400 40 350 35 銅 30 銀 250 25 金 200 20 150 15 100 10 50 5 0 0 1874 1884 1894 1904 1914 1924 1934 金(t) 銀(t)、銅(1000t) 300 1944 日本長期統計総覧6-3-b © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 14 金、銀、銅の産出額 250 銅 生産額(百万円) 200 銀 金 150 100 50 0 1874 1884 1894 1904 1914 1924 1934 1944 日本長期統計総覧6-3-b © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 15 1868 1870 1872 1874 1876 1878 1880 1882 1884 1886 1888 1890 1892 1894 1896 1898 1900 1902 1904 1906 1908 1910 1912 産出量、輸出量(1,000t) 70 60 産出量 © kenji kurata 2006 輸出量 比率 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 120 50 100 40 80 30 60 20 40 10 20 0 0 産出量に対する輸出量の比率(%) 銅の産出量に対する輸出量の比率 140 出所:大蔵省 『日本外国貿易年表』など 16 一般会計所管別歳出決算額 2,500 歳出決算額(百万円) 2,000 1,500 大蔵省 内務省(計) 文部省 農商務省(計) 逓信省(計) 陸軍省 海軍省 その他 1,000 500 16 19 19 19 22 19 25 19 28 19 31 19 34 19 13 19 10 19 07 19 04 19 01 19 98 18 95 18 92 18 89 18 18 86 0 出所:大蔵省 『財政統計』 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 17 一般会計所管別歳出決算額比率 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 大蔵省 逓信省(計) 内務省(計) 陸軍省 文部省 海軍省 農商務省(計) その他 19 28 19 31 19 34 25 19 22 19 19 19 16 19 13 19 10 19 7 19 0 04 19 01 19 98 18 95 18 92 18 89 18 18 86 0.0 出所:大蔵省 『財政統計』 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 18 日本における産業発展の概観-1 • 欧米に100年遅れての産業革命の開始 • 短期間に凝縮した日本版産業革命の達成 • その過程での産業発展の姿は欧米に類似 – 軽工業の勃興 – 産業として確立 – 重化学工業の勃興 • 軍事力の強化という国家的命題は、産業発展に 影響 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 19 日本における産業発展の概観-2 • 日本における産業革命の導入は新政府主導 • 一旦始まった産業革命は、やがて民間企業 家の縦横の活躍により進展 • 背景にあった、江戸時代に培われた基盤 • 「御一新」により、この基盤が開花 • 軽工業から重化学工業へと、産業発展の進 展に応じ、限られた企業家が主導 © kenji kurata 2006 北海道大学公共政策大学院 倉田 健児 20
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