企業の潜在的回復力とは 不祥事に端を発して、勝ち組から負け組へと雪崩を打ったように業績が落ち、 その不祥事を境として復活できる企業とそうではない企業に分かれることを、 事例から学ぶことができる。一時業績が落ち込んでも、起きてしまった事件・ 事故に対して、経営トップが率先し、かつ誠意をもって、その解決にも情報公 開にも積極的であれば、その傷は浅く済み、業績を回復させている企業も多い。 しかし、一方で、長時間労働問題、虚偽報告、異物混入などによって、会 社の存続が危うくなるケースもある。起こっている問題を知った者が「それは 正しくない」 「やってはいけない」という声をあげ、その声がトップにしっかり と届き、中止、改善ができれば、世間を騒がす事件にはならない。しかし「事件」 に至ってしまう企業には、その声が届いても、変えることも変わることもでき ないという根が組織にあったのではないだろうか。 たとえ故意ではなく事故であったとしても、事件に発展させてしまう「根」 とは、何か。それは、経営者から現場に至るまで、その会社に働く者の姿勢の 正しさの違いではないだろうか。正しい姿勢をつくるため、文書としての企業 理念や行動指針が整っていたとしても、その文書を読む者が、 「私たちの企業 活動は、誰のためのもので、何をしなければならないか」を、常に考える心掛 けと行動がなければ、 正しい姿勢を保つことはできない。言い換えるならば、 「お 天道さまが見ている」 「嘘は泥棒のはじまり」というしつけを幼少期から日常の なかで受け、それを忘れずにいることが各個人の根にあれば、正しい姿勢の基 礎はつくれるはずだ。 正しい姿勢をもって、理念や行動指針を実行すれば、たとえ不祥事が起き ても、事件に発展せず、事故としても軽微な段階で対処できるだろう。 正しいマネジメントは、倫理観という基礎の上につくることができ、潜在的 回復力は、数字には表れず、見えない部分に内包されている。 6 JMA マネジメント 2016.3 ブンヒン (編集室 文斌)
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