平成19年度 産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業の評価結果一覧【事後評価】(14課題) 課題番号 H17-1 H17-2 H17-3 H17-4 H17-5 課題名 研究機関(代表) 野菜・果実ジュース の新規凍結濃縮技術 カゴメ(株) の開発 最新画像処理術を応 用した高性能穀物選 (株)サタケ 別機の開発 免疫調節機能等の生 理活性を有する酵素 江崎グリコ(株) 合成グリコーゲンの 開発 発色乳酸菌によるリ サイクル飼料肥育高 (株)湘南ぴゅあ 機能豚肉の新規加工 技術 肝機能向上及び筋 肉・骨増強効果を有 亀田製菓(株) する米タンパク質食 品の開発 評価点 (12点満点) 評価結果 計画は順調に進行し、高品質な濃縮ジュース製 造のための新規凍結濃縮技術を開発した。しかし ながら、開発した技術の活用のためには、本技術 により製造した濃縮ジュースについて従来の製造 法との優位性を明確した上で、具体的な用途開発 や、低コスト化、殺菌方法について検討する必要 がある。また、氷Brixの回収法に関しては、氷 Brixを他の工程の原料として利用するといった工 夫も必要と考えられる。 9 B (目標は ほぼ達成 した) 計画概ね順調に進行した。胴割選別機は開発さ れており、胴割粒と着色・異物等を選別できるマ ルチ選別機の開発も、要素技術ができていること から、事業化がみえている。また、特許出願を3 件しているところも評価できる。一方、システム が複雑なことや、価格面でまだ検討の余地がある と考えられ、今後の改善が望まれる。 9 B (目標は ほぼ達成 した) 10 A (目標は 達成し た) リサイクル飼料を用いて、DHAを含有する豚肉を 低コストで生産する技術とともに、発色乳酸菌を 用いて、付加価値をつけたハムが開発された。し かしながら、添加する新菌種の性状が十分明らか になっておらず、赤色化機構も不明である。ま た、リサイクル飼料の成分の振れを示すデータも 示す必要がある。今後、飼料の材料調達システム の構築とともに、開発した食肉製品を差別化し、 消費者へのPRをどのように進めるか検討する必要 がある。 8 B (目標は ほぼ達成 した) 計画は概ね順調に進行し、米タンパク質の製法 とその肝機能等に関する機能性が明らかになり、 新たな食品素材として期待がもたれる。一方、米 タンパク質の原材料を脱脂米糠でなく精白米とし た点や、試作はされたものの、現時点でどのよう な製品とするかが未定である点が、今後の課題と して残されている。また、商品化のためには、大 豆タンパク質等と差別化を図ることや、コスト面 での検討が必要である。 8 B (目標は ほぼ達成 した) 研究期間 研究概要 所 見 3年間 (H17~ H19) 野菜・果実ジュースの濃縮品製造プロセスにおいて、高品 質かつ低コストで凍結濃縮を行う新規濃縮技術を開発する。 従来実用化されている凍結濃縮技術は、連続生産を前提とす る大量生産型システムであり、また装置コストも高く広く実 用化されていないのが現状である。したがって、本技術開発 に当っては、少量多品種に容易に対応することができ、かつ 装置コストの安価な新規凍結濃縮技術を開発する。 3年間 (H17~ H19) 既に商品化され活用されている穀物の異物選別機は、明る さ、色の違いにより異物を認識し除去している。しかし、穀 物の品質と歩留まりに影響を与える形状的な異物は認識する 事が出来ず、選別も出来なかった。本提案は、穀物を高速か つ安定させた姿勢で搬送させ一粒毎に画像で捉え、高速かつ 高度な画像処理と識別処理を施し、従来では不可能であった 形状的な異物を認識し除去できる穀物の品質向上を行う装置 を開発する。 3年間 (H17~ H19) 計画は順調に進行し、グリコーゲンの酵素合成 による大量生産方法が確立された他、様々な機能 性が明らかにされている。また、特許2件、学会 グリコーゲンの酵素合成方法および構造制御方法を確立 発表16件等と成果が多いことも評価できる。今 し、さらに工業的製造方法を確立する。得られたグリコーゲ 後、グリコーゲンの構造と機能性の関係や効果の ンの生理活性とその作用発現メカニズムを明らかにし、その メカニズムについて、さらに解明されることが望 効果に科学的裏付けのある健康食品素材を開発する。 まれる。機能性食品素材としての可能性は大きく 期待されるところであり、今後、安全性の評価に 引き続き取り組むことと、商品化にむけた検討が 望まれる。 3年間 (H17~ H19) ミオグロビン発色乳酸菌の亜硝酸Na代替法(特許申請中) を活用し、無塩漬食肉製品の脂質酸化防止方法を開発し、こ れをリサイクル発酵飼料によりDHA等機能性成分を持つ低コ スト豚肉生産改良技術に応用する新しい食肉加工技術を開発 する。消費者の安全・安心ニーズを満たし健康寄与等高付加 価値で循環型農畜産業推進効果の高い食品を提供する。 3年間 (H17~ H19) 未開発素材である米タンパク質に焦点をあて、新機能性研 究の促進及びその機能を活用した食品の開発を行う。脱脂糠 等の未利用資源を有効利用する製法を確立し、米タンパク質 摂取による肝臓タンパク質代謝促進作用及び難消化特性等に よる時間差栄養効果を解明し、長寿健康社会実現にむけた生 活習慣病予防のための栄養補給食品や高齢者用食品を開発す る。 平成19年度 産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業の評価結果一覧【事後評価】(14課題) 課題番号 H17-6 H17-7 H17-8 H17-9 H17-10 課題名 研究機関(代表) 苦味糖質ゲンチオオ リゴ糖の大量生産法 日本食品化工(株) の構築及びその利用 STING法による無廃 棄物型バイオディー (株)大正理化 ゼル燃料製造装置開 発 しょうゆ由来の機能 性成分を活用した健 ヒガシマル醤油(株) 康機能食品の開発 金属スパッタ生地と 空調服をベースとし スパッタ(株) た快適農業作業ウェ アの開発 遠心力を利用した農 (株)パイコーポ 産物ペーストの連続 レーション 加工機械の研究開発 評価点 (12点満点) 評価結果 計画通り順調に成果を出しており、高純度ゲン チオオリゴ糖の大量生産方法を確立している。ゲ ンチオオリゴ糖は特異的な苦味であり、新しい利 用方法が期待される。しかしながら、製品化に向 けた取組みはされているものの、具体的な用途開 発は遅れがみられており、利用法の構築を進める 必要がある。また、利用法の一つとして、キノコ 以外の生育促進効果についても検討が望まれる。 9 B (目標は ほぼ達成 した) 3年間 (H17~ H19) 廃植物油より変換される軽油代替燃料の製造工程において グリセリンを副生しない新たな製造法(STING法)を基に、 大都市近郊において大量に排出される廃食油を処理、燃料化 し、自治体および農業分野で利用されているディーゼル機関 等に利用することで、大気中の二酸化炭素増加を抑制すると 共に、大気汚染物質である NOx、PM等の排出物を低減化する ために製造装置を開発する。 STING法による実用的なBDF製造装置が試作され ている。本課題ではBDF製造のコスト低減を図るこ とが重要であり、ゴミ焼却場の排熱を反応管加熱 に利用するなど、コスト低減に向けた工夫として 評価できる部分はある。一方、原料回収を含めた 全体としてのコスト収支が明確にされておらず、 また、原料をどのように確保していくかは依然と して問題である。単に装置を開発するだけでな く、実際に使用される場面を想定し、全体でのコ ストや、環境への貢献を示す必要がある。 7 B (目標は ほぼ達成 した) 3年間 (H17~ H19) 醤油に含まれるSPS(しょうゆ多糖類)に抗アレルギー活 性を見いだし、スギ花粉症、及び通年性アレルギーを対象と した臨床試験でその抗アレルギー効果を実証した。さらに、 SPSの機能性として免疫増強効果や鉄分吸収促進作用も見い だしている。今後、SPSの大量生産技術が確立できれば、安 価で安全な食品機能性素材を提供できる。また、新たな切り 口で醤油の魅力(機能性)を明らかにし、成熟した醤油市場 を活性化することができる。 予定通り、順調に成果を出している。SPSの鉄吸 収促進効果を確認し、その特長を活かした機能性 しょうゆを商品化した他、更に新たな機能性が明 らかになっており、今後の事業化が期待される。 特許3件、学会発表6件等の成果が多いのも評価 できる。一方、SPSの機能性については様々な効果 が示されたが、最少有効量を出し、商品含有量と の関連を示す必要がある。 10 A (目標は 達成し た) 3年間 (H17~ H19) 農業従事者の高齢化、女性化が進む中、高温期の園芸施設 内作業や炎天下の農作業は過酷であり、作業者に大きな身体 負担を与えている。このような作業環境を改善するため、金 属をスパッタリング法で不織布や布地に密着させ、紫外線や 赤外線をカットし、熱射病や皮膚ガンの防止を行うと共に作 業着に装着した小型ファンによって、衣服内に空気を吹き込 み、汗の気化熱で体を冷却する「空調服」とを組み合わせた 農作業ウエアを開発する。 研究は概ね順調に進行し、目標とした農業用空 調服が開発され、試験販売も行われている。試験 販売でのアンケート結果は好評であり、市販化が 期待される。しかしながら、価格面ではまだ検討 の余地がある他、農薬散布等、作業に向かない場 面もあると考えられ、どのような農作業に好適か を示す必要がある。 8 B (目標は ほぼ達成 した) 3年間 (H17~ H19) 当社では現在新たに開発した遊星式のメカニズムを用いて 発生させる変動する遠心力を利用して、農産物のピュレ、 ペースト化をおこなっている。本研究ではこれを連続化し て、その高速な食品調製能力によって食材の酸化と組織破壊 を抑えながら、より衛生的で高品質な商品性の高い食品を効 率的に生産できる装置を研究開発する。 計画は概ね予定通り進行し、農産物ペースト連 続加工装置が製作に目途がたっている。対象農産 物を予定よりも多くのものに応用できた他、洗浄 工程を簡単なものにできていることは評価でき る。この装置による製品ペーストの商品化が期待 されるが、品質の優位性等、商品についてさらに 研究が必要である。また、前処理工程や、原材料 からのライン化等についても課題が残っている。 8 B (目標は ほぼ達成 した) 研究期間 研究概要 3年間 (H17~ H19) 酵素による合成、クロマト分画技術及び酵素のスクリーニ ング等を駆使して高純度ゲンチオオリゴ糖の大量生産法を構 築し、新たな味質改善用糖質として開発するとともに市場開 拓を実施する。具体的には、高重合度ゲンチオオリゴ糖を調 製し、重合度ごとの苦味強度や味質改善剤としての可能性を 検証する。また、動物免疫系等の生理機能試験やエリシター 活性を検討し、健康食品や植物活性化剤への市場開拓も進め る。 所 見 平成19年度 産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業の評価結果一覧【事後評価】(14課題) 課題番号 H18-1 H18-2 H18-3 H18-9 課題名 研究機関(代表) 二枚貝の殻体運動測 定装置による水域環 芙蓉海洋開発(株) 境監視システムの構 築 脱着装置付運搬車の イワフジ工業(株) 開発 まき網漁業向け活魚 用簡易大型中継生簀 ニチモウ(株) の開発 KNB-422菌の微生物 農薬としての利用に (株)クレハ 関する研究 評価点 (12点満点) 評価結果 二枚貝センサーによる水域環境監視システム構 築のための基本的部分は解明されている。今後 は、実証試験を進めるとともに、殻体運動波形と 環境変化との関係をさらに明らかにする必要があ る。また、貝センサーに加え、水温・酸素量等組 合せたシステムとすることで、より需要が高まる と考えられる。赤潮発生時やその他の環境変化・ 悪化が見られた場合の具体的対策が未だであり、 実際の現場に適用できるシステムにするために は、漁業者との検討をすすめてもらいたい。 7 B (目標は ほぼ達成 した) 2年間 (H18~ H19) 通常の木材運搬車では、グラップル等による丸太の積込 み、荷降し作業の待ち時間が発生するが、脱着装置により荷 台に脱着を行うことで時間短縮を図り運材回数を増す。運搬 車に脱着装置を架装して、材の積み込まれたコンテナを脱着 装置のリフト装置を使用して短時間に運搬車に積込む。同様 にリフト装置で短時間に荷降しを行い、サイクルタイムを短 縮し、運材コスト低減を図る。 研究目標はほぼ達成され、作業性の向上が図ら れる脱着装置付運搬車が開発されている。今後、 現地での実証試験を進め、労働生産性や伐出コス トについても示すべきである。伐出システム全体 の中でコンテナ搬送の有り様を再検討し、幾つか の点を改良する必要はあるが、当機械の開発は、 林業における新しい集材搬出システムの展開を可 能にしたと評価できる。 9 B (目標は ほぼ達成 した) 2年間 (H18~ H19) まき網漁業で漁獲した魚を活魚として利用する場合、漁場 から港湾への輸送は活魚運行船や曳航生簀を用いてきが、問 題点として、活魚運搬船方式では魚の収容量が限られてしま うこと、曳航生簀では漁場間の移動に時間を要することが挙 げられる。これらの問題を解決するため、漁場までは大型生 簀を運搬船等に搭載、迅速に搬送し、洋上で簡便に組立て・ 解体ができ、洋上での生簀の容積保持が可能な簡易大型中継 生簀の開発を行う。 計画は順調に進行し、洋上での実証試験を行 い、簡易大型中継生簀を開発できた。特に、生簀 枠体を昨年度から改良し、空気注入式棒状浮体と することにより、運搬、組立を著しく簡便にした 点は評価できる。一方、本生簀を用いる場合と、 既存の手法での運搬との比較データはきちんと示 す必要がある。今後は、開発した生簀をもとに、 日本各地での操業の実状に合わせて生簀の提案を し、生簀が普及することを期待する。 9 B (目標は ほぼ達成 した) 2年間 (H18~ H19) 環境に対する負荷の軽減、減化学農薬による高付加価値作 物の栽培及び化学農薬に感受性の低下した病害の出現を背景 として、化学農薬使用低減の動きが活発になっている。この ような中、イネばか苗病を始めとした病害に関する防除効果 を示す糸状菌(KNB-422菌)を新たに見出したことから、こ れを微生物農薬として利用したイネ育苗時の病害防除方法を 開発する。本技術は環境保全型病害防除に有用であるばかり でなく、イネ育苗用培土に予め混和した状態で提供すること で、種子処理を省略でき、農業現場における省力化にも寄与 すると期待される。 計画は概ね順調に進行し、イネばか苗病等の種 子伝染性病害に対し効果的な微生物農薬の研究が 進められた。KNB-422菌の作用スペクトラムが広い ことから微生物農薬として有望であり、生物農薬 の登録に必要なデータもほぼ取得されていること から、今後の製品化が期待される。なお、土壌伝 染性病害に対する機作を明らかにすることや、普 及に向けてコスト面における優位性を示すこと が、今後必要である。 9 B (目標は ほぼ達成 した) 研究期間 研究概要 2年間 (H18~ H19) 閉鎖性内湾域は静穏な環境であるため、多層的な利用が行 われている一方、赤潮・貧酸素等環境問題が頻発している。 持続的な水産資源の利用、生産性の向上を目指すためには、 これらへの対策が急務となっている。生物(二枚貝)の生活 応答を直接、計測することが可能な二枚貝殻体運動測定装置 (通称貝リンガル)の開発が進んだことから、これらを活用 し、海域環境を監視できるシステムの構築を研究・開発す る。 注:事後評価結果の区分は以下のとおり。 評価点 10点以上12点以下:「A」目標は達成した 7点以上9点以下:「B」目標はほぼ達成した 4点以上6点以下:「C」目標の一部は達成した 0点以上3点以下:「D」目標の達成は不十分であった 所 見 平成19年度 産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業 ○評価専門委員会研究課題評価分科会委員名 石谷 孝佑 (日本食品包装研究協会会長) 井上 源基 ((財)林業科学技術振興所主任研究員) 小野里 坦 (信州大学名誉教授) 亀岡 孝治 (三重大学大学院生物資源学研究科教授) 北村 勲平 (元 喜多山 神代 繁 隆 佐々木 麒麟麦酒(株)専務取締役(技術開発担当)) (喜多山技術士事務所主宰(東京農工大学名誉教授)) ((独)国際農林水産業研究センター生物資源部長) 堯 (東京農業大学客員教授) 竹内 正一 (東京海洋大学名誉教授) 冨田 房雄 (放送大学北海道学習センター所長) 糠谷 明 (静岡大学農学部教授) 根岸 寛光 (東京農業大学農学部准教授) 平岩 進 (元 福桜 盛一 (イズテック(株)技術顧問(島根大学名誉教授)) 源 宣之 農林漁業金融公庫技術参与) (岐阜大学名誉教授) 注:この委員名簿は、平成19年度期中評価及び事後評価を実施した時点のものである。
© Copyright 2024 ExpyDoc