第 9回 医療行政 基礎知識 の 今後の最重要課題の地域包括ケアシステム 次期改定で医科・歯科・調剤の連携を評価 今 最重要課題のひとつに位置づけられた「地域包括 ニーズに合わせた体制を構築していく必要があります。 ケアシステム」について見ていきましょう。 報酬改定では地域包括ケアシステムの構築に向けた報 2014年6月から順次施行されている医療介護総合確 酬項目の創設や拡充が図られる見込みです。現在、 「院 保促進法の第2条では、地域包括ケアシステムを「地 外から歯科医師が訪問して院内スタッフと協働して栄 域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れ 養サポートを行った場合の評価」 「 、訪問看護(医療保険) た地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営 の充実」 、 「退院調整の強化」 、 「かかりつけ薬剤師・薬局 むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい と医療機関の連携の評価」などが議論されていますが、 及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体 これ以外にも「在宅療養支援診療所・病院の機能強化」 制」と定義しています。高齢化が急速に進む我が国に や「地域包括診療料・加算、地域包括ケア病棟入院料 おいては、このシステムの構築がきわめて重要です。 の見直し」など、地域包括ケアシステムの構築に向け 「地域の実情に応じて」とされているので、いわゆる た項目は枚挙にいとまがありません。2016年度診療報 標準的な体制を国は示しません。在宅医療を提供する 酬改定、さらに2018年度診療報酬・介護報酬同時改定 診療所が中心となる地域もあるでしょうし、医師会の では、急性期や回復期、慢性期、在宅医療といった「パ 設立した訪問看護ステーションが要となるケースもあ ーツ」だけでなく、介護や生活支援を含めた一連のサ るでしょう。地域のサービス資源をベースに、地域の ービスの全体像の把握が求められるでしょう。 回は、2016年度の次期診療報酬改定において、 もっとも体制構築にはコストもかかるため、次期診療 地域包括ケア にお ける医 療 マネジメント 第 1 回 株式会社日本経営 大日方 光明 退院調整と包括ケアのマネジメント 各 2025年まで10年を切り、「地域包括ケアシステ のマネジメント」のうち「退院調整」をとり上げます。 ム」の構築に向け、早急な対応が迫られています。こ スを受けながら、自宅あるいはそれに準ずる場所で生 れまで以上に地域の医療機関の診療機能分化と連携が 活」できるよう、社会資源を活用したサポート体制を 求められ、介護や生活支援サービスなど、さまざまな つくるものです。地域連携室や病棟の退院調整看護師 社会資源との接続が必要となってきました。 が担当するケースなどが見られ、近年整備が進んでき 診療報酬上では、政策目標の進捗状況に応じて、点 てはいますが、運用状況には差があります。 数の増減や、新たな基準創出により医療機関の軌道修 一方、厚生労働省の統計調査では、入院後1週間以 正をする流れも見えます。一連の制度変化への対応も 内のスクリーニング実施と退院調整の介入は、 「退院日 必要ですが、それ以上に変化に本質的に対応しうる「院 の分散を小さくする」 、 「患者及び家族の不安軽減」 、 「退 内外の体制を構築すること」が重要です。そこで本連 院後の多様なサービス導入」などにも効果があるとさ 載では、地域包括ケアシステムにおいて求められる医 れ、医療の質向上だけではなく、マネジメント上でも 療機関のマネジメントについて、上記の視点にもとづ 重要な効果が認められています。 き具体的事例に触れながら確認していきます。今回か 次回は、退院調整を活用した病院マネジメントの具 らのシリーズは、地域包括ケアの起点となる「病院で 体的事例を見ていきましょう。 種の高齢社会施策のターゲット・イヤーである 6 退院調整とは、 「医療・介護・生活支援などのサービ
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