弘前市民会館の照明 - NIKKEI MESSE

照明デザイン
青森県
弘前市民会館の照明
No.86
図1 外観
Fig.1 Appearance.
図2 ホワイエ
Fig.2 Foyer.
J. Illum. Engng. Inst. Jpn. Vol. 99 No. 12 2015
627
施設の概要
本館は優れた舞台芸術・音楽が鑑賞でき,市民自らが参
加する文化活動や講演・会議などを行える施設として戦後
モダニズム建築の祖,前川國男氏の設計により1964年に
弘前公園内に完成した(図1)
.長年市民に親しまれてき
たが老朽化が進み,50年目の2014年に1年にわたる大規
模改修が行われ竣工した.開館当時の鮮やかな色彩や陰影
が最新の LED による照明計画で蘇り,前川建築としての
文化的価値に新たな命が吹き込まれた(図2,図3,図5).
照明デザインの概要
改修工事のコンセプトは,建築家・前川國男氏の意匠を
維持しながらも新たな命を吹き込み,時代の変化・要請に
対応させることであった.50年を経る市民会館はおおむね
図3 大ホール
Fig.3 Large holl.
建築当時の状態を保ちつつ管理されてきた.今回の大規模
改修では「耐震性」「利用者ニーズ」
「室内環境と省エネル
ギー化の改善」そして「弘前における前川建築」を念頭に,
建築,設備などの改修が行われた.
照明は LED 化により快適性と省エネルギーを目指す一
方,開館当時の陰影のある佇まいを再現(復元)させなが
ら快適な光環境を実現している(図1,図2,図5).
■輝度設計
事前に入念な照明環境調査を行い設計に反映させてい
る.特に明るさ感の不足していたホール棟のホワイエなど
は,壁面や天井に照明を追加し明るさ感を高めた(図2).
また,大ホールも明るさ感の向上を狙い,ダウンライトと
壁面の関係を詳細にスタディーしている(図3,図4).
■意匠復元
建築的には天井や壁の色彩の復元,館内ホワイエなどの
スツールの復元・再生が行われた.照明は前川氏が“竹筒
Feu:パナソニック㈱が提唱する空間の明るさ感を評価するための新たな指標.
図4 明るさ感の検証
Fig.4 Inspection of a feeling of brightness.
を集めたような ・・・”と制作した銅メッキの飾りパイプを
集めたシャンデリアや,ブラケットやダウンライトのクリ
スタルガラスなど,竣工当時からの素材で再利用できるも
のは積極的に活用し前川氏の設計思想を継承し復元してい
る(図2,図5)
.
所 在 地 青森県弘前市
竣工年月 2014年1月
施 主 弘前市
設 計 ㈱前川建築設計事務所
資料提供 濱 興治(㈱前川建築設計事務所)
小林 和夫(パナソニック㈱)
図1,図5:Ⓒ八木橋 廣(広告写真スタジオ)
図2~図4:Ⓒパナソニック㈱
628
図5 管理棟のエントランス
Fig.5 Entrance of administrative building.
照明学会誌 第99巻 第12号 平成27年