スピンデバイスのための強磁性体/半導体ハイブリッド構造の作製

京都・先端ナノテク総合支援ネットワーク
奈良先端科学技術大学院大学
Kyoto-Advanced Nanotechnology Network
【資料A-2】
平成22年度
トピックス
超微細加工領域における支援成果
スピンデバイスのための強磁性体/半導体ハイブリッド構造の作製
北海道大学大学院 情報科学研究科
植村 哲也
【研究目的】
半導体スピンデバイスを実現するためには、半導体へのスピン注入技術を確立することが必須であ
半導体スピンデバイスを実現するためには、半導体
のスピン注入技術を確立することが必須であ
る。一つのアプローチとして、強磁性電極を用いて半導体にスピン偏極電子を注入する手法が考えら
れるが、強磁性体と半導体との”conductivity mismatch”の問題を解決する必要がある。本研究では、
強磁性体/半導体ハイブリッド構造を用いたスピン注入について検討するために、ハイブリッド接合
を有する発光ダイオード(LED)を作製し、そのEL(electroluminescence)における円偏光度測定を
通してスピン注入効率の評価を行った。スピン注入用電極として、Fe/n-AlGaAsショットキー接合、お
よびCoFe/MgO/n-AlGaAs接合を用いた。
【成
果】
LED構造は、単層のGaAs/AlGaAs量子井戸(QW)を発光層として挿入したものであり、p-GaAs
(001)基板上に作製した。Fig.1に、Fe/n-AlGaAs LEDについての円偏光度測定の結果を、Fig.2に、
CoFe/MgO/n-AlGaAs LEDについての評価結果をそれぞれ示す。Fig.1では測定は40 Kにて行い、
円偏光度は直流のバイアス電流を0.37 mA流した時のELスペクトルのピーク強度から算出した。円
偏光度が印加磁場約2 Tで飽和する傾向が観測され、最大で約0.1の円偏光度が得られた。GaAs上
に ピタキシ ル成長したF 薄膜では 表面垂直方向の磁化(これは磁化困難軸である)が2 T付近
にエピタキシャル成長したFe薄膜では、表面垂直方向の磁化(これは磁化困難軸である)が2
で飽和することが知られているため、観測された円偏光度の飽和は、Fe層の磁化飽和を反映したも
のであると考えられる。これは、観測された円偏光ELがFe層からのスピン偏極電子注入によるもの
であることを示している。Fig.2では4Kで測定を行った。ここでは、Fe/n-AlGaAs LEDの場合よりも若
干大きな印加磁場(約3 T)において円偏光度の飽和が観測された。
Fig 1
Fig.
1. Circular polarization degree for Fe/n-AlGaAs LED plotted as
function of applied magnetic field.
Fig. 2. Circular polarization degree for CoFe/Mgo/n-AlGaAs LED plotted
as function of applied magnetic field.