医学セミナー

医学セミナー
Date & Time: 2016/2/19 17:00~18:00
Location: 健康医科学イノベーション1階105室
谷田部 恭先生
(愛知県がんセンター 遺伝子病理診断部 部長)
一般に病理学とは、疾患の理(ことわり)を知る学問であり、広義には種々の分野
の疾患メカニズムを探る試みがすべて含まれる。これに対して、病理組織学的な診
断を行う、疾患の「診断」に特化した分野も狭義の意味として用いられる。しかしなが
ら、疾患の診断を行う場合には、そのメカニズムを理解し、それにふさわしく分類、診
断する必要があり、両者は深い関係にある。現在は腫瘍の発生メカニズムや進展過
程を解析する方法として分子生物学的方法でがん関連遺伝子の研究が主体である
が、それ以外の方法によっても疾患のメカニズムを知ることは可能である。今回は、
分子生物学的に得られたデータをもとに、腫瘍進展のメカニズムについていろいろな
方向からアプローチした試みを紹介したい。その主たる2つの試みは以下のとおりで
ある。時間があれば他のがん化進展メカニズムについても言及したい。
1:染色体不安定性のメカニズム: 多くの腫瘍には染色体不安定性が検出され、
aneuploidyの状態であることが多い。このような状態は染色体不分離の結果と考えら
れ、それに関連する遺伝子異常が存在することが示されている。しかしながら、染色
体不分離がすべての細胞に均一に生じたとすると、染色体数は細胞分裂を繰り返す
とともに染色体数は大きく隔たっていく。しかしながら腫瘍は単一の結節として存在
する事実から、何らかの制御メカニズムが存在すると考えられる。そのメカニズムに
ついて考えてみた。
2:マイクロサテライト不安定性を用いた腫瘍史の推測: 染色体不安定性はほとんど
の癌腫で観察されるが、大腸癌にはミスマッチ修復遺伝子異常をきたす腫瘍化メカ
ニズムが知られており、繰り返し配列をもつ核酸の修復がうまくいかず、それが発が
んに寄与すると考えられている。そこで、その修復異常をもとに腫瘍の発生からの歴
史を考えてみたい。
Contact: Prof. Masayuki Noguchi, Diagnostic pathology, PHS:3750