SURE: Shizuoka University REpository http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/ Title Author(s) Modulation of Seebeck Coefficient in Thin Si-on-Insulator Layer and Construction of Its New Measurement Technique by Kelvin-Probe Force Microscopy Mohd Faiz, Bin Mohd Salleh Citation Issue Date URL Version 2013-12 http://doi.org/10.14945/00007967 ETD Rights This document is downloaded at: 2016-02-02T10:07:25Z (課程博士・様式9) 審 査 要 旨 (1,000 字程度) 熱電変換材料は,発電素子や赤外線センサなどへの応用が期待されているが,熱 電変換効率が不十分であり,実用化にはまだ困難である.熱電変換効率を向上する 手段ひとつとして,ナノ構造の導入によるゼーベック係数の向上が注目されてい る.しかし,ナノ構造の材料に対して従来のゼーベック係数の測定方法を適用する ことは困難であり,新しい測定方法が必要である.また,ゼーベック係数はフェル ミエネルギーと伝導帯端との差に強く依存しており,ゼーベック係数の向上には, ナノ構造の導入による伝導帯端とフェルミエネルギーの制御が重要になる.本論文 は,ナノスケール材料のゼーベック係数を測定するために,ケルビンプローブフォ ース顕微鏡(KFM)を用いた新しい手法を構築した研究成果と,フェルミエネル ギーの制御の観点から,外部電圧による極薄 SOI(Si on insulator)層のゼーベッ ク係数の変化について調べた研究成果をまとめたものである. 第1章では,序論として研究背景および本研究の目的を述べている. 第2章では,ゼーベック効果についての理論を提供するとともに,ゼーベック係 数に対する電子とフォノンドラッグの寄与と,ナノ構造によるゼーベック係数の向 上についての理論的説明を記述している. 第3章では,本研究で用いた従来のゼーベック係数の測定方法とその測定系につ いて詳しく説明し,ナノ構造の試料に応用する際の困難な点を述べている. 第4章では,KFM を用いたゼーベック係数の測定原理および本研究で使用した 測定系について詳しく説明している.実際に KFM を用いて極薄 SOI 層のゼーベ ック係数を測定し,本手法の有用性を示している.また,ナノスケール試料のゼー ベック係数を測定する具体的な手続きを述べ,シリコンワイヤのゼーベック係数の 測定結果を示している.その結果,測定したゼーベック係数は電子輸送を考慮した 理論計算と一致し,再現性よく測定できることを示している. 第5章では,極薄 SOI 層のゼーベック係数について調べた結果について記述し ている.不純物ドーピングによるフェルミエネルギー制御では,ゼーベック係数が 不純物バンドの影響を受けること見出した.更に,外部電圧を印加することによる 極薄 SOI 層のゼーベック係数の変化を測定し, SOI 層中のキャリア分布を考慮し た理論的解析も行っている.その結果,SOI 層のゼーベック係数が SOI/BOX(理 め込み酸化膜)界面付近のキャリア密度に強く支配されることを見出した.外部電 圧によりゼーベック係数はフェルミエネルギーを介して不純物バンドの影響無し に制御でき,その値にはフォノンドラッグの効果も寄与するものと結論づけた. 第6章では,本研究全体を総括し,最後に今後の展望について述べている. 以上の成果は,ナノ材料工学およびナノデバイス分野への貢献が大きく,博士 (工学)の学位を授与するに値するものとみとめられる.
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