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ZnTeの励起子発光とラマン散乱(修士論文(1986年度))
藤川, 泰之
物性研究 (1987), 48(5): 507-542
1987-08-20
http://hdl.handle.net/2433/92809
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
物性研究 48-5(1
987-8)
修士論文
(1986年度 )
ZnTe の励起子発光 とラマ ン散乱
阪大 ・理
目
次
第 Ⅰ章
第 Ⅰ章
序
論
znTeの物性 と励起子ポラ リトン
Ⅰ-1
§Ⅱ
-2
§
ZnTeの物性
励起子
§I1 3 励起子 ポラ リトン
第 Ⅱ章
実験方法
§Ⅱ-1
試料
§Ⅱ-2 蛍光測定 システム
§Ⅱ-3 時間分解測定 システム
第 Ⅳ章
ZnTeの発光 の性質
§Ⅳ-1 ZnTeの発光 の一般的性質
§Ⅳ-2 発光及 び寿命の励起波長依存性
§Ⅳ-3 発光及 び寿命 の励起強度依存性
§Ⅳ-4 考察
4- 1 励起子発光 の形状 と解釈
4- 2 励起子 の空間的分布 と発光 の再吸収
4- 3 定常状態 の解 と発光 スペ ク トル形状及び励起 プロファイル
4- 4 時間を含 んだ解 と発光寿命
4- 5
トラップの存在 と発光強度 の励起強度依存性
4- 6 ラマ ン散乱 とレイ リー散乱
§Ⅳ-5
第 †章
結論
励起子 ボラ リトン̀のラマン散乱 とル ミネ ッセ ンス
§†
-1_離散系 におけるラマン散乱 とル ミネ ッセ ンス
-507-
藤
川
泰
之
藤川泰之
†-2
§†
-3
§
励起子ポ ラ リ トンのラマ ン散乱 とル ミネ ッセ ンス
実験及 び考察
参考文献
謝
辞
第 ]章 .
序
論
励起子の静的 なふ るまいについては, 1960年代か ら現在 に至 るまで さかんに研 究 され て き
た。一方,励起子 の動的ふ るまいについては,単色性 のす ぐれた強度 の強い光源 としての レー
ザーの普及 によって強い興 味が もたれ るよ うになって きた。
レーザー励起 に よ り単色 的 に作 られ た励起子 ポ ラ リトンはさまざまな過程 によ り他のエネル
ギーのポラ リ トンに変化 し,発光す る。従 って,発光 スペ ク トルの形状 を研究す ることによ り,
励起子ポ ラ リ トンの緩和 についてのさまざまな情報が得 られ るわ けである。 さらに波長可変色
素 レーザーの開発 に よ り,種 々の励起 エネル ギー下 にお ける励起子 ポラ リ トンの挙動 について
の知見 も得 られ るよ うになった。
また,最近 では,時間分解技術 の発達 に よ り, この励起子ポラ リトンの動的ふ るまい を,時
間領域 において も, とらえ られ るよ うになった。 この方法 を用 いて種 々のエネルギーの発光 の
時間特性 を調 べ ることに よ り,それ まで発光スペ ク トル形状 のみか ら推察 されていた各発光 の
成 因について,検証 を与 えるこ とが可能 にな り,緩和 に関す るよ り正確 な括像 を得 るこ とがで
きるよ うになった。
また,励起子ポ ラ リ トンの緩和過程は,最近活発 に議論 されてい る共鳴 ラマ ン散乱 とル ミネ
ッセ ンスの問題 とも深 く関連 してい る。二次光学過程 であるラマ ン散乱 と,一次過程 である光
吸収 と光放 出が連 なってお こる発光 との関係 にっいて さまざまな議論 がなされてお り,現在 で
もはっき りとした結論 は出てい ない。 さらに励起子 ポラ リトンは連続 した準位 を持っ系である
ため,問題 は よ り複雑 である。現在,時間分解法 を用いて, ラマ ン線 と発光 の時間応答 を比較
す る実験が さかんに行 なわれてい る。
我 々の研究室 では ZnTe単結 晶 を試料 として励起子 ポラ リトンの分光学的研究 を行 なってき
十レーザーの 51
45A線 の近傍 にあ るため,励起子ポラ リ ト
た。 ZnT。はバ ン ドギャ ップが Ar
ンを共鳴励起す るのに適 した物質 である。
十レーザー及び同 レーザー励起 による波長可変 CW モ ー ド同
本研究 では CW モー ド同期 Ar
期色素 レーザー と高時間分解能 を持つマイ クロチャンネル プ レー ト (
MCP)型光電子増倍管 を
組合せた時間相関単一光子計数法 を用 いた。 このシステムによ り, さまざまなェネルギーに励
-508-
ZnTeの励起子発光とラマン散乱
起 された励起子 について発光 スペ ク トル及び時間領域 の,両側面か らの測定 を行 ない,励起子
ポラリトンの発光スペク トル,励起 プロファイル及び発光寿命 についての総合的 な理解 ができる
よ うになった。また, この実験 システムを用 いて, ラマ ン線 の時間応答 の測定 を行 ない, この
減衰寿命が測定 限界以下 であることがわかった。
第 日章
ZnTeの物性 と励起子ポラ リ トン
Ⅰ-1
§
ZnTeは
ZnT。の物性 1
),2)
Ib- Ⅵb 族化合物半導体 で,閃亜鉛鉱型 の結晶構造 を持 っている。図
Ⅱ-1に結
l
l
oui
n 領域 を示す。この構造 では,二種 の原子がそれ ぞれ面J
L、
立方格子 を作 り,
晶構 造 と Bri
▼
一
、
c
m
=
=
(C)
0 -Zn
①Te
TT
L
l
ea
r
S
tBr
i
l
l
oui
nz
one
f
oraz
i
ncbl
e
ndes
mc
n汀e
図 丑-1
その一方の格子 は他方の格子 の体対角線方向にその長 さの 1/4だけず らせた位置にある。 こ
れはダイヤモ ン ド構造 における同一種 の原子 を一 つお きに異種 原子 に置 きかえた構造 と見なせ
る。
図
Ⅱ-2にエネルギー帯構造 を示す.基礎吸収 は I
1
15 → r
l の直接遷移 でバ ン ドギ ャ ップ
.
38
5e
V(1
.
7K), 2
.
37e
V(8
0K), 2
.
2
5e
V(30
0K)である。常温では赤樺色 を示す。
は2
伝導帯 は陽イオン Znの 4S軌道 か ら,価電子帯は陰イオン Te の 5p 軌道 か らつ くられてい
る。価電子帯はス ピン軌 道相互作用によ り,ス ピンを入れ ると 4重縮退 の r8バ ン ドと 2重縮
I
7 バ ン ドとに分裂 しているo
退の 1
ZnTeの伝導型 は p型伝導 である。これは ZnTe結晶が安定 な状態 では Zn の 空 格 子 点
Vzn を含むか らであるo vzn は 2個 の正孔 を捕 えて結晶 を電気的 に中性 に しているoこの
Vzn に捕 え られた正孔は価電子帯に励起 されて 自由正孔 となるo従 って V
zn は浅 い ア クセ プ
∼5
09-
藤川泰之
\」
/ 空事育
(^
') .
1
⊥
3
'
4
1
0
1
▲
っ
︼
3
一
一
Gi
・頚
等
芸
r ス・
fン一武三急 設
に 上る育
K.r
:
(
(C)
TLeC
Onduc
ゴona
ニds
pi
no
r
・
=
i
r
s
pi
i
こVa
i
e
nC亡b
lnd
so
I
'ZユTe
a
r
oundA=o
図 丑-2
タ として作用す る。最後 に ZnTeの物理定数 をま とめて表 Ⅱ-1に示す 2).
§Ⅰ
-2 励起子
励起子 とは絶縁体 中,及 び半導体 中における素励起 の一種 である。励起 された電子 と,その
電子励起 によってできた正孔 の対 は, クー ロン相互作用 を行 ないなが らェネル ギー を伝達 して
い くこ とができる。 この よ うな励起状態 を励起子 と呼ぶ。励起子 は電子 と正孔 とか ら成 ってい
るため,エネルギーは伝達 す るが,電荷 を運 ばないので電気伝導 には関与 しない。
nkel励起子, 弱い極 限で
励起子は,電子,正孔 間のクー ロン相互作用 の強い極限では Fre
nni
er励起子 と呼ばれ る.図
は Wa
丑-3は両者 の相違 を示 した ものである.
クー ロンが強
い場合,励起 された電子 は 自分 の所属す る原子 (または分子 )か らはなれ ることはできない。
従 って励起 され た電 子は正孔 とともに分極 を作 り,その分極 が双極子一双極子相互作用 によ り,
nkel
励起子と
とな りの原子 に伝達 され る。 このよ うに して次々に分極 が伝達 され るものを Fre
呼ぶ 。一方, クー ロン力 が弱 い場合,励起 された電子はか って所属 した原子 か らはなれて, ほ
とん ど自由に運動す るこ とができる。 また,正孔 も同様 に運動す る。両者 は クー ロン力
㌢ -
- e2/er によって結 ばれてお り, この力 によって電子 と正孔 は結晶格子 よ り大 きな軌道 でお互
nni
e
r励起子 と呼ぶ (図
いのまわ りをまわ りなが ら結 晶中 を運動す る. これ を Wa
並
-3.b)0
ZnTe結晶 では励起子 は Wanni
er励起子 の形 をとる。 有効質量近似 の下 で励起子 のハ ミ
ル トニア ンをH。X と書 くと,次式 のよ うになるo
方2
He
x=
方2
云 ㌻
eAe二 言 △ h
8け。Irnl
-51
0-
g
ZnTeの励起子発光 とラマン散乱
表
結
晶
構
造
融
点
熊
ア ク セ プ タ
a-(
A-B)-2.
64A
d-(
A-A)-4.
3
2Å
度 f 5.
54g/
cmMI
成
ZnTe の物性
閃亜 鉛 鉱 型 F4
3m 9)
〃=6.
1
0
37A
密
生
Ⅰ-1
ア ク セ プ タ 嘩位
(価 電 帯 の 頂 上
26-3
0kc
al
/
r
nol(
2
98o
K)9)
よ り)
融点附近 での
Zn の 最 小 蒸
気圧
T
e
0.
6
4at
m 9)
2.
3
8
5e
V(
1.
7o
K)l
l・
a6)
姉
別
帯
幅
温度係放
圧 力 旅放
子 m,
m hh
軽 い正 札 l
Hl
h
スt
=
'ソ 軌 道 m
ナ
咋
位
Cu ・
0.
1
5eV
Ag
Au
p:
0.
l
le
V
0.
22e
V
0.
05e
V
As
0.
06e
V3
6
)
F,Cl
,Br
,(
Liは 格 子 間 の と き r 6
>
ナ ら しい) B.Al
,Ga.l
n
l
n0.
2eV (
伝 韓 帯 の 政 よ り)3
8
〉
8l
温度 操放
重い正 孔
「
ナ
Vz
n- 0.
0
57±0.
0
02eVB
I
Vz
n21 0.
1
4e
V
Li
0.
05
0e
V
0.
9-1.
Oe
V2
スt
:
'ン 軌 道 分 封
電
ド
2.
37 eV (
8
0o
K)36)
2.
2
5e
V(
300 o
K)36)
-6.
0×l
ol
le
V/
°e
g2
8
)
6.
0×1
06e
V/
at
m2
8
)
Vz
n,Li
.Na,K,Rb6
)
,
Cu,Ag,Au
P.As
,Sb,Bi
.o
相 対 誘 電 率
-6.
4×l
ol
一e
Y/
°e
g2
号
)
0.
09m川 ,0.
1
7m
0.
6m川,1.
0・
m
.0.
1
6m
0.
42m
低周波
光周波
‡
,
-1
0.
11
6
)
E
c
.
- 7.
2
81
6
)
)-0.
58
9F
L
m, J
Z
-3・
0
6
0.
62
3.
0
0
屈
率
折
0.
83
1.
2
4
2.
84
2.
7
6
2.
0
6
2.
71
短披長冊
cl
1
-7.
1
3×1
0l
ON/
m2
Fi
g.14 参 照
弾
性
率
LO .26×1
03e
V3
3
-8
号
)
格
子
振
動
TO
22×1
03e
V3
3
-3
6
)
LO
TO
LA
TA
22×1
08eVa6
)
22×1
03と
V3
6
)
1
6×1
03e
V3
6
1
7×1
03e
V3
6
)
ビェ ゾ e
l
e
ct
r
i
c
s
t
r
ai
n定放
電気光 学定
c
l
2
-4.
07×1
01
1
0N/
m2
C
"-3.
1
2×1
01
0N/
m2
d1
80rd1
4
-0.
91×1
01
2C/
N
f
女 r41-4.9×・10112mN (6000A)67)
等 温 圧 焔 串
2.
5×1
0!1
/
Kbar(
Oo
K)
2.
42
7×1
031
/
Kbar (室 温)
‡二一二二‡‡=
一
・
●
一
一
●
一
一
・
●
F
r
enk
e
LHC
i
L
o
n
コ
コ=
こ
二
=
=こ
+ +
〉
.e
L
l
ec
†r
叫
o h
al
e
■- - - -
⊥
.
++
+
Wa
nni
erex⊂)
l
o
∩
+
+
(
b
) Wa
n ni
e
rh k f
(
a
)
図
丑-3
- 5 11 -
藤川泰之
r
,
r
n
は電子,正孔 の位置, 7
n
:
,
m
:
は電子,正孔の有効質量, Egはバ ン ドギャッ
ここで, e
プ, 6はバ ックグラウン ドの誘電率 である。これは水素原子 のノ
、ミル トニア ンと完全 に一致 し
てお り,エネルギー固有値は容易に求 まる.水素原子 の場合 と同様,重心座標 Rと相対座標 r
を用 いて, Hex は相対運動 と並進運動 とに分 け られ る0
82
万2
He
x= 巨 石
万2
〕+〔Eg 一 元
△p-=
△ R〕
7
n
。
*1+7
n
h
*1)1
,M- 7
n*
nh
*, r- r
。-rh,R- (
7
n。
*r。+7
nh
*rn)/
ただ し, p- (
e+7
(
me
*+7
nh
*)であるo
この式 よ り励起子のエネルギーは
E(
k,n)- Eg+霊
と書 ける.これ を図
k
2 一室
(
R
*
丑-4に示す。
§Ⅰ- 3 励起子 ポラ リトン 3)
励起子は結晶中 を運動 しなが ら光子 と相互作用 を行 な う。一
般的には相互作用 を含 んだノ、ミル トニアンの固有状態 を厳密 に
解 くことは困難 で,相互作用は摂動 として扱われ る。 しか し,
励起子一光子相互作用 HER は線型相互作用であるため,相互作
用 を含 んだ全ノ、ミル トニアンを対角化 して固有状態 を得 ること
図
ができる。 この固有状態 は励起子ポラ リトンと呼ばれ る。
図
Ⅰ-4
Ⅰ-5は結 晶 中での励 起子 と光子 を摂動論的 に考 えた場
・
JPhot
o
n
一 e
X
Ci
t
on
合 とポラ リトンで考 えた場合 のちがい を表 してい る。
摂動論では励起子が HERを介 して光子 にな り,それがまた
HER
(c
t
)
によ り励起子になるとい う,励起子一光子 の転換 の くり返
しとして表わ され る (図
Ⅰ-5
,b)。一方,ポラ リトンで考 え
r
i
t
o
l
n
i
(i)
ると,結晶中 を伝 わるものを 「光」, 「励起子」 と区別せず,
光 と励起子 の達成波 であるポ ラ リトンが伝わってい ると表現 で
図
F-5
きる。従 って,光が結晶中 を通 りぬける場合, この光は結晶外 では 「
光」,結晶内では 「ポラ
リトン」 であると考 えるわけである (図
図
∬-5
,b)0
Ⅰ-6は励起子 と光子 の分散 曲線 と,励起子ポ ラ リ トンの分散 曲線 との比較図である。 も
ともと励起子 と光子 とい う 2つの独立 なモー ドが存在す るため,ポ ラ リトンもや は り2つの独
-
5
1
2
-
ZnTeの励起子発光 とラマン散乱
立 したモー ドを持っ。振 動数 が無限大 の極 限に
お いて,光子的 な分散 を示すモー ドを上枝 ポ ラ
r Br
a
nc
h Pol
ari
t
on ;UBP
リ トン (Uppe
or UP), 励起子的 な分散 を示すモー ドを下
we
r Br
a
nc
h Pol
a
ri
t
on ;
枝 ポ ラ リ トン (Lo
LBP orLP)と呼ぶ。 この 2つの分散 は次 の
式 の解 として求 めることができる。
如 αo
E
= 8(
a
,
)- e
b+
E
2
Nh]
A
方2 C
2k
2
図
2
Ⅰ -
6
k
Ek - E2
k-E2
E 2
2
方2
(
E -盲窟 k
2+
ET)
k
ここで, ET は波数 0での励起子 のエネルギー,
eb
はバ ックグラウン ドの誘電率 である。
α.は励起子 の分極率で,励起子一光子相互作用 の強度 を示す。図
Ⅰ-6で示 してい るよ う
に EL は k= 0での UPのエネルギーであるo ALT≡E
LIE
T は縦横分裂 と呼ばれ,
ALT- (
で表 わ され る。
励起子 の発光過程 をポ ラ リ トンで説明す ると,次 のよ うになる。入射 した励起光 は UPまた
は LPにな り,音響 または光学 フォノン散乱 によって LP となる。 これは LPの状態密度 が
UP に くらべて大 きいためである.その後 , LPは主 に音響 フォノンによる散 乱 を何回 も受 け
て,図
Ⅰ-6で示 したボ トルネ ック領域 に至 る。こめ領域 の下 の LPは光 の成分 が支配的 であ
り, フォノン散乱 をうけに くく,結晶表面 で光-変化す る確率 が高 い。従 って この領域 にや っ
て きたポラ リトンは他のポラ リトン-散乱 され ることな く発光 す るため, この領域 に強い発光
が見 られ る。
第 日章
実験方法
§皿- 1
試
料
本研究 で用いた ZnT6結晶は Br
i
dge
ma
n 法 によって作 られ た もので, 大阪大学工学部 中
e」,「undope
」, r
Odope
d」,
島研究室か ら提供 され た ものである。提供 された結晶は 「pur
-
5 13-
藤川泰之
「Gadoped」 と記 され た 4種類 あ るが, 本研究 においては 「pure
」 と 「undope
」 のみ を用
いた。 ここで 「
pur
e
」 と 「undope
」 のちがいについて列記 してお く。
(
1) 発光効率 は 「
pure
」 のほ うが高 く, 「undope
」 の 10- 30倍 ほ ど発光す る。
(
2) 同 じ励起強度 の場合 ,発光寿命 は 「
pure
」 のほ うが長い。
(
3
)同 じ励起強度 の場 合, 「undope」 は 「pure」 に くらべて, 発光 に対 す るラマ ン線 の相
対準度 が大 きい。
(
4) 一般 的 に, 「
pure
」 は個 々の結晶の間 にあ ま り差 はないが, 「undope
」 は個 々の結 晶
のみな らず, 1個 の結 晶 について もその位置 によって (
1
)
-(
3
)
で述 べ た性 質 が変化 す る。
以上の 「
pure
」 と 「undope
」 のちがいは,結 晶中の不純物や欠陥の密度 による と考 え られ
」 は結晶中 に不純 物や欠陥 を多 く含 むため,結晶中の位 置 に よって, また個 々
る。 「undope
の結晶 について不均一 になった と考 え られ る.
§並-2 蛍 光測定 システム
発光及 び レイ リー散 乱測定 のブ ロックダイヤ グラム を図 Ⅱ- 1に示 す。励起光源 としては
A了 レーザー (Spe
ct
ra Physi
cs社製 Mode
l1
6
4)または同 レー ザ ー励 起 に よる自作 の色
秦 (Coumari
n 7)レーザー を用 いた。光学 クライオス タ ッ ト中に固定 された試料上 に レーザ
ー ビーム を レンズで集 光 し,そ のスポ ッ トか らの発光 を レンズで受 けてダブルモ ノク ロメー タ
ー ( SPEX 1
4018)で分光 した後,光電子増倍管 (浜松 フォ トニ クス R928)で受 ける。
この光電子増倍 管 か らの信号 は, Mul
t
i Cha
nnel Ana
l
yse
r (Ca
nbe
rr
a3
0)に入 り, 弁
別,増幅 され た後 ,記憶 され る。なお, レイ リー散 乱測定 の場合 は入射光 を偏光子 (ニ コル プ
リズム )で偏光 させ, スポ ッ トか ら出 て くる光 を レンズで集 めた後 ,検光子 (ポー ラロイ ド偏
光板 ), ス クランブ ラー を通 して分光器 に入れ た。
§Ⅱ- 3 時間分解測定 システム 4)
時 間分解測定 システムのブ ロックダイヤ グラム を図 Ⅱ-2に示す 。光源 としては繰 り返 しが
W モー ド同期 Ar
+ レーザー (Spe
ct
ra Physi
cs Mode
l1
6
4+ 自作 モー ドロ
約 80M比 の C
ッカー )を使用 してお り, そ の出力 をビームスプ リッタ- で 2つ に分 け,一方 を試料 の励起 に
用 い,他方は参照信号 に用 い る。試料 か らの二次放 出光 は レンズで集 め, アパ ーチ ャー をとお
してダブルモ ノクロメー ター (SPEX 1
4018)で分光 し,冷却 に よって暗電流 を- らしたマイ
ク ロチ ャンネル プ レー ト型光電子増倍管 (浜松 フォ トニ クス :R1
564U)で受 ける。アパ ーチ
ャーは分光器 内の光 路 の広 が りをお さえるために入れてい る。 この とき, 1個 の励起パルスに
ー51
4-
ZnTeの 励 起 子 発 光 と ラマ ン散 乱
図 皿-1 蛍光測定 システム
図 Ⅲ-2 時間分解測定 システム
対 して,たかだか 1個 の光子 しか検出 され ない よ うに してお く。光電子増倍管 か らの信号 は
CFD(Co
ns
t
a
ntFr
a
c
t
i
on Di
s
c
r
i
mi
na
t
or;ORTEC 5
8
3)によって弁別 ・増幅 され,適当
な大 きさのパルスになる。通常 の Di
s
c
r
i
mi
na
t
or と CFDの出力 パ ルスの よ うす を図 並-3
に示す. CFD は信号電圧 が,その最大値 になった ときに出力 パ ルス を出す Di
s
c
r
i
mi
na
t
o
r
で,通常 の Di
s
c
r
i
mi
na
t
o
rに見 られ る,信号電圧 の大小 による出力パルスのタイ ミングのば ら
っ きが少 ない。 この CFD か らのパルス をスター トパルス として TAC(Ti
met
oAmpl
i
t
ude
conve
r
t
e
r‥ORTEC46
7)に入力す る。一方参照信号用 の光パルスはフォ トダイオー ドで受
け,増
痕
遅延 の後, ス トップパルス として TAC に入力す る。 TAC はス ター トパルス とス
-
5 1 5
-
藤川泰之
トップパルスの時 間間隔 に比例 した高 さの電圧 をもつ
パルスの高 さの電圧 をもつパ ルスを出力す る装置 で,
nbe
r
r
a3
0)でパルスの高 さ毎
この出力 を MCA (Ca
に分 けて積算す る。それ によって得 られた ヒス トグラ
ムは,スター トパルスのノ
時間特性 を示 してい る。
出
血
→
t
A
t
。
t
-
丸 _ →
LF工
)
遠海r,DisLrtr/th
図Ⅱ-3
この システムは レーザーパル スの繰 り返 しが 80MHzと速 いため,データ収集速度 も速 い。
そのため,弱い励起光 の下で高 い精度 と分解能 での発光 の時間特性 が測定できる。励起光 が弱
くて もよいこ とか ら,高密度励起下 でのみ起 こるよ うな種 々の現象 は無視 できる
。
第 Ⅳ章
znTe の発光の性質
§Ⅳ-1 ZnTeの発光 の一般的性質
この節では Ar十レーザーの 51
45A線 を用いてバ ン ド間励起 した場合 の ZnTeの励起子発光
の性質 を調 べた結果 を示す。実験 はすべて液体 窒素温度 77K で行 なった。
-1は 77K にお けるバ ン ド間励起 による発光 スペ ク トル (下 ) と反射 スペ ク トルであ
図Ⅳ
るO この反射 スペ ク トル と Hopf
i
e
l
d の理論 とを比較す ることによ り,励起子準位 ETを
19105c
m 1と決定 した。実線 は,Hopf
i
el
d の理論 5) によって計算 した反射 スペ ク トルであ
Cα- 0.
00628, バ ックグラウン ドの誘電率
る。 用 いたパ ラメー タは励起子 の分極 47
6
- 8.
1
,
l- 0
.
0018e
V,デ ッ ドレイヤー の厚 さを 50A とした. 発光 スペ ク ト
ダ ンピングエネルギー I
ルは 2つの幅広 い山 と鋭 い ラマ ン線 か らなるo縦励起子準位 EL 近 くに ピー クを持っ高エネル
ギー側 の発光 は UP発光,低 エネルギー側 の山は LP発光 と呼ばれてい る。 UP, LP とは
§
Ⅰ- 3で述 べた励起子ポ ラ リ トンの Uppe
r Bra
nc
h, Lowe
r Br
a
nc
h の意味で,両発光 は
この 2つの分枝 のポ ラ リトンの発光 であ るとい う説 か らこの名 がっ いてい る。また,発光 スペ
」
0 ラマ ン線
ク トル中の鋭 い線 は縦光学 フォノン (LO phonon)2個 によって散 乱 された 2Ⅰ
であ る。
図 Ⅳ-2は励起強度 を変化 させた場合 の発光形状 の変化 を示 した ものである。励起強度 を強
くしてい くと, ラマ ン線 と,幅 の広 い発光 との強度比 は小 さ くなってい く。 これは,発光強度
5乗 に比例 す るのに対 し, ラマ ン線 は 1乗 に比例す るか らである。 これは §Ⅳ
が励起強度 の 1.
- 3で くわ しく述 べ る。 また,.
発光 スペ ク トル形状は励起強度 を変 えることによ り変化 す る。
励起強度 を弱 くしてい くと, LP発光 の ピー クが高 エネルギー側-移動す る。 また,それ と平
行 して UP発光 と LP発光 の間の くぼみが うまってい き,最後 には励起子準位 ET の近傍 に ピ
50皿 の レンズで試料上 に 集 光
ー クを持つ一つ の山にな る。なお, この測定 では,入射光 を 1
-
516-
ZnTeの励起子発光 とラマン散乱
した。集光 された光 のスポ ッ トの面積 は約 10 3c
m2で
PHOTON 訓 ERC
Y(
●V)
2
.〕6
2
.38
2・34
と
+金
T
s
e
-土
l
l
1
V
e
-T
T
ノ
)-旦
h
.
V
,
Ts
TL
によって うま く合 わせることができるo Tも,Ts はそ
!
9
8
8
a
!
S
2
B8
Y
^
V
三N
I
J
N
≡
三
六(
;
.
A
1
)
!3
3a8
れぞれ長い方の寿命及 び短 い方の寿命 を表 し, AL,
As は長い寿命 を持っ成分 と短い寿命 を持つ成分 の面
i
94eE
I
図 Ⅳ- 1
(
上)反射 スペ ク トル (実験値及び理論
値)
4.
5nm
積 を表わす。図 Ⅳ- 3において ドッ トは波長 51
のモー ド同期 レーザー励起 による 1
9040C正 1の発光 の
一
u
Z
SN uL
NT
1
もっ 2つの指数関数的減衰 の和
n
∼
誹
(
.
つ.
〇V A
述べ る。 ZnTeの発光 の減衰は,異 なる減衰時定数 を
^
17
^ flUuJLuU
3 N 1
t
D E
9 8 t
S
)
e
1.5
1
4.
5nn
次 に 77K での ZnTe にお ける励起子発光 について
伸
2.相
▲
「
ある。
(
下) 発光 スペ ク トル
L.
.;
F
減衰,実線 で示 した左の細いパルスは レーザーの時間特性 で
あるo この レーザーの時間特性 と, f(i)において TL-
二
二
のコンボ リュ-シ ョンを,発光 のデータに重ねて実線 で示 し
'。
二
・
69 とした減衰関数 と
90
0ps, Ts- 130ps, AL/AS- 1
た。両者は大体一致 してい る。
二
・
AL/
AS をプ ロッ トした ものであるo この図 よ り以下のこと
i
.
長い寿命 TL と短い寿命 Tsは, どち らも励起子準位
i .
ET の近傍 で短 くなってい るo
1
80叫
o
図
成分 の割合 いが小 さくなっている。
上 に述 べたよ うに発光寿命 は 2つの成分 を持 ってい るため,
AL
T
T
9
柵
1
Y^YE Nt
稚
面積比 AL/
AS は一定 ではな く, ET の近 くでは長い
寿命 の目やす として,平均寿命
.I)I.≡
.
がわかる。
。
二
. (
1
.
図 Ⅳ- 4は長い寿命 TL,短い寿命 Ts,及 び両者 の面積比
1
92N
I
94
0
●
EJ
T (○J l
〉
Ⅳ-2
発光 スペ ク トルの励起強度依
存性
を
L+A sT
s
AI
,+As
と定義す るO これ をプロッ トしたのが図 Ⅳ- 5であるO この平均寿命 Tもやは りET の近傍 で
短 くなっている。
-51
7-
藤川泰之
一
ヽ
l
(u su
o) f1O
王
山
山31
1
■
一
〇
帥
m
I
l
H
E(
p
・
.
o
)
)P
1
9000
1
9)
00
WAVE NUM8ERく
くm1
)
l
B100
1
5
bB
1
8900
細e
図 Ⅳ-4
図 Ⅳ-3
発光
+e 市
告oops
)
9
3
00
t
発光 の時 間応答 を f(
i)- AL e冗
(
19
0
4
0cm 1)の時 i
間特性 ,実線 は レーザ
i
ーとf(
i)- 1
・69e
)
92
00
i
+ AselTS
でフイットさせた場合の TL,I
,
S及び AL/As
とのコ
ンボ リュ-シ ョンを示 す。
2
.34
PHOTO∼ 【NERCY (
+〉)
2.36
2.38
∼
1
0
.
§Ⅳ-2 発光及び寿命 の励起波長依存性
)
(.
).
〇
この節 では波長可変 C
W モー ド同期色素 レーザー
Ai
HS N U I N [
を用いて,励起光 の波長 を励起子準位 ET 付近 で変
化 させ,励起子発光及び発光寿命 の励起波長依存性
の測定を行なった結果 を述べる。 また,入射光の偏光
方向と垂直な偏光の発光成分 を調べることによ り, レ
\
ィリー散乱 も同時に観測 できた。 また縦光学 フォノ
ンによるラマ ン散乱 の励起 プロファイル も測定 した。
なお, この節 での測定では,入射光 を 1
50mm の レ
ンズで試料上 に集光 した。
1
9900
1
928B
y^vE 川J
H9【
R(
C1
)
図 Ⅳ-5
AL・TL+ As Ts
(上 ) 発光寿命 (
AL + As
(下 ) 発光 スペ ク トル
図 Ⅳ-6は 77K で励起波長 を変化 させた場合 の励起子の発光形状 の変化 を示 した もの で あ
る。ただ し,発光 の形状 を正確 に測定す る目的で,入射光の偏光方 向 と垂直に偏光 している発
光成分 を測定す ることによ り,励起光 による散乱光 の混入 を少な くしている。図中の鋭 くたち
上がっている線 は励起 レーザー光 の散 乱光 である.図 Ⅳ- 6よ りわかることを以下に記す。
○
励起波長が励起子準位 よ り高エネルギーにある場合 は,バ ン ド間励起時 と同様 の 2つの
山 を持つ発光スペ ク トルになる。
。
励起波長が ET の近傍 に位置す る場合, UP発光, LP発光 は, ともに消失す る。
・
励起波長が ET よ り低 エネルギー側 に くると,両発光 は再び現れ るoただ し, ET の高
ェネルギー側 を励起 した場合 と比較 して, LP発光は大 き く, UI
)発光 は′
トさくなってい
-51
8-
ZnTeの励起子発光 とラマ ン散乱
る。
。
励起波長が ET の近傍 に位置す る場合, レ
1
888
0
1
9888
1
92
8B
1
88舶
1
9868
1
921
畑
1
9888
1
92
88
l
OBBC
I 1
98
88
1
92i
柑
イ リー散乱 と思 われ る散 乱光 の増大が見 られ
る。
図 Ⅳ-7は図 Ⅳ- 6か ら UP, LP 両発光 の励
ト
l
S
N
^
以下 の ことがわか る
。
H
UP発光 と LP発光の励起 プロファイルは
3 iN
o
(.
⊃ .〇)
起 プ ロフ ァイル を求 めた ものである。 この図 よ り,
励起子準位 ET に くぼみ をもつ よ く似 た形状
になる。 しか し, UP発光 のプロファイルが
ET よ り高エネルギー側 で最大値 を持っ のに
対 し, LP発光 は ET よ り低 エネルギー側で
I8白88
V^VE NUN8ER
V^VE Nt
AI
E
)
ER (OJ
L.)
(0,
.■)
図 Ⅳ-6
最大値 を持 っ。
発光 スペ ク トルの励起波長依存性
図 Ⅳ-8は レイ リー散乱 のプ ロファイルである。
O
)
t
L
J
n.
qJ
D) IJ
SN3lNLヱO tS S玉 山
(
励起子準位 ET で共 鳴 して増大 してい る
この測
.
A
定 も図 Ⅳ- 7と同様 に,入射光 の偏光方 向 と垂直
な偏光 を持 っ散 乱光 のみ を測定 してい る。
図 Ⅳ- 9は縦光学 フォノン 1個 によって散 乱 さ
A UP
▲ LP
▲▲▲
▲
▲▲
▲
▲▲
▲L
AA
1
」
0 ラマ ン線 の励起 プ ロファイル を示 して
れた 1
柑0
00
▲
1
9
1
0
0
▲
▲ ▲▲▲
A▲
1
91
0
0
柑:
一
oo
いるo ラマ ン線 は励起エネル ギーが ET +E
l°
9
4
I0
0
WAVE NUMBER く
くm'
l
)
区ⅠⅣ-7
(EL。 は縦音響 フォノンのエネルギー )に位置す
Up発光 と LP発光 の励起 プ ロファイル
るとき,す なわ ち, ラマ ン線 が ET に位置す る と
き増大す る。また励起 エネル ギーが 191
60c
m
1
二
発光 伽, LP発光 Q
C)
, 及 び くぼみ の位置 での発
光 脚 の寿命 の変化 を示 してい る. 横軸 は励起光
^
1t
SN 31三
図Ⅳ
-10 は励起波長 を変化 させた場合 の UP
J
t)
)
位置す る )に も増大が見 られ る。
一
1
^.
q
あた りに位置す る場合 (ラマ ン線 は 1
8
950c
m1に
)
9)
00
7
91
00
)
9200
1
93
00
WAVE NUMBER ((T
n\
l
)
図 Ⅳ-8
の波数 を示 してい る。励起光が励起子準位 ET 付
レイ リー散乱 の励起波長依存性
近 にある場合, UP発光, LP発光 の寿命 は急 に
(ただ し,入射光 の偏光方向に対 して垂
直 に偏光 してい る成分 のみ を測定 )
短 くなってい る。
-51
9-
Z
・
4
3
2
.
つ
P
t
tl
T
t
■lEK I
l;
Y
0
2
.
1
■
t.Y
I
2.30
J
(言 n.
qt
)
)
uJ.
U
≡∼ UOu
,
D∝
^'
∈
'
t●
oO
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_」・
.
_
.
_
- はXし_
I
ll
伽.
O
WAVE NUMBER (cmI
)
L
卿●
1
9
1
N
I
g
∼
ql
y
A
Y
t
N
t
J
<
K
R
t
∼
'
l
J
lの f
M
Ⅳ図 Ⅳ-9
図 Ⅳ-1
0
11
J
Oラマ ン線 の励起波長依存性
Up発光, LP発光,及び くぼみの位置 の発
光の寿命 の励起波長依存性
(横軸 は励起光 の波数,縦軸 は発光寿命 のの
び を示す。 A,B,Cの各点 は観測 した発光 の
位置 を示 す。)
§Ⅳ-3 発光強度及 び寿命 の励起琴度依存性
この節では 77K にお ける ZnTeの発光 について,発光強度及び発光寿命の励起強度依存性
の測定 について述 べ る。
前節 で述 べたよ うに励起波長が励起子準位 ET 近傍 に位置す るとき, 発光強度 は著 しく減少
4・
5nm 線 でバ ン ド間励起 した場合 と, 色素 レーザーによ りET 近傍 を励起 し
す るoそ こで 51
た場合 の各々について測定 を行 なった。また,モー ド同期 によるパルス光 (
514.
5nm)励起 の
場合 にっいて も測定 を行 なった。なお, この節 での測定 において も,入射光 を 150m
m の レン
m2 である。
ズで試料上に集光 した。スポ ッ トの面積 は約 10 3c
まず,バ ン ド間励起時の結果 を述 べ る。図 Ⅳ-11は 514.
5。m(19436c
m 1)cw 光 を光源
とした場合 の発光及び 2LO線 の強度 の励起強度依存性 である。 UP発光及び LP発光 の強度
はそれぞれ励起強度 の 1.
5乗, 1
.
2乗 に比例 してい る。一 万 2LO ラマン線 の強度 は入射強度
に比例 してい る。また図 Ⅳ- 12は 51
4.
5nm パルス光 (半値巾約 1
20ps, パルス間幅約 12
」
0線 の励起強度依存性 である。 CW光の場合 と同様,
ns)を光源 とした場合 の,発光及び 21
発光 は励起強度 に対 L superl
i
near に増大 し, ラマ ン線 は l
i
near に増大 している。 ただ し,
7乗 に比例 し, CW 光 の場
パルス光励起 の場合は UP発光, LP発光 は両方 とも励起強度 の 1.
合 と異 なる励起強度依存性 を示 す。
4.
5nm のパルス光励起 による LP発光の発光寿命の励起強
図 Ⅳ-13は図 Ⅳ- 12 と同 じ 51
度依存性 である。発光寿命 は励起強度 の 0
.
7乗 に比例 してい る。また,弱い CW 光 を重ねた レ
ーザーで試料 を励起 し,時間分解測定 を行 なった (下図参図 )。 この場合 に見 られ る発光 は励
-5201
ZnTeの励起子発 光 とラマ ン散乱
起光 の C
W成分による時間的に-様 な発光 と,励起光 の
_
_
人山
パルス成分 によるパルス状 の発光 よ り成 る。この方法 を
用いて, LP発光 の発光寿命の C
W光強度依存性 を測定
_ 八」\
、
」\
、
J\、
J、
\
」」
万Ai
tも
し,図 Ⅳ- 1
4に示 した。 パルス光 の強度 が C
W光 に く
沿
へこun
r
q}
o)
E;
U
sLN ⊃O
0l
I
EXCI
IATl
0N POWER (
ny
I
)
0.
I
図 Ⅳ- ll
I
l
o
l
O
o
EXCl
TAT1
0N POWER tmW)
図 Ⅳ- 1
2
UP発光, Lp発光, 11
」
0 ラマ ン線 ,
UP発光, I
JP発光及び 2LO ラマ ン線 の
21
J
O ラマ ン線 及び 21
」
0 ラマ ン線 の低
励起強度依存性 (Ar
十レーザー 5
1
4
.
5nm モ
エネルギー側 の発光 の励起強度依存性
ー ド同期光に よる励起 )
(
Ar
十レーザー 5
1
4.
5nm CW光 に よる
励起 )
珊
0
0
0
へUJ
U
300 Ⅷ
川
3。
I
Sd)U王]
1 3ヒ 」
0
0
0
0
3
︺sd)U
Hl
1
(■
L
コ
0
3
-
-
I
- I
1
3
∼
1
0
!
1
0
相
I
0)
t
3
1
0
30
1
00
【xCI
TATJ
ON POWER(r
ow)
0う
EXCI
TAT1
0N POWER (mW) (cw上根 良)
図 Ⅳ- 1
4
図 Ⅳ-1
3
パルス光 (
51
4
.
5nm)によって励起 した場
弱 いパルス (
514.
5mm,1mW)と CW 光
(
457
.
9mm)を重ねた ビームによって励起 し
た場合 の,発光寿命 の, CW光強度依存性
合 の発光寿命 の励起強度依存性
らべて十分弱い場合,パルス光 の影響は無視 でき, この測定 によって得 られ る発光寿命は C
W
光 のみで励起 した場合の励起子の発光寿命 を示 していると考 えて よい。横軸 は C
W光 の強度 で,
W光の強度が強い ときの発光寿命 は C
W光の強度 の約 0.
5乗 に比
縦軸 は発光 の寿命である。 C
例 している。このことか ら発光寿命 も発光強度 と同 じく, C
W光励起 の場合 とパルス光励起の
-
521-
藤川泰之
場合 とで異 なる依存性 を示 す ことがわか る。図 Ⅳ- 1
4で行 なった実験 では, パルス光 は
51
4.
5nm だが, C
W 光 にはそれ よ り短 い波長 (
457.
9nm)の光 を用いてい る。 これ は実験上
での便宜 のためであるが,その正 当性 については考察 で くわ しく述 べ る。
次 に色素 レーザー によって励起子準位 ET を励起 した場合 の結果 を述 べる。図 Ⅳ- 1
5(
a
)は
ET を励起 した場合 の発光 スペ ク トルである.ただ し, この場合 は発光量が少 ないため,入射
光 の偏光方向 と垂直 な偏光 を持つ光 を測定 し,散乱光 の混入 を少 な くしてい る。 この図中の各
5(
b)に示 す。 各点 の発光強度 は励起強度 の約 1
.
5乗
点 の発光強度 の励起強度依存性 を図Ⅳ- 1
に比例 してい る。 また, ラマ ン線 は励起強度 の 1乗 に比例 してい る。発光 とラマ ン線 の依存性
はバ ン ド間励起 の場合 の結果 と一致 してい る.
2.31
^1 l
S
N
山
1ヱl
W光 を重 ねて測定 した LP発
パルス光 に強 い C
光 の発光寿命 の強度依存性 を示 してい る。 この
9即
10
Y
^
v
EH
U
H
8
E
R(
c
R●
)
I881
】
8
実験 よ り発光寿命 は C
W光強度 の約 0.5乗 に比
192日B
l
91
旬日
図 Ⅳ-1
5
,a
例 してお り,バ ン ド間励起 の場合 に一致す る。
ただ し,
㌧この実験 において も,パ ルス光 の波長
2.18
(.
n.
P)
また,図 Ⅳ- 16は図 Ⅳ- 1
4 と同 じく,弱い
pHOIDNENERCY (
tV)
2.36
2.38
励起子準位を励起 した場合の発光スペク
トル
W 光 には 51
4・5
は ET に一致 させてい るが, C
mm を用いてい る。 これ も実験上 での便宜 のた
めであるが,そ の正 当性 については考察 で述べ
る。
図 Ⅳ- 16 に関 して注意 す ることが もう一 つ
4で行 なっ
ある。それは,図 Ⅳ-13,図 Ⅳ- 1
003
0.
3
1
3
)
0
tICl
lATI
ON POl
咋 Rt
nW) くc
t
∼t■L稚)
01
た測定 においては, 「undope」 を用 いてい る
図 Ⅳ-1
5
,b
6 で行 なった測定 では 「pure」を
が,図 Ⅳ-1
励起子準位 を励起 した場合の発光
W光 を重ね ない ときの寿命 が短
わめて短 い。 C
王
一
1 u jl1
たよ うに ET を励起 した場 合 の発光 の寿命は き
000
500
人u
o
s d) 山
用 いてい るとい うことである。 §Ⅳ-2で示 し
い ときは, CW 光 を重ねて寿命 をのば して もそ
ののびは小 さい. 3章 で も述 べ たが, 「
pur
e
」
0.
I
03
1
.
0
10
1
0
EXCJ
TATI
ON POWER(mw)
は 「undope
」とくらべて発光寿命が長いため,
図 Ⅳ- 16
弱いパルス光 (
19110c
m1
,0.
3mW)と CW光
(
51
4
.
5nm)を重ねたビームによって励起 した場
て この実験 は 「
pure
」を用 いて行 なった。図 Ⅳ 合の,発光寿命の CW光強度依存性
寿命 ののび を測定す るこ とが容 易 である。従 っ
-
522-
znTeの励起子発光とラマン散乱
-1
3
, 図 Ⅳ- 1
4で測定 したバ ン ド間励起 での寿命 が図 Ⅳ- 1
5(
b
)で測定 した ETを励起 した
場合 の寿命 よ り短 か くなっているが, これは試料 のちがいのためである。
§Ⅳ-4
考 察
この節では
§Ⅳ-1-§I
V-3でまとめた実験結果 を,励起子 の拡散及び表面 での再結合 に
よって決 まる励起子 の空間分布関数 と,励起子 による発光 の再吸収 による効果 とを用いて説明
す ることを試み る。
4- 1 励起子発光 の形状 と解釈
Teの他
半導体結晶の励起子発光 の形状は図Ⅳ-1のよ うに 2つ の山を持っ ものが多 く, Zn
に も ZnS
e,CdSe,CdS,CdTe,Ga
As,CuCl等 が同様 な発光形状 を示す。その 2つの
)
0
山は励起子ポ ラ リトンの UP分枝 , LP分枝 か らの発光 であると解釈 されていた 6
一方,Travni
kov ら7)は, 励起子 の空間的な分布及び表面での励起子の再結合 と再吸収の
nTeの発光 に近い形状 を得た。 この方法で彼 らは,励起光
効果 を考えて,数値計算 によ りZ
が弱 い場合,発光 が 2つの山でな く,励起子準位 ET に 1つ の ピー クを持つ とい う実験結果 を
説明 した。
本論文 での実験 においては,以下の結果 は 2つの発光 が UP ・LP両分枝 か らの発光 である
と考 えた場合説明が困難である。
UP発光 と呼ばれ る短波長側 の発光 は, UP分枝 がほぼ光 の分散 と一致 してい るよ うな高い
エネルギーまで分布 してい る.この領域 では UP分枝 の状態密度が LP分枝 に くらべて小 さく,
また表面での光-の変換確率が高いため,ポラ リトンがたまることは不可能 である。一方,演
体窒素温度 あた りでの LP分枝 のポラ リトンが分枝上 にボルツマ ン分布 をしている場合, この
領域 まで発光 がのび ることは可能 である。 この可能性 を調べ るため, UP発光 を LP分枝 の状
嘉k
2
態密度 で割 -てみた。この領域 での LP分枝 は励起子 の分散 E'
k)- ET・
ど一致す るので状態密度 は √可
7(
a
)は UP発光 を句
に比例す る.図 Ⅳ- 1
にほ とん
で割
og プロッ トを示 してい る。また直線 は, r - 77K のボル ツマ ン分布 を示 してい
った ものの l
る.両者はひ じょうによ く合 っている。従 って この発光 は LP分枝 か らの発光 であると思 われ
る。また図 Ⅳ- 1
7㈲ は Hef
l
ow 型 クライオスタッ トを用いて,温度 を変 えて UP発光 を測定
し,それ を √百二 年 で割 った ものか ら求 めた温度 T2 を,試料 の温度 Tlに対 してプロッ トし
た ものである。図では,/T2 は常に Tl よ り20K ほ ど高いことを示 しているOこの理 由は,図
Ⅳ- 17(
a
)と図 Ⅳ- 17(
b
)の測定 において,用 いたクライオスタッ トが異 なるためであると思 わ
-
523-
藤川泰之
醐
朋
-。
(.nd)A-1S
M
・
巾
T
E
N
E
N
E
R
G
Y
(
I
Y
)
2
.
3
8
2
.
3
8
2
.
1
0
2
叫
れ る。図 Ⅳ- 17(
a
)で用 いたクライオスタッ トは試料 を直
接液体窒素中にひたす タイプで,試料上 に レンズで励起光
を集光 して も,焦点 の温度 は液体窒素温度 に保 たれている
と考 えて よい.一方,図 Ⅳ- 17(
b
)で用 いたクライオスタ
温度 はまわ りの温度 に くらべてある程度高い と予想 され る。
と4
1
t
N3‡
l
ッ トは熱伝導 によって試料 を冷却す るタイプで,集光点の
.
1
2
I
9
叩I
1
9
小畑
甜
I
9
2
y^vE NUNBER
L
9
81
柑
(
。● l
)
以上 のことよ り, UP発光 は温度 を反映 したボルツマ ン
T
Z(
K)
分布 をしてい ると考 えられ, LP分枝 か らの発光 であると
200
解釈 した。従 って本論文 では,発光 における くぼみは励起
】
50
子 の再吸収 によるものであるとして話 を進 めることにす る。
)
00
4-2 励起子 の空間的分布 と発光 の再吸収
50
∴
二
一一
一
励起光によって結晶表面 の近傍 に生成 された励起子は,
因 Ⅳ- 17
結晶内部-拡散 してい く (右図参照 )。この励起子 の拡散
は 1次元の拡散方程式
∂u(x,i)
∂f
D
∂2u(x,i)
∂∬2
L
L(a ,i)
+ メ(α,≠) ㊨
To
∵
_
∴
∼
・
に従 うものと仮定す る 8)0 a(α, i)は結晶
表面か らの深 さ x,時刻 tでの励起子の密度 で,D は拡散定数, I.は減衰時定数, f(x,i)
は励起光 によって単位時間あた りにつ くられ る励起子 の密度 である。 C
W光励起 の場合は,
a(
x,i)及び J(a, i)は時間によ らないため,④ 式 で左辺 - 0とした
0-D
u(
x) u(
x)
∂2
∂∬2
+メ(α)
(
訂
70
に従 うもの とす る。
次 に表面 での境界条件 を設定す る。ただし,結晶表面 を ∬- 0とし,J が正の方向に結晶が
存在す るもの とす る。結晶表面の性質はバル クのそれ と大 き く異 なるため,表面近 くに来た励
起子 は再結合 を起 こす。表面 における励起子 のつ りあいか ら,境界条件は,
-524-
ZnTeの励起子発光 とラマン散乱
S ・ u (0
,
i)- i
)
∂
L
L (t
r
,
i )
④
∂∬
となる。Sは速度 の次元 を持 ってお り,表面での再結合速度 と呼ばれ る。左辺,右辺 はそれぞ
式 )と④ 式 によって
れ表面領域にお ける励起子 の消失,流入 を表 してい る。① 式 (または④ ′
励起子の密度 uは決定 され る
O
次 に励起子発光 の再吸収 について説明す る 9),10) (下図 )。結晶の奥
測 され る以外 に,その光が再び励起子 とな り,非福射緩和 などによ り,
消滅す る過程がある。後者 の過程は,励起子一光子相互作用が強い領域
では無視 できな くな り, この領域 の励起子 の発光効率 の減少 を引 きお こ
′
′
/
′
′ノ
′
′
′
′
′
′
′
′′′′′
深 くにある励起子が光 に変 わる場合,その光 がそのまま結晶外 に出て観
O-O
k
・
'串 早急如 法 如
す。 これ を励起子発光 の再吸収 と呼ぶ。
この再吸収 によ り,深 さ∬にある励起子 か ら発光 した光 の うちで,表面 に到達 して観測 され
るものの割合 は eK(
ah である。 K(
a
,
)は吸収係数 である。また,励起子 は結晶中での各点で
熱平衡 になってお り, 紘(
x,i)は励起子 のエネルギーによらない とす る。 この とき,励起子
の空間分布 関数 L
L(
x)が決 まると,発光 スペ ク トル Z(
W)は結 晶 と結晶外 空 間 との界 面の透
α)として,
過率 を ∫(
c
c
Z(
W)α 。正 T(
a
,
)K(a
,
) J 。I
K(
a)x u(
α)dx
O
かL
)
と表せ る。 吸収係数 K(
a)が入 っているのは,これが励起子一光子相互作用 の大 きさを表すた
めである。
振 動数 伽′の レーザー光 で励起 した場合,④ 式 の f(
x)は,
T(
伽′
)K(
W′
)e
K(W′
).x F(
i)
f(x't)- α・
と書 ける。 αは x,a
'
′によらない定数 である。また, F(i) は励起光強度 の時間変化 を表 し,
cw光励起 の場合 には F(i)… 1 とおいた f(a,i)を f(a)とす る。④ 式 の解 は,
∂2
1
∂
〔D∂∬2 一一
7
0一五 〕9(x,X′;i,i′)=- ♂(a--′)8(i- t′)
を満 たす グ リー ン関数 9(
a,X′
;t,t
′)を用いて,
(
>
〇
(
X
)
u(
.
T,i)-.α J dx′J dt
′9(
x,X′
;i,t
′)f(
x′
,l
′)
0
-c
o
と表せ る。 また,定常状態 の解 u(
x)も,
-
52 5 -
藤川泰之
1
∂2
〔D京 7
T
o〕9(a,X/)= - ♂(x- X′)
--
を満 たす グ リー ン関数 9(x,X′)を用 いて,
(
X
)
弘(
x)-aJ
0dx′9(x,X′)f(x′)
④′
と表 せ ろ。従 って,
C
<
)
C
く
)
u
(x
,
i
)-
α
J
d
t
′
F
(
)∫
i′
d x′ 9
( x
,
X′; i,
t
′)
0
×T(a)
,)K(
W・
,
)eK (W′)・
x
′
u(
a)-。f
W′
)K (α′)e
K'
W′)
x′
0dx′9(x,X′)T(
と書 ける。 これ らを④ に代 入 して,
_互竺
Z(a
'
,a'
′, i)- a・e KT
山
J
一
・
0
0d
i
′
F(t′)
⊂
×
⊃ CくI
XI
xJ
,t′)T(a')T(W′)K(W)K(al
′
)
0d
0 dx′9(x,X′;i
×
e-K(W)。3 e-K (W/)・・
x/
_互竺
Z(a
)
,W′)- α ・e KT
く
:
×
)
C
く
〉
×J
)T(
Q
'
)T(a
'
′
)K(
W)K(
a
,
′
)
0 dx J
0 dx′9(x,X′
× e-K(W)a ・e-K(u/)a/
④
′
が得 られ る。
ここで, グ リー ン関数 9(x,X′
;i,i
′)及 び 9(x,X′)は x と x′について対 称 である と
い う性 質 を持 っ こ とを注意 してお く. これ は桓)
式及 び(
¢′
式 にお ける 2壷 積分 が a'と W′ にっ
いて対称 で あ るこ とを意 味す る。 これ は発光 スペ ク トル と励起 プ ロフ ァイルの形状 の相似性 を
示 唆す る。
4-3 定常状態 の解 と発光 スペ ク トル形状及 び励起 プ ロフ ァイル
価
定常状態 での式 ① ′は解析 的 に解 くこ とが でき るO拡散 距離 を Lくと,
-526-
,
S/
D-
k とお
znTeの励起子発光とラマン散乱
方a
)
I(a
,
,a
,
′
)- α ・e KTT (
a
,
)T(
a
,
′
)・I.(
a
,
,a,′)
(
K(
W)・
L)(
K(
a
)
′
)・L)(1+K(
a
)
)・L+K(
a
)
′
)・
L+ h・L)
I
. (
a
,
,W′
)
(1+K(
a
)
)・L)(1+K(
W′
)・L)(
K(
a
)
I
)・
L+K(
α)・L)(1+ h・
L)
と書 ける。
図 Ⅳ - 18(
a
)は Z.(a
,
,a
,
′
)を α- K (
a
,
)・
L の関数 とみた場合 の形状 であるo 各 々の曲線
は, h・L-0
,
1
,
1
0
,1
00の場合 で, K(
Q
'
′
)・L は 5に固定 してい る。 aは励起子 と光子 の相
a
,
)に比例す る量 である. K(
W)が小 さい領域 では, I
.は
互作用強度 に対応す る吸収係数 K (
K(
a)に比例す るo Lか LK (
a
,
)が大 きな領域では発光 の再吸収 がお こ り, I.は K (
a
,
)に比
例 しな くなる。 ここで表面 での再結合 kが Oの場合
h.
しこ
0
汁(
U'
).
L;5
は,再吸収 による Z. の飽和 がお こるが,それで も
L=t
h.
なお, I.は K(
a
,
)につ いて単調増加関数 であるた
h.
し三】
0
a
'
)の ピー クにめ, この場合 の発光 の ピー クは K(
致す る。一方,表面 での再結合 が存在す る場合 は図
3
に示す よ うに, IoはあるK(-Ko)で ピー クを持
8
つ 。従 って K.を境 として, よ り大 きな吸収係数 に
5
1
8
L
S
K(
L
J)
・
L
対 しては Ioはむ しろ減少す るo 従 って この よ うな
図 Ⅳ- 1
8
.a
場合,吸収 が K。 よ り大 きい領域 において発光形状
Io(W, a'′ ) の (
K (a
'
)・L)
依存性 o K (a,
′)・L は固定 .
に くぼみ を持 っ ことにな る。励起子 による吸収 は励
起子準位 ET で ピー クを持っ と考 えられ るo従 って
この理論か ら,発光 スペ ク トルにおける ET での くぼみ を説 明す ることができるoそ こで,励
起子 の吸収 を想定 した K(
a
,
)を用いて, い ろいろな k,L について Zo(
a
,
,a
,
0) の数値計算 を
b
)に示す。 A-1-A-3は Lを固定 し,kを変化 させた図
行 な った。その結果 を図 Ⅳ- 18(
で, B- 1- B- 3は んを固定 し, 上 を変化 させた図 であ る。
A- 1の中の点線 は計算 に用
a
,
)である. ZnTe の励起子準位付近 の正確 な吸収 スペ ク トル のデー タがないため,
いた K(
以下 の方法で K (
a
'
)をつ くった。
(
1) n- 1の励起子吸収 スペ ク トル Kl(
a
,
)を Lore
nzi
n
a
K
a
,
)- A L T
a
,
T√手
(
γ/2)
l (
C
J方,
で近似す る。 a,
T-E
(a
)
T- a
)
)
2+
(γ
/
2)
2
ALT は縦横分裂 であるo また, 7
7K でのダ ンピン、
グェネルギ
ー γは 0
.
036e
V とした。
-
527-
藤川泰之
(
2) n-2--の励起子及 びバ ン ド間遷移 による吸収
(
A)
1
1
し
ニ
ー
0m
を入れ るた め,高 エネル ギー側 で n- 1励起子 の吸
収 が ピー クの半分 にな った ところか らは,一定 の吸
(
8)
1
h=0'
1
A
I
x
二
一
-a-. グ
.
,
ヽ
.
-f
、.
収 がある もの とす る。実際, ZnTe と同 じ 正一Ⅵ族
化合物 半導体 で ある。 CdTeや CdSe の吸収 スペ
A
2
L
'
l
H
m
B
h
:
2
I
OS
t-
0
.
t
p
m
し
=
a
h
:
3
7
0
r
.
6
+
'
Y
+
..
.
.
+
w
A
V
EN
U
M
t
f
Rk
r
n
J
)
1
1
2
ク ト項 まほぼそ の よ うにな ってい る
図 Ⅳ-18(
b
)
のW ,0
3
) よ り得 られ た結果 を示す.
偶 表面での再結合 Sが小 さい場合は,Zo(
a
,
,a
,
′)
は
励起子準位 ETで ピークを持つ。 Sを大 き くす るに
Tでの値 は しだい に小 さ くな り,I.
(
W,
仙′
)
従 い, E
は ET の位置 に くぼみ を持 つ よ うにな るO
脚 Sが大 きい ときは拡散距離 Lを変化 させて もく
ぼみは存在す る。ただ し, L が大 き くなるにつれ
て くぼみは大 き くな る。 また, Sが小 さい場合,
図 Ⅳ- 18.b
A - 上 か ら S- 0
, 106
, 107
,
10号∞c
m/S,D- 1
02c
m2/s
・
・上 か ら L- loom ,1pm,
B・
0.1pm,D- 102c
m2/
s
o
点線は用いた吸収スペクトル, J
は励起位置 を示 す。
L の大 きな場合 は ET で くぼみ を持つ が, L が小 さ くなる と, ET の位置が ピー クになるo
次 に数値計算 の結果 と実験結果 の比較 を行 な う。図 Ⅳ
… 13で示 した よ うに, 励 起強度 を強
くす るこ とによ り,励起子 の寿 命がのび る。 また,拡散距離
L-√万言 であるか ら, 寿命がの
び るこ とに よ り 上 も大 き くな ってい く。一方, 図 Ⅳ- 2で,励起強度 が弱い ときは,発光 スペ
ク トルは ET の位 置 に ピー クを持 ち,励起光 の強度 を上 げてい くと, ET の位置 の発光 は減少
し, くぼみ にな る。 この 2つ の実験結果 は, 上 の個 で述 べ た こ とと一致す る。従 って図 Ⅳ- 2
の発光形状 の変化 は,図 Ⅳ- 1
3で示 した寿命 の のび による ものであることがわか る。また,
pure
」 サ ンプル には見 られず , 励起光 を弱 くして も'図 Ⅳ
図 Ⅳ- 2で示 した形状変化 は, 「
2にお ける強励起 の場合 の形状 しか見 られ ない。 これは, 「pure
」は 「
undope
」 に くらべ て
不純物 が少 ないため,寿命 丁。が長いか らであろ うo
以上, この Io(a
,
,a,
′
)に よ り定性 的 には実験結果 を うま く説 明 できたo しか し,定量的 に
比較 す ると,計算 によって得 た くぼみ は実験 に比べて浅 い。計算 の場合 , くぼみ の深 さには限
界 があ り,S を大 き くして も Lを大 き くして もそ の限界以上 に深 くはな らない。 この実験 との
差異 の原因は不明 である。
次 に この Z(a
'
,a
'
′
)を用 いて,励起 プ ロファイルの考察 を行 な う。 a
,
′は励起光 の振 動数 だ
か ら, I(a
,
,a
'
′
)は W′にっ いて見 ると,励起 プ ロファイル を表 してい る。一方, §Ⅳ-4-
1で述 べた よ うに Z(Q
',a'
′
)はボル ツマ ン因子 を除いて, a
,と G
,
′について対称 である。従 っ
-
5
2
8
-
ZnTeの励起子発光 とラマン散乱
て励起 プロフ ァイル と発光 スペ ク トルはボルツマ ン因子 だけ異 なるoす なわ ち IL (
a
,) を弟光
スペ ク トル, ZE(
W)を励起 プ ロファイル とす ると,
∴匡型
IE (
a)α
IL (
a
,
)/e KT
なる関係 が成立す る。 これ を調 べ るため,図 Ⅳ-7に示 した励起 プ ロファイル と,発光 スペ ク
トル を e-hu/KT で割 った ものを重ねて比較 してみた。 a
)と Q
)
′の対称性 よ り,
UP発光 と LP
発光 のプ ロファイル を,それぞれの発光 の ピー クを励起 した発光 スペ ク トル とを比較 した。図
Ⅳ- 1
9(
a
)は UP発光 の励起 プ ロファイル と, 1
91
48c
m1励起 の発光 スペ ク トル を e佃
/
KTで
割 った もの を比較 した ものである。 また,図 Ⅳ- 1
9(
b
)
は LP発光 の励起 プ ロフ ァイル と
19081c
m-1励起 の発光 スペ ク トル を e-hw/KT で割 った もの を比較 した ものであ る. この図で
は, (
a
)
,(
b
)ともに励起 プ ロフ ァイル と (発光 )÷ e-hw/KT は よ く合 ってい ると言 える.
4- 4 時間 を含 んだ解 と発光寿命
t′)
)
(.
っ.
P
;i,
時間 を含 んだ式④ の グ リー ン関数 9(x,X′
^ト HSN 3LN
は,
t-i
/
9(x,X′
; i, i′
)-
To
4
7
T
D(i- i/)
1
8888
1
98即
1
g柑 C
I 1
9288
v^yE MJ
HOER く帥 ▲
.
)
1
93
89
(
Q)
L
91fI
O
PHDT
DN ENERGY く
●V)
2.34 2.35 2.36 2.37 2.38 2.〕9 2.J
I
¢
(∬ 十 ∬ ′) 2
4D (
十
1
8g的
(
.
⊃
d
)
×
(
α
α
/
)
2
i
/
)+e
D
(
i
〔e 4
l
e
t/)
^L -5N3LN
0
0ー(∬ 十 ∬′十∫)2
hods ]
- 2hI 。 一
言D(i-…
'
'
) e-
T
である.ただ し,
A- S/D である。
としてのみ入 るので,
i- t
') と書
9 (x , X ′
tと
i
′は t- t′
1
88C
I
O
1
8988
;i,t
′
)- 9(x, X ′
1
98
l
gl
E
柑
1
928
0 1
9388
V^VE MJ
MOER (
C・
〉(
b)
W
1
94朋
図 Ⅳ- 1
9
くと, (
¢式 は,
万a)
-
Z(a
'
, W ′, i)- α ・e KT
O
く
)
G(
a
'
,a
l
′
,
i -
t′) - ∫
0
⊂
l
⊃
∫
dt
′F(t')G (a
'
, '
′
,i-i
′
)
L
l
_
l
a
∞
dx ′ J
0
d
x
g(x, X ′,i- t′
)
× T(
a
,
)T(
a
)
′
)K(
a,
)K(
a
,
′
)e K(如
eK(山′)x′
と書 け,パルス F(t′
)と応答 関数 G(
a),a
)
′,i- i′
) の コンボ リュ-シ ヨンで書 ける。従 っ
-529-
藤川泰之
て以後,応答 関数 G のみ議論す る。
G(
W,a
)
′
,i)を下 の よ うに 2つに分 ける。なお, t - 0とおいた。
′
i
G(
W,a
,
′
't)-T(
a
,
)T(
6
,
′
)e To G。(a
,
,W′
't)
G.(
W,α,
, i)-
1
ノ4打Dt
J
x
0
0
/
)
(
α
∬
′
)
2 (x
…dx , f d 。 K(W′)3'e-K'u)∬K
〔。 こす訂
x十 2
…
l
)
○
」+。 ⊥完 「 - 2h I 。
(W ) K
(W ′)
(x 十xJ十 S)2
・
l
Dt
。 h S ds 〕
この Goの数値計算 を ん-0, 1
04, 1
05,106,- c
ml について行 なった o K(
a
,
)Q
ま§Ⅳ-
4- 3で使 った K (
W)を用 いた.励起振動数 も §Ⅳ
-4- 3 と同 じく,K (a,
)の_
t
=
O
-クの半分に
a
)
)-K (
a
)
′
), K(
a
'
)- 2・K(
W′
), K(
a)-0
.
1・
なる場所 に した.発光 の位置 としては K (
K(
a
,
)の三つ の場合 を選 んで計算 した. これ らの位 置は, UP発光, ET , LP発光 の位 置に
00cm2/S としたo
相 当す ると考 え られ る。 また,拡散定数 D は, 1
この数値計算 の結果 を図 Ⅳ- 20に示す。 この結果 か らわか った点 を以下 に示す。なお,莱
際 の減衰 は これ に e小 Oをかけた ものである。
(
1
)表面 での再結合速度 S を大 き くす ると,励起子 の減少 が速 くなる.発光 に寄与す るのは再
吸収 の効果 が きかない表面近 くの励起子 のみである.Sが大 き くなると表面 での励起子 の密
度 u(
0,i)が小 さ くな り,発光 の減少 は速 くなる。
(
2) K (
a)が大 き くなるにつれて, G。の減少 は速 くなってい る。これは拡散 によって励起 子
の分布 が結晶 の奥 の方 に行 くため,再軟収 の効果 で発光量 が減少 してい くよ うす を示 してい
る。
(
3) G。の減少 のよ うす は, 2つの寿命 をもつ指数関数 に似 た形 で減衰す る。 この減衰時間は
ZnTeの減衰時間である数 1
0p
sか ら 1ns程度 の領域 にある0
T川 E(psp<)
図 Ⅳ- 20
発光の減衰の吸収係数による変化b 4つの実線は上から S- 0,109107- c
m/S,D- 100c
m2
/ Sである。
-530-
ZnTeの励起子発光 とラマ ン散乱
(
2
)
の結果 よ り,図 Ⅳ-5で示 した結果 を定性的 に説 明す ることができる。数値 計算 で用いた
吸収 スペ ク トルの形 が大体正 しい とす る と,寿命は吸収 が大 きい ところで短 くなるため, ET
よ り高エネルギー側 では寿命 が一定 で, ET 近傍 では寿命 が短 くな り,ETよ り低 エネル ギー
側 では再 び寿 命 が長 くな り, そ の長 さは ET の高 エネルギー側 の寿命 よ り長いはずであるo
これ は図 Ⅳ- 5の結果 に一致 している。
3
)
で寿命が 2つ の成分 を持っ よ うになるこ とを示 した。 この寿命 の 2成分性 は図 Ⅳまた,(
3及 び図 Ⅳ- 4に示 した寿命 の 2成分性 と一 見一致 してい るよ うに見 える。 しか し,図 Ⅳ- 4
のデー タでは吸収 がほ とん どない領域 において も二成分 の寿命 を持 ってい る。従 って,この寿
命 の 2成分性 は,再吸収 によるものではない ことが結論 で きる。
7K にお ける ZnTe
この寿命 の 2成分性 は,束縛励起子 の影響 と考 え られ る。図 Ⅳ- 21は 3
の発光 スペ ク トルである。矢印 で示 した発光 は温度 を低 くす るに従 って強 くなってい る。 また,
2
)
oこの図では,束縛励起
図 Ⅳ- 22は 60K にお ける発光 スペ ク トル とその寿命 を示 してい る 1
子 の発光寿命が長い ことを示 してい るo この ことよ り, ETか ら 100c
m1下 に寿命 の長い束縛
Pト
のT洲 ENERGY (
●V)
励起子準位 が存在す るこ とを示 してい る。
2・34 2.35 2.36 2.3
7 2.38 2.39 2.伯
衡 になってい る と考 え られ る。その場合,励起子
の発光寿命 は吸収がない場所 で も 2つの減衰 時間
(.
r
l
.
q) ^1 1SN31N
77K では,この束縛励起子 は 自由励起子 と熱平
ZnT
e 37K
BE
f
を持 っ ことができる。簡単 のため, 自由励起子準
位 を一 つの準位 としたモデルで, この 2成分性 を
,
n
1
91
BB
Y^VE NUJ
I
BER
l
92的
1
93舶
1
9佃
O
(¢ F-1 )
l の減衰寿命 を T。' Tl, nO→
nl,
.q
Jヱ
γ
n
γ- 1/T, ′=1巨 ′として,
こ(
t
J
- n。 の寿命 を T , T'とす ると, γ
.- 1/
T。,
γ1- 1
/Tl,
BEは束縛励起子 の発光 であ る。
T
ME(
p
'
)
0
nl
。
1
9色相
37K での ZnTeの発光 スペ ク トル。
自由励起子 の数 を n.,束縛励起子 の数 を nlと
n
1
891
,
0
図 Ⅳ-21
説明す る。
し,
lBO的
A
L
SN 3 1Nr NOJSSM
I
●
n0--(
r
o+r)
no
+r'nl
●
--(γ1 +γ′)nl+γn
。
u
n1
1
3
82
L
O
2
3
▲ 7
3
6
P
H
O
T
O
N【
N
E
R
G
Y(
r
V
)
図 Ⅳ-22
60K における ZnTeの発光 スペ ク トル
と発光寿命 。BEは束縛励起子 の発光である。
-531-
藤川泰之
が成立す る。 これ を n。(
0)- 1
, nl(
0)- 0 なる初期条件 で解 くと,
no(i)- A十e γ十t + A_eγ-i
・
±
-
去 〔(γ。+
+
+γ+γ′)
γ1
(ro
+rl
+r+r')2- 4[(ro
+r)(Tl
+r')- TT']
]
AE
と表せ るoただ し, n。 と nl が熱平衡 にな る条件 か ら,
γ′
- eKT ・
γ(AE C
まET と束縛励
00c
m 1 )とな る。 このよ うに束縛励起子 を考慮 に入れ ることによ り, 寿命 の
起子準位 との差 1
2成分性 が説明 できる。実験 では短 い寿命 は 150ps,長い寿命 は 1200psだが, これは例 えば
To= 176ps,
Tl =
1420ps, 7- 1000psで再現 できる。 しか し,他 の組合せ も可能 であ り,
この式 か ら γ。,γ1,γを決定す ることはできない。
a
,
,a,
′,i)を用 いて,発光寿命 の励起波長依存性 を議論す る。時間 を含 ん
最後 に, この G.(
だ式④ のグ リー ン関数 は,定常状態 の グ リー ン関数 と同様, α と α′にっいて対称 である。こ
れ によって図 §Ⅳ- 10の LP発光,
UP発光 の寿命 の励起波長依存性 を説明す ることができ
′の対称性 よ り,
励起
るO図 Ⅳ- 5で発光寿命 は ET のまわ りで短 くなっていた。 これ と a,と a,
-1Oで示 した
波長が ET に近 い場合 に も,寿命が短 くなることが予想 され る. このこ とは図 Ⅳ
実験事実 に一致 している。
4- 5
トラ ップの存在 と発光強度 の励起強度依存性
通常,結晶中 には種 々の不純物や格子欠陥が存在 し, その中には励起子 を トラ ップ し,福射
または非福射再結合 させ る もの もある。 このよ うな トラ ップは通常 1個 につ き 1個 の励起子 し
か捕獲 できない。 この トラ ップの存在 によ り,図 Ⅳ- ll,図 Ⅳ- 12,図 Ⅳ- 15で示 した発光
rl
i
ne
ari
t
y を説明す るこ とがで きる 13)0
強度 の励起光強度依存性 の supe
励起光強度 が弱 く,生成 され る励起子 の密度 が小 さい場合,そのほ とん どが トラ ップ され,
励起子 の発光 は弱い。 また, この場合,生成 された励起子 は急速 に減少 し,そ の減衰 時定数 は
短 い。励起光強度 が強 くなると, トラップの うちのある程度 は励起子 を捕獲 し, トラ ップの効
果 を失 な う。 この トラ ップの飽和 によ り, トラ ップの数 は見 かけ上少 な くなる。従 って発光強
uper l
i
ne
ar になる。 また,見かけ上 トラ ップの数 が少 な くなると,
度 は励起強度 に対 して s
励起子 の寿命 も長 くなる。
upe
r l
i
ne
a
r
i
t
y の トラ ップによる説明においては,励起
この S
子 の寿命 と発光強度 には簡単 な関係 がある。励起子 の発光 による減
- 5
32-
:
_
=
_
三
znTeの励起子発光 とラマ ン散乱
衰時定数 を TR, トラップによる非福射緩和寿命 を TNR,励起強度 を ∫。x ,発光強度 を 左
と
=
す るo t 0で励起子 が n。つ くられた とす る と,発光量 IL は,
左=
1/TR
1巨 R+ 1/TNR
である0本論文 で用 いた試料 は不純物 が多 く, TNR≪
1巨 R
I
L=
TR であるため,
TNR
i完
no =
TR no
となる。 n。は IeX に比例す るため
IL∝ TNR
・
I ex
-- ㊨
とな る。
-12で示 したよ うに, パルス光励起 の場合, IL は Zex の 1・7乗 に比例す るO この と
図Ⅳ
-14で,パルス光励起 によって求
き,① 式 によ り, TNR∝ IeXO・7 でなければ な らないo図 Ⅳ
めた寿命 は,励起強度 の 0
.
7乗 に比例 している。従 って,発光 の superl
i
ne
ari
t
y は寿命 のの
びによるものであるといえる。
また, C
W光励起 の場合 は,発光強度 は励起強度 の 1.
5乗 に比例 す る。一方,図 Ⅳ- 13 で
W 光励起時の発光寿命 は,励起強度 の 0.
5乗 に比例 す る。 この場合 も④ 式の関係が
測定 した C
-15で示 した, 励起子準位近傍 を励起 し,発光 を減少 させた場合 で も
成立す る。 さらに図 Ⅳ
uperl
i
ne
ari
t
y は励起子 の寿命 ののびだけ
④式 の関係 が成立 してい る。 よって発光 の寿命の s
に よるものであることがわかった。また, §Ⅲ
-1で述 べたが, 「pure」サンプルは 「undope」
サ ンプルに比べて発光効率 が高い と同時 に寿 命 も長い。これ よ り, 「undope
」 は 「pure
」 と
くらべて純度 が悪 く, よ り多 くの不純物 を含 んでい ると結論 できる。
§Ⅳ- 3で述 べたが, CW光励起時の寿命測定 において, C
W光 に異 なる波長 の光 を用 いた
W光 の効果 は トラ ップの飽 和 に使 う励起
寿命 ののびが トラ ップの飽和 によるとす る と, この C
子 を作 る効果 のみ を持っ ことになる。従 って励起子 を多 く作 る波長 の光 であれば どのよ うな波
長 で もよい ことになる。
4- 6 ラマ ン散 乱 とレイ リー散 乱
光 が分子振動や 固体 の光学 フォノン, プラズモ ン等 との相互作用 によ り散乱 された場合 をラ
マ ン散 乱 とい う. ここで扱 うのは縦光学 フォノン (LO phonon)に よる散 乱 である。 n個 の
縦光学 フォノンを放出 した散 乱光 は nLO ラマ ン線 と呼ばれ る。 励起波長が励起子準位付近 に
-
53 3 -
藤川泰之
ある場合 の ラマ ン散乱 は,励起子 の状態 を中間状態 とす る散 乱過程 が支配的であると考 えられ
てい るo従 って縦光学 フォノンを 1個放出す る散乱確率 Wは以下の よ うに書 ける 14)0
2
7
C
W--
a
<a
,
S
,,
.f
HER f
a
,
i
,
a
,
.><a
,
e
′
k
,
0I
HEL極。0><a
,
。
,0l
HERE
Q
,
i,0>
方2
(a
,
e
'+ a
,
0- a
,
i)(a
,
。- a
,
i)
× ♂(a,
i-
a
,
0
-a
,
S)
a
,
i,a
,
Sはそれぞれの振動数 をもっ光 , a
,
e,a
,
e
'はそれぞれの振動数 を持っ励起子, WOは縦
光学 フォノンの振 動数 であるo また, HER は励起子一光子相互作用, HEL は励起子 一格子相
互作用 であるO この式 は,入射 した光 が HER によって励起子 とな り, この励起子が走行 中に
HEL
によって フォノンを放 出 し,それが再 び HER によって
光 となる過程 を表 してい る。
右図は励起子 と光 の分散 を示 した ものである。W に含 まれ
聖
上=㌻
る行列要素 は,波数ベ ク トル の保存 しない ものについては 0
Lll■
になる。従 って 折 の中の因子
■
■
害
)
<W。,OI
HERb i'0>
/
∫1
a) e
a).
l
は図中の A 点 の光子 と B点の励起子のように kベ ク トルの合
山
phct
on
致 した場合 のみ,値 をもっ ことができ,A 点 とC点 ではエネ
折に寄与 しない。 この制 限のため,
ル ギー的には共 鳴 して も、
この因子 が共鳴す るのは wiが図中の wp に一 致 した時 のみ
である。一方,『 中の因子
<a
,
S,a
,
.l
HERI
w。
′Q
,
0>
『 2
a
)
e
/+
-
a)0
a
)
i
については,一見 い ろいろな a
,
iについて共鳴が可能 であるよ うに見 える. しか し,実は
♂((
O了 a
,
0- a
,
S)があるため, a
,
i- a
,
S+ a
,
。の条件 を満 たす場合 のみが W に寄与 す るO こ
れ を考 えると
<a
,
S,a,
0.
I
HE
W 2
a)/ -
e
R
Lw'a
,
。>
e
a)
S
とな り, Wl と同様 , a
,
S- a
,
′- a
,
p の場合,すなわち, a
,
i- a
,
p+ a
,
。の場合 のみ共鳴す る
e
ことになる。
-534-
7,
nTeの 励 起 子 発 光 と ラ マ ン散 乱
このようにWが共 鳴 増 大 す るa
,
は a,
i= a,
p(入射光共鳴 )の場 合
乱光共鳴)の場合が 存 在 す る 。
図Ⅳ-9では入射 光 エ ネ ル ギーが ET+
hw。の とき,ラマ ン線 は
と , a,i- a,p + W。
共 鳴 増 大 して い る .光 子 の
分散は励起子の分散 に く らべ て傾きが大 き い ため a,
p∼Q
,
T として よ い 。
散乱光共鳴による光 で あ る 。
入射光エネルギー が ET の とき,期 待 され る入射光共鳴は見 られ な い 。
の振動数がETの近い と こ ろ では, 吸 収 係 数 が大 き くな り,みか け の
するためであると考え られ る 。
次にレイリー散乱に つ い て 述べる。 図
(敬
従 っ て こ の 共 鳴 光 は
こ の理 由 は , 励 起 光
ラ マ ン散 乱 効 率 を 小 さ く
Ⅳ- 1
0で示 した レイ リー散 乱
きれいな結晶面を用い て行 な ってい る。 ま た ,入射光 の偏光方 向 と垂 直
は - き 開 して 間 もな い
な 偏 光 を もつ 散 乱 成
を測定しているoこの散 乱 は励起子準位 ET で共鳴増大す ることか ら, 表 面
散 乱ではなく,結晶内部 の 性質による散 乱 光 であ る。結晶 中の不純物 や 欠 陥
ルは励起子を捕獲する の み ならず弾性 散 乱 す る効果 をもつ。従 って この光
,
分
の 不 均 一 性 に
よる
に よ る ポ テ ン
シャ
は , 励 起 子 準
位を中
間状態とする,不純物 に よ る散乱光 で あ る と考 え られ る。
この場合の散乱確率 W は ,上のラマ ン散 乱 確率 W において, HEL の か
わ りに 励 起
物相互作用gE
Iを考え, ま た,瀞性散 乱 で あ るこ とよ り, α。- 0 とお くこ
と に よ
子一不純
り得 られるo
す なわち,
27
C
<a
,
S岬
W =-
ER l
a
,
。
′>< W。
′岬 ELk,
。>< a
,
JJ
I
ERf
a
,
i>
方2
(a
,
e
'- wi)(a
,
。- a
,
i)
× ∂(
W了
G
,
S)
である。
ラマ ン散乱の場合 と同様,因子
<a
,
。I
HERl
a
,
i>
α) e
α).
1
はa
,
i= a
,
Tで共鳴 し,因子
<a
,
sI
HE Rl
a
,
e
'>
)
/e
a
a(a
,
i- a
,)
S
G 7.
1
はa
,
S(- a
,
i)- a
,
T で共鳴す るo従 って レイ リー散乱の場合, a
,
i= a
,
Tで入射光,散乱光両
共鳴が起 こる。これは図 Ⅳ- 8で示 した結果 に一致 してい る。
-
535 -
藤川泰之
§Ⅳ-5 結
論
以上の考察か ら, 以下 のことが分 った。
(
1) 77K での ZnTeの発光 の以下の性質は, 励起子 による発光 の再吸収による効果及 び表面
での励起子 の再結合 による効果 によって理解 できることが分 った。
。
励起強度 が大 きい場合,発光スペ ク トルは励起子準位 ET で くぼみ を持っ.一方,励起
強度 が小 さい場合,発光スペ ク トルは ET で ピークを持っ。
○
発光 の励起 プロファイル と発光スペ ク トル をボル ツマ ン因子 で割 った ものは同 じ形 をし
てい る。
。
発光の寿命は励起子準位 ET で短 くなっている。
。
励起波長が ET に近い ところでは,発光の寿命が短 くなる.
(
2) ZnTeの発光 は励起強度 に対 して s
upe
rl
i
ne
a
r に増大す る。 この原因は,励起強度 を大
き くす ると,励起子の寿命がのびることによる。 この寿命ののびは励起子が不純物 に トラッ
プされ る効果及びその トラ ップの飽和 によって説明 され る。
(
3) クライオスタ ッ トや結晶表面か らの散乱光 を注意深 く取 り除 くことによ り,結晶中の不純
物 によると思 われ る レイ リー散乱が観測 され る。 この レイ リー散乱はラマ ン散乱 と同 じく,
励起子準位 ET で共鳴 して増大す る。
第 V章
励起子ポラ リ トンにお ける共鳴ラマン散乱 とル ミネ ッセ ンス
§†- 1 離散系 にお けるラマ ン散乱 とル ミネ ッセ ンス
物質に振動数 Q
,
lの光 が入射 し, 物質の状態が
I
g> か ら
I
f>(≠t
g>)に遷移 して
a,
S= W了
Wf
g
(wf
g= a,
了
a,
g)
の光が放出 され る過程 を一般 にラマ ン散乱 と呼ぶ。この散 乱
確率 をW とす ると,
<f回 n><n回 g>
wng
a)
i-
<f回 n><nl
pl
g>
乙γng
a)
ng
x ♂ (a,了
a)
S
Zγ
n
g
Ws- a,
f
g)
l
n> は中間状態 で, a,
ng= a,
n- a,
g,
J
Lは電気双極子モーメン トであるoこの式
では散乱 は I
g>か ら I
n>に遷移 し,その後, l
f> に遷移す る形 をとってい るOただ し,
と書 けるo
-
5 3 6 -
ZnTeの励起子発光 とラマン散乱
I
n> はエネル ギー を保存 せず; g-nの遷移 は vi
r
t
ua
lな遷移 と呼ばれ る。 この よ うな場合
g→ n , n→ fの遷移 は- つ なが りな過程 と して考 え られ る。 この遷 移 は物 質 と光 との 相互
作用
〟
を 2個含 むため,二 次光学過程 と呼ばれ る。
(
一方,光 が物質 に吸収 され,物 質 の状態 が
振 動数
wnf の光 の放 出 をともな って状態 が
I
g>か らあ る一 つ の状 態 I
n> に遷移 したのち,
I
n>か ら 巨>に遷 移 した場合,この光 は一般 にル
,
iミネ ッセ ンス と呼ばれ るo ラマ ン散 乱 はそ の振 動数 が a
勤数
a,
i
で表 され るので, 励起光 の振
を動 かす と, ラマ ンバ ン ドもそれ に従 って動 く。一方,ル ミネ ッセ ンスバ ン ドの振 動
数 は wnf で表 され るので,
a,
i
a,
fg
a,
1
・ を動 か して も変 わ らない。
を a,ng に近 づ けた場 合,W の中の
<f回 n><n回 g>
Wng
e
a)
之 γng
の項 が共鳴的 に増大す る。 この場合 のラマ ン散 乱 は共鳴 ラマ ン散 乱 と呼ばれ る。 ち ょ うど共
鳴 した場合 は, ル ミネ ッセ ンス と共鳴 ラマ ン散 乱は どち らも振 動数
a,
nf
をもっ ため,両者 の関
係及 び区別 についてはい ろい ろ議論 が な され,現在 で も人 によって解釈 が異 なる。 本論文 では
両者 を下 の よ うに定義す る 15)。
共 鳴光 wlが物 質 に吸収 され た後, 何 ら擾乱 を受 けず に再 び放 出 した場合 , この過程 は- つ
なが りの コヒー レン トな過程 である と解釈 で きる。 このよ うな過程 を散 乱 と呼ぶ ことにす る。
また擾乱 を受 けた場合 は
d
e
p
h
a
s
i
n
gのため上 のよ うな位相 関係 はな くな り, 発光 が起 こる
と解釈す ることが できる。 このよ うな光 をル ミネ ッセ ンス と呼ぶ 。
この散 乱 とル ミネ ッセ ンスは,パルス光励起 の場合 の時 間応答 に差 が出 る。 ラマ ン散乱は,
非共鳴 の場合 には レーザーパ ルスに追従 した時間応答 を示 し,共鳴 では位相緩和時間
T2 で 減
衰 す る0-万, ル ミネ ッセ ンスは分布 緩和 時間 Tlで減衰 す る.
§V- 2 励起子 ポ ラ リ トンにおける共鳴 ラマン散 乱 とル ミネ ッセ ンス
前節 では離散 系 にお け るラマ ン散 乱 とル ミネ ッセ ンスの区別 について述 べ た。 しか し,励起
子 ポ ラ リトンでは連続 な状態 を とる系 であるため,両者 の区別 は さらに難 か しくな る。
離散 系 においては,入射光 の振 動数 を動 かす とそれ に追従 して動 くのが ラマ ン散 乱, 動 かな
いのがル ミネ ッセ ンスであ った。 しか し,準位 が連続 的 に分布 してい る場合 はル ミネ ッセ ンス
の中に も励起振動数 に追従 す る成分 が存在 す る。
ポ ラ リトンの分枝上 を
とっ くられた励起子 は, フォノン散 乱 を うけなが ら分枝上 を動 き, ボ ト
tl
umi
ルネ ック領域 に熱分布 す る。この とき,熱分布 す る途 中において発光 した もの を Ho
-537-
藤川泰之
ne
s
c
e
nc
e(
H工
」
),熱分布 が完 了 してか ら発光 した もの を Or
di
na
r
y
l
umi
ne
s
c
e
nc
e(
OI
」
)と呼ぶ。 01
」は励起 エネル ギー を変 えて も,そ
」は励起 エネルギーに追従 して動 く。 この
の位置は変 わ らないが, HI
HLはちょうど, nLO ラマ ン線 と同 じ位置 に強 くなるため,両者 の
区別 が問題 になるわ けであ る。 また離散系 の場合 には,系 の擾乱 にお
いて,エネル ギー緩和 を ともL
な わない擾乱過程 が存在す るO原子,分
子においては衝突,溶液中の色素 においては,溶媒分子 の衝突 がそれ に相 当す る。 しか し,励起
子 ポラ リトンにお ける系 の擾乱 は,格子欠陥 による もの を除けば フォノン散乱 だけによるとい
って よい。ポラ リ トンでは準位 が連続 なため,散乱 され る先 に必 ず共鳴す る準位 が存在す る。
従 ってポラ リ トンはフォノンに散乱 され ると,異 なるエネルギーのポ
pha
s
i
ngとい う概念 が有効 か どうかは
ラ リ トンにな る。 この場合, de
よ くわか らない。
これについて相原 16)らは, 2LO線 の時間特性 が励起光のエネルギ
一によって変化 す ることを理論的 に示 した. この理論 によると,励起
光
i
'
5
光 のエネル ギー を ka,
EX , 励起子準位 を 方a,
T, ラマ ン線 のエネル ギ
EX>
ー を 方wL。 とす る と, a,
G,
T+ a,
L. の ときは 2I
J
0線 は レーザー と同 じ時間特性 を示すた
め, ラマ ン散乱 であ ると言 っているo また a,EX<
wT+ (
DL。
の場合 は, 210 線の減衰時間は
中間状態 の励起子 の分布緩和時間に一致す るため, 2LO 線 は HLであると結論 してい るo
実際, Cu
20において,励起子準位 に共鳴す るラマ ン線 が,分布緩和時間 Tl で減衰 す る こ
)
。 従 って この光 はラマ ン散乱ではな くHLであることが確認 された。
とが実験的 に示 された 17
そ こで本研究 では試料 を ZnTeとし,中間状態 を分布緩和時間が長いであろ うと予想 され る
ボ トルネ ック領域に とり, 2Ⅰ
.
0ラマ ン線 の寿命 の測定 を行 な うことによ り,ボ トルネ ック領域
の分布緩和時間の測定 を試 み た。 この実験結果 と考察 を次節 に述 べ る0
§V-3
実験結果及 び考察
図 V- 1は CW モー ド同期色素 レーザー を用 いて,ボ トルネ ック領域 に 1LO 線 が くるよ う
-2はこの場合 の発光 の時間特
に励起波長 を設定 した場合 の発光 スペ ク トルである。また図 †
a
)
は 2LO線 の位 置 での鋭 い線 +バ ックグラウン ドの発光 ,(
b
)は 2LO 線 に近 い位置 で
性 で,(
(
C
)の実線 は励起 に用 いたパルス形状 である.一方(
C
)の ドッ トは(
a
)か ら(
b
)を引 い た も
の発光 ,
ので 2LO 線 の位置 での鋭 い成分 のみ寿命 を示す 。(
d
)の実線 は(
C
)の実線 と同 じくレー ザ ー光
」
0 線 の近傍 での発光 の時間特性 で約 70psの寿命 を持 っている。前
のパルスで, ドッ トは 11
-538-
ZnTeの励起子発光 とラマ ン散乱
,LO,
L,
ト
ち.
D)>ヒ SNu≡ N
〇S
一
S-∑山
;,
nT
K
e
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t
Qt
i
on 2.
390e
V
2.
35
2.
37
2.
39
PHOT
ONENERGY(
e
v)
図
†-1
11
」
0線 がボ トルネ ックに位置す る場合 の
発光 スペ ク トル
⊃OU
トZ
でポラ リトンは準熱平衡状態 にある。従 って この
S
章 で明 らかになったよ うに,ボ トルネ ックよ り上
発光寿命 r-1はホ ラ リトンが光 に変 わ る寿命 を
γR-1,
不純物等 に トラップ され る寿命 を 定 とす
る と, γ-
γNR
+γR で表 せ るo これ と比較 す る
と,(
C
)に示 した 2LO 線 の減衰時間は明 らかに短
い。両者 の寿命 が異 なるこ とか ら,ボ トルネ ック
にお けるポ ラ リ トンの緩和 の原因 としては, ポ ラ
リ トンが光 に変 った り,不純物 に トラ ップされ る
緩和 よ りもポ ラ リ トンブ ランチ内でのフォノン散
-0.
5
乱 に よる緩和 が支配的であることがわかる。 また,
2Ⅰ
.
0 線 の減衰 時間が分解能 (- lops)以 下 で
あることか ら, フォノン散乱 による寿命 √
<10
1
ps であると考 え られ る。 このことか らも, ポラ
リトンが準熱平衡状態 にあることがわか る。
0
0.
5
1
,
0
TI
ME
_(nsec)
図
Y-2
図 †-1で示 した発光 の寿命
(
a
) 21
」
0線 での鋭 い線 +バ ックグラウン
ドの寿 命
命
(
b
) 2LO線 の横 の発光 の寿
(
C) (
aト (
b)とレーザー (
d) lLO線
の横 の発光寿命 とレーザー
このことに関連 して, 77K にお け る縦 音響 及
び縦光学 フォノン散乱確率 を ZnTeの物性 定数 をもとに計算 した。 ただ し,横音響 フォノン
及 び横光学 フォノンは無視 した。ポ ラ リ トンは励起子成分 と光子 の成分 の両方 を含 んでお り,
ポ ラ リ トンとフォノンとは この励起子成分 を使 って相互作用す る。励起子 と縦音響 フォノンと
ノ
芸
は変形 ポテ ンシヤル
q
l
′
2(Ecqc- E q
h
,
x
宗
v
- 539-
\芸芸
藤川泰之
に よって相互作用 す る
1
8
)
o pは結晶 の密度 , u はフォノンの速度 , ECと Evは伝導 帯 と価
電子帯 の-電子変形 ポテ ンシャルであ るo nqは波数 qの フォノンの数, qe,qr は電子 と正
孔 の電荷分布 のフ- リェ変換 で
q- ll
+(
7
nh
e
7
ne十 mh
aB
7
n
)2]
-2, qh- 〔1十 (
7
ne+
2
隻
隻
mh
_ )
2 〕
2
2
は励起子 のボーア半径, m。, 7
nh は電子,正孔 の有効質量 であるoまた縦光学 フォノン
とは Fr
l
61
i
c
h i
nt
e
r
a
c
t
i
on を通 じて相互作用す る. この相互作用 は
27
T
ha
)
L
Oe
√
禿
e… -eo )〕1
(⊥
/
2(qe- q
h
)何 て
1
吸収
放出
で表 され るo V は結晶の体積, a,
LO は縦光学 フォノンの振動数 であるo この計算 を図
V
-3
に示す。
2
.
330
J.
3L
'
0 2.350
2.
360
2
.
37
0
238
0
2.
3
90
2.
も00
2,
41
0
2
.
L
'
2
0
ENERGY (eV)
図
†-3
ポ ラ リ トンのフ ォノンに よる散乱確率 γ。横軸 はポ ラ リトンのエ ネル
ギー,縦軸 は γ 1 を示 す。
この図ではボ トルネ ック付近 での縦音響 フォノンに よる緩和時間は 1
04- 1
05 ps と長い。
これは一見実験事実 に反 してい るよ うに見 える。 しか し, この領域 では縦光学 フォノンによる
散乱が支配的 である。 しか も, このエネルギー領域 では縦光学 フォノンの吸収 による散乱が支
配的 であるため,励起光 によってつ くられたポ ラ リ トンが縦光学 フォノンを放 出 して この位置
1540-
7
J
nTeの励起子発光 とラマ ン散乱
にや って きて も,す ぐに縦光学 フォノンをす って も′
との位置 に もどるこ とになる。従 って励起
光 の位置での縦音響 フォノンによる散 乱 も問題 にな って くるわ けであ る。図では この励起エネ
ル ギーの位置 での縦音響 フォノン散乱 による寿命 は数 ps程度 であ る。 従 って実験 で得 られた
21
J
O線 の減衰時間は この時間が測定 され た と考 え られ る。
この章の結論 として, ボ トルネ ックに中間状態 を位置 させた場合 の 21
」
0 線 の減衰 は,入射
光 のエネルギー位置 での音響 フ ォノン散乱時間が反映 して減少す ることがわか った。
謝
辞
櫛 田教授 には, この 2年 間理解 の遅 い僕 を忍耐強 く御指導頂 きま した。その御陰 でなん とか
修士論文 を書 き上げ ることができま した。心 か ら感謝 いた します。
また,助手 の栗 田先生 には研究 の細部 にわたって御指導頂 き,言葉 では言い尽せ ないな ど御
世話 にな りま した。
斎宮先生 には しば しば有益 な助言 を頂 き実験 を行 な う上 で大変 に参考 にな りま した。
また, ZnTe結晶 を提供 して頂いた大阪大学工学部 の中島先生 に深 く感謝致 します。
最後 に 2年間,僕 の研究及 び生活 をささえて くださったすべてのみな さんに感謝致 します。
参
考
文
献
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2
) 青木昌治 :応用物理
第 37巻 (
1968)296.
(
3
)豊沢豊 :物性 Ⅰ (現代物理学 の基礎 ・7 )岩波書店
(
4) 木下修一 ・櫛 田孝司 :固体物理 17 (1986)272.
(
5
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1
4) 中村新男
固体物理
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4(
1979)665.
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藤川泰 之
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固体物理
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