₁ /CDDPを用いた化学放射線療法により 根治を得られ

横浜医学,₆₅,₅₅₃-₅₅₇(₂₀₁₄)
症例報告
TS- ₁ /CDDP を用いた化学放射線療法により
根治を得られた食道癌の ₁ 例
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神 尾 一 樹 ,鈴 木 喜 裕 ,谷 和 行 ,
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白 石 龍 二 ,利 野 靖 ,益 田 宗 孝 平塚共済病院 外科,
横浜市立大学大学院医学研究科 外科治療学
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要 旨:症例は₆₃歳,男性.₂₀₀₆年 ₃ 月から喉のつかえ感と嚥下困難を自覚し,₄ 月に当院受診となっ
た.精査として行われた上部消化管内視鏡検査で,門歯から₃₀cm から₃₅cm に半周性 type ₂ 病変を認
めた.病理組織学的検査では低分化型扁平上皮癌で,T ₃ N ₀ M ₀ (c Stage Ⅱ)であった.手術の方
針としたが患者は手術を希望されず,化学放射線療法の方針とし,₂₀₀₆年 ₅ 月より開始した.化学療
法は TS- ₁ ₁₀₀mg/body( ₃ 週投与 ₂ 週休薬)とシスプラチン(CDDP)₈₀mg/body( ₈ 日目投与)とし
た.照射野は原発巣縦隔照射とした.照射₄₀Gy の時点で効果判定 PR であった.₂₀₀₆年 ₇ 月,照射
₇₁.
₂Gyで化学放射線療法を終了し,効果判定 CR となった.続けて TS- ₁ +CDDP による化学療法,さ
らに TS- ₁ 単剤による化学療法を行った.その後経過観察としているが,治療開始より ₈ 年経過した
現在再発所見を認めず根治と判断した.進行食道癌に対して TS- ₁ /CDDP を併用した化学放射線療法
により根治した症例を経験したので報告する.
Key words:
食道癌(esophageal cancer)
,化学放射線療法(chemoradiotherapy)
,TS- ₁ (TS- ₁ )
,
CDDP(CDDP)
,完全奏効(complete response)
緒 言
症 例
TS- ₁ は,抗癌剤としての活性本体であるテガフール,
症例:₆₃歳,男性.
₅ -フルオロウラシル( ₅ -FU)の作用時間を延ばすギ
主訴:喉のつかえ感,嚥下困難.
メラシル, ₅ -FU による消化管障害を抑制するオテラシ
既往歴:特になし.
ルカリウムの三剤を配合した経口抗癌剤である.最近食
現病歴:₂₀₀₆年 ₃ 月から喉のつかえ感と嚥下困難を自
道癌に対してはシスプラチン(CDDP)との併用で有効
覚.₂₀₀₆年 ₄ 月に当院受診し精査となった.
性が得られた報告例が散見される
来院時現症:身長₁₆₅cm,体重₆₀kg,体表面積₁.
₆₆㎡.
.外来通院での治
₁-₅)
療が可能でありながら高い奏効率が得られれば,今後食
表在リンパ節は触知せず,胸腹部には特に異常所見は認
道癌に対する第一選択剤となり得る.今回,進行食道癌
めなかった.
に対して TS- ₁ /CDDP を併用した化学放射線療法により
血液生化学検査所見:腫瘍マーカーを含めて異常所見
根治した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え
を認めなかった.
て報告する.
来院時画像検査所見(Fig. ₁ )
:上部消化管内視鏡検査
では,上門歯列から約₃₀cm から₃₅cm に渡る胸部中部食
神尾一樹,横浜市旭区上白根 ₂ -₆₅- ₁ (〒₂₄₁-₀₀₀₂)上白根病院 外科
(原稿受付 ₂₀₁₄年 ₉ 月₁₇日/改訂原稿受付 ₂₀₁₄年₁₀月 ₃ 日/受理 ₂₀₁₄年₁₀月 ₆ 日)
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