特集連載の第3回である本稿では、M&Aに関連する改 取得手続の整備が行われ、現行法における実務への影響も 正事項を概観する。 少なからぬことが予測される。 「会社法の一部を改正する法律」(平成 年法律 号。 以下、 そこで、本項においては、①キャッシュ・アウトの手法の 「改正法」 という) におけるM&Aに関連する主な改正点と 整備を中心に、改正法におけるM&Aに関連する主な改 しては、①キャッシュ・アウトの手法の整備、②親会社によ 正点を概説するとともに、実務上、留意を要する点等につ る子会社株式の譲渡に関する改正、③組織再編の差止請求 いて可能な範囲で付言することとする。 に関する改正、④株式買取請求制度の整備、⑤詐害的会社 なお、以下において、条文番号は、特に断らない限り、改 分割における債権者の保護に関する改正と、 多岐にわたる。 正法および 「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(平 このうち、①キャッシュ・アウトの手法の整備について による改 成 年 法 務 省 令6号。以 下、「 改 正 省 令 」という) は、特別支配株主の株式等売渡請求制度が創設されるほ 正後のものである。また、文中において意見にわたる部分 か、株式の併合手続の整備や、全部取得条項付種類株式の は、筆者らの私見である。 27 合、手続の開始からキャッシュ・ア ウトの完了まで2~3カ月を要する といわれているだけでなく、株主総 会・種類株主総会の開催のコストや 事務上の負担が生じているのが現状 である。 さ ら に は、 上 場 企 業 の 非 公 開 化 取 引においては、第1段階の取引とし て公開買付けを行い、株主が任意に 応募した株式を取得した後、公開買 付けに応募されなかった株式を取得 するためキャッシュ・アウトが行わ れ る こ と が 多 い が、 公 開 買 付 け 後、 キャッシュ・アウトの完了までに長 時間を要する場合には、公開買付け に応募しなかった株主が不安定な立 場に置かれることから、強圧性が高 まるとの指摘もある。 対象会社の株主総会の特別決議を要 こ と が 予 測 さ れ る 場 合 で あ っ て も、 総会を行えば決議が承認可決される ば、株主総会決議を要することなく 度 を 創 設 し、 一 定 の 要 件 を 満 た せ 支 配 株 主 」に よ る 株 式 等 売 渡 請 求 制 シュ・アウトを実現するため、「特別 そこで、改正法は、機動的なキャッ する(会 ①、 ②三)。また、既発 株式等売渡請求制度、株式の併合等 90 キャッシュ ・アウトの手法の 整備に関する改正項目 26 制上の理由等から、実務上は、全部 種類株式の取得が考えられるが、税 全部取得条項が追加される種類の株 加 す る 旨 の 定 款 変 更 案 に つ い て は、 行の株式の内容に全部取得条項を追 能としている(会 以下)。 キャッシュ・アウトを行うことを可 ①七)。臨時株主総会や 取得条項付種類株式の取得を用いる (会 ②、 議決権の 分の9以上を有する株主 具 体 的 に は、 対 象 会 社 の 総 株 主 の 179 シュ・アウトを行おうとする株主の 類 株 式 の 取 得 に つ い て は、 キ ャ ッ シュ・アウトに関する決議を行う場 項付種類株式の取得によるキャッ 種類株主総会を招集して全部取得条 約権者に対し、その有する対象会社 して、対象会社の株主および新株予 対象会社の取締役会の承認を条件と ( 以 下、「 特 別 支 配 株 主 」と い う )は、 10 大多数が議決権を有していて、株主 しかしながら、全部取得条項付種 主の種類株主総会決議が必要となる 309 ことがほとんどである。 特別支配株主による 株式等売渡請求制度の創設 制度創設の理由と 制度の概要 現行法上、キャッシュ・アウトを 行うための手法としては、金銭また は端数株式を対価とする合併、株式 171 108 1章 交換等の組織再編、全部取得条項付 111 第 8 経理情報●2015.4.20(No.1411)
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