23 貴金属装身具 主査 坂巻 章雄 先生 (一般社団法人 日本ジュエリー協会) Jewellery 宝石の美を華麗に彩る。 「貴金属装身具」職種は、主に金・銀・白金と、その合金を材料として、 宝石などをセットして装身具(ジュエリー)を製作します。宝石は、天然に 産するためその希少性が 尊ばれ、形状もそれぞれ 第51回技能五輪 競技課題例 異なります。装身具は、 身辺に装着するため形状 に制約はありますが、宝 第51回技能五輪 競技風景 魅 力 石の美しさを十分に引き 宝石の希少性こそ魅力の原点。 出し、装着性、耐久性に 「貴金属装身具」職種の魅力、それ 優れたものが求められま は使用する素材の希少性に起因しま す。その製作には、豊か す。宝石本来の希少性をひきたてる な芸術性とともに、習熟 華麗な装飾は、さらにその宝石の付 した緻密な技能が求めら 加価値を高めます。そのためには、宝 れます。 石が持つ本質をつかみ、芸術的な美 競 技 の ポ イ ン ト 宝石の希少性を引きたて、緻密な芸術力で世界に挑戦する。 へと昇華させる創造的な感性と洗練 された高度な技能が必要です。そし て、高度な技能に裏付けされた付加 競技課題は、9 時間 30 分以内に 課題に取り入れました。 価値が、お客 競技課題図に示されたペンダント枠 また、小さなダイヤモンドが入る 様の喜びを生 を、すべて手作業で製作します。 埋め込み部分の穴は、「裏取り」作 み 出 し ま す。 所定のサイズに事前加工された 業が組み入れられています。この技 まさに華麗な 18 金の板材 1 枚・丸線材 1 本・角 法は、国際大会では、必須技法とさ 美を追求する 線材 1 本と 2 種類の金ろう材が支給 れており、国際大会の基準にならっ 魅力があふれ されます。 て、糸のこまたは、鏨(たがね)を ています。 今回より、国際大会同様の競技進 使用し施工します。 行法を取り入れました。競技課題を 課題 2 として、ダイヤモンド用の 3 段階に分け、最終的に一つの作品 石座加工を取り入れ 2 時間で製作し (ペンダント枠)を作り上げ、 『総合 将 来 性 ます。丸線材を使った繊細な作業が 陶酔する希少性の美よ、 永遠なれ。 評価』を行います。 求められます。 世界各地の古代文明遺跡にもみら 課題 1 として、ペンダント枠本体 課題3は、課題1(ペンダント本体) れるように「貴金属装身具」製作の を 4 時間 30 分で製作します。ペン と課題 2(ダイヤモンド用石座)を 歴史は古く、その加工技術は時代と ダントの正面部分には、近年国際大 組み合わせ、最終的にペンダント枠 ともに変わってきました。日本にお 会で行われている『透かし作業』を を 3 時間で完成させます。仕上げの ける現在の技法は、明治末期から大 作業として『火肌(ひはだ)仕上げ』 正末期の生活様式の欧風化に伴って を施します。 海外から学んだ技法に、わが国古来 デザインは、一見シンプルで簡単 の伝統技法が加えられ発展してきま そうに見えますが、繊細な作業が求 した。そのいずれの時代も、人類は められ選手の美的センスが問われる その希少性の美に陶酔してきたので 課題です。作業の種類や技能の程度 す。そしてそれは、未来永劫、決し は、国際大会と同レベルです。 て変わるものではありません。 42 The 52th National Skills Competition
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