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貴金属装身具
主査
坂巻 章雄 先生
(一般社団法人 日本ジュエリー協会)
Jewellery
宝石の美を華麗に彩る。
「貴金属装身具」職種は、主に金・銀・白金と、その合金を材料として、
宝石などをセットして装身具(ジュエリー)を製作します。宝石は、天然に
産するためその希少性が
尊ばれ、形状もそれぞれ
第51回技能五輪
競技課題例
異なります。装身具は、
身辺に装着するため形状
に制約はありますが、宝
第51回技能五輪 競技風景
魅 力
石の美しさを十分に引き
宝石の希少性こそ魅力の原点。
出し、装着性、耐久性に
「貴金属装身具」職種の魅力、それ
優れたものが求められま
は使用する素材の希少性に起因しま
す。その製作には、豊か
す。宝石本来の希少性をひきたてる
な芸術性とともに、習熟
華麗な装飾は、さらにその宝石の付
した緻密な技能が求めら
加価値を高めます。そのためには、宝
れます。
石が持つ本質をつかみ、芸術的な美
競 技 の ポ イ ン ト
宝石の希少性を引きたて、緻密な芸術力で世界に挑戦する。
へと昇華させる創造的な感性と洗練
された高度な技能が必要です。そし
て、高度な技能に裏付けされた付加
競技課題は、9 時間 30 分以内に
課題に取り入れました。
価値が、お客
競技課題図に示されたペンダント枠
また、小さなダイヤモンドが入る
様の喜びを生
を、すべて手作業で製作します。
埋め込み部分の穴は、「裏取り」作
み 出 し ま す。
所定のサイズに事前加工された
業が組み入れられています。この技
まさに華麗な
18 金の板材 1 枚・丸線材 1 本・角
法は、国際大会では、必須技法とさ
美を追求する
線材 1 本と 2 種類の金ろう材が支給
れており、国際大会の基準にならっ
魅力があふれ
されます。
て、糸のこまたは、鏨(たがね)を
ています。
今回より、国際大会同様の競技進
使用し施工します。
行法を取り入れました。競技課題を
課題 2 として、ダイヤモンド用の
3 段階に分け、最終的に一つの作品
石座加工を取り入れ 2 時間で製作し
(ペンダント枠)を作り上げ、
『総合
将 来 性
ます。丸線材を使った繊細な作業が
陶酔する希少性の美よ、
永遠なれ。
評価』を行います。
求められます。
世界各地の古代文明遺跡にもみら
課題 1 として、ペンダント枠本体
課題3は、課題1(ペンダント本体)
れるように「貴金属装身具」製作の
を 4 時間 30 分で製作します。ペン
と課題 2(ダイヤモンド用石座)を
歴史は古く、その加工技術は時代と
ダントの正面部分には、近年国際大
組み合わせ、最終的にペンダント枠
ともに変わってきました。日本にお
会で行われている『透かし作業』を
を 3 時間で完成させます。仕上げの
ける現在の技法は、明治末期から大
作業として『火肌(ひはだ)仕上げ』
正末期の生活様式の欧風化に伴って
を施します。
海外から学んだ技法に、わが国古来
デザインは、一見シンプルで簡単
の伝統技法が加えられ発展してきま
そうに見えますが、繊細な作業が求
した。そのいずれの時代も、人類は
められ選手の美的センスが問われる
その希少性の美に陶酔してきたので
課題です。作業の種類や技能の程度
す。そしてそれは、未来永劫、決し
は、国際大会と同レベルです。
て変わるものではありません。
42 The 52th National Skills Competition