09 電気溶接 主査 藤井 信之 先生 (職業能力開発総合大学校) Welding 金属の接合は、ものづくりの基幹技術。 金属を接合する技術は、古代エジプトの装飾品やわが国の日本刀の製作に も使われています。鍛接といわれる技術で、加熱した金属同士を叩いて接合 する方法です。その後、20 世紀初頭 からは色々な溶接法が開発され生産工 程を担う重要な技術となりました。第 二次世界大戦では、船舶の軽量化、建 造期間短縮のため溶接技術は急速に進 歩しました。今日、ものづくりの基幹 技術としてあらゆる製品の製作を支え 第51回技能五輪 競技風景 第51回技能五輪 競技課題例 将 来 性 新世紀のものづくりを担い、 資源リサイクルを促進する。 ています。金属製品はもとより、セラ 私たちの身の回りにある金属製品 ミックスやプラスチックなどの材料に や家電製品、あるいは電車、自動車、 まで適用範囲は拡大しつつあります。 船、橋、 ビルディングそして原子力発 溶接法には多くの種類があります。 電所などあらゆる場所で、溶接技術 近年では光を使って狭い領域を溶融さ は使われています。 しかし、大量生産・ せ接合するレーザービーム溶接や溶か 大量消費の反省から、今日では資源 さずに固相状態で接合が行われる摩擦 のリサイクルに配慮した製品作りが求 撹拌接合(FSW)も良く使われてい められています。原発が停止しエネル ます。 ギー価格が上昇の一途をたどる中、 リサイクル性に富む金属を接合し製 競 技 の ポ イ ン ト 素材の特性を知り、各種溶接技術を駆使して作品を製作します。 品を作ることができる溶接技術は、時 代の要望に応えることができる重要 競技時間は 4 時間 25 分です。5 軟鋼圧力容器の製作を行います。 な技術の一つです。今後も、 ものづく つの課題があり、 (1)ティグ溶接(交 寸法精度、作品外観、X 線透過試 りの製作手段として、その重要性がま 流)によるアルミニウム合金の組立 験結果、製品強度そして図面で指示 すます増していくものと思われます。 て品、 (2)ティグ溶接(直流)に された施工が正しく行われたか否か よるステンレス鋼の組立て品、 (3) が評価対象になります。図面の読解 被覆アーク溶接による突合せ試験片 能力、溶接施工能力そして欠陥の無 (立向) 、 (4)ティグ溶接・マグ溶 い健全な溶接部を得るための極めて 接よる突合せ試験片(横向) 、 (5) 高い技術・技能が必要です。溶接に マグ溶接及び被覆アーク溶接による 関する総合能力が判断されます。 魅 力 鍛え抜かれ卓越した技能技術が製品に命を宿す。 金属に熱を加えると膨張し、冷え ねることによって精度・品質を向上 え抜かれ卓越した能力こそが優れた ると収縮します。これが溶接後の製 させることが可能になります。選手 溶接結果をもたらします。より良い 品に変形(ひずみ)が生じる理由で たちは、0.5㎜以下の寸法精度を目 結果をひたすら目指す隙の無い真剣 す。溶接を用いた製品の寸法精度を 指して製品を製作しています。 な選手の作業は感動的勇姿です。若 高く維持することは非常に難しい課 それを達成させる技術・技能を得 人が一心不乱で競技に取り組む姿勢 題です。しかし、金属の性質や溶接 るためには、絶え間ない日々の努力 を眼に焼き付けて頂きたいと思い 理論を知り、トレーニングを積み重 と勤勉で謙虚な姿勢が必要です。鍛 ます。 28 The 52th National Skills Competition
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