体育におけるエピソード記述の質的向上に 関する - MIUSE

Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
体育におけるエピソード記述の質的向上に
関する事例的研究
A case study of qualitative improvements of episode
description in elementary physical education
加納, 岳拓
KANO, Takahiro
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科
学. 2015, 66, p. 207-216.
http://hdl.handle.net/10076/14449
三重大学教育学部研究紀要
第 66巻
教育科学 (2015) 207- 216頁
体育におけるエピソード記述の
質的向上に関する事例的研究
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要
旨
本稿の目的は、大学生のエピソード記述への大学教員のコメントを事例として、体育におけるエピソード記
述の質的向上のための視点を提示することであった。そのために、中学校第 2学年を対象とした体つくり運動
を構想し、学生が TTとして全 6時間に参加した。各時間後にエピソード記述を行い、学生のエピソード記述
に対して、大学教員 2名がコメントを行った。大学教員 2名のコメントの背景にある意図を KJ法によって浮
かび上がらせ整理した。その結果、エピソード記述では出来事を「図」として浮かび上がらせる「地」が必要
であるが、体育授業において「地」をつくるためには、授業に関与する際に、受動的に出来事の事実や印象だ
けを見るのではなく、授業の課題や展開の意図、課題や展開の中でつまずきの要因の見通し、つまずきへの支
援の代案を推論しながら積極的に関与することの重要性が示された。また、課題へ向かう子どもの姿を、単な
る表層的な変容としてではなく運動の中心的なおもしろさや身体技法のキーワードとの関係から問い直すこと
によって、授業の枠組みや運動の見方について再構築が行われることが明らかとなった。
なぜなら、エピソード記述が単なる文章作成法ではな
1.緒言
く、エピソード記述を描いたり読み手と共有したりす
本稿の主題として掲げている「エピソード記述」と
ることが、子どもの現状の見取りや育ちの評価、保育
は、鯨岡(200
5)が提唱する、教育や医学など人との
者の対応などの「保育の質」(鯨岡,2009)そのもの
かかわりを持つ現場で広がりを見せている質的な研究
に関係し、エピソード記述の質を向上させることが、
アプローチの一つである。エピソード記述は、一人の
関与の質の向上にもつながるからである。
また、学校現場の中で、教師の質の向上のために中
主体としての現場で生きている観察者が、興味、関心、
知識、経験、理論、等々から「地」を明確に持ち、そ
心的な活動として位置づいている授業研究でも、授業
の背景に基づきながらある出来事を「図」として観察
で起きている事実を省察し、考察して自分自身の学び
し、そして、記述することを特徴とする方法であり、
に専念することが不可欠とされている(佐藤,20
1
2)。
観察者が没個性的となる行動観察とは一線を画してい
この立場から、体育学習の中での学びの事実の過程を、
る。エピソード記述には、観察者が持つ子ども観、人
エピソード記述の手法によって描いた研究が見られて
間観、価値観、学習観などが現れるために、出来事を
いる(岡野・山本,2012;柳瀬,2012;矢戸・岡野,
記述することで自らが持つ思考の枠組みを認識したり、
2012
;加納・岡野,2013
;岡野・加納,2013
;岡野ら,
読み手とエピソード記述を共有することにより、枠組
2013;加納・岡野,2014;加納ら,2014a)。
さらに、加納ら(2014b)は、体育の中で学びが生
みを再構成したりすることが目指されている。
エピソード記述は、教育の中では保育の場を中心に
成する姿を見取る力を高めるためのエピソード記述の
広がりを見せている(岡花,2010
;田尻・西口,2013)
。
描き方を提示している。そこでは、体育が運動を中核
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とした活動を行っていることから、運動の中心的なお
の用具として直径約 2m の鉄製の輪を 2本平行につ
もしろさに触れている身体技法 (注)を「地」に定めて
なげたラートを用いた(写真 1)。
記述をすること、さらには、学びが生起した場面を考
察するときには、観察者が何を学びが生起した事実と
して見取ったのかを「『変容前の姿』から『変容後の
姿』へ」と端的な言葉で表すことで記述者の理論的背
景が読み手に伝わる考察となり得ることを示唆してい
る。
しかし、加納ら(2014b)は、一つのエピソード記
述を陥りがちなエピソード記述事例として扱っており、
写真 1 ラート運動
継続的にエピソード記述を描く中で、エピソード記述
にどのような質的な向上が生まれるかについては、研
究の範囲外としている。
ラート運動には、運動の慣性、遠心力、重力などを
上手く利用することで、逆さまになったり転がったり
そこで、本研究では、大学生のエピソード記述への
する「非日常的な身体感覚」、ラートの動きに合わせ
大学教員のコメントを事例として、体育におけるエピ
て身体を操作するとともに、ある程度ラートに身を任
ソード記述の質的向上のための視点を導くことを目的
せることが必要な「器具に身を任せる感覚」、ラート
とする。なお、質的な向上過程が見られやすいように、
を操っているときにどのような身体操作をすればよい
これまでエピソード記述未経験の大学生(5名)を対
か(しているのか)という「身体の認知」といった特
象として研究を進めていくこととする。
性がある(後藤,2010)。 ラートを上手く操作するた
めには、ラートの動きに合わせた姿勢をつくることや、
ラートからの「情報を積極的に受信すること」などが
2.研究の方法
必要となる。そこで、ラート運動の中心的なおもしろ
(1)岡野・山本(2012)に基づき、ラート(写真 1)
さを「ラートを操ったりラートに操られたりする中で
を用いた体つくり運動の授業デザインを構想する。
ラートの動きに応じた身体操作をすること」と設定し、
なお、体つくり運動の「体ほぐしの運動」と「体力
身体技法を「ラートの軸と身体の重心の位置関係によ
を高める運動」の 2領域で明記されている 7つの内
る回転の推進と制御」とした。
また、本実践の領域である体つくり運動には「体ほ
容(文部科学省,2008)をラート運動の「中心的な
おもしろさ」と「身体技法」と関連させて設定する。
ぐしの運動」と「体力を高める運動」の 2つが小領域
として位置づいているため、各領域に位置づいている
(2)中学校第 2学年を対象にした体つくり運動の授業
実践(3時間×2クラス:計 6回)を関与観察(TT
内容をラート運動の中心的なおもしろさと身体技法に
関連付けて、以下のように設定した。
として参加)した大学生 5名が、各授業後に授業の
中で印象に残っている場面をエピソード記述し、そ
のエピソード記述に対して大学教員 2名が入れたコ
メントを KJ法(川喜田,1967)で整理する。KJ
【体ほぐしの運動】
①心と体の関係の気付き
怖さがあると身体に力が入り、慣れてきたり楽
法では、学生に対する教員のコメントの中で、誤字
しいと感じられたりすると力が抜け、表情がやわ
脱字に関するコメントを除いた全てのコメントを挙
らぐといったような心と体の関係に気付くことが
げ、コメントの背景にある視点を分類しながら図解
できる
②体の調子を整える
化する。
(3)KJ法の整理を基に、体育におけるエピソード記
仲間に身をゆだねたりゆだねられたりする活動
を通して、心も体もほぐれた状態で中心的な活動
述の質的向上の視点について考察する。
に入ることができる
③仲間と交流する
3.授業概要と事例の流れ
活動において体を補助したり支えたりすること
と、活動を仲間と一緒に協力して取り組むことが
(1)授業概要
エピソード記述事例として扱う授業実践は、三重県
A中学校第 2学年を対象にした体つくり運動 (全 6
時間を 2クラス)である。本実践では、体つくり運動
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できる
【体力を高める運動】
①体の柔らかさを高める
体育におけるエピソード記述の質的向上に関する事例的研究
体側をはじめとする全身の伸縮性と肩甲骨・股
5回目の授業(2/6)では、「姿勢を崩さずに乗っ
関節・足首などの関節の可動域を広げることがで
ていられるかな」と「姿勢を崩さずに、回転できるか
きる
な」が課題として設定された。授業前半では、ペアス
トレッチや地蔵起しなどの体ほぐしの運動と、ラート
②巧みな動きを高める
ラートの動きや回転の推進と制御にかかわる重
心の移動を行うために、力の緊張と解筋、四肢の
を使った歩行、シーソーなどを行い、後半ではスイン
グ、側方回転を行った。
6回目の授業(3/6)では「姿勢を崩さずに乗って
協応動作を自在に行うことができる
いられるかな」と「スイングの姿勢を崩さずに、回転
③力強い動きを高める
回転を滑らかに行うために、体幹を中心とした
できるかな」が課題として設定された。授業前半では、
姿勢の保持と四肢による安定した姿勢を保つこと
ラートの中の歩行やシーソーを行い、後半では側方回
ができる
転を行った。
④動きを持続する能力に関しては、この単元では扱
表 1 各授業の課題
わないものとする
上記のような授業の内容として各授業で「共有の学
び」と「ジャンプの学び」の 2つの課題を設定した
(表 1)。
ここから,各授業の課題と授業概要を示すこととす
る。なお、生徒の学びの支援を行うために、学生はラー
ト運動において全 6時間の内、特に支援を必要とする
単元前半の第 1時から第 3時に TTとして授業に参加
した。
1回目の授業(1/6)では、「ねらいにあった姿勢
や動きができるかな」が課題として設定された。授業
(2)エピソード記述事例の流れ
前半では、ペアストレッチや地蔵倒しなどの体ほぐし
エピソード記述は、授業実践に TTとして活動した
の運動を行い、後半ではラートを使ったバランス、歩
大学生 5名によるものであり、この 5名はエピソード
行や斜転を行った。
記述を初めて行う。大学生 5名は、TTとして授業参
2回目の授業(2/6)では「ラートの動きに合わせ
加する前に、2つの事前課題を行った。1つ目は、体
て、動いたり乗ったりできるかな」と「スイングの姿
つくり運動で活用するラート運動の実技講習を受け、
勢を崩さずに、回転できるかな」が課題として設定さ
テクニカルポイントや安全の確保のポイントをレポー
れた。授業前半では、ペアストレッチなどの体ほぐし
トとしてまとめた。2つ目は、加納ら(2014b)を基
の運動を行い、後半ではラートを使ったバランス、歩
に「体育におけるエピソード記述の描き方のポイント」
行や斜転に加え、シーソーやスイング、側方回転を行っ
を A4用紙 1枚でまとめた。
た。
事前課題を行った大学生は、各授業後に、授業の中
3回目の授業(3/6)では「不安定なところでも、
で印象に残っている一場面をエピソードとして起こし、
乗っていられるかな」と「基準タイムよりゆっくり回
考察を加えたエピソード記述【1.実践概要
ることができるかな」が課題として設定された。授業
ソード
2.エピ
3.考察】を作成し、大学教員 2名に提出し
前半では、ラートの歩行やシーソーを行い、後半では
た。大学教員 2名(2回目、4回目は 1名)がそれぞ
側方回転に基準タイムを設けた活動を行った。
れエピソード記述に対してコメントし返却した(図 1)
。
4回目からは、別クラスで単元の 1時間目が始まる
大学生は、それぞれのエピソード記述やエピソード
ため、3回目の授業が終わった時点で、授業者や参観
記述に対するコメントをお互いに共有し、次の時間の
者が行った各授業の振り返りを基に、4回目以降の授
TTに参加するという流れで、計 6回の TTとしての
業の課題や活動を再構成した。
授業参加とエピソード記述作成を行った(図 2)。
4回目の授業(1/6)では、「姿勢を崩さずにでき
るかな」が課題として設定された。授業前半では、ペ
アストレッチやメリーゴーランド、地蔵倒しなどの体
ほぐしの運動を行い、後半ではラートを使ったバラン
ス、歩行やシーソーを行った。
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から使用を禁止している(12件)。また、授業で印象
に残った場面を記述する際に、注目した子の言動だけ
ではなく、周りの状況や関係、文脈も合わせて捉える
ことを促すコメントが 3件見られた。
これらのコメントは、学びの支援として授業に参加
するために不可欠な授業を内側から捉えるという関与
の立場につながり(3件)、人と人との接面で何が生じ
ているかを明らかにしよう(鯨岡,2013)というエピ
ソード記述を描く目的にも直結するものである(2件)
。
さらに、印象に残った場面と似たような場面にこれか
ら出会う可能性が大いにあるため、エピソードの場面
に改めて身をおいた時に、どのような対応をとるのか
について振り返ることを求める指摘が 1件あった。
2回目のレポートに対して、全 15件のコメントが
図 1 学生のエピソード記述とコメント例
見られた(図 4)。ここでは、「エピソード記述のルー
ル」に立ち戻らせるコメントが 1回目と同様に見られ
た(4件)。他に、エピソードに対するコメントとし
て、読み手と「体験の共通性」が持てるエピソードを
目指して、運動が活動の中心である体育において大切
な動きについて具体的に示すことや、言語的コミュニ
ケーションにおける周りの状況を丁寧に記述すること
を求めるものが 3件見られた。
考察に対しては、1つのエピソードに対する考察の視
点が、前半の活動と後半のつながりや課題、支援の方
図 2 事例流れ
法、仲間の交流と多岐に渡っていること、考察とタイ
トルの視点がずれていることによって、何を「地」と
して描き、読み手と共有したいのかが不明確であると
4.エピソード記述へのコメントの整理
いう指摘が 4件見られた。一方では、コメント者がエ
各授業の学生のエピソード記述へのコメントを KJ
ピソードや考察の中で注目した言葉を基に、具体的に
法(川喜田,1
967)の手法を用いて整理した。なお、
子どもの姿や課題提示についての「地」の例を示すこ
図中の線は、以下の意味を示すものとして使用した。
とで、学生に視点の提示を行うコメントが 3件あった。
3回目のレポートに対して、全 15件のコメントが見
られた(図 5)。3回目のコメントでは、これまでと変
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わらずエピソードの事実から考察をするというエピソー
ド記述のルールについてのコメントが見られた(5件)。
一方で、2回目の「『地』が固まっていないこと」に
1回目のレポートに対して、全 30件のコメントが
対する指摘が 1件であるのに対し、学生の視点を深め
見られた(図 3
)
。その中でも、
「エピソード記述のルー
るための「『地』をつくるための視点提示」が意識され
ル」に関するものが、21件と多くを占めていた。ルー
たコメントが 8件見られた。地をつくるための視点は、
ルに対するコメントの内容を見てみると、考察内にエ
大きく 3つに分けられ、 1つ目は、「怖おもしろい」
ピソードには描かれていない新たな事実が書かれてい
「姿勢」といった体つくり運動の授業のねらいに向けた
ることに対する「事実と考察の混同(2件)」や、エ
「授業展開の特徴と課題提示(3件)」についてである。
ピソードに書かれていない事実から考察されている
2つ目は、授業の中で、恐怖感を持ったり姿勢が崩れ
「根拠の薄い考察への指摘(6件)
」であった。さらに、
たりしている生徒など、運動の質の向上が停滞した時
授業の事実を「学び」や「停滞」などという言葉で抽
の「つまずきの要因の見方(2件)」についてであった。
象化・一般化してまとめてある考察やタイトルに対し
そして 3つ目は、つまずきをきっかけに質の向上のた
て、「事実性」と「実感性」といった個別具体性が大
めの補助や声かけといった「つまずきに対する支援(3
切にされているエピソード記述から離れるということ
件)」についてであった。また、考察が読み手に了解さ
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体育におけるエピソード記述の質的向上に関する事例的研究
図 3 学生のエピソード記述(1回目)へのコメント
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図 4 学生のエピソード記述(2回目)へのコメント
れるものになるために、よりエピソードを詳細に記述す
支援の方法が生徒の運動の質の向上につながらない原
ることを求めるコメントも 1件見られた。
因についてのコメントで占められていたのに対し、ここ
4回目のレポートに対して、全 15件のコメントが見
では、成功した補助の要因について、授業のねらいで
られた(図 6)。「エピソード記述のルール」に関するコ
ある「姿勢」や「重心」、「安心感」をキーワードとし
メントが 3件、「事実を丁寧に記述すること」に対する
て伝えているコメントが 7件見られた。
コメントが 1件、「エピソードの続きへ興味」を示して
さらに、3回目では見られなかった視点として、授
いるコメントが 1件見られる中、 3回目と同様に、
業で扱っているラート運動の特性に常に立ち戻りなが
「『地』をつくるための視点を提示」するコメントが最
ら事実を考察することを求め、特性の理解を深めるこ
多で 9件あった。その中でも「つまずきに対する支援」
とによって、つまずきに対する支援の手立てや視点に
についてのコメントが 7件見られたが、3回目の時には、
もつながる指摘である「運動の見方」や「授業のねら
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図 5 学生のエピソード記述(3回目)へのコメント
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図 6 学生のエピソード記述(4回目)へのコメント
― 212―
体育におけるエピソード記述の質的向上に関する事例的研究
ときの姿勢への考察を求める「課題達成の要因(1件)
」
いと課題」についてのコメントが 1件ずつ見られた。
5回目のレポートに対して、全 11件のコメントが見
に対するコメントが見られた。また、今回扱った体つ
られた(図 7)
。5回目のコメントの中で、9件が「
『地』
くり運動のカリキュラムの特徴からの考察を求めてい
つくるための視点を提示」しているコメントであった。
るコメントも 1件見られた。
以上のことを基に、コメントの中心的な視点を表 2
これまでは、「つまずきに対する支援」に関するコメン
トが多く見られてきたが、5回目のコメントでは 2件に
に整理した。まず、エピソードのルールに関するコメン
とどまっていた。一方で、課題にもどしながら活動す
トが、5回目を除く 1~4回、6回に見られている。次
ることの大切さや活動と課題の関連についての考察を
に、各回のコメントを見ると、1回目には「関与観察
促す「授業のねらいと課題」に関するコメントが 3件、
者の立場」と「エピソード記述の目的」、2回目には
授業のキーワードとなっていた「姿勢を崩さない」
「ラー
「地が固まっていないことへの指摘」、3・4回目には、
トに乗る」とはどのような状態であるのかという「運
「『地』をつくるための視点提示(子どもの姿の変容に
動の見方」に関するコメントが 3件、子どもの何気な
向けて)」、5・6回目には「『地』をつくるための視点
い言葉と授業のねらいの関係について考察を促す「お
提示(運動の見方や授業のねらいの問い直し)」が中心
もしろさと子どもたちの姿の関係」に関するコメント
的な視点として挙げられていた。
が 1件見られた。
6回目のレポートに対して、全 15件のコメントが見
表 2 コメントの中心的な視点
られた(図 8)。依然、「エピソード記述のルール」に
かかわるコメントが 4件見られた。その他 11件は、「
『地』をつくるための視点提示」を行っているコメント
であった。その内容として、まず「姿勢を崩さない」
ことを中心にした「運動の見方」に関するコメントが 3
件、つまずきに出会わせることによって運動の質を高
めるといった「授業展開の特徴」に関するコメントが 1
件見られた。この視点と関連して、TTの存在や生徒
がポイントを理解できた要因など、「つまずきに対する
支援(5件)」に関するものと、課題を達成できている
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図 7 学生のエピソード記述(5回目)へのコメント
― 213―
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図 8 学生のエピソード記述(6回目)へのコメント
(2)エピソードの質的向上の視点
5.エピソード記述の質的向上に向けて
①推論を中心とした関与
次に、エピソード記述の質的向上の視点について考
(1)質的向上の基盤となる「事実」からの考察
学生のエピソードへのコメントを見てみると、まず、
察していくこととする。
エピソード記述は、出来事を「図」として表すため
1回目の 9件をはじめとして、5回目を除く全ての回に、
「エピソード記述のルール」に関するコメントが見られ
の「地」が重要とされている。事例の 3・4回目のコ
ている。これは、「事実」に基づいた考察や「事実」を
メントの中心となっている「課題と展開の特徴」「つ
丁寧に記述することの難しさを表している。このコメ
まずきの要因」「つまずきに対する支援」の 3つの視
ントは、加納ら(2014b)において、現職の教員が描
点は、体育授業の中で学びを生み出すために教師(観
く際に陥りがちなエピソード記述例として挙げられて
察者)にとって必要な「地」を示していると考えられ
いる「エピソードで『事実』が描かれているのか」と
る。1つ目の「課題と展開の特徴」は、子ども達の活
同様の指摘と言える。また、現場で行われている授業
動が「共有の学び」「ジャンプの学び」として設定さ
研究において、事実から省察することの重要性が叫ば
れた課題と一致しているかを見取ることを意味してい
れている(佐藤,2012)。裏を返すと、現在の授業研
る。実践を例にすると、授業の課題である「姿勢を崩
究が事実の省察に基づいたものではなく、抽象的な事
さない」「ラートに乗る」「回転する」から外れずに、
実の見取りや事実から乖離した一般的な授業技術や展
一つひとつの活動に向っていたのかという視点である。
開方法の議論が中心となっていることを物語っている
2つ目の「つまずきの要因」は、課題に向かう中で、
とも言えるため、現場での課題とも一致すると言えよ
何につまずいていることによって、質の停滞が起きて
う。鯨岡(2005)も「事象としっかり向き合う『根性』
いるのかを見取ることを指している。実践の中では、
が必要なのだとわきまえて、格闘を続けてほしい」と
「姿勢が崩れる」「ラートに乗ることができない」「回
述べており、描いたエピソード記述が事象に忠実であ
転できない」子どもの要因がどこにあるのかという視
るかを常に問い直し、「事実」に即したエピソードと
点である。3つ目の「つまずきに対する支援」は、つ
「事実」に即した考察をすることが、事例からもエピソー
まずきに対して運動の質を高めるための足場
ド記述の質の向上の基盤となることが考えられる。
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ng)がどのように設定されているのかを見
取ることを示している。事例においては、課題に対す
るつまずきに対して、どのような支援を行うことによっ
― 214―
体育におけるエピソード記述の質的向上に関する事例的研究
てつまずきが解消され、運動の質的向上を生むのかと
る回転の推進と制御」と結びついているのかという視
いう見方である。3・4回目のコメントの中心である
点である。
加納(2014b)によると、体育における学びの生成
「『地』をつくるための視点提示(子どもの姿の変容)」
は、総じて、授業の課題である「姿勢を崩さない」
をエピソード記述として描くためには、「運動の中心
「ラートに乗る」「回転する」に対する質の向上を目指
的なおもしろさ」を具体化している「身体技法」へ焦
点化し、「『変容前の姿』から『変容後の姿』へ」と
す視点と言えよう。
また、佐藤ら(1991)は、熟練している教師ほど、
タイトルをつけることによって学びの変容を見取るこ
授業の事実や印象だけではなく、授業の「意図」「見
とができるとしている。また、表層的な動きの変化で
通し」「代案」を推論しながら授業の省察をできると
はなく、学習内容との関係から変容の提示をする必要
している。この事例を基にすると、意図とは、授業の
があるとしている。
課題や展開のことであり、見通しとは、課題や展開の
本事例で考えると、課題として設定されていた「姿
中でどの子がどこでつまずくのかということを指し、
勢を崩さない」「ラートに乗る」「回転する」ことの質
代案とは、つまずいている子に対する支援の手立てと
的向上を、身体技法のキーワードとして挙げられてい
見ることができる。
る「軸」「重心」「回転の推進と制御」との関連で考察
以上のことから、エピソード記述に臨む以前の授業
することによって、運動を見直すことと言える。換言
に関与する際に、受動的に事実や印象だけを見るので
すると、ラートを用いた体つくり運動における「姿勢
はなく、課題や展開など授業の意図との関係、つまず
を崩さない」「乗る」「回転する」とは何かという問い
きの要因の見通し、つまずきに対する支援の手立て
を立て、考察することであろう。
このように運動の変化だけではなく、子どもの姿か
(代案)に関する 3つの推論を持ちながら、積極的な
姿勢で関与することがエピソード記述の質的向上につ
ら授業の枠組みや運動の見方を問い直すことによって、
ながると考えられる。併せてエピソード記述に向かう
「ある人の生の断面を描こうと思い立つ人の背景的な
際にも、子どもの変容にかかわる「課題と展開の特徴」
問題意識や、その前に立ち現れてきた基本的な問いが
「つまずきの要因」「つまずきに対する支援」の 3つを
重要になってきます。その問題意識や基本的な問いと
「地」としながら記述することが必要であろう(図 9)
。
の関連で、その描き出された生の断面の『意味』を掘
り起こしてこそ、真のエピソード記述」(鯨岡,2005)
につながっていくのだろう。
6.結語
本稿の目的は、体育におけるエピソード記述の質的
向上のための視点を提示することであった。
エピソード記述の質的向上に向けて、まず「事実」
の記述と「事実」に基づく考察のために、出来事を
「図」として表すための「地」をつくることが必要で
ある。体育授業に関する「地」をつくるためには、授
業に関与する際に、受動的に出来事の事実や印象だけ
図 9 エピソード記述の質的向上に向けた関与の視点
を見るのではなく、授業の課題や展開の意図、課題や
展開の中でつまずきの見通し、つまずきへの支援の代
②運動の見方・枠組みの再構築
案を推論しながら積極的に関与することの重要性が示
もう一つ「地」をつくる視点として、5・6回目の
された。また、課題へ向かう子どもの姿を単なる表層
中心的なコメント「『地をつくる視点提示(運動の見
的な変容としてではなく、運動の中心的なおもしろさ
方や授業のねらいの問い直し)」が考えられる。3・4
や身体技法のキーワードとの関係から問い直すことに
回目のコメントのように、課題を探究するための方法
よって、授業の枠組みや運動の見方について再構築が
論にとどまるのではなく、課題に向っている子どもの
行われることが明らかとなった。
姿が、運動の中心的なおもしろさと設定した「ラート
を操ったりラートに操られたりする中でラートの動き
に応じた身体操作をすること」や身体技法として設定
されていた「ラートの軸と身体の重心の位置関係によ
― 215―
加
納
岳
拓
佐藤
【注及び引用・参考文献】
学(2012)岩波ブックレット No.
842 学校を改革す
る-学びの共同体の構想と実践.岩波書店,pp.
40-41.
注: 岡野・山本(2012)によると、「運動の中心的なおもし
田尻さやか・西口
ろさ」とは、取り上げようとする運動とは「何か(概念)」
に相当し、その運動の Aut
he
nt
i
c
(真正な・本物の)なお
もしろさであり、「身体技法」とは、取り上げようとする
守(2013)保育実践におけるエピソード
記述の意義について-学生は何をリアルに描き出そうとし
ているのか-.東京家政学院大学紀要,53:9-21.
矢戸幹也・岡野
昇(2012)体育における協同的な学びに関
運動の「何を(目的)」に相当し、その「運動の中心的な
する実践的研究:小学校 5年生の短距離走・リレーを対象
おもしろさ (文化的価値)」 に触れる 「運動の最小単位
にして.三重大学教育学部研究紀要,63:231-237.
(身体の経験)」である。
柳瀬慶子(2012)「走の運動遊び」における協同的な学びに
関する実践的研究.高田短期大学紀要,30:159-167.
加納岳拓・岡野
昇(2013)跳び箱運動における協同的学び
に関する実践的研究.三重大学教育学部研究紀要
教育科
学,64:287-296.
加納岳拓・岡野
昇(2014)跳び箱を使った運動遊びにおけ
る環境のデザインに関する研究.三重大学教育実践総合セ
ンター紀要,3
4:75-81.
加納岳拓・太田直己・矢戸幹也(2014a)「素早い往復走」
における動きの質の高まりに関する研究.体操研究,11:
20-26.
加納岳拓・岡野
昇・伊藤暢浩(2014b)体育におけるエピ
ソード記述の描き方-学びの質的向上を目指して-.三重
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ログラム
大学教育・学生支援事業
大学教育推進プ
隣接学校園との連携
を核とした教育モデル-多様な教育課題に対応できる教員
養成を目指して-.国立大学法人三重大学教育学部
地域
連携室,p.
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鯨岡
峻(2005)エピソード記述入門-実践と質的研究のた
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鯨岡
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(2.保育フォーラム,保育の質を高める記録,第 3部 保
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鯨岡
峻(2013)なぜエピソード記述なのか-「接面」の心
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昇・山本裕二(2012)関係論的アプローチによる体育
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岡野
昇・加納岳拓(2013)体育の「協同的学び」における
教師の言語活動.広島大学附属小学校
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岡野
昇・山本裕二・内田めぐみ・加納岳拓(2013)体育の
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佐藤
学・岩川直樹・秋田喜代美(1991)教師の実践的思考
様式に関する研究(1):熟練教師と初任教師のモニタリン
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198.
― 216―