体表面 45誘導電位図 Recoverytimedispersion

NP
Pr
og.Med.
1
9(s
.
1):6
72∼67
6,
199
9
uppl
一般講演
1
体表面 4
5誘導電位図 Re
c
o
ve
r
yt
i
medi
s
pe
r
s
i
o
n
によるアミオダロンの有効性の評価
本 立也
照井 克俊
千葉 直樹
菖蒲澤 実
中居 賢司
平盛 勝彦
籏
義仁
表 1 患者背景
はじめに
症例
年齢/
性別
Vf
冠動脈疾患
1
5
3
/
M
(
−)
(
+)
3
8
2
6
9
/
M
(
−)
(
−)
4
0
3
7
1
/
M
(
−)
(
−)
6
4
4
5
4
/
M
(
+)
(
−)
2
5
5
5
8
/
M
(
−)
(
−)
3
1
は,心室再 極の
Re
c
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on(
RTd)
6
4
7
/
M
(
−)
(
−)
2
0
不 一性の指標であり,心室頻拍発現との関連が注目
7
4
0
/
M
(
−)
(
−)
4
5
体表面 45誘導電 位 図 Rec
over
yt
i
medi
s
pe
r
s
i
on
によるアミオダロンの有効性
について検討したの
で報告する.
目
的
されている .アミオダロン投与前後に体表面 4
5誘
平
5
7歳
EF(%)
3
7%
導電位図による c
を算出し,ア
or
r
ec
t
edRTd(
RTc
d)
ミオダロンの VT/Vfの予防効果と対比した.
方
対
象
持続性心室頻拍でアミオダロンを内服している 7例
を対象とした.基礎心疾患は,陳旧性心筋梗塞症 1
例,拡張型心筋症 1例,肥大型心筋症 3例,不整脈源
性右室異形成(ARVD)1例,心サルコイドーシス 1例
である.患者背景を 表 1に示す.対象はすべて男性
で,平
法
アミオダロンの投与方法:初期量として 1日 4
0
0mg
年齢は 5
7歳であった.症例 4では入院前に
心室細動(
)
の既往があった.
Vf
を約 2週間続け,以後,維持量として 20
0mgを投与
した .
∼6週間に,
RTcd:アミオダロン投与前と投与後 4
体表面 4
5誘導電位図を記録して RTc
dを測定した.
加算心電図:アミオダロン投与前後に X,Y,Z誘
導を用いた加算心電図で fil
t
er
e
d QRS dur
at
i
on(f
を測定した.
QRSd)
症例 1は陳旧性心筋梗塞症(
下壁梗塞)で,半年後に
追跡調査:心室頻拍(
VT)または Vfの発現の有無に
PTCA およびステント植え込み術を施行した.他の 6
ついて,平
症例では,入院時の冠動脈造影で有意な冠動脈狭窄を
の再発は,自然発作および EPS誘発によるものと定
認めなかった.左室駆出率(
では,すべて入院時
EF)
義した.
の経胸壁エコー図法で求めた入院時の EFは平
3
1カ月の追跡調査を行った.VT/
Vf
3
7
RTcdの測定方法(図 1)
%であった.
図 1に RTc
5誘導心
dの測定方法を示す.上段に 4
電図の QRS波形の重ね合わせを示し,下段にその一
:岩手医科大学第二内科・循環器医療センター
T.Mat
s
umot
o,K.Te
r
ui
,N.Chi
ba,Y.Hat
a,M.Syobus
awa,K.Nakai
,K.Hi
r
amor
i
― 86
(7
2
)―
第 3回アミオダロン研究会講演集
図 2 AMD投与前後での f
QRSdと maxRTcおよび mi
nRTcの比較
図 3 AMD投与前後の RTcdと VT/
Vfの予防効果
Rec
ov
er
yt
i
me(
RT):
QRSの開始から T波の立ち上がりが最大となる点
(
)
までの時間
ma
xdV/d
t
):
RT時間の心拍補正(c
or
r
ec
t
edRT;RTc
Baz
et
tの式より算出
(RTc
)の測定 :
RTcd
i
s
pe
r
s
i
on
d
体表面 45誘導で計測した RTc時間の最大(
)
と
ma
xRTc
最小(mi
)の差
nRTc
ダロン投与後に f
-QRSdは
1
7
2ms
e
c,投与後:平
1
91ms
)
e
c
.
max RTc:VT 再発群では,アミオダロン投与後に
max RTcは
投与後:平
図 1 RTcdの測定方法
次微
長していた(投与前:平
長していた(
投与前:平
4
1
7ms
e
c,
4
42ms
)
.非再発群の 2例では,アミ
ec
オダロン投与後に明らかな maxRTcの変化はなかっ
値(
速度)
を示す.r
e
cover
yt
i
me(
RT)は,図示
したように QRSの開始点と T 波の立ち上がりが最大
となる点(
)より r
max dV/
dt
e
cover
yt
i
me(
RT)を求
めた .
た.
mi
nRTc:アミオダロン投与後に明らかな mi
nRTc
の変化はなかった.
図 3にアミオダロン投与前後の RTc
dとアミオダロ
Baz
e
t
tの式より RT 時間の心拍補正 RT 時間(
c
or
-
ンの VT/
Vfの予防効果を示した.縦に RTc
dを 示
)
を算出した.体表面 45誘導での
r
e
c
t
ed RT:RTc
す.●が VT/
Vf再発群で,○が VT/
Vf非再発群で
)と最小値(
)の
RTc時間の最大値(
maxRTc
mi
nRTc
ある.VT/
Vfを再発した 5例中 4例で,RTc
dが
差より補正 RTcdi
を算出した.
s
pe
r
s
i
on(
RTc
d)
長していた(投与前平
図 2にアミオダロン投与前後での f
-QRSdと max
RTcおよび mi
nRTcを示す.
1
36ms
e
c ,投与後平
15
7
ms
e
c)
.VT/
Vfが再発しなかった例では RTcdが
短縮していた.
○が VT/
Vfの非再発群で,●が VT/
Vfの再発群
である.
RT 等位電位図の実例を 図 4に示す.上段にアミオ
ダロンが無効であった肥大型心筋症の RT 等位電位
-QRSd:VT 非再発であった 1例を除き,アミオ
f
図を示す(左側はアミオダロン投与前,右側は投与
― 96
(7
3
)―
.
19
.11
99
9
20ms mi
maxRT4
nRT265ms
0ms mi
0ms
maxRT44
nRT27
1ms
RTc
d17
ec
55ms
RTc
d1
ec
3ms
ma
xRT472ms mi
nRT34
5ms mi
8ms
maxRT44
nRT34
RTc
d98ms
e
c
29ms
RTc
d1
ec
図 4 RT等位電位図
後).アミオダロン投与後に,RTcdが
長していた
(
投与前 1
55ms
e
c ,投与後 1
7
1ms
ec )
.
下段にアミオダロンが有効であった ARVD例を示
す.アミオダロン投与後に RTc
dが短縮していた(投
与前 1
29ms
e
c ,投与後 9
8ms
ec ).
結果のまとめ
1)VT/Vf再発群では,非再発群に比
してアミ
オダロン内服後の RTcdが増大していた (再発群:
平
1
6%増大,非再発群:平
20
%短縮)
.
2)アミオダロンを投与した 7例中 5例で VT/
Vf
が再発して,4例に植え込み型除細動器(I
CD)の植え
込み術を行った
.
総
括
体表面 45誘導電位図で測定した RTcdは,VT/
Vf
患者におけるアミオダロンの予防効果判定に有用な指
標であると えられた.
献
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(
)
と RTcおよび RT 等時 線 図 の 臨 床 的 有 用 性.
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日本臨牀 5
3
(1)
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4
8
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i
,T.
,Wu,Z.
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.and Has
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mot
o,K.
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6
(6):
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9
5Dec
,1
.
9)Kas
anuki
,H.e
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.
:クラスⅢ抗不整脈薬―アミオダ
ロン―の臨床.J
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PN.J
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uppl
.
2
):6
379
9
9
2
,1
―1
06
(74
)―
第 3回アミオダロン研究会講演集
質疑応答
座長/堀江
演者/
稔(京都大学医学部第三内科)
本 立也(岩手医科大学第二内科・循環器医療センター)
堀江(
座長)
本先生,どうもありがとうございま
堀江 いま井上先生がおっしゃったように,むしろ
した.心筋の再
極過程のばらつきを,より正確に
QT 時間,つまり局所の再 極過程のばらつきが短縮
r
e
c
ove
r
yt
i
meで測定されて,症例が少ないとは言
する方向でアミオダロンが効くということになってい
え,非常に相関があったように思います.このご演題
ますので,先生のデータは逆にむしろ無効例が多く
にご質問はありませんでしょうか.
て,ばらつきが広くなったということで意外な感じを
井上(
富山医科薬科大) アミオダロンは QT を
長しますが,QT 時間のばらつきは
長しないので
受けたのですが,他にご質問はありませんか.
池田(
中日病院) f
QRSdも検討しておられたと思
t
or
s
ar
de
sdepoi
nt
e
sが少ないという報告があると思
うのですが,VT/
-QRSdの
Vfの再発例に f
います.先生のただいまの 7例で r
e
c
ove
r
yt
i
meでは
多かったような気がしたのですがいかがですか.
なくて,4
5点の QT 時間でみるとやはり同じような
結果になるのですか.
長例が
本 その通りだと思います.
池田 これは s
odi
um c
hannelに対する効果とお
本(
演者) 今回,QRSの開始より T 波の立ち上
がり点(
)
より QT 時間を計測しています.
max dV/
dt
えでしょうか.その結果,ar
r
hyt
hmoge
ni
cになった
というように…….
4
5点の QT 時間も測定していますが,本日持ち合わ
せていません.
本 それもあると思います.脱 極時の不 一伝
播の増大したのが要因の 1つと えています.その結
井上 QT 時間のばらつきについては,どこの施設
果,ar
r
hyt
hmogeni
cに な る 可 能 性 も あ り ま す.一
でもできると思いますので,より簡 な方法でわかれ
方,f
-QRSdが 長している例でも QT di
s
per
s
i
onが
ばよいと思います.ご検討いただければと思います.
短縮している例もあり,その例では誘発されていませ
本 QT di
s
pe
r
s
i
onは客観的な方法と
えます.
しかし,mappi
ngを用いる必要があります.今後,
QT 時間のばらつきについて検討します.
ん.
池田 そうすると,f
-QRSdの
RTcは Baz
e
t
tの式で修正されていますね.あれは
QT 時間との相関はいかがでしょうか.いわゆる,
maxRTcとの関係ですね.図を拝見すると,maxRTc
が 長している症例で再発があったと思うのですが.
本 そうです.
本 今回の症例では,必ずしも相関はしませんで
した.
池田 ありがとうございました.
笠貫(
東京女子医科大) 有効性の定義を自然発作の
再発と EPSでの誘発でみていましたが,両者は意味
合いが違ってくると思います.慢性投与時の有用性を
堀江 必ずしも体表面の QTcとは相関しないかも
しれないのですが,その辺はいかがでしょうか.
論じるときに,EPSで誘発されて無効としたのと,
自然発作が再発した無効例とは けて
本 その点については,検討していません.
えていただい
たほうがいいと思います.
堀江 理論的には,max RTcの値は QT と相関す
本 相関すると思います.
長
とは,必ずしも相関しないわけですね.
堀江 先生が途中でお示しになった maxRTc
,mi
n
るはずですね.
長と QTcの
本 今 回,自 然 発 作 と EPSで の 誘 発 の 双 方 で
VT 再発を定義しました.ご指摘の点について検討し
ていきたいと思います.
―1
16
(75
)―
.
19
.11
99
9
笠貫 それから,いまの有効例が 2例ということか
います.
らすると,有用と えられたとするのは,結論として
本 ご指摘,ありがとうございました.
はまだ早過ぎるのではないかと思います.これからこ
堀江
のような met
hodol
ogyでも検討していくというプレ
それでは,次の演題に移りたいと思います.
リミナリーなレポートと えたほうがよろしいかと思
―1
26
(76
)―
本先生,どうもありがとうございました.