みずほ総研コンサルティングニュース 2015.4 Mizuho Research Institute Consulting News みずほ総合研究所株式会社 コンサルティング部 03-3591-7211 Copyright©みずほ総合研究所 2015 無断転載を禁ず 外国人労働者の活用を見据えた「三歩先行く人事戦略」 ~「新・能力主義」を実現させる~ 1.外国人労働者の活用の必要性 日本の生産年齢人口(15~64 歳)は、20 年以上にわ たって減少を続け、2013 年3月末時点で初めて 8,000 万人を割り込みました i。女性や高齢者の活用が盛んに 叫ばれる今日ですが、 「日本人全体の減少」という長期 的視点で考えると、外国人労働者を活用する必要性もま た高まっていくでしょう。大手企業の4割超が日本の大 学(院)卒の外国人留学生向け採用試験を実施している 背景には、こうした理由もあるものと思われます ii。 2.外国人労働者を活用するために 複数の調査報告によれば、日本企業に就職した外国 人留学生の多くが、キャリアに対して「やりがいのあ る仕事の付与や昇進の時期が遅い」といった不満を抱 えています iii。今後の日本企業の分かれ道は、この不 満の捉え方にあると思います。 「いずれは帰国するのだ から外国人労働者は活用できない」のか、 「たとえ短期 間でも最高のパフォーマンスを発揮してもらうべく活 用する」のか、ということです。彼(彼女)らの労働 力に頼らざるを得ない時代の到来を見据えれば、早い うちに考え方を後者に切り替えていく必要があるので はないでしょうか。 視して優秀な若手を登用する」という思い切りのみで 成功するものではありません。横並び意識が強かった 企業風土における選抜者第1号には、相当の苦労を乗 り越える能力(年上の部下に影響を与えられるリーダ ーシップなど)を習得させる必要がありますし、こう した苦労を生み出す元となっている企業風土自体を変 えていくことも求められます。時間は要するものの、 経営者の強い意志やメッセージの継続性と、早期選抜 の成功事例の積み重ねによって、 「当社のポストは能力 次第」という認識が社員の間に徐々に広がるでしょう。 こうした企業風土があらかじめ醸成されていれば、優 秀な外国人労働者の抜擢・活用を図る際にも、成功確 率は上がるものと考えます。 コンビニ大手のローソンでは、社長をトップとした「ダイバーシティ 推進役員」を配置。累計 100 名超の外国人留学生正社員の定着 率は 75%を維持している。留学生採用を本格化させた 2009 年か ら5年が経ち、ベトナム人の店舗経営指導員も活躍し始めてい る。国籍不問の公平な機会付与はもちろんのこと、競争の前に 日本人と同じ土俵に立たせる入社前研修を実施する等の工夫が 特徴的である。 参考:経済産業省「ダイバーシティ経営企業 100 選ベストプラクテ ィス集」(2015) 3.三歩先行く人事戦略~「新・能力主義」の実現~ 「外国人労働者の活用」と聞けば、適切な雇用管理 や生活支援、異文化理解のための日本人向け教育など の対応をイメージされることが多いでしょう。 しかし、これらに先んじて、彼(彼女)らのキャリ ア志向に応えること、すなわち年齢や勤続年数などに 関係なく、能力に応じて重要ポストに就けるという 「新・能力主義」を実現させることが、今後の日本企 業にとって「三歩先行く人事戦略」になると思います。 「新」という接頭語を付けたのは、旧来の能力主義(完 全な年功序列ではないものの、一括採用した新卒社員 の能力を長期間かけて見定め、周囲がある程度納得で きる年次で優秀者を重要ポストに登用する)とは異な ることを意味しています。 「新・能力主義」は、次の2つの理由から、一歩な らぬ三歩先行くと考えます。 ① 「新・能力主義」は一朝一夕では実現できないため、 早い段階で準備を始めた企業が優位に立てる。 ② 外国人労働者のみならず、現在活用しきれていない 人材(女性や高齢者など)の活用につながる。 ①については、 「新・能力主義」の手段となる早期選 抜の実施を想定して解説します。早期選抜は「前例を無 ②を挙げた理由は、 「新・能力主義」は適材適所の配 置を実現するためです。能力は高いもののライフイベ ントによって一旦労働市場から離脱した女性や、就業 規則上の「定年」を超えたに過ぎない有能な高齢者の、 柔軟な活用につながるはずです。外国人労働者の活用 を見据えた「新・能力主義」の実現は、いわば「一石 三鳥」の戦略なのです。 4.「新・能力主義」の実現に向けて 「新・能力主義」の実現のためには、育成のほかに、 適切な選抜に必要な仕組みを整備する必要があります。 アセスメントや人事評価、昇格・昇進運用など、既存 の人事制度では対応が難しい場合もあるのではないで しょうか。みずほ総合研究所では、これらの見直しに 関してお客さまに寄り添ったサポートが可能です。お 気軽にお問い合わせください。 i ii iii 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2013) リクルートキャリア「就職白書 2013 -採用活動・就職活動編-」 守屋貴司『日本の外国人留学生・労働者と雇用問題』(2011、晃洋書房)、みずほ総 合研究所「『日本企業のグローバル展開と人材マネジメント』調査結果報告」(2013) みずほ総合研究所コンサルティング部 コンサルタント 鈴木 貴 [email protected]
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