「採用予定がある」企業、前年とほぼ同水準の63.9%

2015/4/1
松本・長野・飯田支店
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特別企画:2015 年度の雇用動向に関する長野県内企業の意識調査
「採用予定がある」企業、前年とほぼ同水準の 63.9%
最も注力している人材、
「若者」が約 4 割
はじめに
帝国データバンクが1月に行った「人手不足に対する長野県内企業の動向調査」によると、現
在従業員が「不足している」と回答した企業が正社員については 37.6%、非正社員は 23.5%とな
った。特に正社員は前年を 4.1 ポイント上回っており、有効求人倍率が緩やかな上昇をたどる中
で、企業の人手不足感が県内にも及んでいることが窺える。
その一方で、地域間や業界間、正社員・非正社員間などの雇用動向には依然として格差がみら
れる。雇用に関する需要と供給、すなわち求人と求職の間には深刻なミスマッチが生じていると
も指摘されている。
帝国データバンクでは今回、2015 年度の雇用動向に関する企業の意識について調査を実施した。
本調査は、TDB 景気動向調査 2015 年2月調査とともに行っている。調査期間は2月 16 日~28 日
で、調査対象は全国2万 3365 社、
長野県 486 社。
有効回答企業数は全国1万 593 社(回答率 45.3%)
、
長野県 233 社(同 47.9%)。
なお、雇用動向に関する調査は 2005 年以降毎年実施しており、今回で 11 回目となる。
調査結果(要旨)
■正社員の「採用予定がある」企業は 63.9%
正社員について、
「採用予定がある」と回答した企業は 63.9%に達し、前年の 64.0%と
ほぼ同水準となった。6年ぶりに 60%を超えた前回を 0.1 ポイント下回ったものの、2年
連続して 60%を超え、正社員採用の意欲は安定して推移している。
■非正社員の「採用予定がある」は 51.9%
非正社員について、
「採用予定がある」と回答したのは 51.9%。前年を 0.6 ポイント下回
ったが、正社員と同じく前回から大きな変化はなかった。
■雇用環境の改善時期、「3年以内」が 29.6%
雇用環境の改善時期を尋ねたところ、「3年以内」が 29.6%。これに対し、「長期的に改
善する見込みはない」も 23.2%となり、企業間でばらつきが生じている。
■注力している人材、
「若者」39.5%、
「女性」10.7%、「高齢者」8.6%など
企業が注力している人材では、
「若者」が 39.5%で最多。このほかは、
「女性」10.7%、
「高齢者」8.6%、
「外国人」6.0%などだった。
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特別企画:2015 年度の雇用動向に関する長野県内企業の意識調査
1.正社員の「採用予定がある」とした「大企業」は 92.3%、「中小企業」は 58.2%
2015 年度(2015 年4月~2016 年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況について、
「採用予定がある」
(「増加する」「変わらない」
「減少する」の合計)と回答した企業は 63.9%(149
社)だった。内訳は、
「増加する」が 24.0%(56 社)
、「変わらない」が 31.8%(74 社)
、「減少す
る」が 8.2%(19 社)
。一方、「採用予定はない」は 28.3%(66 社)
、「分からない」は 7.7%(18
社)。前年との比較では、
「採用予定がある」は 0.1 ポイント、
「採用予定はない」は 3.7 ポイント
それぞれ減少。「採用予定がある」は、前年から微減したもののほぼ横ばいで、2年連続して 60%
台を維持、正社員の採用意欲は安定して推移していると言えよう。
「採用予定がある」と回答した企業を規模別にみると、「大企業」は 92.3%、「中小企業」は
58.2%、「(中小企業のうち)
小規模企業」は 45.1%。
「大企
業」では9割を超え、「中小企
業」との間には 34.1 ポイント
の格差がある。また、主要業界
別では「建設」の 73.1%、「製
造 」 の 65.1 % 、「 卸 売 」 の
65.0%、
「サービス」の 57.9%
が「採用予定がある」としてい
る。
なお、正社員の採用は、受注
増への対応や退職者の補充に
よるケースに加え、次世代の人
材育成、確実な技術承継、スム
ーズな世代交代など将来を見
据えた取り組みの一環として
行う企業も多い。他方、景気の
先行きの不透明感や人件費増
のリスクを避けるため、正社員
の採用に踏み切れないとする
企業もあった。
全国の調査結果は「採用予定
がある」が 63.6%、
「採用予定
はない」が 27.2%、
「分からな
い」が 9.2%。
2.非正社員の「採用予定がある」とした「大企業」は 71.8%
次に、2015 年度(2015 年4月~2016 年3月入社)の非正社員(新卒・中途入社)の採用状況を
尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と回答した
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企業は 51.9%(121 社)と半数を超えた。内訳は、「増加する」が 13.7%(32 社)
、
「変わらない」
が 31.3%(73 社)
、「減少する」が 6.9%(16 社)
。一方、
「採用予定はない」は 37.8%(88 社)
、
「分からない」は 10.3%(24 社)だった。「採用予定がある」は前年から 0.6%減、
「採用予定は
ない」は 0.7 ポイント減。非正社員の「採用予定がある」は、正社員と同様前年を若干下回った
がほぼ横ばいとなり、2年連続で 50%を超えた。
規模別で「採用予定がある」と回答した企業の構成比をみると、「大企業」が 71.8%だったのに
対し、
「中小企業」は 47.9%、
「(中小企業のうち)小規模企業」は 42.3%。
「大企業」と「中小
企業」の格差は 23.9 ポイント。正社員ほどではないが、非正社員の採用意欲に関しても、企業規
模間で大きな差が見受けら
れる。主要業界別では、「建
設」の 57.7%、「製造」の
58.5 % 、「 サ ー ビ ス 」 の
52.6%、
「卸売」の 38.3%が
「採用予定がある」と回答。
4業界とも、「採用予定があ
る」企業の構成比は、正社員
よりも非正社員の方が低い。
全国の調査結果は、「採用
予定がある」が 50.2%、
「採
用予定はない」が 37.6%、
「分からない」が 12.3%。
3.雇用改善の時期、
「すでに改善している」は 10%弱
自社の属する地域・業界の雇用環境が改善する時期として、「分からない」
(32.2%、75 社)を
除くと、
「3年以内」が 29.6%(69 社)で最も多かった
が、「長期的に改善する見込みはない」も 23.2%(54 社)
と意見は分かれている。「2014 年度内(すでに改善して
いる)
」は 9.0%(21 社)
。
「2014 年度以内」と回答したのは「大企業」の 12.8%、
「中小企業」の 8.2%。一方、
「長期的に改善する見込み
はない」は「大企業」の 20.5%、
「中小企業」の 23.7%
となり、雇用環境に関しては、企業規模が小さいほど厳
しい見方となる傾向がある。主要業界別では、「2014 年
度以内」と回答したのは「サービス」(21.1%)が、「長
期的に改善する見込みはない」と回答したのは「卸売」
(31.7%)が最も多かった。
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4.最注力人材は「若者」
、
「特定層に限定しない」
「多様な人材」の合計が 30%超
政府は「日本再興戦略改訂版 2014」
(成長戦略)で、雇用制
度改革や人材力の強化として若者・女性・高齢者・外国人な
どの活躍推進を拡大するとしているが、企業は主にどのよう
な人材の活用に注力しているのだろうか。最も多かったのは
「若者」で 39.5%(92 社)
。「女性」は 10.7%(25 社)
、
「高
齢者」は 8.6%(20 社)だった。
一方、
「特定層に限定しない」は 18.0%(42 社)、「多様な
人材」は 15.0%(35 社)で、両者を合計すると 33.0%と全体
の約3分の1に達する。各企業が若者を重視しながらも、特
定層に限定せず、幅広い層の人材を求めている姿が浮かび上
がる。
5.採用時期の後ろ倒し、大企業ほど「不利になる」と認識
2016 年春の卒業予定者から、就職活動のスケジュールが大きく変わった。政府の「学生は学業
を優先すべき」という要請に対し、日本経済団体連合会が就
職活動時期を後ろ倒しすることを決定。これまでより会社説
明会を3ヵ月、選考活動を4ヵ月遅らせることとなった。
こうした措置が自社の採用活動にどのような影響があるか
を尋ねたところ、
「影響はない」が 51.9%(121 社)と半数を
超えた。
「不利になる」は 11.6%(27 社)
。1割強の企業が影
響を懸念しているが、「不利になる」と回答したのは「大企業」
の 25.6%、
「中小企業」の 8.8%と、規模による違いも表れて
いる。一方、
「正社員採用は新卒に限っているが、就職活動時
期の後ろ倒しで条件が厳しくなり、予定通りの採用が難しく
なる」と懸念する中小企業もあった。
まとめ
2015 年度の雇用動向は、人手不足による業績への影響に加え、人材育成や技術承継の必要性が
高まるのに伴い、正社員、非正社員とも前年に引き続き堅調に推移するものとみられる。特に大
企業の採用意欲が高く、正社員の採用予定は9割を、非正社員も7割を超えている。過去の落ち
込みを経て、採用に前向きな企業は中小企業を含め全国でも広がりをみせている。一方、雇用の
改善時期については意見が分かれており、
「すでに改善している」とする企業が1割弱存在してい
るのに対し、
「長期的に改善する見込みはない」は2割強に及んでいる。
新卒採用にあたっては大きな変化もあった。学生が学業に集中できるよう大手企業を中心に採
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用活動が後ろ倒しされたが、こうした措置は大企業ほど自社への悪影響を懸念しているという結
果となった。また、中小企業においても学生の内定辞退などに対する懸念は強く、採用活動に対
するコストアップを不安視する声も聞かれている。
今回の調査で、企業の採用意識が低くはないことが判明したが、新たな採用ルールによる影響
を図りかね、試行錯誤している企業も多い。雇用環境は、景気回復の安定的な定着にとって極め
て重要な要素となるだけに、改善傾向の継続が期待されている。
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