東京五輪、「プラスの影響がある」は 25.3

2016/7/13
松本・長野・飯田支店
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特別企画：リオおよび東京五輪に対する長野県内企業の意識調査
東京五輪、
「プラスの影響がある」は 25.3％
「関心がある」は 64.2％、いずれも全国を下回る
はじめに
今年８月にブラジルでリオ五輪が、2020 年には東京五輪が開催される。リオ五輪が目前に迫っ
ていることに加え、次の開催地が東京ということもあって当面、オリンピックに対する関心が高
水準で推移するものとみられている。オリンピックのようなメガスポーツイベントでは、思いも
かけないヒット商品が生まれるなど、関連する企業・業界へ大きな影響が及ぶ可能性を秘めてい
る。一方、長野県は 1998 年に冬季五輪の開催地となっており、準備期間から開催期間にかけての
需要の拡大や終了後の反動減を含め、何らかの形で五輪の影響を受けた経験を持つ企業も少なく
ない。
帝国データバンクでは、リオおよび東京五輪による企業への影響について調査を実施した。本
調査は TDB 景気動向調査 2016 年５月調査とともに行っている（調査期間５月 18 日～31 日）
。調査
対象は全国２万 3586 社、長野県 498 社、有効回答企業数は全国１万 588 社（回答率 44.9％）
、長
野県 229 社（同 46.0％）
。
調査結果（要旨）
■五輪へ「関心がある」
、リオは 35.4％、東京は 64.2％
リオ五輪に対し、「関心がある」と回答した企業は 35.4％となり、「関心はない」
（48.5％）を下回った。一方、東京五輪は「関心がある」は 64.2％と、「関心はない」
（21.8％）の３倍近くに達している。なお、両五輪ともに「関心がある」とする企業は 34.9％
だった。
■自社の企業活動に「プラスの影響がある」
、東京五輪は 25.3％
自社の企業活動に「プラスの影響がある」と回答した企業は、リオ五輪が 2.6％にとど
まったのに対し、東京五輪は 25.3％だった。また、
「影響はない」と考えている企業は、
リオ五輪では 83.0％を占め、東京五輪でも 38.0％に達している。
■東京五輪で売り上げが「増加」は 28.8％
東京五輪で自社の売り上げが「増加」すると回答した企業は 28.8％だった。
「変わらな
い」は 41.5％。また、既存の商品・サービスだけでなく、新しいものも含めて期待できる
商品・サービスが「ある」とした企業は 11.8％、
「ない」は 63.3％となっている。
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特別企画：リオおよび東京五輪に対する長野県内企業の意識調査
１．東京五輪に「関心がある」64.2％、
「関心がない」21.8％
まず、今年８月に開催されるブラジル・リオ五輪に関心があるかどうかを尋ねてみた。県内企
業のうち、
「関心がある」と回答したのは 35.4％（81 社）で、48.5％（111 社）の「関心はない」
を 13.1 ポイント下回った。「分からない」は 16.2％（37 社）
。規模別では、
「大企業」の 46.9％、
「中小企業」の 33.5％、
「（中小企業のうち）小規模企業」の 32.8％が「関心がある」と回答し
ている。
一方、東京五輪に対する関心度では、
「関心がある」は 64.2％（147 社）
、
「関心はない」は 21.8％
（50 社）、「分からない」は 14.0％（32
社）。「関心がある」が「関心はない」の
３倍近くに達し、リオ五輪とは対照的な
結果となった。国内で開催されるオリン
ピックに対する関心の高さを窺うことが
できる。
「関心がある」と回答した企業を
規模別にみると、「大企業」の 81.3％、
「中小企業」の 61.4％、
「小規模企業」の
58.6％。リオ五輪と同様、規模が大きく
なるほど関心度が高くなる傾向が生じて
いる。なお、両五輪ともに「関心がある」
としたのは 34.9％（80 社）だった。
全国の調査結果は、リオ五輪は「関心
がある」が 33.3％、「関心はない」が
52.6％、
「分からない」が 14.2％。東京五
輪は「関心がある」が 66.9％、
「関心はな
い」が 21.4％、
「分からない」が 11.7％。
東京五輪に「関心がある」と回答した企
業の構成比は、長野県が全国より 2.7 ポ
イント低かった。
２．東京五輪で「プラスの影響がある」
、長野県は全国を 9.6 ポイント下回る 25.3％
各社はオリンピックの開催が自社の企業活動にどのような影響を与えると考えているのだろう
か。リオ五輪に関し、
「プラスの影響がある」としたのは 2.6％（６社）
、
「マイナスの影響がある」
も 0.4％（１社）にとどまった。それに対し、
「影響はない」は 83.0％（190 社）と８割を超え、
「分からない」の 14.0％（32 社）と合わせると、96.9％に達している。海外で行われる五輪によ
りもたらされる影響は限定的だと考えている企業が多いことを物語っている。
国内で行われる東京五輪に関しては、
「影響はない」
（38.0％、87 社）が最も多く、
「分からない」
（27.1％、62 社）がそれに続いたが、
「プラスの影響がある」は 25.3％（58 社）
、
「マイナスの影
響がある」は 9.6％（22 社）と両者ともリオ五輪を大きく上回っている。東京五輪へ「プラスの
影響がある」と回答した企業の構成比を規模別にみると、「大企業」が 34.4％、「中小企業」が
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23.9％、
「小規模企業」
が 22.4％。
また、
主要業界別では、
「サービス」
の 33.3％、
「卸売」
の 28.6％、
「製造」の 26.9％、
「建設」の 17.9％が「プラスの影響がある」と考えている。
既に東京五催に向けた準備が進められているが、建設投資の増加、開催期間中のインバウンド
需要の高まりを含めた消費拡大を見込む企業がある一方で、人手不足や人件費の高騰につながる
との懸念が膨らんでいる様子もみてとれる。公共工事予算が東京に集中することで、地方との格
差がさらに拡大することを不安
視する企業、プラスの影響を期待
したいが懸念材料も多いため、現
時点では判断に迷っている企業
も少なくないようだ。
なお、全国では東京五輪に関し
「プラスの影響がある」と回答し
た企業が 34.9％、
「マイナスの影
響がある」が 7.1％、「影響はな
い」が 35.1％、
「分からない」が
22.9％。「プラスの影響がある」
は長野県が全国より 9.6 ポイント
低い。
３．売り上げへの影響、業界別では「建設」が厳しい見方
五輪の開催で自社の売り上げがどの程度変わるかについて、リオ五輪に関し「増加」は 2.2％（５
社、平均増加率は 0.09％）にとどまったが、東京五輪に関しては 28.8％（66 社、同 1.58％）と
３割近くに達した。全国で「増加」と回答したのは、リオ五輪が 2.5％（同 0.07％）
、東京五輪が
32.4％（同 1.84％）
。いずれも長野県は全国を下回っている。
東京五輪で「増加」と回答した企業は、
「大企業」の 37.5％、「中小企業」の 27.4％、「小規模
企業」の 27.6％。
「大企業」と「中小企業」の間には 10.1 ポイントの差が生じている。主要業界
別では、
「建設」が 17.9％と低く、
「サービス」
（33.3％）
、
「製造」
（32.7％）
、
「卸売」
（32.1％）は
ほぼ同水準。
前段で「プラスの影響があ
る」と回答した企業でも、「建
設」は主要業界の中で最も低か
ったが、建設業界には当面公共
事業の予算が東京に偏ること
で地方の工事が減少する一方、
資材や人件費の高騰、人手確保
難などにも直面するとの警戒
感が広がっている。
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４．東京五輪に関し、期待する商品・サービスが「ある」企業は 11.8％
自社において、五輪に関連し既存の商品・サービスだけでなく、新しいものも含めて期待する
商品・サービスがあるか尋ねたところ、リオ五輪は「ある」が 0.9％（２社）と１％未満にとどま
ったが、東京五輪では 11.8％（27 社）と１割を超えた。この 27 社を業界別にすると、
「製造」16
社（59.3％）
、
「卸売」４社（同 14.8％）
、
「建設」
「サービス」各３社（11.1％）
、
「その他」１社（3.7％）
。
また、規模別では「大企業」が
５社（構成比 18.5％）、「中小
企業」が 22 社（同 81.5％）。
多くの企業は慎重な見方をし
ているが、「分からない」と回
答した企業の中には、今後新た
な商品・サービスを見出す可能
性も含まれている。
全国で「ある」と回答したの
は、リオ五輪が 1.5％、東京五
輪が 14.7％。ここでも、長野
県は全国を下回っている。
まとめ
1964 年の東京五輪では、その後のビジネスや生活を大きく変える商品・サービスが生まれた。
高速道路や新幹線などインフラの整備はもとより、カラーテレビの普及とともに家庭用ビデオテ
ープレコーダーもヒットした。また、トイレの男女マークに代表されるピクトグラムは東京五輪
がきっかけ。さらに、住宅では 1962 年の“マンション法”の成立と五輪景気に伴う第１次マンシ
ョンブームのほか、民間警備会社も個人へと拡大する契機となった。近年は五輪や FIFA ワールド
カップなどで、対戦する相手国のことを教えてくれる地球儀、選手が事前トレーニングを行った
土地で栽培されたブドウから作ったワインなどが注目されている。
今年ブラジル・リオで開催される五輪と 2020 年の東京五輪も、企業活動に何らかの影響を及ぼ
すものとみられている。遠く離れたブラジルで開催される五輪と国内で開催される五輪では関心
や影響に差が生じるのは当然だが、東京五輪に関しては県内企業の 64.2％が「関心がある」
、25.3％
が「プラスの影響がある」、28.8％が自社の売り上げが「増加する」、11.8％が期待する商品・サ
ービスが「ある」と回答。いずれも全国を下回ったが、前向きにとらえている、とらえようとし
ている企業は確実に存在している。
長野県の場合、1998 年に冬季五輪の開催地となっているが、地元開催を経験している分、冷静
な見方をする企業が多いことが今回の調査結果に影響している可能性もある。開催前から様々な
問題が表面化していることを不安視する向きもあるが、五輪の開催は企業の新規開発力を高め、
“稼ぐ力”を得るチャンスでもある。
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