2013/12/19 鹿児島支店鹿児島市西千石町 11-25 鹿児島フコク生命ビル 3Ｆ TEL：099-223-8208 FAX：099-222-3106 特別企画：第 2 回鹿児島県オーナー企業分析 50 歳以上のオーナー社長、約半数が後継者不在～高齢オーナーほど業績も伸び悩み、急がれる事業承継～はじめに会社の経営者（社長）と所有者（株主）が同一であるオーナー企業は、設備導入や投資などの意思決定が柔軟に行えるため、経営計画を進めやすいという特徴がある一方で、外部からのガバナンスが働きにくく、独断・放漫経営などの問題が進行しやすいという側面もある。後者は、近年散発している不正事件の背景にもなっている。また、権限が集中しているため、後継者問題も起こりやすく、事業継続には円滑な承継が欠かせない。日本ではこの形態の企業が多いとも言われ、今後の日本経済を占うのにオーナー企業の動向は注目せざるを得ないだろう。帝国データバンクは、2011 年 4 月に続きオーナー企業のデータを抽出し集計、今回は後継者問題や企業業績などの点から分析した。 ※ 信用調査報告書ファイル「CCR」（160 万社収録）および企業概要ファイル「COSMOS2」（143 万社収録）をもとに、代表者名と筆頭株主名が同一である企業を“オーナー企業”として定義。抽出対象は株式会社および特例有限会社調査結果（要旨） 1．オーナー企業のうち、52.0％にあたる 1,298 社が後継者不在。年齢別に見ると、50 歳を超えるオーナー社長では 47.3％が後継者問題を抱えている 2．2012 年度業績の判明しているオーナー企業のうち、「増収増益」となった企業は 904 社で発生率は 30.2％。また、オーナー社長の年齢が 80 歳台を超えると業績が停滞する傾向も見られた 3．潤沢なキャッシュを保有する「キャッシュリッチ・オーナー企業」は県内に 93 社 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 1 2013/12/19 特別企画: 第 2 回鹿児島県オーナー企業分析１．オーナー社長分析後継者後継者後継者いない（社数）いる（社数）不在率 85歳以上 3 14 17.6% ー企業 2,497 社のうち、52.0％にあたる 1298 80～84歳 10 29 25.6% 社が後継者不在（未定・未詳含む）となり全国 75～79歳 24 84 22.2% 70～74歳 91 143 38.9% の全企業平均 68.8％（2012 年末時点）を 16.8pt 65～69歳 153 238 39.1% 243 314 43.6% 下回っていることが分かった。但し前回調査時 60～64歳 55～59歳 229 158 59.2% と比較すると 3.3 ポイント上回る形となった。 50～54歳 197 78 71.6% 109 55 66.5% 社長の年齢別に見ると、事業承継が喫緊の課 45～49歳 40～44歳 87 20 81.3% 題となる 65 歳以上のオーナー社長では 35.6％ 35～39歳 33 11 75.0% 10 4 71.4% （281 社／789 社）が後継者不在であることが 30～34歳 25～29歳 4 0 100.0% 判明したが、全国水準の 48.7％と比べると比較 25歳未満 0 1 0.0% 105 50 67.7% 的スムーズに後継者育成が進められていると未詳・非公開合計 1298 1199 52.0% 言える。直近の代表者の詳細が判明しているオーナオーナー社長の就任経緯を見ると、「創業者」が 56.9％（1426 社）で最多。全企業平均（2012 年末時点）は 41.6％であり、これを 15.3pt 上回っている。以下「同族継承」が 33.5％（840 社）。同族外からの就任を示す「その他※」では、全企業代表年齢オーナー企全企業平構成比業（社数）均構成比創業者 1426 56.9% 42.60% 同族継承 840 33.5% 36.10% その他※ 241 9.6% 22.20% 合計 2507 100.0% 100.00% ※買収、内部昇格、外部招聘、出向、分社化の一環 ※複数選択あり社長就任経緯平均（同）22.2％を 12.6pt 下回る 9.6％となり、オーナー企業の特徴が見られる。後継者がいるオーナー企業で後継者の属性を見ると、「配偶者」「子供」「親族」で 95.0％を占め、「非同族」は 1 割未満にとどまった。一方で、全企業平均は「非同族」が 23.6％となっており、18.6pt の乖離が見られ、オーナー社長の同族志向が顕著に表れている。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 後継者の属性配偶者子供親族非同族合計 ※複数選択ありオーナー企構成比業（社数） 475 28.3% 757 45.2% 360 21.5% 84 5.0% 1676 100.0% 全企業平均構成比 14.60% 42.60% 19.20% 23.60% 100% 2 2013/12/19 特別企画: 第 2 回鹿児島県オーナー企業分析２．業績分析 2011 年度決算（2011 年 4 月期～2012 年 3 月期）の業績が判明しているオーナー企業 2,989 社のうち、2011 年度で「増収増益」となっている企業は 904 社判明し、全体の 30.2％を占めた。これは、帝国データバンクが 2012 年 10 月に発表した鹿児島県企業の「増収増益企業」発生率 14.3％を、15.9pt 上回る水準となっている。増収増益の発生率をオーナー社長の年齢別に見ると、80 歳を超えるオーナー社長の運営する企業から急激に発生率が低下している。高齢のオーナー社長にとって、経営の活性化を図るためにも事業承継は重要な課題であることが分かる。また、潤沢なキャッシュを保有していると見られ増収増益オーナー発生率企業（社数）企業（社数） 85歳以上 6 24 25.0% 80～84歳 13 58 22.4% 75～79歳 45 114 39.5% 70～74歳 80 288 27.8% 65～69歳 152 498 30.5% 60～64歳 218 698 31.2% 55～59歳 163 476 34.2% 50～54歳 89 319 27.9% 45～49歳 56 179 31.3% 40～44歳 35 112 31.3% 35～39歳 13 46 28.3% 30～34歳 4 14 28.6% 25～29歳 1 3 33.3% 25歳未満 0 1 0.0% 未詳・非公開 29 159 18.2% 合計 904 2989 30.2% 代表年齢るキャッシュリッチ・オーナー企業※は、県内で 93 社判明した。 ※キャッシュリッチ＝（現金・預金＋有価証券－有利子負債）／総資産×100 が 20（％）以上。直近の詳細な決算数値が判明している企業が対象まとめ企業運営の権限が代表個人に集中するオーナー企業。オーナー社長による意思決定・経営判断の速さから、きめ細やかな会社経営や長期ビジョンに沿った経営戦略を実行できるのが特徴で、今回の調査でも、オーナー企業の「増収増益」発生率は、全企業の平均を大きく上回っていることが判明した。経済環境が停滞するなかで設備導入、投資など素早い決裁のできる体制が実を結んだ結果とみられる。一方で、外部からのガバナンスが働きにくく、社外からのオーナー社長就任は 1 割弱、後継者候補に至っては 1 割を切るなど、全企業平均を大きく下回る結果となった。そのため、創業者や当代の影響力が強く、他の企業に比べ後継者への円滑な事業承継が大きな課題となるが、後継者不在率は全国の全企業平均を下回っており、鹿児島県内においては比較的スムーズに事業承継が進んでいる様子が窺える。反面オーナー企業における後継者の属性では全国の集計では非同族が 8.5％であるのに対し鹿児島県内では 5.0％に留まっていることも特徴としてあげられる。同族による弊害が発生するケースもあるが、県内企業においては「増収増益企業」の発生率は全国平均を上回っており、プラス面での効果の方が大きいといった見方もできる。オーナー企業の場合、実権の移譲に際して利害関係者が少数となりやすいことから、Ｍ＆Ａなど従来の同族継承によらない新しい承継手法にも大きな可能性があり、既成概念にとらわれない ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 3 2013/12/19 特別企画: 第 2 回鹿児島県オーナー企業分析経営展開も必要となってくる。国内企業の多くを占めるオーナー企業の後継者問題は、日本経済全体の課題でもあり、円滑な事業承継はオーナー社長に課せられた大きな社会的責任の一つであると言えるだろう。【内容に関する問い合わせ先】（株）帝国データバンク鹿児島支店 TEL 099-223-8208 FAX 099-222-3106 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 4