2015年4月1日 ご参考資料 123 今回のテーマ 日本企業の「稼ぐ力」向上をめざす法人税改革 2015年度より、法人税率が引き下げられることとなりました。 新人くん 日興アセットマネジメント の新人。営業推進部門に 配属され、投信や経済に ついて勉強中。 一方で、研究開発減税などの一部の企業への優遇措置は縮 小・廃止されるようです。今回は、こうした変更が日本企業や経 済にどのような影響を与えるのか調べてみました。 1.「法人実効税率」の引き下げ 法人実効税率とは、法人税など企業の所得に課せられる税金に ついて、企業が実質的に負担する割合のことです。 株式会社などの「法人」組織は、その事業で得た収益の内、一定 の割合を法人税として国に納めるほか、法人事業税や法人住民税 などを地方税として各自治体に納めています。法人実効税率は、こ うした税金について税務上の処理を行なった上で、企業収益に対 する税負担が実際にどの程度となっているかを示しています。 日本の2014年度時点での法人実効税率は34.62%(標準税率) と、米国に次いで主要先進国では2番目に高い水準となっていまし た。その税率の高さから、高い収益を稼ぐ日本企業が、税負担のよ り軽い国へ移転してしまうことなどが懸念されており、かねてより経 済界などから税率の引き下げが強く求められていました。 そうしたなか、政府は法人税改革を日本経済の持続的な成長を めざす「成長戦略」の柱としており、法人実効税率を2015年度から 数年で20%台まで引き下げることを目標としています。そして、 2015年度の税制改正では、法人実効税率を2.51%引き下げ、 32.11%とすることが決まりました。2016年度には更に31.33%へ 法人事業税や法人住民税 は、各自治体の裁量で税 率を上乗せすることができ ます。そのため、都道府県 などの各地域における実際 の法人実効税率は、標準 税率とは異なっています。 (次のページヘ続きます) □当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料 ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料 作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。□投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リス クもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時に は、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 (1/2) の引き下げが予定されており、今後も20%台をめざした法人税の 段階的な減税が見込まれています。 市場では、減税に伴ない生じた資金が活用され、設備投資の増 加や賃上げにつながることが期待されています。また、法人税は稼 いだ収益に応じて課税されることから、今回の引き下げは高収益 企業への恩恵が大きく、日本企業にとって収益力を高めるインセン ティブとなることも期待されています。 2.「課税ベース」の拡大 今回の法人税改革では、法人税率引き下げの財源を確保するた め、資本金1億円超の法人を対象とした「外形標準課税」の拡大 や、「租税特別措置」の見直しなどを行なうことで、税金を支払う対 象、つまり課税ベースを拡大しています。 「外形標準課税」は、企業の利益ではなく、事業規模(資本金や給 与総額)に応じて課税される税金です。法人税と異なり、利益の大 きさや赤字・黒字に関わらず課税されるため、今回の外形標準課 税の拡大は、相対的に赤字企業の税負担の増加につながります。 「租税特別措置」は、特定の業界や企業を税制面で優遇する仕組 みで、一般に「政策減税」と呼ばれています。今回は、その一部が 縮小・廃止されます。中でも、研究開発費の一部を法人税額から控 除できる「研究開発減税」が大きく縮小されており、研究開発への 投資額が大きい傾向にある医薬品業界などの税負担が増加する とみられています。 政府は、賃上げによる景気 回復をめざしており、外形 標準課税の拡大とともに賃 上げ分の一部を外形標準 課税の対象としない仕組 みを導入しました。さらに、 賃上げ分の一部を法人税 から控除できる「所得拡大 促進税制」という租税特別 措置も拡充しています。 こうしたことから、一部の企業や業界にとっては、今回の法人税 改革は減税ではなく実質的な増税になる場合があると考えられま す。ただし、今回の法人税率引き下げによる減税額は、課税ベース の拡大による増税額を上回っており、全体では「実質減税」となるよ うです。また、課税ベースの拡大は、一部の黒字企業への税負担 の偏りを改善し、産業の新陳代謝を促すなど、プラス面もあると考 えられます。 政府は、法人税の構造を、広く薄く税負担を分かち合い「稼ぐ力」 を持つ企業の税負担を軽減する「成長志向型」に変え、日本企業 の収益力改善、さらには賃上げへとつなげることをめざしていま す。今後は、こうした好循環による景気回復が期待されます。 企業の「稼ぐ力」を支援する税制改正となった今回の法人 税改革。日本企業の業績向上や日本経済の持続的な成 長につながることが期待できそうですね。 □当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料 ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料 作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。□投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リス クもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時に は、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 (2/2)
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