COLUMN「今、人事部に求められるもの」 商学研究科教授

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「今、人事部に求められるもの」
商学研究科教授
守島基博
一橋大学の目指すべき方向は、これまで同様にゼミやインタラクティブな授業
を通じて、激しい時代環境の変化のなかにあっても、常に新しいことを学び挑戦
していける人材を輩出することです。皆様と協力して、そのような環境で育った
人材が活躍していける場を提供していきたいと思います。
これから人材不足の時代が続くでしょう。でも人材不足は人手不足とは違いま
す。皆様の企業では、事業運営のために必要な人材が確保できていますか? 育っ
てきていますか? 人材不足に頭を痛めている企業が多いようです。
では、なぜ人材不足が起こったのか? まず、競争環境の大きな変化で、求める
人材像が大きく変わったことがあります。たとえば、
急速なグローバル化に直面し、
グローバルに活躍できる人材が必要になってきました。今、これまでの延長では
なく、企業戦略を基に必要な人材像を導き出し、そうした人材に狙いを定めて確
保することが求められています。
そのために必要なのが、企業の「人材確保力」の強化です。人材確保力は、
「採
用力」
「育成力」
「維持力」に分けられます。この三つが一体になって初めて、企
業にとって戦略達成のために必要な人材の確保が可能になるのです。
でも、率直に言って、日本企業の人材確保力は低下していると言わざるを得ませ
ん。これも人材不足の一因です。たとえば、採用力について、これまでどれだけ採
用を科学的に検証してきたでしょうか。科学的な検証とは、採用基準と入社後の成
果との関係を確かめ、もし相関がなかったとすれば、採用方法を改めていくという
ことです。
また、真っ白なキャンバスに絵を描くのが、これまでの人事が行ってきた育成
でした。でも、この方法で人は育っているのでしょうか? 人を育てるのは、職務
経験です。ここしばらく、挑戦のある仕事を提供し、周りの皆でサポートしなが
ら達成する風土が少なくなり、人が育たなくなってきました。
さらに「維持力」には、
仕事の意味や面白さを感じられる環境が大切です。特に、
「挑戦意欲の高い層」には面白い仕事、挑戦的な仕事を優先的に提供することが必
要です。またワークライフバランスなど、働きやすい環境も大切です。
少し大げさかもしれませんが、私は、人材確保に失敗すると、人材不足による
倒産もあり得ると考えています。すべては企業戦略のために──極論すれば、こ
れが人事部門の仕事の基本です。今、
人事にとって必要なのは、
人材確保力を高め、
将来の戦略を担っていく人材を確保することです。
※本文章は、CPP設立説明会で行われた講演の内容を要約して再構成しました。
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