大島のサクラ株【おおしまのさくらかぶ】 所在地:泉津字福重 大島公園から三原山へ向かう登山道の途中左側に、樹齢 800 年以上のオオシマザクラ(1) の巨木がある。特別天然記念物は日本国内に 75 件、東京都にある植物で唯一の特別天然記 念物が昭和 27(1952)年に指定された大島のサクラ株である。島の人たちはこのサクラ株の ことを「サクラッカブ」と呼んでいる。サクラ株は、老樹で大きな幹の基部だけが残ってお り、上部の方は枯死している。昭和の始めのころは 1 株の巨木であったが、昭和 40(1965) 年頃大きく傾き始め、平成 17(2005)年の台風により倒壊した。残基から大小の枝が四方に 伸び広がり、これらの中には斜めに地に垂れ、あるいは水平に横たわり地に接したところか ら根が張って再び上方に直生するものもあり、珍しい樹形をしている。このような過程の中 で元株と呼ばれる親木から倒壊などにより地面に接した太枝が根を張り、現在は元株を含め 北・東・西株の 4 株となり生育している。昔はサクラの幹にしめ縄が張られ、御幣(2)も供え し け られていたそうで、サクラの花が咲いて早く散ると時化がくる、不作の年になるなどと言わ れていた。また、大島へ帆船で渡っていた時代には、房総半島から来る船はこの桜の木を目 当てにして泉津港に着いたとも言われている。地質学的には天文 21(1552)年に噴火した溶 岩流の上に生えていることから、それ以降のものとも言われている。 (1) 沿海地から山地にかけて生える、樹高 15m に達する落葉広葉樹。葉と同じ時期に白色 の花が開く。葉は互生、葉身は倒卵状長楕円形で先は尾状に尖る。縁には先の尖った重 鋸歯がある。 (2) 御幣とは幣束の敬称。紙や布を細長く切って細長い木に挟み、神前に捧げる供え物の一 種であり、お祓いする時に用いる祭具。
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