Performance Improvement Accounting: 企業を変革する管理会計第1;pdf

EY Advisory
Performance Improvement Accounting:
企業を変革する管理会計
第1 回
業績を変えるメカニズム
EYアドバイザリー(株) ディレクター 米国公認会計士 土田 篤
• Atsushi Tsuchida
国内の大手総合化学メーカーから、大手コンサルティングファーム、投資ファンドなどを経て、現職。現在、企業における事業戦略立案、
M&Aなどの投資意思決定支援、収益改善計画策定および実行におけるハンズオン支援、中期経営計画策定などの戦略・コーポレートファ
イナンス領域のコンサルティング業務に従事。
Ⅰ 洋菓子メーカーの悲劇
私たちは、管理会計は業績改善につながらないと意味
がないと考えています。それが、私たちが提供する
いわゆるデパ地下で、ケーキなどを販売する洋菓子
Performance Improvement Accountingの基本的
メーカーの話です。店舗別損益を管理し、各店舗は収
な考えです。そして業績改善の第一歩は「数字の見方
益改善に励んでいるが、業績は一向に上向かない、ど
を変えること」と考えています。
うしたらいいかとご相談をいただきました。
分析した結果、管理会計の仕組みの問題が明らかに
なりましたが、その顕著な例が配賦の仕組みの問題で
Ⅱ 管理会計が役に立たないケース
した。同社では、閉店時に残った生菓子の廃棄ロスが
全社収益を圧迫していました。しかし、管理会計上、
管理会計は多くの企業で整備され、業績管理や予算
各店舗からの返品による廃棄ロスは、いったん本社共
管理に用いられています。しかし、前述の例のように、
通費として集計され、ある基準で各店に配賦されてい
見る数値が不適切だと、現場の判断を誤らせ、効果が
たため、各店舗は削減しても、そのごく一部しか自店
上がらないことに時間と体力を費やす結果となります。
の損益に寄与しない廃棄ロスには、管理の目を向けて
かつて有効であった管理基準でも、時の経過とともに、
いませんでした。むしろ販売の機会損失を防ぐため
機能しなくなる例もあります。事業環境の変化や社内
に、閉店までできるだけ多くの商品をショーケースに
方針の変更に応じて、管理基準を適宜見直す必要があ
並べるべきとする店舗も散見されました。
ります。
これは、コストを抑制できる主体に、そのインセン
一度管理基準を定めると、見直す機会は限られるの
ティブが働かない、管理会計の設計上の問題です。事
で、基準の適否によらず、それに従って現場は動き続
実、同社では、各店舗の廃棄ロスの発生額を直課する
けます。ある製造業では、標準原価と実態の乖離につ
仕組みに変えただけで、各店舗が自ら廃棄ロスを抑制
いて調査した結果、標準原価が長年見直されていない
し始め、これが業績を改善させる大きな一因となりま
ばかりか、設定当時の背景を知る人がいないという事
した。
態が判明しました。上記は極端な例かもしれませんが、
この例は「数字の見方」を誤る悲劇を端的に表して
います。しかし裏を返すと数字の見方を変えると、
「社
内の行動」が変わり、「業績」が変わるとも言えます。
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かい り
原価計算を見直すと、製品損益に対する認識が大きく
変わる例は、決して珍しくありません。
しかし業績を改善するためには、管理会計を見直す
▶図1 Performance Improvement Accounting の対象範囲
現状
分析
問題点・課題
抽出
施策
実行
施策策定
収益
改善
Performance Improvement Accounting
組織階層
施策立案・効果試算
SBU
部門別
損益管理
論点別 原因構造分析
事業部
全社
損益管理
論点別 問題構造分析
全社
既存の管理会計
SBU別
K
G
I
K
G
I
・
・
設
計
管
理
K
P
I
K
P
I
損益管理
管理会計
最適化
事業収益性分析
KPIマネジメント
だけでは不十分です。一般的に管理会計では、主に業
品点数を半減しても限界利益はほぼ変わらず、30 %
績の可視化が目的とされます。部門別損益を示せば、
の在庫削減が可能と判断し、実行しました。これによ
不採算部門は改善を迫られますし、さらにその管理単
り、キャッシュ・フローが改善しただけでなく、商品
位を細かくし、個人の責任をより明確にすることで、社
点数の減少により、営業部門の商品一つ一つへの理解
員の意識を変え、成果を上げる例も見られます。しか
が深まりました。また、商品損益の可視化により、注
し、ここで管理会計の果たす役割は、部門または個人
力すべき商品の見極めが進み、売上、利益ともに増加
に対する改善への動機づけであり、事業の問題点をど
するという結果をもたらしました。
う見極め、どのような打ち手を採るかは、各部門また
このように、Performance Improvement Accounting
は個人に委ねられています。さまざまな情報を見ても、
では、単なる業績管理にとどまらず、企業の問題点は
有効な打ち手につながらなくては意味を成しません。
何か、それをいかに解決すべきかの企業の問題解決プ
多くの情報を集めても、活用しない限り、情報コスト
ロセス全体を対象範囲としています(<図1>参照)。
を浪費する結果となります。
具体的には、既存の管理会計の最適化に加え、事業
の問題点を特定し、打ち手を導出するための「事業
収益性分析」、その打ち手の確実な実行を促すための
Ⅲ Performance Improvement Accounting
とは
「KPIマネジメント」の二つの手法を採ることで、業
績改善を促す仕組みを構築しています。
次号から2回わたり、「事業収益性分析」と「KPIマ
業績を改善するためには、取得した情報を、経営者
ネジメント」について詳細をご紹介します。
や現場の判断に生かし、具体的な打ち手につなげるこ
とが必要です。これには既存の管理会計の枠組みを超
えた取り組みが求められます。
例えば、ある化学品製造業では、原価計算を最適化
し、商品別損益を見直した結果、千数百ある商品点数
を半減させるという打ち手につながりました。同社は、
それまで顧客の要望に応えるため、次々と新商品を開
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発してきましたが、売上増加が伴わず、資金繰りに窮
する事態に陥っていました。しかし、分析により、商
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