画像認識による抵抗器の抵抗値読み取りに関する研究;pdf

画像認識による抵抗器の抵抗値読み取りに関する研究
摂南大学
113045 杉原 弘記
理工学部 電気電子工学科 電子光機器研究室
Study on Resistor Value Identification using Image Recognition of Color-Code
Hiroki Sugihara
Electronic and Optical Systems Lab., Dept. of Electrical and Electronic Engineering, Setsunan Univ.
1.はじめに
抵抗器にはカラーコードと呼ばれる色の帯が付いており,
これを読み取ることによって抵抗値がわかる。抵抗値を読
み取る手法としては,目視,またはテスターによる直接測
定が一般的である。しかし,これらの手法は大量の抵抗器
を扱う場合,抵抗器の分類に時間を要することや,人的ミ
図 3 差分画像
図4
分離した抵抗器本体
スによる読み取りミス発生の恐れがあるという問題点があ
る。そこで,これらの問題を解決するために,画像認識に
よって抵抗値を読み取る手法を研究した。
2.画像認識の概要
画像認識の流れを図 1 に示す。まず,抵抗器を画像とし
て入力する( 図-2 (a))。その入力画像に,2 値化を中心と
した画像処理を施すことにより,カラーコード領域を抽出
する( 図-2 (b))。この抽出領域に,画素値を基準とした閾
値処理を施し,色帯の部分とそれ以外の部分に分離する。
分離したそれぞれの色帯から重心座標を求め,この座標を
元に色帯の色を抽出する。これを機械学習により学習させ
た識別器に入力することにより,抵抗値を出力する。
4.色帯の分離
カラーコード領域の大部分を占める,ベージュ色の領域
を取り除くことによって,色帯を分離する。まず,画像か
分について最頻出の画素値を求める。この画素値を中心に,
±20 の範囲の画素値を閾値とした 2 値画像を生成する。以
カラーコード領域の抽出
色帯の分離と色の抽出
(a) 入力画像
識別器による抵抗値の出力
(b) カラーコード領域
画像認識の流れ
抽出する長方形領域
ら赤色の成分,青色の成分をそれぞれ取り出し,各々の成
画像入力
図1
図5
上のように生成された 2 つの 2 値画像を合成することによ
り,色帯を分離する。一連の流れを図 6 に示す。
赤色の成分
図2
青色の成分
2 値画像
抵抗器とカラーコード
色帯を分離
3.カラーコード領域の抽出
事前に背景画像を撮影しておき,入力画像( 図-1(a))か
ら背景画像を差し引いて,照明ムラを除去した差分画像(図
3)を生成する。この差分画像をモノクロ画像に変換し,閾
図 6 色帯の分離の処理過程
5.今後の課題
識別器による抵抗値の出力に関しては未検討である。先
値処理と,リード線を削除する画像処理を施すことにより,
行研究では(1)では,画像認識による正しい抵抗値の識別率
抵抗器本体とそれ以外の領域に 2 値化する(図 4)。ここで,
が 77%であったが,実用化するにはまだまだ高精度とは言い
分離された抵抗器本体の重心座標を求める。さらに,本体
難い。本研究では,画像認識のプロセスの改善を図り,識
中央部分の,照明による光の反射の影響を避けるため,求
別率 90%以上を目指す。発表当日は識別器と識別率に関して
めた重心座標から 10 ピクセル上方向に移動したピクセルを
も報告する予定である。
底辺の中央とした,幅 210 ピクセル,高さ 10 ピクセルの長
方形領域(図 5)を,入力画像から抽出する。
文
献
(1) 三谷芳弘・浜本義彦 : 画像処理による抵抗器の読み取り
に関する研究 , Journal of JACT Vol.15 No2 , 65-70 , 2010