発表資料

光受容タンパク質を用いた人工受容野で
ヒトの視覚情報処理を実現する
電気通信大学 情報理工学研究科 基盤理工学専攻
准教授 岡田 佳子
[email protected]
http://www.okada-lab.es.uec.ac.jp
新技術の目的
・生体材料を用いて視覚機能をもつハードウェアを開発
(微分応答センサー,画像フィルター)
・ロボットビジョンやアナログ画像処理への適用
新技術の特徴
・無害でユニークな生体材料
視覚機能タンパク質,光合成タンパク質
・成膜プロセスが簡単な一画素アナログ素子
・視覚ニューロンの構造を模倣
従来技術との比較
視覚情報処理機能を実現するために・・・・
技術
コンピューター
ビジョン
特徴
計算機を用いる
(ロボットビジョン)
カメラ,センサー,ジャイロ
スコープ,画像処理装置,etc
シリコン
視覚機能素子
(インプラント網膜)
シリコン-LSI技術を用いる
バイオ
視覚機能素子
CCD,外部画像処理装置や
埋め込み電極アレイ,etc
タンパク質をそのまま用いる
二次元結晶薄膜(4nm厚)
視覚機能(微分,たたみ込み)
→微分・差分回路不要
太陽電池(光合成)
→バイアス電源不要
問題点
画像処理演算量が膨大
→リアルタイム処理が困難
消費電力が大きい
スペースが必要
多数のフォトトランジスター,
抵抗やキャパシターが必要
手術が必要,高価
生体親和性が低い
湿式セルの電解質液漏れ
一画素=各分子電流出力の総和
→励起場所が不明
→分子(6nm)高解像度無駄?
(視細胞と同じ仕組み!)
網膜構造と信号の流れ
棹体(rod)
赤
錐体(cone)
視細胞の中に視物質(光反応分子)
緑
棹体:明暗を認識する細胞
約1億2000万個存在 1光子で興奮
視物質ロドプシン
錐体:色を認識する細胞
約600万個存在
興奮に100光子以上必要
視物質フォドプシン(赤,緑,青)
視細胞
視神経(100万本)
↓
脳
高度視覚情報処理
onとoffだけに反応する
ロドプシンとレチナール
ロドプシン:桿体視細胞の中にある色素タンパク質
オプシンと発色団レチナールで構成
レチナール
ビタミンA(レチノール)
β-カロテン
トランスレチナール
シスレチナール
→光→
ステルス機能分子!
代謝→不安定
http://www.org-chem.org/yuuki/rodopsin/rodopsin.html
ロドプシンファミリーの応用
レチナールをもつ光受容タンパク質
種類
ロドプシン
由来
光化学反応
応用例
網膜(動物型) 緑青光駆動視覚情報受容
(網膜写真)
チャネル
ロドプシン2
緑藻
(微生物型)
青色光駆動陽イオン取り込み
神経活動の活性
光遺伝学
ハロ
ロドプシン
高度好塩菌
(微生物型)
黄色光駆動塩素イオン取り込み
神経活動の抑制
光遺伝学
バクテリオ
ロドプシン
高度好塩菌
(微生物型)
黄色光駆動プロトンポンプ
光電変換
視覚機能素子
♡ 光遺伝学 (Optogenetics)
遺伝子導入によって光応答タンパク質を発現させて,
目的の神経細胞活動を光で制御する技術
Nature methods, “Method of the Year 2010”
http://blogs.lt.vt.edu/stems/2014/05/01/optogenetics/
青色光で興奮させています
バクテリオロドプシン
高度好塩菌の細胞膜(紫膜)を構成するタンパク質
地球最古の生物 = 火星にいるかも?
トランスレチナール
拡大図
6 6 4 nm
塩
菌の紫色!うじゃうじゃいる
シスレチナール
→光→
安定で壊れない
材料の特徴
☆ 無害な生体材料,有機材料
→ 環境にやさしい
☆ 光合成
☆ 飽和食塩水で大量に培養
→ 経済的,汚染に強い(雑菌等)
☆ 2次元結晶(六方細密充填)
→ そのまま使える
☆ 百万回以上の光化学反応サイクル
→ 繰り返し使用可能
バクテリオロドプシン視覚素子
光量の変化があったときだけ電流が流れる=神経節細胞と同じ微分応答
1. 網膜神経節細胞型センサー(1個の細胞を模倣)
2.「受容野」型画像フィルター(網膜や脳の視野を模倣)
素子
特徴
理由
バイアス電源不要
微分や差分回路不要
視覚センサー 作製プロセスが簡単
画像フィルター 大面積受光部
動きが速いと出力増大
背景の明暗に依存しない
バクテリアの太陽電池
材料自身の情報処理機能
2次元結晶,コールド製法
成膜が簡単(ディップコート,スプレー)
微分応答→速度センサー
微分応答→フィンガーモーション
空間微分
光電流=
時間微分応答波形
ON
OFF
入射光
変化が少ない=応答しない
急激に変化する=強い応答
脳トレで画像が徐々に変化していく間違い探し(アハ体験)に似ています
神経節細胞型センサー
1個の神経節細胞を模倣
高度好塩菌の培養
高度好塩菌
H+
透明電極
電解質溶液
光
入射側
H+
バクテリオロドプシンセルの構造
透明電極
バクテリオロドプシンパウダーと懸濁液
センサーの特徴
☆ コントラストやエッジ検出
→ ヒトの眼の神経節細胞と同じ機能
☆ 物体の動く方向と速さ検出
→ 方向,動画センサー
☆ 動きが速いほど出力が大
→ 人感センサー,リスク回避
♡ 適用例:ロボットビジョン
♡ 適用例:
フィンガーモーション
(特願2015-165823)
全日本マイクロマウス大会 特別賞受賞!
知能機械専攻の田中研と岡田研合同チーム
(SPIE Newsroom 2012, DOI: 10.1117/2.1201212.004599}
受容野とは? ・・・光刺激に応答するニューロン(神経細胞)の領域,視野
受容野の構造
模式図
モデル関数
網膜
神経節細胞
Difference of
Gaussian
(DOG) 関数
外側膝状体
(LGN)
第一視覚野
単純細胞
興奮領域:光が当たると反応
抑制領域:光が消えると反応
Gabor 関数
(cos型)
受容野の形がわかると
→任意の時空間刺激パターンに対するニューロンの時間応答が予測できる
神経節細胞受容野型フィルター
網膜の視野を模倣
興奮領域
抑制領域
DOG関数
DOGフィルターの特徴
☆ ラプラシアンフィルターと類似
☆ 微分演算なしでエッジ検出
☆ 空間周波数選択性
網膜神経節細胞受容野の構造.たくさんの
視細胞が同心円状に集まってできている
http://www.cis.twcu.ac.jp/ asakawa/MathBio2010/lesson12/
バクテリオロドプシンで作った2値化DOGフィルター
└正負の出力を相殺
(1)
興奮領域
抑制領域
透明電極
減衰マスク
マスク
(1)式の2値化
バクテリオロドプシンDOGフィルターの構造
1. 所望の空間周波数に合わせて(1)式のパラメーター決定
2. 電極に互い違いにディップコート法成膜 (円内側と円外側)
→ 出力の極性が反対(興奮・抑制領域に対応)
★ 電極一組の 単一素子 測定光学系
センサー
f : 800
I-V 増幅器
液晶プロジェクター
光源:水銀ランプ
入射強度:45 mW/cm2
オシロスコープ
DOG によるエッジ検出と光バー検出
光エッジ
5 mm
光バー(2.5mm)
15.4 mm
走査速度:100 mm/s
DOG フィルターによるエッジと光バー走査応答波形
8
Photocurrent [nA]
エッジ
Left-to-right
Right-to-left
6
ラプラシアンフィルター
2
0
-2
-6
たたみ込みの正の部分
0
0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4
Time [s]
8
Photocurrent [nA]
生理学的応答
4
-4
光バー
予想される応答
ゼロ交差:エッジが受容野の中心を通ると,
興奮と抑制がつりあってゼロになる
Left-to-right
Right-to-left
Bar width= 2.46 mm
6
4
2
0
-2
-4
-6
0
0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4
Time [s]
D. Marr and S. Ullman, Proc. of R.Soc.Lond.B 211, pp.151-180 (1981)
DOG フィルターによる空間周波数選択性
1.2
Normilized Amplitude
1
入力画像
20
15
10
5
出力波形
0
-5
0.8
0.6
0.4
0.2
-10
Calculated
Measured
0,098
計算 0,093
-15
-20
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Time [sec]
0.6
0.7
0.8
0
0.01
0.1
-1
Spatial frequency [mm ]
入力画像:6本の光ストライプ
(幅:1,4∼10 mm,空間周波数:0,03∼0,2)
走査速度:100 mm/s
単純細胞受容野型フィルター
脳の視野を模倣
興奮領域
http://www.maebashi-it.ac.jp/ imamurak/Theme01.html
ネコの大脳皮質視覚野から線分の傾きに反応するニューロン
(単純型細胞)を発見.1981年ノーベル医学生理学賞
抑制領域
Gabor 関数 (cos型)
Gaborフィルターの特徴
☆ 線分に強い応答
☆ 微分演算なしでエッジ検出
☆ 方向選択性,空間周波数選択性
単純細胞受容野の脳内分布.種々の大きさ形の受容野が
http://ohzawa-lab.bpe.es.osaka-u.ac.jp
扇型に配置
バクテリオロドプシンで作った2値化Gaborフィルター └しきい値
(2)
透明電極
興奮領域
マスク
抑制領域
8.7 (mm)
(2)式の2値化
バクテリオロドプシンGaborフィルターの構造
1. 所望の空間周波数に合わせて(2)式のパラメーターとしきい値決定
2. 電極に互い違いにディップコート法成膜 (中心と両端に長方形)
→ 出力の極性が反対(興奮・抑制領域に対応)
★ 電極一組の 単一素子 Gabor フィルターによる方向選択性と空間周波数選択性
50
1.2
HWHM=32 deg.
1st+2nd
2nd+3rd
1
Normalized amplitude
Photocurrent [nA]
40
30
20
10
0
-100
0.8
0.6
0.4
0.2
-50
0
50
Degree [deg]
入力画像:光バー(幅5mm)
走査速度:80 mm/s
100
Calculated
Measured
0
0.01
0,112
計算 0,115
0.1
-1
Spacial frequency [mm ]
入力画像:6本の光ストライプ
(幅 0,9∼17 mm
空間周波数 0,03∼0,6)
想定される用途
Gabor フィルターによる欠陥検出
線幅や間隔,方向の違い,小さな欠陥→ 出力が急激に落ちる!
右から左に80 mm/sで走査
Photocurrent [nA]
45
80
80
80
80
60
60
60
60
40
40
40
40
20
20
20
20
0
0
0
0
-20
-20
-20
-20
-40
-40
-40
-40
-60
-60
-60
-60
-80
-80
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Time [sec]
0.6
0.7
0.8
-80
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Time [sec]
0.6
0.7
0.8
-80
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Time [sec]
0.6
0.7
0.8
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
Time [sec]
0.6
0.7
0.8
♡ 適用例:電子回路基板の欠陥検査
画像を拡大/縮小して走
査するだけで,電子回路
基板の異変を検知
・線幅や間隔の違い
・欠陥
・方向の違い
総合情報学専攻高橋研との
共同研究
M. Dümcke and H. Takahashi, Proc. of Advances in Data Mining: Applications and Theoretical Aspects, 6171, 186 (2010)
☆ デジタル画像処理との組み合わせにより,欠陥検出システムの
消費電力低減やコンパクト化をめざす
本技術に関する知的財産権
特願2015-165823
「光フィルタ素子,これを用いた欠陥検出システム,及び光センサ」
岡田佳子,高橋裕樹,田邉季正,向井貴之,本井拓馬
実用化に向けた課題と企業への期待
課題
1. 実験室レベルでの電解質封入 → 液漏れ,気泡
2. ランダムな成膜方法
→ 電流の流れる方向が相殺して出力が低下する
企業への期待
1. 課題1については,液晶封入技術によって解決可能
2. 課題2について,膜の配向や重複によって出力向上が期待
できる.電気泳動沈降法などの配向技術によって解決可能
お問い合わせ先
電気通信大学
産学連携コーディネーター 今田 智勝
TEL
FAX
e-mail
042 - 443 - 5724
042 - 443 - 5726
[email protected]