投資情報室 2015 年 3 月 19 日(木) Weekly Outlook 週刊投資情報 No.197 CONTENTS 1.日本株見通しとポイント 2.米国株見通しとポイント 3.円相場見通しとポイント 4.国内経済動向 5.新興国市場・経済動向 6.主な国内株価指数とテクニカル指標の推移 7.今週のストラテジー・セレクション 8.国内政治・政策動向~戦後 70 年談話は経済活動を悪化させない 9.地方創生~生活密着型の内需系企業に追い風 10.全般的な消費回復の下では百貨店とコンビニが有望 11.インド経済~改革を推進するモディ政権 12.来週・再来週の主なスケジュール 1/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 1.日本株見通しとポイント~視線は来期業績へ 長谷川 浩 先週末以降の日本株市場は、主要企業の株主還元姿勢の高まりや、訪日外客数の増加、好調な春闘の結 果等を好感し、堅調な値動きとなった。3 月も下旬に近づき、投資家の業績予想の目線が 2014 年度から 2015 年度に移り始める時期である。2014 年度では 2000 年度以降の最高益を更新しないものの、2015 年 度では更新することが見込まれる銘柄群に注目したい。 ◆日本株市場は堅調に推移 ものの、来期は更新することが見込まれる銘柄に注目し たい(図表 2)(ここでの「最高益」は 2000 年度以降の決 算における 1 株当たり利益)。今期予想で最高益更新が 見込まれる銘柄はすでに多くの投資家の注目するところ となっている(がゆえに株価が上昇している)可能性が高 い。今後投資家の目線が来期業績に移るにしたがって、 今期はまだ最高益を更新していない、これらの銘柄の注 目度が高まってくると考えられる。参考にされたい。 先週末以降の日本株市場では、13 日に、従来、株主 との対話に消極的と言われていたファナックが、一転し て株主重視の政策を打ち出すとの報道をきっかけに急 騰。そうした流れが他の優良株にも波及する形で、日経 平均は堅調に推移した。また、18 日には、2 月の訪日外 客数が前年同月比 57.6%増の 138 万 7 千人と、単月と しての過去最高を記録したと伝えられたことや、大手企 業の春闘の結果が良好であることも好材料視された。海 外市場で日経平均先物が軟調となっても、翌日の大証 では切り返すなど、日本株市場の堅調さが目につく相 場展開となった。 図表 1 所定内給与の前年増減率の推移 2 ◆今春の主要企業のベアは昨年を上回る模様 (%) 1 今春の労使間の賃金交渉において、ベア(ベースア ップ)は、トヨタが月 4,000 円、電機大手 6 社(日立製作 所、パナソニック、東芝、富士通、三菱電機、NEC)が 月 3,000 円となるなど、大手企業の回答は軒並み昨年 実績を上回った。デフレ環境が続くなか、日本の企業は 賃上げよりも賞与等の増加で対応するケースが多くみら れた。しかし、個人消費への波及という点では、賞与等 の一時的な所得の増加よりも、定期的な所得の増加の 方が影響が大きいことが知られている。昨春を超えるベ アの実現は、今後の国内消費を下支えする要因となろ う。また、今年は消費税増税がなく、実質賃金の上昇も 期待できる。手取りの増加が実感される夏に向けて、国 内景況感は明るいものとなろう。 0 ‐1 ‐2 ‐3 2000 2005 2010 2015(年) (注:規模 5 人以上、全産業) (出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」よりSMBC日興証券作成) 図表 2 来年度に最高益(注)更新が見込まれる主な銘柄 コード 銘柄名 3/18 2000年度以 達成 終値 降の最高 年度 (円) EPS(円)(A) 8,320 249.71 2010 2014年度 2015年度 (A)との 予想EPS 予想EPS かい離率 (円) (円) 248.68 327.12 31.0% しかし、デフレ脱却への足掛かりとして、賃金の動向 は海外投資家の関心も高いものの、昨日の春闘集中回 答日の結果だけでは、慎重な投資家はまだ動きを見せ ないだろう。中小企業への波及も含め、マクロ経済統計 で賃上げの実績を確認するまで様子を見るとなると、6~7 月頃まで待つ必要があろう。もっとも、それまでに景況感 指標等には好影響が表れてくるとみられることから、今後、 海外投資家の買い越し金額は徐々に増加してこよう。 (注:TOPIX 採用で 1999 年度以降、連続してデータが取得できる銘柄のう ◆視線は来期業績へ ち、① 2000~2013 年度の予想 EPS(1 株当たり利益)の最高値(A)を、 今期予想利益が過去最高を更新すると見込まれ、株 価も過去最高値を更新している銘柄群がある。しかし、 投資家心理として、上昇を続けている株を買うのは勇気 のいるものである。そこで、今期は最高益を更新しない 2015 年度ともに増益予想、③ 2014 年度、2015 年度予想 EPS の予想社 9962 ミスミG 6923 スタンレー 5,060 2,984 179.05 2003 162.92 2007 176.56 160.88 212.16 189.42 18.5% 16.3% 9989 サンドラッグ 5333 ガイシ 6,230 2,554 283.38 2003 136.36 2007 276.63 133.43 316.17 145.91 11.6% 7.0% 8273 イズミ 6622 ダイヘン 6845 アズビル 4,545 598 3,215 251.8 2006 46.22 2006 145.63 2007 247.37 43.26 131.02 268.82 49.16 154.23 6.8% 6.4% 5.9% 7966 リンテック 4114 日触媒 3,045 1,794 180.21 2010 110.3 2010 161.73 103.64 190.84 116.29 5.9% 5.4% 2014 年度には更新せず、2015 年度に更新すると予想、② 2014 年度、 数が 3 社以上、の条件を満たす銘柄を、2015 年度予想の(A)からのかい 離率の大きい順に表示。予想は 3 月 18 日時点の QUICK コンセンサス。 (出所:Astra Manager よりSMBC日興証券作成) 2/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 4536 参天薬 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 2.米国株見通しとポイント~当面はボックス圏の動き 河田 剛 3 月 12 日以降の米国株は、FOMC を前に利上げ時期に関する思惑から荒い値動きとなったが、FOMC の 結果がややハト派的だったことで、上昇して終わった。FOMC では利上げを慎重に判断する姿勢が示されて おり、早期利上げ期待の後退が株価の下支え要因となろう。一方、予想 PER が割高水準にあることや、年 後半まで企業収益は減益見込みとなっていることから、当面の株価はボックス圏の動きとなろう。 ◆先週、今週のレビュー ~荒い値動きが続く ◆当面の見通し~ボックス圏の動き 3 月 12 日の米国株市場は、2 月の小売売上高が事前 予想を下回ったことで、利上げ前倒し懸念が後退したこ とや、FRB(連邦準備制度理事会)による包括的資本分 析調査にほぼ全銀行が合格したことなどから、ダウ工業 株指数(NY ダウ)は前日比+259 ドルの大幅高となった。 13 日は、3 月のミシガン大学消費者信頼感指数が事前 予想を下回ったことや、ドル高、原油安の進行、 FOMC(連邦公開市場委員会)前の手控えムードなどか ら、NY ダウは同▲145 ドルと反落した。週明けの 16 日 は、3 月のニューヨーク連銀景況感指数、2 月の鉱工業 生産、3 月の NAHB(全米住宅建設業協会)住宅市場 指数がいずれも事前予想を下回り、利上げ前倒し懸念 が後退したことや、対ユーロでドル安となったことなどか ら、NY ダウは同+228 ドルとなった。17 日は、2 月の住宅 着工件数が事前予想を下回ったことや、原油価格の下 落、ドイツの経済指標が低調だったことなどから、NY ダ ウは同▲128 ドルとなった。18 日は、FOMC の結果がや やハト派的と受け止められ、ドル安、原油高となったこと などから、NY ダウは同+227 ドルの大幅高となった。 経済指標では 23 日発表予定の 2 月の中古住宅販売 件数(事前予想:前月比+2.5%)、24 日発表予定の 2 月 の新築住宅販売件数(事前予想:同▲1.3%)などが注 目される。17~18 日に開催された FOMC では、声明文 中の、利上げに対して「辛抱強くなれる」という表現が削 除された。これによって、利上げの時期的な縛りはなく なったが、声明文に「4 月の FOMC 会合で FF 金利の目 標水準を引き上げる公算は引き続き小さいと判断する」、 「フォワードガイダンスの変更は、委員会が目標水準の 引き上げ開始時期を決めたことを示すものではない」と の表現が追加された。また、イエレン FRB 議長は会合 後の記者会見で、辛抱強くなれるとの表現の削除は利 上げに直接結びつかないとの趣旨の発言を行った。 FOMC メンバーの政策金利見通し、経済見通しも下方 修正されており、早期利上げ懸念は大きく後退したと考 えられる。このことは株価の下支え要因となろう。一方で S&P500 の 12 ヵ月先予想 PER(IBES 集計)は 18 日時 点で 17.1 倍と割高水準にあり、S&P500 の予想 1 株当 たり利益(Bloomberg 集計)は 1-3 月期が前年比▲5.3%、 4-6 月期が同▲3.5%、7-9 月期が同▲0.1%と年後半ま で減益予想となっているため、当面の株価はボックス圏 の動きとなろう。 ◆2 月の小売売上高 12 日に発表された 2 月の小売売上高は、前月比▲ 0.6%と事前予想(同+0.3%)を下回り、3 ヵ月連続で前月 比マイナスとなった。業種別では無店舗販売が同 +2.2%、スポーツ用品・玩具・書籍・音楽が同+2.3%とな ったが、自動車・部品は同▲2.5%、建設資材が同▲ 2.3%、電気機器が同▲1.2%、総合小売が同▲1.2%と 減少したものが目立った。原油価格が 2 月中は反発し たことからガソリンスタンドは同+1.5%となった。自動車・ 部品を除く小売売上高についても、同▲0.1%と事前予 想(同+0.5%)を下回った。小売売上高の減少について は、一部の地域での悪天候や、ガソリン価格の上昇など の一時的な要因が影響していると考えられるが、3 ヵ月 連続の減少は 2012 年 4~6 月以来であり(2012 年 9 月 には QE3 を開始)、今後の動向を注視する必要があろう。 一方、消費者センチメントについては、13 日に発表され た 3 月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は前 月比▲4.2 ポイントの 91.2 ポイントと事前予想(95.5 ポイ ント)を下回ったものの、依然高水準を維持しており、個 人消費が失速する可能性は低いと考えられる。 (注:事前予想は Bloomberg、2015 年 3 月 19 日 10 時時点のもの) 図表 1 小売売上高(前月比)の推移 (%) 3.0 2.0 1.0 0.0 -1.0 -2.0 -3.0 3/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 09/1 09/7 10/1 10/7 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 (出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成) (年/月) 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 3.円相場見通しとポイント~9 月ゼロ金利解除の可能性高まる 本間 英至 ドル円は、FOMC 参加者の政策金利見通しが大きく下方修正されたことを受けて 119 円台前半まで一時下 落した。短期的には、材料消化のため上下に振れる展開も想定されるが、経済指標の予想比下振れ傾向を 早晩脱し、今秋の利上げ開始に向けて着実に前進すると予想される。年末に向けてはドル高円安基調での 推移が引き続き見込まれ、ドルが下振れした場面では押し目買い姿勢で臨みたい。 ◆この 1 週間(3/12~)のレビュー ドル円は、18 日の FOMC(連邦公開市場委員会)を 前にした様子見姿勢から概ね 121 円台前半での膠着相 場が続いたが、FOMC で同会合参加者の政策金利見 通しが大きく下方修正されたことを受けてドルは全面安。 ドル円は一時 119.30 円まで下落した。その後ドルに買 い戻しが入り、足元 120 円台前半で推移している。ユー ロは、13 日に 126 円台まで下落後、18 日のドル全面安 によるユーロ買いの影響で一時 131 円台後半を回復し たが、現在再び 130 円を割り込んで推移している。一方、 豪ドルも 18 日に水準を切り上げ、93 円台後半まで上昇 する場面があった。(東京時間 3/19 正午現在) ◆ドル円の見通しと来週にかけての注目材料 ◇利上げはデータ次第との見解を FOMC で再表明 FRB(連邦準備制度理事会)は 3 月 17~18 日に開催 された FOMC の声明文を 18 日に発表。少なくとも今後 2 回の会合での利上げ見送りを示唆する「(金融政策の 正常化を始めるにあたって)辛抱強くなれる(it can be patient)」との文言が削除された。FRB はこれまで、 「patient」や「for a considerable time」などの文言を声明 文に盛り込むことで、過剰な利上げ観測の浮上が金融 政策の混乱を招く事態を回避するよう努めてきた。しか し、そうした文言はゼロ金利の継続期間を連想させるも のであるため、金融政策の自由度を奪ってきたのも事 実。今回の文言変更により、FRB は「期間」の縛りから解 放され、政策判断をより柔軟に下せる環境を取り戻した といえる。イエレン FRB 議長は記者会見で「“patient”の 削除は FRB の性急な利上げを意味しない」と発言。声 明文では「労働市場に一段の改善がみられ、インフレ率 が中期的に 2%に向かうとの合理的確信が得られれば 利上げが適切になる」と指摘し、利上げ時期は今後の データ次第、即ち景気動向を見極めた上で慎重に判断 するとの見解が改めて示される形となった。 ただ、サプライズ指数は早晩反転に向かう見込みだ。 そう考える理由の一つに、同指数は天井をつけてから 60 営業日程度で底打ちに転じる傾向があることが挙げ られる。景気実態に大きな変化がなくても、期待外れの 経済指標が続くことで市場の過大な期待(事前予想)が 低下し、その結果同指数が下げ止まるという流れが、一 定期間内に発生する傾向があるようだ。今回も同様の 傾向を辿れば、今後 1 ヵ月程度で同指数の底打ちが見 込まれよう。また、低下ピッチの速さに関しては、昨年後 半にかけて米景気が一時 5%成長を記録するなど堅調 度合いを強めた結果、市場の期待値が例年以上に上 振れてしまった反動であり、米景気の失速を示唆するも のではないとみている。加えて、3 月に入って以降の 2 月分の経済指標の下振れについては、米国を襲った寒 波の影響が小さくないと推測される。2 月の気温低下は 図表 1 FOMC 参加者の FF 政策金利見通し (%) 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 3.625 2.500 12月時点の予想 3.125 1.125 1.875 3月時点の予想 0.625 2014年 2015年 (出所: FRB よりSMBC日興証券作成) 2016年 2017年 図表 2 米経済サプライズ指数の推移 100 2011/3~ 2014/1~ 50 0 -50 2012/11~ ◇米経済指標の予想比下振れ傾向は早晩脱しよう -100 足元の経済指標を振り返ると、雇用統計を除けば概 して期待外れの結果が相次いでいる。市場の事前予想 と実績値との乖離を示す経済サプライズ指数は、年明 け以降ほぼ一本調子で低下基調を辿り、足元では 2011 年 8 月以来の水準まで下落。低下ピッチもここ数年で最 2012/1~ -150 2014/12~ 2008/9~ -200 t t+30 t+60 t+90 t+120 t+150 t+180 (ピーク時「t」からの経過営業日数) (出所: Bloomberg よりSMBC日興証券作成) 4/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 速となるなど、米景気の先行き不透明感の燻りから米ド ルの上値を抑制する要因の一つとなっている。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 ている。一方、投機筋のポジションをみると、豪ドルの売 り残高(対米ドル、ネットベース)は直近で過去最大規模 にまで拡大。これらから、一段の利下げに対する市場の 織り込みは相当程度進んだと推測され、豪ドルの下値 余地は限定的なものに留まる可能性が指摘できよう。た だ、豪ドル相場は足元 CRB 商品先物指数に連動する 傾向を強めている。商品市況の底打ちが見えないうち は上値を追う展開も期待し難い。これらから、豪ドルは 対米ドルでのボックス推移が今しばらく続くことが予想さ れ、円に対してはドル円の動向に左右される値動きとな りそうだ。来週にかけては、20 日にスティーブンス豪中 銀総裁の講演が予定されている他、24 日に中国で発表 される 3 月の HSBC 製造業 PMI が注目材料となろう。 異例の悪天候が伝えられた昨年 1-3 月を上回る冷え込 みを記録。これが、小売売上高や住宅着工などで期待 外れの結果を招いた主因とみられる。ただ、こうした天 候要因は季節が過ぎれば剥落すると考えるのが自然で あり、米国の経済活動は時間とともに正常化が見込まれ よう。こうしたことを踏まえれば、経済サプライズ指数は 近い将来上昇に転じるものと予想される。 ◇米利上げ開始は 9 月の公算大 ただ、足元まで予想に届かない経済指標が相次いだ のも事実。FRB としては景気状況を慎重に見極めたい 意向と推測される。これまでの FRB 関係者の発言から、 FRB は早期利上げで失敗するよりも利上げが遅れて失 敗する方がリスクは小さいと考えている様子も窺える。こ うしたことから、前週号では、利上げは 6 月よりも 9 月の 可能性が高いと指摘したが、今回発表された FRB 参加 者による 2015 年末の政策金利予想(中央値)では、前 回 12 月時点の 1.125%から 0.625%に大幅に下方修正さ れた。FRB が利上げをゆっくりとしたペース、具体的に は 2 回の会合毎に 0.25%pt の利上げを実施していくだ ろうことを踏まえると、FRB 内部でも利上げは 9 月との見 方がコンセンサスとなったことが推察される(注)。 (注:現在の FF 政策金利は 0.00~0.25%(中央値:0.125%)。FRB は利上 げの際に FF 政策金利の誘導目標をレンジで示すことが見込まれる。今 秋以降については、9 月 FOMC で 0.25%pt 引き上げて 0.25~0.50%(同: 0.375%)へ、10 月 FOMC では据え置き、12 月 FOMC で追加 0.25%pt 引き上げて 0.50~0.75%(同:0.625%)と予想。) 市場では、6 月の利上げを見込む向きも少なからず あったことから、FOMC 後には利上げ時期後ずれとの見 方を受けてドルが全面安となった。ただ、主要国の中央 銀行の中で FRB が最もタカ派という位置づけは変わら ない。今後も相対的に米ドルが選好される傾向が期待 されよう。ドル円は、短期的にはやや上下に振れる展開 も予想されるものの、既述の通り、経済サプライズ指数 の反転とともに米景気に対する安心感も回復に向かい、 今秋の利上げ時期が接近するにつれてドル高円安の 動きへの回帰が予想される。ドルが下振れする場面で は押し目買いスタンスで臨みたいところである。 来週にかけては、3 月の製造業景況感指数や 2 月の 新築・中古の住宅販売、CPI の発表が予定されている 他、フィッシャー副議長をはじめ FRB 関係者の講演が 多く予定されている。 ユーロは足元、ドル全面安の影響から対ドルで反発 しているが、一時は約 12 年ぶりの安値を付ける場面も あった。ECB(欧州中央銀行)による国債購入を含めた QE(量的緩和)実施を受けたユーロ安の流れは基本的 に今後も続くとみており、引き続きパリティ(1 ユーロ=1 米ドル)を意識する展開を予想する。ユーロ圏では、引 き続きギリシャの動向が気になる。足元までの報道によ れば、同国政府が財政再建に向けた具体策の策定に 本腰を入れて取り組んでいる様子は窺えず、逆に、国 有資産の売却代金を債務返済には使わない意向を示 したり、財政負担を伴う貧困層向けの人道危機法を成 立させるなど、ユーロ圏諸国の神経を逆撫でするような 行動を繰り返している。こうした中、今夜(3/19)から 2 日 間に亘って欧州首脳会議が開催され、ギリシャのツィプ ラス首相が、メルケル独首相、オランド仏大統領、トゥス ク EU 大統領、ダイセルブルーム・ユーログループ議長、 ドラギ ECB 総裁といった欧州の要人と会合を持つ予定 だ。ギリシャの 10 年国債利回りが 11%台に達する等、市 場で同国のデフォルトリスクを意識する値動きを一段と 強めている中だけに、ギリシャのデフォルト回避、ユーロ 離脱回避に向けて大きなイベントとなる可能性があり注 目されよう。来週にかけては、25 日に 3 月独 IFO 景況指 数の発表が予定されている。 図表 3 豪ドル(対米ドル)と CRB 先物指数の推移 0.96 (米ドル/豪ドル) 320 0.94 300 0.92 0.90 280 0.88 ◆米ドル以外の来週にかけての注目材料 0.86 豪ドルは 1 月下旬以降、概ね 90 円台前半でのレンジ 相場が続いている。今週は、17 日に公表された 3 月開 催分の金融政策会合の議事要旨で、追加利下げの可 能性について言及されたことが豪ドルの上値抑制要因 となっている。先物市場によると、市場では年央までに 0.25%pt、年末までに更に 0.25%pt の利下げが見込まれ 260 0.82 240 0.80 0.78 0.76 220 CRB先物指数(右軸) 200 0.74 14/1 14/3 14/5 14/7 14/9 14/11 (出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成) 5/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 豪ドル(左軸) 0.84 15/1 15/3 (年/月) 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 4.国内経済動向~輸出数量の回復基調は維持される見通し 野村 真司 2 月の貿易収支は、輸出金額が増加する一方、輸入金額は減少したため、前年同月比では赤字が 5 ヵ月連 続で減少した。ただ、1~2 月の輸出数量は中華圏の春節要因という一時的要因で数字が振れた。今後の輸 出数量の増勢を占う上で重要なのが海外経済の動向。当面も米国経済を牽引役に海外経済の持ち直しが 期待され、輸出数量は今後も回復基調を維持する公算が大きい。 ◆2 月貿易収支:輸出数量は春節要因で下振れ 月(+20)以来の水準まで改善。製造業全体でみれば、 円安のメリット(収益改善)がデメリット(原材料高)を上回 り、回復の兆しが出てきた設備投資にも追い風となって いる。一方、非製造業は 12 月比▲2 ポイントの+21 と小 幅悪化し、昨夏以降は+20 前後の横ばい圏で推移。製 造業が改善したことで、非製造業との景況感ギャップが 埋まりつつある。業種別では個人消費の動きを反映す る小売が▲9 と、12 月比+5 ポイントとなったものの非製 造業では唯一マイナス圏。一部でもたつき気味の個人 消費を象徴している。因みに先行き 6 月の見通しは製 造業が+21、非製造業が+19 と、見通し通りであれば製 造業はさらに改善し、非製造業は引き続き横ばい圏で、 景況感ギャップが概ね解消する見込み。 2 月の貿易収支は▲4,246 億円(原数値)となり、32 ヵ 月連続の赤字。比較可能な 1979 年以降で最長記録を 更新し続けている。輸出金額は自動車(前年同月比 +8.8%)、半導体等電子部品(同+10.1%)等が増加し同 +2.4%と 6 ヵ月連続のプラス。国・地域別では対アジア、 対中国向けで 6 ヵ月ぶりの減少に転じている。但し、こ れは中華圏の春節(旧正月)が今年は 2 月で、1 月に発 生した駆け込み輸出の反動減という一時的な要因であ ろう。一方、輸入金額は同▲3.6%と 2 ヵ月連続のマイナ ス。原油価格の下落基調を反映し、原粗油が同▲ 54.8%、石油製品が同▲40.6%と大幅に落ち込んだこと から輸入金額全体も押し下げられた。輸出金額が増加 する一方、輸入金額は減少した結果、貿易赤字は前年 同月比では 5 ヵ月連続で縮小した。ただ、前月比(季節 調整値)では相対的に輸出額の落ち込みが大きく、3 ヵ 月ぶりに貿易赤字は拡大している。 図表 1 輸出数量指数(地域別)の推移 (2010年=100、季節調整値) 輸出数量は、中華圏の春節要因という一時的要因に 伴い、前月比(季節調整値)で 1 月が+5.7%、2 月が▲ 7.6%と上下に振れた(図表 1)。今後の輸出数量の増勢 を占う上でカギを握るのが引き続き海外経済の動きだ。 米国経済が、足元は悪天候要因等で減速するものの、 4-6 月以降は家計部門の堅調さが企業部門に波及する 中、内需主導で 2%台後半の成長を維持する公算が大 きい。中国経済は、構造改革を進める中国政府が「新常 態」と呼ぶ安定成長(7%程度の成長)を目指す。追加金 融緩和や一定のインフラ投資が期待されるため、過度な 景気減速懸念は禁物であろう。また、欧州経済は、ECB (欧州中央銀行)による QE(量的緩和)実施に伴う金利 低下・ユーロ安、そして原油安の欧州版 3 つの矢が一定 の下支え役となり、緩やかながらも景気回復が期待され る。以上から米国経済を牽引役に中国を含めたアジア 経済、欧州経済の緩やかな持ち直しが期待され、今後 の輸出数量は回復基調を維持する公算が大きい。 120 米国 110 全 全体 100 90 アジア 米 80 EU 70 60 2010 2012 2013 2014 2015 (年) (出所:内閣府「輸出入数量指数」よりSMBC日興証券作成) 図表 2 ロイター短観・業況判断 DI の推移 (良い-悪い、%ポイント) 40 見通し 20 0 -20 ◆3 月ロイター短観:製造業で景況感が改善 -40 3 月のロイター短観(調査期間:3 月 3~16 日)は 4 月 1 日発表の日銀短観(3 月調査)の業況判断 DI(良い- 悪い)を予測する上で参考となる。業種別でみると、製造 業の業況判断 DI は 12 月比+6 ポイントの+16 と、昨年 8 -60 製造業 非製造業 -80 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (出所:「ロイター短観」よりSMBC日興証券作成) 6/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2011 2014 2015 (年) 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 山本 正樹 武田 泰典 5.新興国市場・経済動向 白岩 千幸 前田 佑太 新興国株式市場は、米利上げ観測の後退から、今週に入り底打ちの動きに。為替市場では、ドル高が巻き 戻される動きとなったが、円もドルに対して上昇したため、新興国通貨の対円相場は高安まちまちとなった。 一部の新興国通貨は、その国固有の自国通貨安材料に全般的な米ドル高の流れが拍車をかける形でやや オーバーシュート気味に通貨安が進んでいたとみられ、当面は戻りを試す展開が予想される。 ◆最近の新興国市場の動向 け以降は急反発し、18 日の FOMC(連邦公開市場委員 会)の結果が好感されると一段高となった。 新興国株式市場は、6 日発表の米 2 月雇用統計を受 け米国の利上げ観測が高まったことなどから、先週にか けては総じて軟調となっていた。一方、今週に入ると、 米経済統計の下振れから利上げ観測が後退、米株の 反発につれて新興国株式市場も概ね底打ちの動きとな っている。直近 1 週間の株価指数騰落率(図表 1、18 日 時点)をみると、中国・上海株(+8.7%)やブラジル株 (+5.4%)などが上位となった。中国では、全国人民代表 大会(全人代、5~15 日)を受け、成長戦略や構造改革 への期待、追加金融緩和期待が高まったことから、上海 総合指数は 2008 年 5 月以来の高値に上昇した。ブラジ ル株は、3 月に入り大幅に下落していた反動から、週明 為替市場では、米経済指標の下振れを受け、ドル高 が巻き戻される動きとなり、18 日に FOMC の結果が発 表されるとドル全面安の流れが加速した。新興国通貨も、 対ドルで総じて上昇した。一方、円もドルに対し上昇し たことから、直近 1 週間の通貨騰落率(図表 1、18 日時 点)をみると、新興国通貨は対円では高安まちまちとな った。ブラジルレアル(▲3.6%)は引き続き大幅安となっ た。今週は国営石油会社の汚職問題や歳出削減など に抗議する大規模な反政府デモが行われ、政府が国 民に不人気な財政再建策の修正を迫られるとの懸念が 高まった(後述)。(前田、武田) 図表 1 主な新興国市場の動向 直近値 騰 落 率 (% ) 3月 18日 2 01 5 年 初 来 2 0 14 年 年 間 過 去 1 週 間 過 去 3 0 日 間 過 去 9 0 日 間 過 去 1年 間 株価指数 中国 インド 韓 国 インドネシア タイ マレーシア フィリピン ロシア トルコ 南アフリカ ブラジル メキシコ 為替 上海総合指数 香港ハンセン指数 SENSEX30種指数 韓国総合指数 ジャカルタ総合指数 SET指数 FBM KLCI総合指数 フィリピン総合指数 MICEX指数 イスタンブール100種指数 JSE全株指数 ボベスパ指数 ボルサ指数 3,577.30 24,120.08 28,622.12 2,028.45 5,413.15 1,531.50 1,797.57 7,756.58 1,632.12 79,942.27 52,187.48 51,526.19 44,360.87 10.6 2.2 4.1 5.9 3.6 2.3 2.1 7.3 16.9 ▲6.7 4.9 3.0 2.8 52.9 1.3 29.9 ▲4.8 22.3 15.3 ▲5.7 22.8 ▲7.1 26.4 7.6 ▲2.9 1.0 8.7 1.7 ▲0.1 2.4 ▲0.1 ▲0.8 1.1 ▲0.4 ▲2.4 2.1 0.8 5.4 2.6 11.0 ▲2.5 ▲1.8 3.6 1.6 ▲4.8 ▲0.6 ▲0.4 ▲9.4 ▲7.1 ▲1.5 1.8 3.3 17.0 5.6 5.5 6.9 5.9 1.0 5.7 10.3 10.5 ▲3.9 5.9 6.2 4.4 76.6 11.8 31.1 4.5 12.6 11.5 ▲1.3 19.9 22.2 21.9 10.9 11.6 14.3 ▲0.6 ▲0.9 0.7 ▲1.0 ▲0.6 ▲0.4 ▲1.2 2.6 0.5 0.7 ▲3.6 1.5 1.7 0.7 0.5 ▲1.8 1.1 ▲1.2 0.9 8.0 ▲3.1 ▲2.1 ▲10.5 0.3 0.9 1.8 0.0 ▲3.6 1.7 ▲4.3 2.2 5.6 ▲8.6 ▲3.0 ▲16.2 ▲2.4 17.8 15.3 13.9 1.9 16.3 5.5 19.1 ▲27.6 2.2 5.4 ▲13.9 3.2 ※プラスは外貨高・円安、マイナスは外貨安・円高 円/人民元 中 国 19.28 ▲0.0 10.9 円/インドルピー 1.91 1.1 11.4 インド 円/韓国ウォン(x100) 10.80 ▲1.2 9.4 韓 国 0.91 ▲5.6 11.7 インドネシア 円/ルピア(x100) 円/バーツ 3.67 1.0 13.0 タイ マレーシア 円/リンギ 32.71 ▲4.3 6.5 2.70 1.2 12.8 フィリピン 円/フィリピンペソ 円/ルーブル 2.02 ▲1.8 ▲35.6 ロシア 円/トルコリラ 46.73 ▲8.8 4.6 トルコ 円/ランド 9.95 ▲3.8 3.2 南ア 円/レアル 37.41 ▲17.0 1.0 ブラジル 円/メキシコペソ 7.95 ▲1.9 0.5 メキシコ (注:「直近値」については、当該日付が休場となっている場合は、その前営業日の値を掲載) (出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成) 7/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 ◆新興国市場関連トピック 本財が同+12.8%と大幅な上昇となり、3 ヵ月連続でプラ スとなった。一方、耐久消費財は 8 ヵ月連続で前年比マ イナスと引き続き低調となっているものの、昨年 10 月の 同▲35.2%をボトムに 1 月は同▲5.3%までマイナス幅が 縮小している。鉱工業生産指数は振れが大きいため、3 ヵ月移動平均により前年比をみると、昨年 10 月の同 +0.1%をボトムに 1 月は同+3.2%へと持ち直している。今 後については、個人消費に弱さが残るものの、インフレ 鈍化による購買力の向上は個人消費等の押し上げに つながろう。また、2015 年度予算ではインフラ投資の拡 大等も盛り込まれ、民間投資とともに増加が予想される。 こうした内需の回復を背景に生産は持ち直しの動きが 続くと予想している。(山本) 中国~2 月の新築住宅価格は引き続き下落 18 日に発表された 2 月の主要 70 都市新築住宅価格 指数は前月比(単純平均)▲0.43%と 1 月と同じ下落率 となった(前年比:1 月▲5.08%⇒2 月▲5.73%)。住宅在 庫が最高水準で推移していることが背景として考えられ る。ただ、3 月以降の住宅取引床面積(毎週発表)は前 月比で二桁増が続いていること、2 月は春節の影響で 取引が低調であったことを考慮すると、一段と下落率が 拡大する可能性は低いとみている。(白岩) 図表 2 中国の主要 70 都市新築住宅価格指数 (前月比、%) 3.0 図表 3 インドの鉱工業生産指数(3 ヵ月移動平均) 2.5 上海 2.0 15 1.5 10 1.0 北京 0.5 (前年比、%) 5 全体 0 0.0 ‐5 -0.5 ‐10 -1.0 総合 資本財 耐久消費財 非耐久消費財 ‐15 -1.5 11/1 11/7 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 ‐20 (年/月) ‐25 (出所:CEIC、中国国家統計局よりSMBC日興証券作成) 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 (年/月) (出所:CEIC、インド中央統計局よりSMBC日興証券作成) インド~鉱工業生産は持ち直しの動き インドネシア~今回は政策金利据え置き 12 日に発表された 2 月の消費者物価指数(CPI)は、 前年比+5.37%と 1 月の同+5.19%を上回った。2014 年 11 月の同+3.27%をボトムに上昇率が高まりつつある。 内訳では、燃料価格が 1 月の同+3.83%から 2 月は同 +4.72%となるなど上振れが目立つ。年明け以降、2 月 にかけては原油相場が底打ち、反転の動きとなったこと が背景とみられる。この他、1 月まで前月比で 5 ヵ月連続 のマイナスとなっていた食品価格が 2 月は横ばいに転 じており、消費者物価指数の上振れにつながった。一 方、14 日に発表された 2 月の卸売物価指数は前年比 ▲2.06%となり、4 ヵ月連続のマイナスとなった。1 月の同 ▲0.39%に比べてマイナス幅も一段と拡大している。今 後については、川上段階の卸売物価指数で前年比マ イナスが続いていることや、原油相場が 3 月以降は再び 軟化していること、通貨ルピー相場が底堅い動きとなっ ていることなどから、CPI がインド準備銀行の設定するタ ーゲット(前年比で+6.0%以下)を近いうちに上回る可能 性は低いとみている。 インドネシア銀行(以下 BI、中央銀行)は 17 日、市場 予想通り、政策金利(BI レート)を 7.50%に据え置いた。 BI は昨年 11 月、政府がガソリン等の燃料価格を大幅に 引き上げた直後に利上げを実施したが、今年に入り原 油安を背景に燃料価格が引き下げられたことなどもあり、 2 月は一転して予想外の利下げを決定していた。 声明文では、インフレ見通しの改善に一段と自信を 示した。また、前回はルピア安が経常収支の改善につ ながるとして、ルピア安容認姿勢も窺えたが、今回は一 転して介入も視野にルピア安定に努める旨が強調され ている。2 月に BI が予想外の利下げを決定した後、ル ピアはアジア通貨の中でも相対的に軟調となっていたこ ともあり、BI は追加利下げを見送ったと考えられる。 今後については、BI が物価とともにその動向を重視 している経常収支の動向も大きな鍵を握るとみている。 直近の経常収支 GDP 比は▲3%前後で推移しており、 赤字拡大に歯止めはかかったものの、大幅な改善も見 込みにくいだろう。このため、BI は引き続き追加利下げ には慎重なスタンスを維持するとみている。 一方、12 日に発表された 1 月の鉱工業生産は前年 比+2.6%と、3 ヵ月連続のプラスとなった。財別では、資 8/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 リスクなども、リラの重石となろう。総選挙まではリラが再 度下落するリスクは残り、引き続き神経質な展開になる と予想している。(前田) 通貨ルピアについては、前述の通り BI が前回利下げ 時にみられた通貨安容認スタンスを修正していることか ら、最近の通貨安の流れにはひとまず歯止めがかかる とみている。比較的高水準が続いている経常収支赤字 を背景に、ルピア対ドル相場は米国の金融政策を巡る 思惑から下押す局面も出てこようが、BI が慎重な政策ス タンスを続けるとみられるため、通貨の信認は維持され よう。足元ではこう着感の出ているドル円相場もトレンド は円安方向とみており、総じて通貨ルピア対円相場は 底堅く推移すると予想している。 図表 5 14 トルコの政策金利と市中金利 (%) 主要政策金利(1週間物レポ金利) 市中金利(翌日物銀行間金利) 12 10 8 6 図表 4 インドネシアの政策金利(BI レート) 8.0 4 (%) 2 金利コリドー(グレー部分) :市中金利の誘導目標、上限が翌日物貸出金利・下限が翌日物借入金利 0 7.5 13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 (年/月) (出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成) 7.0 6.5 ブラジル~レアルは先週末に安値更新後、下げ一服 レアルは先週末にかけて連日で安値を更新し、3 月 13 日に 1 ドル=3.248 レアル、1 レアル=37.45 円と、対ド ルで 2003 年 4 月以来、対円で 2008 年 12 月以来の安 値をつけた。労働組合が 13 日に社会保障費の削減に 反対する抗議デモを実施、同日にはルセフ大統領の弾 劾を求める大規模な反政府デモ(15 日)の計画も報じら れたことから、政府が増税や歳出削減を含む財政再建 策の修正を迫られるとの観測が浮上した。ただ、その後 は 15 日のデモで大きな混乱が起きなかったことや、野 党幹部が大統領の弾劾を求める考えがない旨発言した こと、政府が汚職防止法の強化策などを発表したこと、 さらには米 FOMC による早期の利上げ観測の後退もあ り、レアルの下げは一服している。 6.0 5.5 12/1 12/7 13/1 13/7 14/1 14/7 15/1 (年/月) (出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成) トルコ~政策金利が据え置きも、リラになお下値リスク トルコ中央銀行は 17 日、主要政策金利である 1 週間 物レポ金利を 7.50%に据え置くことを決定した。また、市 中金利の上限に相当する翌日物貸出金利を 10.75%、 下限に相当する翌日物借入金利を 7.25%に据え置い た。いずれも市場予想通りであった。 会合後に公表された声明文では、前回会合に比べ 中銀のインフレに対する懸念が高まっていることが窺え る。この背景には、食品価格の上昇に加え、米国の利 上げ観測の高まりやトルコ中銀の独立性への懸念から、 前回会合以降、一段とトルコリラ安が進行したことがあろ う。そのため、「この先の金融政策の決定はインフレ見 通しの改善次第である」とし、「インフレ見通しが改善す るまで、引き締め的な金融政策を維持する」と、引き続き 追加利下げに対する慎重な姿勢を示している。 この結果を受け、17 日のトルコリラは対米ドルで前日 比+0.5%と上昇。市場はひとまず中銀の決定を好感す る形となった。ただ、リラが持ち直し安定してくれば、エ ルドアン大統領ら政府首脳は中銀に対する利下げ圧力 を再度強めると予想される。加えて、中銀の独立性を尊 重するババジャン副首相の去就に対する不透明感や、 6 月の総選挙を控えた政情不安の再燃懸念、地政学的 ただ、今年度予算案が 17 日に議会を通過したことか ら、ルセフ大統領による予算案の署名後、近日中に歳 出削減策が発表される見通しとなった。議会や労組、国 9/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 ルセフ大統領は増税や歳出削減、国営石油会社の 汚職問題などを背景に支持率が大幅に低下しており (2014 年 12 月 2~3 日調査:42%→2015 年 3 月 16~17 日調査:13%、調査会社ダッタフォーリャ)、今後もこうし た大規模な反政府デモが起こる可能性があろう。また、 与党の支持基盤である労組からの反発もあって、議会 での求心力が急速に低下しており、財政再建策を巡る 政府と与党幹部議員との交渉は引き続き難航している。 さらに、国営石油会社ペトロブラスの汚職問題で上下両 院議長など与党幹部が起訴されたり、辞任する事態も 想定される。その場合は、議会での政策審議が混乱・ 停滞する可能性もあろう。こうした政情不安を背景にレ アルは引き続き神経質な展開が続くとみている。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 ル高局面では円の対ドルでの下落は限定的であったこ とから、円のドルに対する反発余地も限定的とみられ、 新興国通貨は対円でも強含みの展開となろう。 民の反発に対する配慮から、歳出削減の規模は当初の 予想を下回る可能性が高いものの、ひとまず議会を通 過すれば、財政再建に対する不透明感が払しょくされる ため、レアル相場も落ち着きを取り戻すとみている。 (武田) 図表 6 ブラジルレアル相場 52 (円/レアル) (レアル/ドル) 1.9 50 レアル・円 (左軸) 48 46 2.1 2.3 2.5 44 42 レ ア ル 高 40 38 2.7 2.9 米ドル・レアル (右、逆軸) 36 3.1 34 3.3 13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 (年/月) (出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成) 図表 7 ルセフ大統領の支持率の推移 70 (%) 60 どちらでもない 50 不支持 これから来週にかけての欧米のスケジュールでは、 19~20 日に EU(欧州連合)首脳会議が予定されている 他、ユーロ圏の 3 月製造業 PMI(速報)(24 日)、ドイツ の 3 月 IFO 景況指数(25 日)、米国では 2 月の中古お よび新築住宅販売(23 日、24 日)、2 月耐久財受注(25 日)などの、経済指標が発表される。EU 首脳会議に関 連して、ギリシャ情勢に関するニュースフローも増えると みられるが、広範な新興国資産売りを伴う全面的なリス クオフにつながる可能性は低いとみている。一方、米国 では、経済指標が下振れすれば、ドル高の巻き戻しを 一段と後押ししよう。 新興国のスケジュールでは、金融政策の決定がフィリ ピン、南アフリカ、メキシコ(26 日)で予定されているほか、 ブラジルでは 10-12 月実質 GDP の発表(27 日)が予定 されている。メキシコは早期の利上げ観測が一時期浮 上していたものの、足元で通貨安が一服したことや米 FOMC で早期の利上げ観測が後退したことから、今回 の会合では政策金利は据え置かれるとみている。ブラ ジルは国営銀行の貸出縮小や利上げの影響などから マイナス成長に転じる可能性はあるものの、足元では国 営石油会社の汚職問題や政府が近日中に発表する財 政再建策に市場の注目点が集まっており、影響は限定 的とみている。(山本、武田) 40 30 20 支持 10 0 13年3月 13年9月 14年3月 14年9月 15年3月 (出所:ダッタフォーリャよりSMBC日興証券作成) ◆来週にかけてのスケジュールと見通し 先週の本欄では、6 日の米雇用統計後に顕著となっ たドル高(新興国通貨安)および米株安に連動した新 興国株安の流れが、FOMC を機にいったん巻き戻す可 能性を指摘していた。実際には米国の弱めの経済指標 を手掛かりに FOMC を待たずして、今週に入って巻き 戻しの兆しがみられ、FOMC 後はそれが決定的となっ ている。 一部の新興国通貨は、その国固有の自国通貨安材 料に全般的な米ドル高の流れが拍車をかける形でやや オーバーシュート気味に通貨安が進んでいたとみられ、 当面は戻りを試す展開が予想される。3 月上旬以降のド 10/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 6.主な国内株価指数とテクニカル指標の推移 横山 敦史 先週末以降、昨年を上回る賃上げの報道が相次ぎ、個人消費の回復期待が高まったことなどから日本株は 上昇。日経平均の移動平均乖離率も再び拡大しており、テクニカル的な過熱感を帯びながら株価は上昇トレ ンドにある。また、国内長期金利が底堅いことなどから東証 REIT 指数は軟調に推移したが、昨晩の米 FOMC の結果を受けて、日米金利が低下する動きも見られることから、REIT 指数が反発する局面もあろう。 図表 1 主な国内株価指数とテクニカル指標の推移 【国内主要株価指数】 140 2,100 (150日前を100として指数化) 【東証REIT指数と日本10年物国債利回り】 (pt) 0.8 2,000 130 (%) 0.7 日本10年物国債利回り(右軸) 0.6 1,900 120 0.5 1,800 0.4 110 1,700 100 0.3 1,600 90 日経平均 日経JASDAQ指数 80 8/6 9/5 10/5 11/4 東証マザーズ指数 12/4 1/3 2/2 【日経平均と25日移動平均・乖離率】 (月/日) (%) 日経平均株価 (左軸) 18,000 20 0 8/6 3/4 2015年 (円) 0.1 1,400 2014年 20,000 0.2 東証REIT指数(左軸) 1,500 9/5 10/5 11/4 12/4 2014年 20,000 1/3 2/2 3/4 2015年 【日経平均と100日移動平均・乖離率】 (円) (月/日) (%) 20 100日移動平均(左軸) 15 18,000 日経平均株価(左軸) 15 10 16,000 10 16,000 25日移動平均 (左軸) 5 14,000 5 14,000 0 12,000 -5 25日移動平均乖離率 (右軸) 10,000 0 12,000 -5 100日移動平均乖離率(右軸) -10 10,000 8/6 9/5 10/5 11/4 12/4 2014年 (円) 1/3 2/2 3/4 (月/日) 2015年 -10 8/6 9/5 (円) 日経平均株価(左軸) 東証一部25日騰落レシオ(右軸) 250 16,000 15,000 2/2 3/4 (月/日) 300 日経平均株価(左軸) %D(右軸) Slow %D(右軸) 18,000 250 200 200 17,000 (%) 16,000 150 15,000 17,000 1/3 【日経平均 ストキャスティクス(9日)】 19,000 18,000 12/4 2015年 300 20,000 19,000 11/4 2014年 【日経平均と東証一部25日騰落レシオ】 20,000 10/5 150 (%) 80%ライン 100 120%ライン 14,000 100 13,000 50 8/6 2014年 9/5 10/5 11/4 12/4 1/3 2015年 2/2 3/4 50 13,000 70%ライン 12,000 14,000 20%ライン 0 12,000 (月/日) 8/6 2014年 9/5 10/5 11/4 12/4 1/3 2015年 2/2 3/4 (月/日) (注:データは 2015 年 3 月 18 日まで) (出所:各図表とも Astra Manager よりSMBC日興証券作成) テクニカル指標の見方 騰落レシオ(25 日):過去 25 日間の値下がり銘柄数に対する値上がり銘柄数の割合。一般的に、120%以上で買わ れ過ぎを、70%以下で売られ過ぎを表す。 ストキャスティクス(9 日):直近の終値が過去のレンジで相対的にどのレベルに位置するのかを見るための指標。 %D=(直近終値と直近 9 日間の安値の乖離の 3 日移動平均)÷(直近 9 日間の高値と安値の乖離の 3 日移動平均) Slow%D は%D の 3 日移動平均。一般的に%D が 80%以上で買われ過ぎ、20%以下で売られ過ぎを表す。 11/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 7.今週のストラテジー・セレクション 太田 千尋/松永 良輔 日興ストラテジー・セレクションのなかから、株価トレンド面を踏まえて以下の銘柄を紹介する。それぞれのポ イントは下記の通り。順調な春闘、訪日外客数増、堅調な公示地価等、好ニュースに関連する銘柄に注目。 ◎三越伊勢丹ホールディングス(3099) 売買単位:100 株 【株価チャート(週次)】 2,000 【会社概要と株価状況】 国内最大の百貨店グループ。2008 年 4 月に三越と伊勢丹が統合。 週次移動平均線状況 3/19 現在 1,940.0 円 株価 13週線 1,694 円 乖離率 14.51% 26週線 1,581 円 乖離率 22.67% 【注目ポイント】 3 月 18 日の春闘集中回答日では、昨 年を上回るベアの回答が大勢となり、 実質賃金上昇→消費の活発化が期待 できる状況。また、2 月の訪日外客数 は 138.7 万人と単月で過去最高に。都 心百貨店銘柄として株価は堅調展開。 ◎日本触媒(4114) 売買単位:1,000 株 【会社概要と株価状況】 アクリル酸世界 3 位。これを原料とし た高吸水性樹脂で世界トップ。 週次移動平均線状況 3/19 現在 1,801.0 円 株価 13週線 1,641 円 乖離率 9.76% 26週線 1,490 円 乖離率 20.88% ◎良品計画(7453) 売買単位:100 株 【会社概要と株価状況】 「無印良品」ブランドの企画、卸売 り、小売り。アジア、欧米にも展開。 週次移動平均線状況 3/19 現在 17,570.0 円 株価 13週線 14,744 円 乖離率 19.17% 26週線 14,364 円 乖離率 22.32% 週次移動平均線状況 3/19 現在 4,322.5 円 株価 13週線 4,087 円 乖離率 5.76% 26週線 4,035 円 乖離率 7.12% 1,600 1,400 1,200 13週線 26週線 1,000 13/3 【株価チャート(週次)】 1,400 1,200 13週線 26週線 1,000 800 13/3 13/9 14/3 14/9 (年/月) 【株価チャート(週次)】 【注目ポイント】 16/2 期は、中国を中心としたアジアの 好調が続く他、国内部門の売り場面積 増が見込まれる。昨年を上回る賃上げ による消費活発化が期待されることも 追い風。株価は、昨秋からの調整を脱 した後、順調な上昇波動を形成中。 (円) 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 13/3 13週線 26週線 13/9 14/3 14/9 (年/月) 【株価チャート(週次)】 5,500 【注目ポイント】 3 月 18 日発表の公示地価で、三大都 市圏の商業地は前年比+1.8%と前年 の同+1.6%から上昇率が拡大。株価は 昨年 11 月高値の水準を抜くには至っ ていないが、26 週線が約 1 年ぶりに上 向くなど好転の兆しがみられる。 (円) 5,000 4,500 4,000 3,500 13週線 26週線 3,000 13/3 13/9 14/3 14/9 (年/月) 【株価チャート(週次)】 【注目ポイント】 3 月 10 日に政府はマイナンバーの利 用範囲を広げるマイナンバー法改正 案を国会に提出。今後も、適用範囲の 拡大は議論、検討されていくことになろ う。同社株価は、関連銘柄の代表とし て順調な上昇トレンドを形成中。 (円) 5,000 4,500 4,000 3,500 3,000 13/3 13週線 26週線 13/9 (注:中期的な株価トレンドが良好な銘柄を紹介。各種テクニカル指標をベースに判断。) (出所:株式調査部アナリストレポート、東洋経済会社四季報最新銘柄レポート、Astra Manager 等よりSMBC日興証券作成) 12/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 14/9 (年/月) 1,600 5,500 週次移動平均線状況 3/19 現在 5,250.0 円 株価 13週線 4,685 円 乖離率 12.07% 26週線 4,438 円 乖離率 18.30% 14/3 (円) ◎NTTデータ(9613) 売買単位:100 株 【会社概要と株価状況】 SI 専業国内最大手。官公庁、金融 機関向け大型システム受託に強み。 13/9 1,800 18,000 ◎住友不動産(8830) 売買単位:1,000 株 【会社概要と株価状況】 総合不動産大手。都心オフィスビル 賃貸主力。住宅リフォームも強み。 1,800 2,000 【注目ポイント】 昨年 2 月に姫路製造所が事故から完 全復旧。高吸水性樹脂(SAP)のシェア 挽回が進み、業績は急回復。今後も、 内外おむつメーカーへの SAP 供給増 が見込まれる。株価は 13 週線に支えら れた上昇トレンドが継続中。 (円) 14/3 14/9 (年/月) 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 8.国内政治・政策動向~戦後 70 年談話は経済活動を悪化させない 司 淳 2015 年度予算案の衆院通過で、焦点は安保法制に移った。安保法制は与党で大筋合意したが、詰め切れ ない課題は条文作成時に先送りされた。6~7 月は重要政策の決定時期が重なり、内閣支持率や株価に下 押し要因となる可能性も出てこよう。戦後 70 年安倍談話は国連改革へ向けた文脈上にあるとみられ、周辺 国との軋轢を生むことによる経済活動への悪化懸念について筆者は楽観的に見ている。 ◆2015 年度予算案衆院通過、焦点は安保法制へ これらが政府提案にどこまで反映されるかを容認の基 準としてきた。結果、政府・自民と公明党の相違は、7 分 野に絞られた。具体的には、①米軍以外の武器等防護、 ②周辺事態法の抜本改正、③自衛隊派遣の恒久法制 定、④PKO 協力法の改正、⑤在外邦人救出、⑥船舶 検査法の改正、⑦集団的自衛権の法制化、の 7 分野で ある。与党協議の中で、①~⑥について政府から新たな 提案が出てきたことを公明党が評価し、残る⑦について は、政府提案に沿って法案作りに入ることを容認した。 2015 年度一般会計政府予算案が 13 日、衆院で可決 し、参院に送付された。憲法の規定により遅くとも 4 月 11 日に自然成立する運びとなった。 政府・与党は昨年末の衆院選後、休日返上で作業を 進めたが、本来は 12 月中に終わる予算編成作業が越 年し、閣議決定が 1 月 14 日、国会提出は 2 月 12 日に ずれ込んだ。さらに「政治とカネ」の問題が相次いで浮 上し、2 月 23 日には西川農水相が辞任に追い込まれる など、予算審議が滞った。しかし、安倍総理を含む閣僚 だけでなく、民主党の岡田代表ら野党側にも同様の問 題が発覚して野党の追及も失速し、政治資金規正法の あり方という制度論に焦点が移った。野党は、下村文科 相の後援団体を巡る問題で追及を続けたが、決め手を 欠いた。結局、統一地方選前半戦の投開票日(4 月 12 日)までには予算が確実に成立することになった。政府 は自然成立まで 11 日分の暫定予算を 2 年ぶりに編成 することになろうが、予算成立の遅れが景気に与える影 響は軽微であろう。 今後は、3 月 20 日に予定される次回の与党協議で、 安保法制の法案化に向けた基本的な方針の取りまとめ を目指すことになった。その後は、事実上、統一地方選 に突入するが、4 月中旬を目途に政府が関連法案の要 綱を策定した段階で与党協議を再開させる予定である。 安保関連法案の全体像は固まったものの、なお細部は 詰まっていない課題もあるため、要綱や条文完成後に 残った相違について協議することになった。残った相違 とは、たとえば公明党が提案した 3 原則の一つである 「国際法上の正当性」において、国連決議がなくても 「国際機関の要請」などで自衛隊を海外派遣できるとし たい政府に対して、公明党は国連決議に基づくことが 基本と位置付けている点がある。その他にも、事実上の 地理的な制約だった「周辺事態」に代わる概念をどう定 義するか、自衛隊員の安全確保を条文にどう盛り込む か、などが論点として残された。政府は法案について、5 月中旬の閣議決定、国会提出を目指している。 任意団体の資金集めをめぐる下村文科相の問題は、 参院の予算審議でも火種としてくすぶるだろう。しかし、 それも決め手を欠く中では、予算成立後の後半国会に おける焦点は、集団的自衛権を行使するための安保法 制に移っていこう。 ◆安保法制、与党、大筋合意 政府は 3 月 13 日、自衛隊の海外での活動に関する 法整備の大枠を与党に示した。公明党は、戦争中の他 国軍に随時後方支援できる恒久法(一般法)の制定や、 人道復興支援や治安維持活動にも道を開く国連平和 維持活動(PKO)協力法の改正など、政府が示した安全 保障関連法案の枠組みを大枠で受け入れる方針を固 めたと報じられている。自衛隊の海外派遣に関して一定 の歯止めがかかったと判断したということであろう。 2 月中旬から自民・公明両党は、集団的自衛権の行 使容認などを盛り込んだ昨年 7 月の閣議決定をもとに、 必要な関連法案の具体化について議論を重ねてきた。 自衛隊の活動拡大に慎重な公明党は、検討すべき点と して、①国際法上の正当性、②国民の理解と民主的な 統制、③自衛隊員の安全確保、という 3 原則を提示し、 ◆6~7 月は内閣支持率・株価に下押し要因も 安全保障関連法案の他にも、昨年の通常国会、臨時 国会と続けて廃案になった労働者派遣法改正案や、 「残業代ゼロ法案」と批判される労働基準法改正案や農 協改革関連法案の国会提出がある。最大の焦点は、や はり安全保障関連法案であろう。与党は、法案審議の ための委員会として、曜日にとらわれずに審議できる特 別委員会を設置し、早期成立を図ろうとしている。しかし、 1992 年に成立した国連平和維持活動(PKO)協力法の 審議時間(約 87 時間)を念頭に、同関連法案の審議時 間の目安を「80 時間超」としており、このままでは会期末 までに成立しない可能性が高い。そのため 6 月 24 日ま での国会を 1 ヵ月程度延長することが既定路線のように 取りざたされている。 13/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 最近の世論調査によると、自衛隊の活動を拡大する ことについては、とくに女性を中心に反対が賛成を上回 っている。「安倍カラー」の政策を進める前提となる内閣 支持率や株価に対しても、6 月から 7 月にかけては、下 押し圧力が加わる可能性があろう。国会以外でも 6 月か ら 7 月は重要政策の決定が目白押しとなっている。たと えば、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)、財政 健全化計画、規制改革の実施計画、東日本大震災復 興の新 5 ヵ年計画である。安保国会のヤマ場を越えて 一気に仕上げる腹積もりであろうが、永田町・国会は波 乱含みが予想される。 ◆戦後 70 年安倍談話から国連改革への流れ 今年の 10 月、日本は加盟国最多の 11 回目の国連安 保理非常任理事国に選出されることが確実視されてお り、来年 1 月から 2 年間務めることになろう。 ただし、安倍総理の視線はその先にありそうだ。日本 の宿願は「非常任」ではなく「常任」理事国入りすること である。安倍総理は 16 日、国連大学で開催された国連 創設 70 周年記念シンポジウムで演説し、日本の安保理 常任理事国入りについて「日本は、一つ一つ実績を積 み上げてきた静かな誇りを胸に、常任理事国の役割を 引き受ける用意がある」と述べ、強い意欲を示した。今年 が国連創設 70 周年、来年が日本の国連加盟 60 周年に あたることから、この 2 年間を「具体的な行動の年」と位 置付けた。安保理改革については「もはや議論に時間 を割くときではない。具体的な成果を生むときだ」とし、 常任理事国の拡大などに道筋をつけるべきと主張した。 2012 年 12 月 26 日の第 2 次安倍内閣発足後、外相 を上回る安倍総理の外国訪問数の裏に隠されていたの は、2020 年の東京五輪招致やトップビジネス展開のた めだけではなかった。安保理非常任理事国への賛意を 促し、その先にある国連改革に伴う日本の常任理事国 入りへの野望もあったとみられる。最近、某テレビ番組 で、東郷和彦・元外交官が「安倍首相は、今年はアジア の首相、来年は世界の首相を目指す」と述べたことの意 味するところはそこにあろう。すなわち、今年 8 月に出す 戦後 70 年の安倍談話が、国連改革に向けた文脈上に あるということであろう。 無論、常任理事国入りはそうたやすいものではない。 国連安保理の改革議論が沸騰したのは 1990 年代であ る。その背景には、国連創設時(1945 年)における加盟 国数は 51 ヵ国で、理事国数は 11 ヵ国であったため、倍 率は約 4.6 倍であった。しかし、現在の加盟国数は 193 ヵ国に増加したにも関わらず、理事国数は 15 ヵ国に限 られているため、倍率は約 13 倍と、理事国となることは 格段に難しくなっている。また、第 2 次大戦の主な戦勝 国である常任理事国(米英仏ロ中)中心の国連運営に 対するその他諸国の不満もあろう。 昨今のウクライナ危機やアジア・インフラ投資銀行 (AIIB)創設を巡って、主要先進国の間には大きな溝が 生まれている。今年 6 月に開催予定の G7(先進主要 7 ヵ国)サミットにも、ロシアは不参加の見込みである。G7 だけでなく現在の国連も、こうした最近の国際政治情勢 にうまく対応できなくなっている。自衛隊の海外派遣に 対して国連決議を前提にすると、ロシアや中国が拒否 権を発動することによって、自衛隊の自由度が制限され る恐れもある。 戦後 70 年の安倍談話に対しては、中国や韓国が懸 念を示している。昨年 11 月には 2 年ぶりに日中首脳会 談にこぎつけた。その成果として、政治的ブレーキが緩 んだことから、一部本邦企業が中国国営企業の傘下企 業に共同出資するなど、対中直接投資も年明け以降は 動き出している。中国が提唱している AIIB については、 英国に続いて、ドイツやフランス、イタリアなど、他の G7 メンバー国も加盟する意思を示した。今年末に向けて AIIB が正式に発足すれば、中国企業の海外進出にも 弾みがつく可能性が高い。そうした内外の経済活動に 再び政治的ブレーキをかけるのは得策ではない。 政権発足以来、経済あっての安倍政権である。経済 を犠牲にしてまで国連改革を目指すのは本末転倒だろ う。したがって戦後 70 年安倍談話の内容については、 周辺諸国との関係が悪化するような内容にするつもりは 毛頭ないだろう。安倍総理を支持する人の中には「タカ 派」の人達がいる。だからといって安倍総理を石原慎太 郎氏のような「タカ派」と見るべきではなく、安倍総理本 人は「保守派」と見られる。しかも、今回の談話について は、菅官房長官を中心に取りまとめることになっている。 その意味でも戦後 70 年安倍談話に対して筆者は楽観 的にみている。 ◆TPP 交渉の合意 6 月にずれ込みも TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加する 12 ヵ 国の首席交渉官会合は 15 日、1 週間の日程を終えた。 進展があったのは、難航分野の国有企業改革など、ほ んの一部で、知的財産権などでは、なお隔たりが残り、 合意のための閣僚会合開催のめどは立たなかった。米 TPA(貿易促進権限)法案の提出が遅れている影響が 大きいとみられる。このため参加国全体の経済規模で 8 割を占める日米協議が依然として決着していないことが 足を引っ張っている。 政府は、TPA 法案の成立を待たずに、4 月下旬の首 相訪米の前に日米協議をなんとか決着させるというシナ リオを持っている。12 ヵ国は引き続き事務レベルで断続 的に折衝を続ける方針である。5 月下旬にフィリピンで APEC(アジア太平洋経済協力会議)貿易相会合が開 14/22 本レポートに関する重要事項は最終ページをご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 催される予定である。そのタイミングで TPP 閣僚会合の 開催にこぎつけることができるか否かが、交渉の成否を 占う目安となろう。 甘利経済財政相は 17 日、TPP 交渉の妥結時期につ いて「春いっぱいプラス若干の幅はもてるかなと思って いる」と述べ、6 月以降にずれ込む可能性に言及した。 前週までは「全体合意が 6 月にずれ込むと言われてい るが、そこまで悲観的な空気ではない」と述べ、5 月中の 合意に期待を示していたが、情勢は懸念された通り、あ とズレしている。 (以上) 図表 1 当面の主な政治・政策スケジュール 3月18日 〃 19日 〃 20日 春闘大手企業集中回答日 ミシェル・オバマ米大統領夫人来日(~20日) EU首脳会議(~20日) 日中安全保障対話(2+2、都内) 政府・与党が安保関連法制の基本方針決定 21日 日中韓外相会談(~22日、韓国ソウル) 23日 自公幹事長、訪中(~25日) 26日 〃 統一地方選スタート(道県知事選告示) 二階総務会長訪中(「ボアオ・アジアフォーラム」参加、海南省、~29日) 下旬 暫定予算成立 3月 農協法改正案国会提出 〃 地方創生特区の指定(33自治体を軸に数ヵ所選定) 4月1日 〃 日銀短観 法人実効税率引き下げ 4月7日 日銀金融政策決定会合(~8日) 4月12日 統一地方選(道県知事選、道府県議選、政令市長、市議選) 4月14日 G7外相会議(~15日、独リューベック) 4月15日 ECB理事会 4月17日 IMF・世銀春季総会(~19日、ワシントン) 4月21日 世界経済フォーラム東アジア会議(~23日、インドネシア・ヌサドゥア) 4月22日 アジア・アフリカ60周年記念会議(~23日、バンドン会議) 安倍総理出席 4月26日 統一地方選(政令市以外の市区町村の首長・議員選) 〃 安倍首相訪米(~5/3)、日米首脳会談(4/28)調整中 4月28日 FOMC(~29日) 4月30日 日銀「展望リポート」公表 4月下旬 日米安保協議委員会(2+2)(ワシントン)新防衛指針決定 5月7日 英国総選挙 5月9日 〃 上旬 5月17日 半ば 中国の「国恥記念日」(対華21ヵ条要求100周年) ロシアで対ドイツ戦勝70周年記念式典 自民党の額賀元財務相が党所属議員と訪中 大阪都構想の是非を問う住民投票 政府、安全保障関連法案を国会提出 5月21日 日銀金融政策決定会合(~22日) 5月22日 第7回太平洋・島サミット(~23日、福島県いわき市) 5月23日 APEC貿易相会合(フィリピン、~23日)~TPP閣僚会合? 5月27日 G7財務相・中央銀行総裁会議(~29日、ドレスデン) 5月29日 日EU首脳会議(東京、調整中) 下旬 自民党、二階総務会長が観光業界関係者ら約3000人と訪中 6月3日 ECB理事会 6月7日 G7首脳会議(~8日、ドイツ) 6月8日 IAEA(国際原子力機関)定例理事会(~12日、ウィーン) 6月16日 FOMC(~17日) 6月18日 日銀金融政策決定会合(~19日) 6月24日 通常国会閉幕(1ヵ月程度延長か?) 6月25日 EU首脳会議(~26日、ブリュッセル) 6月30日 米英ロなど6ヵ国とイランとの核協議の最終合意目標 6月 地方創生総合戦略基本方針策定(骨太の方針に盛り込む) 〃 基礎的財政収支の改善目標達成に向けた具体策の計画策定 〃 九州電力川内原発の再稼働 (出所:各種報道等よりSMBC日興証券作成) 15/22 本レポートに関する重要事項は最終ページをご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 9.地方創生~生活密着型の内需系企業に追い風 西尾 浩一郎 政府は成長戦略において地方を支援する方針を掲げており、税制面でも地方を盛り立てる施策を打ち出し ている。3 月 14 日開業の北陸新幹線は、地方創生が進む事例として注目度を高めている。また、昨年 10 月 の免税対象品の拡大に続き、4 月から免税制度拡充策の第 2 弾が導入される予定。地方に地盤を持つなど 生活密着型の内需系企業を中心に活躍の場は広がると考えられ、主な関連銘柄を取りまとめた。 ◆アベノミクスは地方経済の活性化にも注力 図表 1 魅力あふれる地方創生ための施策 政府は昨年 9 月に地方創生担当大臣を新たに創設 し、12 月には「地方への好循環拡大に向けた緊急経済 対策」、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を取りまとめる など、地方経済の活性化に取り組む姿勢を強めている。 まち・ひと・しごと創生は、人口急減・超高齢化という日 本が抱える課題に対し、人口減少克服と地方創生を合 わせて行う。将来にわたって活力のある日本社会を維 持することを目指すもので、3 つの視点を基本とする(図 表 1)。この中で、特に東京一極集中の歯止めは重要と 考えられる。国内の人口移動は、東京の転入超、地方 圏の転出超が続いており、地方経済規模の縮小、低迷 が懸念される。地方が弱体化すれば、いずれ東京圏に もその影響は出てくるとみられ対策が急がれる。 3 視 つ 点 の 『東京一極集中』 地域の特性に即し の歯止め た地域課題の解決 「しごと」と「ひと」の好循環を実現するための、4つの目標 ①地方における安定的な雇用を創出 ②地方への新しいひとの流れをつくる ③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる ④時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、 地域と地域を連携する 魅力あふれる地方を創生 (出所:首相官邸 HP よりSMBC日興証券作成) こうした課題を解決すべく、政府は、①地域を担う中 小企業支援、農林水産業の成長産業化などで 2020 年 までの 5 年間で若者雇用 30 万人創出、②地方移住の 推進、企業の地方拠点強化、政府関係機関の地方移 転などで 2020 年に地方⇔東京圏の転出入均衡、③第 1 子出産前後の女性継続就業率の向上(2010 年:38% →55%)、子育て世代包括支援センターの整備など妊 娠・出産・子育ての切れ目ない支援、④地域連携による 経済・生活圏の形成など、様々な政策で地方を支援す る方針。さらに税制面でも地方を盛り立てる。2015 年度 税制改正の特徴は、デフレ脱却に向け法人税減税を拡 充した点にある。また、既に地方にある本社機能などへ の支援や現在起こりつつある本社機能の地方移転の動 きを後押しするなどの特例措置が創設された。これによ り企業の賃上げや税収増により、家計や地方に好循環 を波及させる仕組みとなった。 図表 2 主な地方創生関連銘柄 コード 銘柄略称 ポイント 1833 奥村組 中堅ゼネコン。関東、関西、その他地域で工事量ほぼ均衡 2450 一 休 ネット上の宿泊施設予約サイト「一休.com」を運営 2659 サンエー 沖縄県内トップのスーパーで外食とホテルも経営 3 月 14 日開業の北陸新幹線は、地方創生が進む事 例として注目度を高めている。また、①免税手続きの第 三者への委託で、商店街・物産センターなどにおいて 免税手続きの一括カウンターの設置を可能とする制度、 ②外航クルーズ船の寄港時に埠頭に臨時出店する仮 設店舗の免税許可申請の簡素化、の導入が 4 月から予 定されており、訪日外国人による消費拡大が地方に波 及する期待が高まろう。地方に地盤を持つなど生活密 着型の内需系企業を中心に活躍の場は広がると考えら れ、主な関連銘柄を取りまとめた(図表 2)。 3月19日 終値(円) 547 2,076 4,670 3391 ツルハHD 北海道を地盤とし、東北をはじめ関東、関西圏へも進出 8,770 6098 リクルートHD ブランド力の高い情報媒体を多数持つ。人材事業にも強み 3,925 8267 イオン 総合スーパー、食品スーパーを全国展開 8273 イズミ 広島県を中心に中国・四国、九州を地盤とする総合スーパー 4,450 8276 平和堂 滋賀県で圧倒的シェアの独立系スーパー 2,821 8334 群馬銀 群馬県内のシェアは、預金約5割、貸出金約4割で断トツ 864 8341 七十七 東北地方最大の地銀。宮城県内の預貸金シェアは圧倒的 712 8385 伊予銀 中小企業と個人向けに強く資金量は四国首位を誇る 1,496 9020 JR 東日本 3月14日に北陸新幹線、上野東京ラインが開業予定 10,440 1,272.0 9603 エイチ・アイエス 国内外の営業所出店を進めるなどシェア拡大に積極的 4,075 9948 アークス 北海道の食品スーパーが連携。東北進出を本格化 2,738 9956 バロー 2,564 岐阜県地盤で中部地方における有力食品スーパー (出所:Astra Manager、東洋経済会社四季報最新銘柄レポート、会社 資料、各種報道等よりSMBC日興証券作成) 16/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 若い世代の就労・ 結婚・子育て希望 の実現 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 10.全般的な消費回復の下では百貨店とコンビニが有望 太田 千尋 今年の春闘は概ね昨年実績を上回る賃上げとなる見込み。また、原油安を主因に CPI は当面減速基調で 推移するとみられること等から、実質賃金はプラスに浮上し、消費マインド改善及び消費回復が予想される。 そうしたなかでは、生活必需品ではなく嗜好品を扱うため消費者マインド好転の影響が大きいとみられる百 貨店と、雇用情勢の好転が、消費増税後の不振からの回復に繋がりそうなコンビニが有望とみられる。 ◆今後の消費環境は全般的に回復の公算が大きい 図表 1 百貨店売上前年同月比と消費者態度指数 3 月 18 日に今年の春闘について会社側からの集中 回答日を迎えたが、概ね昨年実績を上回る賃上げとな りそうである。また、原油安を主因にコア CPI は当面減 速基調で推移する公算が大きく、今後、実質賃金はプ ラスに浮上しよう。これに伴い、消費マインドの改善およ び消費の回復が予想される。株式市場でも関連セクタ ーが注目を集めることになりそうだが、今回の消費回復 局面では、(1)景気敏感株である百貨店、(2)残業時間 の増加等による売上回復の可能性があるコンビニエン スストアが有望であろう。 ~百貨店売上は消費者態度指数との連動性が強く、 今後は消費者マインド改善の好影響が期待できる~ 15% 50 消費者態度指数 (右軸) 10% 45 5% 40 0% 35 ‐5% 30 ‐10% ◆都心百貨店が消費回復の恩恵を享受すると予想 百貨店売上は、消費者態度指数との連動性がみられ る(図表 1)。百貨店は生活必需品ではなく嗜好品を取り 扱うため、消費者マインドが大きく影響するためであろう。 また、百貨店の粗利率の変動は小さく、販管費も固定 費が多いため、月次売上が株価のインディケーターとな る。4 月以降は前年ハードルの低下だけでなく、実質賃 金上昇や消費マインド改善による回復も期待できよう。 特に、都心百貨店では、訪日観光客による売上寄与も 見込まれる。 百貨店売上高前年比 (3ヵ月平均、左軸) ‐15% 25 08 09 10 11 12 13 14 15 (出所:日本百貨店協会、内閣府よりSMBC日興証券作成) (年) 図表 2 コンビニ食品販売額と所定外労働時間指数 ~概ね連動しつつも直近 2 年は コンビニ食品販売額の伸びが上方にシフト~ 12 (%) (%) 24 コンビニ食品販売額前年比 (3ヵ月移動平均、左軸) 9 18 6 12 ◆残業時間増等によってコンビニ売上に回復の可能性 3 6 昨年の消費増税後は、コンビニ不調・食品スーパー 好調という構図が鮮明になった。これは、(1)実質賃金の 悪化により節約志向が強まる局面では消費者が利便性 (コンビニ)よりも価格(食品スーパー)を重視した、(2)消 費増税後に残業時間が減少し、深夜・早朝の買い物回 数が減少した、等が背景と考えられる。しかし、大幅賃 上げが実現に向かうなど情勢は変わってきており、コン ビニは復調に向かう可能性があろう。特に、ここ 2 年はコ ンビニ食品販売額が雇用情勢と連動しながらも伸び率 を高める傾向が顕著にみられる(図表 2)。これは、惣菜 やプライベートブランド食品の品揃えを強化したことで、 スーパーからのシェア奪取に成功していることを示して いるともいえ、注目したい。 0 0 ‐3 ‐6 ‐6 ‐12 所定外労働時間指数 (前年比、右軸) ‐9 ‐18 ‐12 ‐24 00 02 04 06 08 10 12 (出所:経済産業省、厚生労働省よりSMBC日興証券作成) 図表 3 株式調査部カバーの主な百貨店、コンビニ銘柄 コード 2651 3086 3099 3382 8028 8233 8252 銘柄略称 ローソン Jフロント ミツコシイセタン 7&I-HD Fマート 高島屋 丸井G 3/19終値(円) 8,260 1,793 1,940 5,070 4,895 1,180 1,385 売買単位 (株) 100 100 100 100 100 1,000 100 (出所:Astra Manager よりSMBC日興証券作成) 17/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 14(年) 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 11.インド経済~改革を推進するモディ政権 山本 正樹 インドの 2015 年度政府予算案では、税制やインフラなど投資環境の改善により企業活動を活性化し、高成 長の復活を目指すモディ政権のスタンスが鮮明になった。モディ政権は、上下両院および国と地方という 2 つの「ねじれ」に直面する中にあっても、様々な手段を駆使して改革を推進すると期待される。改革への期待 や景気回復等を背景に株価は再び上値を試す展開を予想しており、押し目買いスタンスが有効であろう。 ◆モディカラーが鮮明となった 2015 年度予算案 2 月 28 日、政府は 2015 年度(15 年 4 月~)の予算案 を発表した。長年の懸案であった GST(商品サービス税) の導入(16 年 4 月~)や法人税率引き下げ(4 年間で 30%→25%)に踏み込んだ他、インフラ整備予算の拡充 も図られた。税制やインフラなど投資環境の改善により 企業活動を活性化し、高成長の復活を目指すモディ政 権のスタンスが鮮明になった予算といえよう。一方、もう 1 つの焦点である財政規律については、財政赤字 GDP 比(15 年度予算で 3.9%)を 3%以下とする目標年度が 従来よりも 1 年延期され 17 年度となった。また、原油安 を背景に燃料補助金が大幅に削減された一方、肥料 補助金や食糧補助金には切り込めていないとの批判も ある。もっとも、州の自治権が強いインドで改革を浸透さ せるには、国政与党第 1 党の BJP(インド人民党)が地 方でも勢力を拡大する必要があり、農村や貧困層に対 する一定の配慮は政治的にはやむを得ない面がある。 そうした点を考慮すれば、今回の予算案は成長と分配 のバランスを巧みに図った内容と評価できよう。 定的な効力を有するにすぎないが、政権の意思を内外 に強くアピールし、野党を牽制する手段とはなりうるだろ う。実際に保険法案に関しては、現在開会中の国会で 12 日に成立している。このほか、上院が法案を否決した 場合、上下両院による合同議会で法案を成立させる方 法もあり、検討されているとみられる。一方、国と地方の ねじれに関連して、州の自治権の強さが改革の障害と の見方もあるが、逆に下からの改革推進が期待できる 面もある。例えば、BJP が与党の州では、労働法の改正 に踏み切るケースが出ている。このようにモディ政権は 様々な手段を駆使して改革を推進すると期待される。 足元のインド株式市場は、米国の利上げ観測の高ま り等を受けて調整色が強まっているが、改革に対する期 待や景気回復等を背景に再び上値を試す展開を予想 している。調整局面では押し買いスタンスが有効であろ う。 ◆2 つの「ねじれ」に対するモディ政権の対応に注目 一方で、モディ政権が進める改革に立ちはだかる、 上下両院および国と地方という 2 つの「ねじれ」も意識さ れつつある。BJP は昨年の総選挙で下院の単独過半数 を獲得し、与党連合 NDA(国民民主同盟)では 62%を 占めるが、上院(注)では NDA は 24%にすぎない。また、 BJP が与党の州は現在、連邦直轄地およびデリー首都 圏を除く全 29 州のうち、なお 11 州にとどまる。先の冬期 国会(14 年 11 月 24 日~12 月 23 日)では、保険業の外 資上限引き上げ(26%→49%)、土地収用の要件緩和、 石炭権益の譲渡に関する規制緩和を盛り込んだ法案 がいずれも未成立となった。 図表 1 インド株式、通貨の推移 (円/ルピー) 30,000 SENSEX指数(左軸) 円/ルピー(右軸) 28,000 2.0 1.9 26,000 1.8 (注:州議会議員による間接選挙で 2 年ごとに 3 分の 1 ずつ改選。) 24,000 1.7 22,000 20,000 ル ピ 高 1.5 18,000 16,000 1.4 13/1 13/4 13/7 13/10 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 (年/月) (出所:Bloomberg よりSMBC日興証券作成) 18/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 1.6 ー もっとも、こうした状況からモディ政権の改革がことご とく阻まれるとみるのは早計だろう。例えば、下院の議決 が優先される予算案を通じて今回のようにモディカラー を打ち出すことは可能である。また成立に両院の議決 が必要な一般の法案についても、先に挙げた 3 法案は 「大統領令」として発効している。大統領令は、次期国 会開始から 6 週間以内に可決されなければ失効する暫 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 12.来週・再来週の主なスケジュール <来週のスケジュール> 発表日 3月 23日 (月 ) 国・ 地域 日本 米国 米国 3月 24日 (火 ) ユーロ圏 英国 中国 米国 3月 25日 (水 ) 独 NZ ベトナム 日本 3月 26日 (木 ) ユーロ圏 フィリピン 南ア ブラジル メキシコ 日本 3月 27日 (金 ) 米国 3月 28日 (土 ) 3月 29日 (日 ) 下旬 ブラジル 英国 フランス 日本 市場予想 2月 全国スーパー売上高(前年比) 自公の幹事長、中国訪問(~25日) - 2月 中古住宅販売件数( 前月比) 1月 FHFA住宅価格指数(前月比) 2月 消費者物価指数(除食品&エネルギー、前年比) 2月 新築住宅販売件数( 前月比) 3月 製造業PMI(速報) 3月 サービス業PMI(速報) 2月 消費者物価指数(前年比) HSBC製造業 PMI( 速報) 3月 2月 耐久財受注( 除輸送用機器、 前月比) 2月 耐久財受注( 前月比) IFO景況指数 3月 2月 貿易収支 1-3月期 実質GDP(前年比、発表日未定、~31日) - 道県知事選告示(地方選スタート) 二階総務会長訪中(「ボアオ・アジアフォーラム」参加、海南省、~29日) - 2月 マネーサプライM3(前年比) - 政策金利 - 政策金利 2月 失業率 - 政策金利 2月 全国消費者物価指数( 生鮮食品除く 、 前年比) 2月 失業率 2月 家計調査-実質消費支出(前年比) 2月 有効求人倍率 2月 小売業販売額(前年比) 3月 都区部消費者物価指数(生鮮食品除く、前年比) 10-12月期 実質 GDP( 前期比年率、 確報、 前回値は改定値) 3月 ミ シ ガン大学消費者信頼感指数( 確報、 前回値は速報値) 10-12月期 実質 GDP( 前期比) 3月 全国住宅価格(前年比、発表日未定、~2日) フランス県議会選(2回目) - - 日米外相会談(東京) - - 2.5% 0.5% 1.6% ▲1.3% - - - 50.3 0.5% 0.6% - 4.56億豪ドル - - - - - - - 3.00% - - - - - - 2.4% 92.0 - - - - 前月・ 前期・ 前年 ▲1.7% - ▲4.9% 0.8% 1.6% ▲0.2% 51.0 53.7 0.3% 50.7 0.0% 2.8% 106.8 0.56億NZドル 6.0% - - 4.1% 4.00% 5.75% 5.3% 3.00% 2.2% 3.6% ▲5.1% 1.14倍 ▲2.0% 2.2% 2.2% 91.2 0.1% 5.7% - - (注:発表日は現地時間。市場予想と実績は 2015 年 3 月 19 日 12 時時点の Bloomberg の値を表示。スケジュールは予告なしに変更されることがあります。) (出所:Bloomberg および各種報道などよりSMBC日興証券作成) 19/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 <再来週のスケジュール> 発表日 国・ 地域 日本 3月 30日 (月 ) 米国 休場( 聖金曜日) 消費者物価指数(前年比) 英国 3月 ハリファックス住宅価格指数(前月比、発表日未定、~10日) - トルコ 日本 米国 英国 中国 インドネシア タイ ブラジル 米国 豪州 4月 4日 (土 ) 4月 5日 (日 ) - - 3月 ユーロ圏 4月 3日 (金 ) - - - トルコ 米国 3月 31日 (火 ) 4月 2日 (木 ) 鉱工業生産指数( 前月比、 速報) 中古住宅販売成約指数(前月比) 個人所得(前月比) PCEコア ・ デフレータ 2月 ( 食品・ エ ネルギ ーを除く 個人消費デフレータ、 前年比) 2月 個人支出(前月比) 3月 経済信頼感指数 2月 毎月勤労統計-現金給与総額(前年比、速報) S&P/ケース シラー住宅価格指数( 前年比) 1月 3月 シカゴ購買部協会景況指数 3月 コンファレンスボード消費者信頼感指数 2月 失業率 3月 消費者物価指数( 速報、 前年比) 10-12月期 実質GDP(前年比) 3月 新車販売台数(除く軽自動車、前年比) 3月 日銀短観 大企業非製造業業況判断(現状) 3月 日銀短観 大企業非製造業業況判断(先行き) 3月 日銀短観 大企業製造業業況判断(現状) 3月 日銀短観 27年度大企業全産業 設備投資計画( 前年度比) ISM製造業景況指数 3月 3月 自動車販売台数(年換算) ADP雇用統計( 前月比) 3月 3月 製造業PMI 3月 製造業 PMI 3月 消費者物価指数(前年比) 3月 消費者物価指数(前年比) 2月 鉱工業生産(前月比) 2月 製造業受注(前月比) 2月 貿易収支 2月 貿易収支 3月 民間部門雇用者数( 前月比) 3月 非農業部門雇用者数( 前月比) 3月 失業率 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - ユーロ圏 日本 4月 1日 (水 ) 市場予想 2月 2月 2月 米国 前月・ 前期・ 前年 3.7% 1.7% 0.3% 1.3% ▲0.2% 102.1 1.3% 4.46% 45.8 96.4 11.2% ▲0.3% 1.7% ▲14.2% 16 15 12 8.9% 52.9 1,616万台 21.2万 人 54.1 49.9 6.29% ▲0.52% 2.0% ▲0.2% ▲418億ドル ▲9.80億豪ドル 28.8万 人 29.5万 人 5.5% ▲0.3% - 7.55% (注:発表日は現地時間。市場予想と実績は 2015 年 3 月 19 日 12 時時点の Bloomberg の値を表示。スケジュールは予告なしに変更されることがあります。) (出所:Bloomberg および各種報道などよりSMBC日興証券作成) 20/22 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 投資情報室作成最新レポートのご紹介 【定期発行レポート】 Daily Outlook(日刊投資情報)、Weekly Outlook(週刊投資情報)、月刊投資情報(株式・為替・金利の見通し)、 日本株投資戦略(月刊プレゼン資料)、日興ストラテジー・セレクション(注目銘柄リスト)、注目スケジュール etc 【スポット・レポート】 <株式> 2015/03/09 日本株式 日本株にバブルの兆候はみられるのか 2015/03/09 米国株式 米国株見通し~目先は上値重いが年後半には上昇へ <マクロ・為替・金利・新興国> 2015/03/19 トルコ経済 政策金利は据え置きも、トルコリラになお下値リスク 2015/03/18 日本政治 戦後 70 年談話は経済活動を悪化させない 2015/03/18 インドネシア 今回は政策金利据え置き 2015/03/12 中国経済 1-2 月の経済統計~景気は減速したが見かけほど悪くない 2015/03/10 ブラジル経済 レアルの予想レンジを下方修正 2015/03/09 米ドル 米 2 月雇用統計の結果と今後のドル円相場について 2015/03/09 中国経済 今年の全人代は長期的な成長戦略を重視 2015/03/05 ブラジル経済 最近のレアル相場について 2015/03/05 ブラジル経済 0.5%ポイントの利上げ継続、通貨安と財政見通しの悪化で 2015/03/05 インド経済 1 月に続いて追加利下げを決定 2015/03/04 豪経済 引き続き力強さを欠く豪景気 【カンパニー・ブリーフ】 2015/03/18 CYBERDYNE(7779) 2015/03/11 セガサミーHD(6460) 2015/03/17 良品計画(7453) 2015/03/11 ソフトバンク(9984) 2015/03/17 東京海上 HD(8766) 2015/03/10 武田薬品工業(4502) 2015/03/16 岩谷産業(8088) 2015/03/10 GS ユアサ(6674) インド概観 2015/02/16 南アフリカ共和国概観 【カントリー・レポート】 2015/03/10 【業界ナビ】 2015/02/20 地方創生関連 【その他プレゼン資料】 2013/03/13 投資部門別売買動向(現物・先物) 2015/03/11 ユーロ圏景気とユーロ相場 2015/03/11 ドル円相場見通し 2015/03/06 豪ドル見通し 2015/03/06 トルコリラの見通しとポイント 2015/03/06 ブラジル市場の見通しとポイント 2015/03/06 主要先進国の株価指数、予想 EPS 及び PER 比較(直近 5 年) 2015/03/06 主要先進国の株価指数、予想 EPS 及び PER 比較(データ更新版) 2015/03/05 原油市場を巡る動向 ~日本経済・企業への影響~ * 上記レポートをご希望の方は、最寄りの支店までお問い合わせください。 21/22 2015 年 3 月 19 日(木) 投資情報室 Weekly Outlook No.197 本調査レポートについて 【免責事項】 本調査レポートは証券その他の投資対象の売買の勧誘ではなく、SMBC日興証券株式会社(以下「弊社」といいます)が情報の提供を目的に作成 したものです。本調査レポートは、弊社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成していますが、これらの情報が完全、正 確であるとの保証はいたしかねます。情報が不完全または要約されている場合もあります。本調査レポートに記載する価格、数値等は、過去の実 績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。かかる価格、数値等は予告なしに変更することがありますので、予 めご了承くださいますようお願いいたします。本調査レポートは将来の結果をお約束するものでもありませんし、本調査レポートにある情報をいか なる目的で使用される場合におきましても、お客様の判断と責任において使用されるものであり、本調査レポートにある情報の使用による結果に ついて、弊社及び弊社の関連会社が責任を負うものではありません。本調査レポートは、本調査レポートを受領される特定のお客様の財務状況、 ニーズ又は投資目的を考慮して作成されているものではありません。本調査レポートはお客様に対して税金・法律・投資上のアドバイスを提供す る目的で作成されたものではありません。投資に関する最終決定は、契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、お客様向け資料等 をよくお読みになり、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。 弊社及び弊社の関連会社のリサーチ部門以外の部門が本調査レポートで推奨されている投資や見解と整合しない又は矛盾するコメントを顧客又 は自己勘定部門に対して行う場合があります。弊社及び弊社の関連会社はかかるコメントを参考に投資決定を行うことがあります。弊社並びに弊 社の関連会社及びこれらの役職員は、本調査レポートで言及されている証券、その派生商品又は本調査レポートの対象会社の別の証券の売買を 行う可能性があります。 本調査レポートは、弊社又は弊社の関連会社から配布しています。本調査レポートに含まれる情報は、提供されましたお客様限りでご使用くださ い。本調査レポートは弊社の著作物です。本調査レポートのいかなる部分についても電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、 無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。本調査レポートに関するお問い合わせは、弊社の営業担当者までお願いいたしま す。追加情報をご希望の場合にはご連絡ください。 本調査レポートに記載された会社名、商品名またはサービス名等は、弊社または各社の商標または登録商標です。 【金融商品取引法第 37 条(広告等の規制)にかかる留意事項】 手数料等について 弊社がご案内する商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等をご負担いただく場合があります。例えば、店舗における国内の金融商品 取引所に上場する株式等(売買単位未満株式を除く。)の場合は約定代金に対して最大 1.242%(ただし、最低手数料 5,400 円)の委託手数料をお 支払いいただきます。投資信託の場合は銘柄ごとに設定された各種手数料等(直接的費用として、最大4.32%の申込手数料、最大4.5%の換金手 数料又は信託財産留保額、間接的費用として、最大年率 5.61%の信託報酬(又は運用管理費用)及びその他の費用等)をお支払いいただきます。 債券、株式等を募集、売出し等又は相対取引により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます(債券の場合、購入対価に別途、経過 利息をお支払いいただく場合があります。)。また、外貨建ての商品の場合、円貨と外貨を交換、又は異なる外貨間での交換をする際には外国為 替市場の動向に応じて弊社が決定した為替レートによるものとします。上記手数料等のうち、消費税が課せられるものについては、消費税分を含 む料率又は金額を記載しております。 リスク等について 各商品等には株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等及び有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を 含む。)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)、又は元本を超過する損失を生ず るおそれ(元本超過損リスク)があります。 なお、信用取引又はデリバティブ取引等(以下「デリバティブ取引等」といいます。)を行う場合は、デリバティブ取引等の額が当該デリバティブ取引 等についてお客様の差入れた委託保証金又は証拠金の額(以下「委託保証金等の額」といいます。)を上回る場合があると共に、対象となる有価 証券の価格又は指標等の変動により損失の額がお客様の差入れた委託保証金等の額を上回るおそれ(元本超過損リスク)があります。 また、店頭デリバティブ取引については、弊社が表示する金融商品の売付けの価格と買付けの価格に差がある場合があります。 上記の手数料等及びリスク等は商品毎に異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料等をよくお読みく ださい。なお、目論見書等のお問い合わせは弊社各部店までお願いいたします。 商 号 等 SMBC日興証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2251 号 加入協会 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会 (2014/12/01 版) 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