校正セミナー用課題について

◆
校正セミナー用課題について
◆
ぼっと舎・大西寿男
文字校正をするときに、気をつける点をまとめた練習問題です。
さまざまな種類のケアレスミスが潜んでいます。
日ごろ、ゲラでおなじみのものばかりです。
どういうところに目をつけたらよいか、おさらいしましょう。
● セミナー当日、校正したものをお持ちください。解答例を配り、解説します。
提出の必要はありません。
……………………………………………………………………
● 素読み校正をして、疑問点をエンピツで、修正点を赤ペンで書きこんでいって
ください。
● 事実関係や文章表現、レイアウトやデザインについては気にしないで、
明らかなあやまりや不備を指摘してください。
不整合や不統一も、チェックしてください。
誤字・脱字・衍字 漢字の字体(正字体使用) 約物 数字
送りがな 漢字―かな 全角―半角 etc.
● 解答例では30のチェックが入ります。目安の時間は20∼30分です。
── 試験ではないので、お気楽に! ──
棟梁のこころ ❷
手打ちでたたき出されたノコは
木に吸いつくように切れる
とうりょう
よ ご ろ う
棟梁として半世紀以上、戦後の木造住宅を建て続けてきた大西與五郎。
第 3 回は大工道具について聴く。
ことは、コストも安くあがること
加工できるからロスなく、コスト
につながるわけ。むかしより家を
ダウンにも繋がる。
──見習いを経て独立されたの
建てやすくなった半面、家が一生
あと、間竿とも尺
が昭和 29 年(1954)。昭和 5 年の
もんというより使い捨てみたいに
12尺(約 363cm)まで書きこ
お生まれですから、23 歳のときで
変わっていった。
んだ木の長い定規。それだけで、
すね。戦後 60 年、大工の仕事はど
──材料が変わった、というの
家ができるんや。土地の大きさを
う変わりました?
は?
量る、材木の長さを決め、どこに
棟梁 ● 道具と材料が変わったな。
棟梁 ● 昭和 40 年代(1975 年∼)
ノコギリを入れるか、しるしを付
きつい肉体労働が、機械を使って
になると、アメリカ、カナダ、ソ
けることが出来る。
できるようになった。加工材も使
連から輸入材が安く入るようにな
── 道具は職人の命 といわれ
える。重労働がなくなっていった
った。ただし、外材は、湿気の多
ますが。
わけやな。
い日本の気候に合わない。弱いん
カンナやノミの研ぎも、ノコギ
──機会というのは電動工具で
よ。日本材より 3 倍くらい早く
リの目立ても、大工はみんな自分
すか?
腐ってしまう。それでも、外材は
でやったよ。あのな、神戸の湊川
棟梁 ● 昭和 30 年代後半 (1960 年
節のないきれいな木が安く手に入
神社専属の刀鍛冶が作ったノコギ
∼ ) に、木工事の工具が変わった。
るんで、みんな飛びついたんや。
リがうちにある。手打ちでたたき
カンナ、ノコギリ、ドリルが電動
それまで国産材(スギ、
ヒノキ)
の、
出されたノコは、
目立がしやすい。
になって、材木を切ったり削った
節のいっぱいある木を平気で使っ
ヤスリが乗る。ヤスリのかかりが
りするだけやなく、穴あけ、釘打
てたからね。
いいいんやな。そして、木を切る
工具の進化
ちも電動の木工機械を使うように
なったんや。
ヤスリがのるノコ
のらないノコ
ともいって、
ときに吸いつくように切れる。曲
がっても歯が折れることはない。
電動化で工期が大幅に短縮され
棟梁 ● むかしの建築は、墨壺と差
最近の新しい鋼のノコは切れるけ
た。建築の費用は、材料代よりも
し金で始まったんや。
ど、
堅すぎてヤスリが乗らないし、
工賃の占める割合が大きい。そや
「建前」では柱や梁 を組んで、そ
から、工期が短くなるという
!
えて
教 梁
棟
「在来工法」って?
の上に棟を上げるんやけど、むか
昭和五十年(1975)以降、プレハブの家、つ
まり工場生産の家ができるようになって、単価と
工期が短く安くなった。むかしは最低 3 カ月か
ら半年くらいかけて建てた家が、プレハブなら現
場で 1 ヶ月未満で組み立てられる。
その後まもなく、海外から入ってきた 2x4(ル
ビ:ツー・バイ・フォー)の工法は「壁式構造」
といって、合板を貼りあわせたパネルを箱形に組
み立てる。それに対して、日本の在来工法は「軸
組構造で、柱(木や軽量鉄骨)を組みあわせた軸
組に、板壁を貼っていくんや。
折れやすい。替刃式のノコギリま
でいまはあるからね。
しは手作業で複雑な
──ノコギリやカンナは、切れ
継ぎ手をこしらえて
ばよいというわけではない?
組み上げとった。い
棟梁 ● いまの道具では、削り肌に
まは「プレカット工
つやがないな。
法」ていうて、機械
──むかしの大工道具には、味
で軸組を加工するか
がありますよね。墨壷に鶴や亀の
ら、墨壺を使って自
彫刻がほどこしてあったり
分で木に線を引く墨
棟梁 ● (笑)まぁ、あれは道具自
付きができない大工
慢で、自分で好きに飾りに彫った
が増えるんよ。工場
り、わざわざ高いのを買うとんや
でコンピューターで
な。
14