疲労管理のための 高精度フリッカー検査装置 摂南大学 理工学部 機械工学科 教授 川野 常夫 理工学部 技師 福井 裕 1 従来技術とその問題点 疲労の測定方法 精神性疲労の測定にはフリッカー検査がよく用いられる フリッカー検査とは 光を高速で点滅させたとき,光のちらつきが目で判別 できるか,できないかの境目の周波数を測る検査 検査画面 LED • フリッカー値測定器Ⅱ型 (501c,竹井機器工業製) 2 従来技術とその問題点 疲労の測定方法 上昇系列 光をゆっくり点滅させたと き,人は光の「ちらつき」が 判別できるが,徐々に高速 に点滅させると,やがて「ち らつき」がわからなくなる。 判別可能な最大点滅周波 数をフリッカー値と呼ぶ。 高周波数 疲労により低 下する フリッカー値 35Hz(例) 低周波数 周波数の操作を被検者自ら行い,判定を迷うため 時間がかかる。しかも,精度向上のため3回繰り返 して平均値を求めるため,さらに時間がかかる。 ちらつき 3 従来技術とその問題点 疲労の測定方法 下降系列 光を高速で点滅させたと き,人は光の「ちらつき」 が判別できないが,徐々 に点滅周波数を下げると ,やがて「ちらつき」がわ かるようになる。判別可 能な最大点滅周波数をフ リッカー値と呼ぶ。 高周波数 35Hz(例) フリッカー値 低周波数 ちらつき 周波数の操作を被検者自ら行い,判定を迷うため 時間がかかる。しかも,精度向上のため3回繰り返 して平均値を求めるため,さらに時間がかかる。 疲労により低 下する 4 従来技術とその問題点 検査結果が被検者の主観によって決まる (1)【検査時間】検査に時間がかかる (2)【曖昧性】ちらつきの判別に迷いが生じる (3)【低精度】検査値のばらつきが大きい (4)【恣意性】気まぐれに申告できる (5)【故意性】自らの意志で作為的に申告できる 5 従来技術とその問題点 その他のフリッカー値測定器 • フリッカー試験器 株式会社リケン 矢口修 特開平10-229981 点滅周波数の異なる 複数のLEDをつかった フリッカー値測定器 (f1) (f2) (f3) (f4) (f5) (f6) (f7) POWER 恣意性,故意性の問題は残る • FHM フリッカーヘルスマネジメント株式会社 恣意性の排除対策 スマートフォンやタブレットで 曖昧性,所要時間の問題は残る フリッカー値を測定できるアプリ 6 新技術(高精度フリッカー検査装置) トレーシングペーパー (t0.15mm) 30Hz LED ディスプレイ板 17×190×1 mm 31Hz 32Hz 被検者 15mm φ3mm 40Hz 制御用マイコン LED ドライバ LED(φ5mm, Red) Aruduino nano 周波数の変更操作が不要で, しかも判定に迷うことが少ない 7 高精度フリッカー検査装置外観 8 高速度 カメラに より測定 LEDの点滅周波数の検証 (実際の点滅周波数の測定結果) 隣のLEDと 干渉や混同はなし 9 従来器との測定値の比較方法 本装置 – LEDと目の距離(30cm,40cm,50cm) ・ 従来器1(フリッカー値測定器Ⅱ型) – 上昇系列,下降系列 ・ 従来器2(ヘルスビューワ) 3回繰り返す • – 上昇系列(右目,左目),下降系列(右目,左目) • 測定の順番はランダム. • 測定間には5分の休憩 • フリッカー値 • 所要時間 を記録 10 本装置の測定条件 30cm,40cm,50cm 11 従来のフリッカー値測定器(例) 従来器1 従来器2 フリッカー値測定器Ⅱ型 ヘルスビューワフリッカー (501c,竹井機器工業製) (HE-104,日本アルゴリズム製) 12 各測定器でのフリッカー値 本装置(距離30cm) 本装置(距離50cm) 従来器2 本装置(距離40cm) 従来器1 従来器1,2は,上昇系列・下降系列の平均値 本装置による測定値が従来器と ほぼ同等の値であることが分かる 被検者 13 本装置と従来器(上昇系列・下降系列の平均)の比較 n.s. : 有意差なし 上昇系列と下降系列の平均値と同等の評価を得る場合は 本装置と目の距離を40cmにして測れば良い. n.s. : 有意差なし 本装置 被検者ごとに基準化した値.[各測定値ー測定値の最小値] 14 開発器と従来器(下降系列のみ)の比較 n.s. : 有意差なし 下降系列と同等の評価をしたい場合は n.s. :有意差なし クイックフリッカーの距離を30cmにして測れば良い. 本装置 被検者ごとに基準化した値.[各測定値ー測定値の最小値] 15 検査に要する時間の比較(その1) 100 (測定回数1回の場合) 時間 秒 80 60 40 20 0 16 検査に要する時間の比較(その2) (高精度測定のための繰り返し測定の場合) 300 時間 秒 250 200 150 100 50 0 本装置(距離40cm) 従来器1 従来器2 17 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術の以下の問題点を改良することに成 功した。 1 (1)【検査時間】 → 短時間化(従来器の約 4 ) (2)【曖昧性】 → 曖昧性を自動判定し再検査 (3)【低精度】 → 繰り返し精度の向上 (4)【恣意性】 → 恣意性を自動判別し再検査 (5)【故意性】 → 故意性を自動判別し再検査 18 想定される用途 • 【疲労チェッカーとしての用途】 バスやトラック運転手などの仕事前(出発前) 疲労検査への応用による過労運転の防止 • 【労務管理としての用途】 一般の仕事における徹夜明けなどの疲労評 価と労務管理 • 【教育・実習の用途】 病院や学校における精神性疲労評価実習 19 実用化に向けた課題 • 現在、LEDおよび制御部をノートPCに接続し、 キーボードとディスプレイを使用する形式の装 置は開発済みである。 • 今後、入力部と出力部を一体化した装置にす ることで、原価を抑えることができる。 20 企業への期待 • 低コストの完成品を開発するため、生体計測器 メーカー、あるいは電子機器メーカーとの共同 研究を希望。 • 長距離バス運行会社や長距離トラック輸送会社、 病院などにおける労務管理に、本技術の導入 が有効と思われる。モニター期間を設け、デー タの蓄積を希望。 21 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :知覚閾値測定装置、知覚 閾値測定方法及び知覚閾 値測定プログラム • 出願番号 :特願2015-019826 • 出願人 :学校法人常翔学園 • 発明者 :川野 常夫、福井 裕 22 産学連携の経歴 • • • • • • 1999年-2001年 2000年-2001年 2007年 2010年-2013年 2012年 2012年-2013年 自動車部品メーカーと共同研究実施 システム開発企業の委託研究実施 産学官連携事業に採択(バネ製造業) 食品加工メーカーと共同研究実施 デザイン開発企業と共同研究実施 日用品メーカーと共同研究実施 23 お問い合わせ先 摂南大学 研究支援センター コーディネーター 鈴木 茂夫 TEL FAX e-mail 072-800 - 1160 072-800 - 1161 shien@ofc.setsunan.ac.jp 24
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