リサーチ TODAY 2015 年 3 月 19 日 北陸新幹線「かがやき」は軽井沢と高崎に停車を 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 今月14日に北陸新幹線が開通した。同新幹線については、東京圏からの北陸方面への所要時間を大 幅に短縮させることから、観光で大きな期待が寄せられ、このところ新聞やTVが大きく取り上げている。み ずほ総合研究所は「北陸新幹線への期待と不安」と題したリポートを発表した1。ここで、みずほ総合研究所 は観光で持続的効果を生み出すには、東京圏以外の沿線住民に向けた広報活動が重要であり、そのた めには現在東京を出発すると大宮・長野・富山しか停まらない「かがやき」2の停車駅に、高崎や軽井沢も含 めるべきと提言している。 長野新幹線や東北新幹線などの先例をみると、観光効果は開業初年度をピークに減少し、消費や事業 所が域外の大都市へ流出するストロー効果が生じている。下記の図表は北陸新幹線沿線の2040年までの 人口動態を示すが、今後はすべての都市で人口減が避けられない。人口減少率が比較的低いと見込まれ る金沢市や高崎市、軽井沢町を除いてストロー効果が徐々に進んでいく可能性が強い。 ■図表:北陸新幹線の沿線都市の2040年の人口水準推計値(2010年比) 100 (%) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (注)高崎~金沢間の北陸新幹線の駅が所在する自治体が対象。 (資料)国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)』2013 年 次ページの図表は、北陸新幹線の所要時間の短縮効果を発着地の組み合わせで比較したものだ。北 陸新幹線では一般的に、東京からの時間短縮効果が大きいとされる。図表のように、東京~金沢間の短縮 割合は36%になる。ただし、金沢~長野間の短縮効果は68%と大きく、時間短縮のメリットを受ける都市は 1 リサーチTODAY 2015 年 3 月 19 日 東京に限らず、むしろ長野等と北陸との時間が格段に短縮されることが分かる。北陸新幹線の沿線には、 金沢市、富山市、長野市、高崎市など比較的人口の多い都市があり、相互に観光客が増えることのメリット は大きい。例えば、長野市には著名観光施設である善光寺があり、観光効果が期待される。また、日本有 数の観光地、別荘地である軽井沢への観光が増えることも期待される。 ■図表:北陸新幹線の所要時間短縮効果 東京発 長野発 富山着 194 分 128 分 34% 166 分 45 分 73% 現行 新幹線 短縮割合 現行 新幹線 短縮割合 金沢着 231 分 148 分 36% 204 分 65 分 68% (注)1.現行の所要時間は、列車を利用したもので、東京発が越後湯沢経由、長野発は直江津経由のもの。 2.割合とは、現行の所要時間を 100%とした時の、北陸新幹線(「かがやき」利用時)の所要時間の割合。 (資料)JR 東日本『2015 年 3 月ダイヤ改正について』などよりみずほ総合研究所作成 我々の問題意識は、北陸新幹線の経済効果を単に東京圏からの需要だけに限定せずに、沿線の地域 住民の需要活性化にも注力すべきではないかということである。北陸新幹線沿線には人口が多い自治体 が多く、地域住民を中心とした相互の観光拡大が期待される。それゆえに、北陸新幹線の駅所在地である 金沢や富山に匹敵する人口を有する高崎や、駅所在地周辺が富裕層所有の別荘地として有名な軽井沢 に「かがやき」を停車させるのは、沿線全域を巻き込んだ活性化を行う観点から有効と考えた。高崎駅と軽 井沢駅はともに周辺に有力観光資源が多いので、北陸と相互に観光客の行き来が増えれば、観光業の更 なる発展が期待される。東京圏だけに目を向けた効果は初年度をピークに剥落しやすいことから、観光効 果を持続させるには、高崎をハブとして上越地域まで含めた商圏の拡大や、大宮を起点にした東北への 商圏の拡大の可能性を考えてもよい。また、軽井沢に滞在する観光客の滞在人口を対象にしたマーケティ ングも重要になる。 3月14日の北陸新幹線の開通はマスコミでも大きく取り上げられ、金沢を中心とした観光ブームを引き起 こしている。ただし、過去をみると結局、そうしたブームは長く続かない。持続的な観光効果には、東京圏以 外の沿線住民や地域住民など、「東京圏以外」の観光客の広がりにも目を向けることで、メリットをできるだ け長く持続させることが重要だ。そのためにも、「かがやき」の東京までの所要時間が数分増しても軽井沢 や高崎への停車拡大を考えてみてはいかがか。 1 2 岡田豊 「北陸新幹線への期待と不安」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2015 年 3 月 10 日) 北陸新幹線には「かがやき」以外に、多くの駅に停車する「はくたか」、金沢と富山を往復する「つるぎ」がある。 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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