(3)日本文化の原型は縄文時代にある(科学雑誌「Newton」)

シリーズ
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日本の歴史を科学で読み解く 3
科学的な手法も使い歴史検証をされている先生方の特別講義を 4 回紹介します。
日本文化の原型は縄文時代にある
谷口 康浩(タニグチ
ヤスヒロ)
TANIGUCHI Yasuhiro
國學院大學教授
❶
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❷
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専門分野:先史考古学/社会考古学・心の
考古学
主要研究課題:縄文文化の研究、土器文化
の起源、社会進化論、イデオロギーと
儀礼など
考古学と自然科学のコラボ
日本文化の起源に る
考古学における科学的手法としてよく
まだ始まったばかりですが、この遺跡に
らしや文化が研究対象です。文書が残っ
知られているのは、炭素 14 年代測定法
は最古の土器文化である「草創期」の遺
ている時代を対象とする歴史考古学とは
でしょう。最近では、土器の内側に付い
物層が残っており、縄文時代が始まる頃
違い、文字史料はありません。遺跡から
たオコゲから何を煮炊きしたのかを推定
の生活史を探る新たな手がかりが得られ
発掘されるモノだけが手がかりです。
する炭素・窒素同位体分析や化学分析も
ると期待しています。
先史考古学は、何千年も前の人々の暮
用されていたことがわかります。調査は
土まみれの発掘、最新の科学的分析、
私が大学に進んだ 79 年頃は考古学が
注目を集めています。新たな遺跡の発見
大きく変わり始めた時代でした。文系、
と、こうした新しい手法のおかげで、縄
それらを総合して、考察する。こうした
理系の枠を越えた学際的な研究が本格的
文文化の起源は従来の学説よりもずっと
手順を経て、数千年以上前の人々の生活
に始まったのです。
古く約 1 万 6000 年前に り、悠久の時
や知恵を解き明かすのが先史考古学の面
縄文研究の第一人者である小林達雄先
を経て、日本列島の自然環境に深く適応
白さです。
生(現・國學院大學名誉教授)のもとには、
した固有の生活文化がつくられてきたこ
多彩な研究者が集まっていました。例え
とがわかってきました。縄文時代が一万
ば、貝殻の成長線から採取季節を推定す
年以上も持続したのは、縄文人が自然を
る分析の先駆者である小池裕子先生は、
傷めつけず、森林や海洋の資源を巧みに
縄文人の生業活動の季節性を調べる研究
利用・管理する知恵をもっていたからで
に道を拓きました。また遺跡から出土し
す。自然との共生を大切にする日本の伝
た植物の種子を同定する考古植物学の松
統的な生活文化は、縄文時代に原型がつ
谷暁子先生は、縄文時代にエゴマが栽培
くられたと私は考えます。
されていたことを突き止めました。
とはいえやはり、考古学の基本は発掘
縄文時代の発掘資料というと土器、石
調査です。今年の 8 月にも、学生たちと
器を連想する方が多いかもしれません。
一緒に群馬県吾妻郡長野原町にある居家
しかし現在では、これらに加えて動物の
以岩陰遺跡を発掘しました。縄文人は海
骨や植物の種子といったものも欠かせな
岸や平野部だけでなく、山地の洞窟や岩
い研究資料になったのです。土の中の花
陰も利用したのです。この岩陰遺跡から
粉化石や歯に残る歯石のようなものに
も、さまざまな年代の土器、石器、骨等
も、実は重要な情報が含まれています。
が出土し、先史時代の人々に繰り返し利
い
や
い
❸
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❶❷ 居家以岩陰遺跡の発掘調査風景(2014 年 8 月、群馬県吾
妻郡長野原町)
。❸出土した遺物の一部。縄文早期中頃の土器
(約
9500 年前)
。縄文時代の石器(黒曜石製の石鏃:矢じり、石匙:
携帯用のナイフ、特殊磨石:植物食のすり潰し・加工用)
。弥
生時代の環状石斧(儀器または武器)
。人骨(年代は調査中、
岩陰内では頻繁に火が焚かれ灰層が堆積しているため、骨が分
解されずによく保存されている)
。
総合企画部広報課 さらに詳しくは http://www.kokugakuin-univ.jp/ をご覧ください。