第五課 <新しい言葉> 1.

第五課 東京回顧写真展
第五課 東京回顧写真展

作家。1952(昭和27)年10月28日東京都生
まれ。成蹊大学文学部文学部英米文学科
卒。出版社勤務、雑誌新聞等のフリーライ
ターを経て、78年、初めてのエッセイ集『知
的悪女のすすめ』を発表。以後エッセイスト
から作家に転身。89年『妻の女友達』で日
本推理作家協会賞を、96年『恋』で第114
直木賞を受賞。夫は作家の藤田宜永。
小池真理子(こいけ まりこ)
第五課 <新しい言葉>
1.早朝から叩き起こしてしまったことをあやまると、医師はどうせゴ
ルフで早起きすなけりゃいけなかった」
叩き起こす
①戸を叩いて家で眠っている人を起こす。
○突然の来訪者に叩きおこされる
②眠っている人をむりに起こす。
○昨日の夜中、電話で叩きおこされてしまった。
第五課 <新しい言葉>
2.「不義理を重ねている知人の顔が次々に頭に浮かぶものなの
かも知れない」
不義理
①義理を尽くさぬ。
○あいつは本当に不義理なやつだ。
②借金を返さない。
○不義理ばかり重ねている。
第五課 <新しい言葉>
3.「何やら雑事に追われて終わってしまいそうな焦りにも似た気持
ちに駆り立てられた。」
駆り立てる
①無理に行かせる。
○国民を戦争に駆り立てる
②そうしないではいられないような気持ちに追い込む。
○投げ出したい衝動に駆り立てられる。
第五課 <新しい言葉>
4.「私のささやかな、欠かすことのできない楽しみの一つである。」
ささやか
①小規模なさま。こぢんまりしたさま。
○ささやかな願い
○ささやかな祝宴
②わずか。形ばかり。
○ささやかな贈り物
○ささやかな家庭を築く
第五課 <新しい言葉>
5.「本好きの快楽、と一言で言い切るのもしゃくなのだが、…」
癪
①種々の病気によって胸部・腹部に起こる激痛の通俗的総称。さ
しこみ。
○しゃくが起こる。
②腹立ち。いかり。
○あんなやつに負けてはしゃくだ
③腹の立つような言葉や事柄。
○しゃくな雨だ。
第五課 <新しい言葉>
6.「女店員がベテランで、きびきびした応対をしてくれていたら、
……」
きびきび
無駄がなく速やかに行動するさま。態度が生き生きとしていて
気持ちのよいさま。
○きびきびと立ち働く
○きびきびした接客態度
第五課 <新しい言葉>
7.「しおり、英会話教材の広告パンフレット、タレントの署名入りの
エッセイ集、」
栞
①案内。手引き。入門書。
○旅行のしおり
○入学のしおり
②読みかけの書物の間に挟んで目印とする。古くは木片・竹片な
どでも作った。
○読みさしのページにしおりをはさむ。
第五課 <新しい言葉>
8.「何の変哲もない円筒形の筆立てのようなものに、束になって押し込まれてい
ただけだったと思う」
何の変哲もない
特に取り立てて言うほどのことない。特に質、能力、大きさまたは度合にお
いて例外的ではない。
○何の変哲もない古びた建物でも、ペイントひとつでこんなに変わるものなの
かと不思議になりますよね。アートって凄いなと改めて奥深さを感じました。
○あの講座は聞いていても面白くも変哲もないのだから、途中抜け出して帰っ
た。
第五課 <新しい言葉>
9.「早くも次の客から数冊の本を手渡され、代金の計算をし始めて
いて、うわのそらだった」
上の空
他のことに心が奪われて、そのことに精神が集中しない状態。
○親の意見などうわの空で聞いている。
第五課 <新しい言葉>
10.「ガラスのあちこちテナント募集中の貼り紙が貼られ、掃除に
手が回らないのか、どことなく埃が立っているように見えるのが
わびしげだった。」
手が回る
①手配りが十分にゆきとどく。
○忙しくて手が回らない
②犯人逮捕のための手配がなされる。
○すでに警察の手が回った。
第五課 <新しい言葉>
10.「ガラスのあちこちテナント募集中の貼り紙が貼られ、掃除に
手が回らないのか、どことなく埃が立っているように見えるのが
わびしげだった。」
侘しい
①物寂しい。心寂しい。
○わびしい山間の小駅
②(暮らし向きが)みすぼらしい。
③力が抜ける感じである。
○わびしい暮らし
○結果を知るとわびしくなる。
第五課 <新しい言葉>
11.「花の大半は生気を失い、しおれかけていた。」
萎れる
①草木などが、生気を失ってしぼむ。
○日照り続きで庭の花がしおれた。
②力が抜けてぐったりする。しょんぼりする。
○試験に落ちて彼は近頃いやに萎れているね。
第五課 <新しい言葉>
12.「くたびれた感じのする紺色のサマージャケットを着て、ジーンズをはいてい
る」
草臥れる
①くたくたに疲れる。
○15キロも走ったのでほんとうにくたびれてしまった。
②長く使って、みすぼらしくなる。
○このかばんもずいぶんくたびれてきた。
③動詞連用形+くたびれる ←体を使いすぎてこれ以上するのがいやになる。
○待ちくたびれる
○遊びくたびれる
第五課 <新しい言葉>
13.「ばちがいと思われるほど気難しそうな視線が、本のページ
の上を泳ぎまわっていて、どこか近づきがたいような印象があ
った。」
場違い
①場所が違うこと。その場にふさわしくないこと。
○場違いの発言をして非難される。
②本場からの産出でないこと。
○ばちがい物
第五課 <新しい言葉>
13.「ばちがいと思われるほど気難しそうな視線が、本のページ
の上を泳ぎまわっていて、どこか近づきがたいような印象があ
った。」
気難しい
親しみにくい。扱いにくい。
○気難しい上役
第五課 <新しい言葉>
14. 「男が私を見つけてのっそりと立ち上がったので、私は軽く会
釈をした。」
のっそり
①動作がのろい様子。
○部屋からのっそり出てくる。
②ぼんやりと立っている様子。
○のっそり突っ立っている。
第五課 <新しい言葉>
14. 「男が私を見つけてのっそりと立ち上がったので、私は軽く会
釈をした。」
会釈
軽いお辞儀。
○えしゃくをかわす。
○会釈して席につく。
第五課 <新しい言葉>
15.「誰かの通夜、忘年会とおぼしき大衆酒場でのどんちゃんさわぎ
、…」
どんちゃん騒ぎ
酒を飲むなどして、大勢がやかましく騒ぐこと。
○酒を飲んでどんちゃん騒ぎをする。
第五課 <新しい言葉>
16.「さしたる説明がなかったせいか。時代を物語る風景が、私のよ
うな年代のものにとってはありふれたものばかりだった」
さしたる
(下に打消しの語を伴って)これというほどの。さほどの。
○さしたる困難はない。
第五課 <新しい言葉>
16.「さしたる説明がなかったせいか。時代を物語る風景が、私の
ような年代のものにとってはありふれたものばかりだった」
ありふれる
どこでもある。珍しくない。多く「ありふれた」の形で使う。
○ありふれた品で珍しくない。
○ありふれた話
第五課 <新しい言葉>
17.「東京郊外に建てられた、ぜいを尽くした家の新築記念パー
ティー」
贅を尽くす
できるかぎりのぜいたくをする。
第五課 <新しい言葉>
18.「誰も彼に話しかけておらず、彼もまた、誰かにあいそをふり
まこうとはしていない。」
愛想を振りまく
いやになってとりあわないようにする。人に対する好意や親
しみを示したり与えたりする。
○彼は彼女に愛想を振りまこうとしている。
第五課 <新しい言葉>
19.「客の目に触れないところで両腕をこすっては「とりはだが立
っちゃう」と言って笑ったものだ。」
鳥肌が立つ
皮膚が、鳥の毛をむしりとった後の肌のように、ぶつぶつにな
る現象。
○急に寒いところへ出ると鳥肌が立つ
○恐ろしさに鳥肌が立った。
第五課 <新しい言葉>
19.「客の目に触れないところで両腕をこすっては「とりはだが立
っちゃう」と言って笑ったものだ。」
擦る
強く押してする。
○目をこすって眠気を覚ます。
第五課 <新しい言葉>
20.「ろくに阿佐緒と話もしなかったというのに、僕の中にすくう阿
佐緒の面影は…」
巣くう
①巣を作る。
○庭の木の上に鳥がすくっている。
②(好ましくないものが)住みつく。
○町には暴力団がすくっているらしい。
第五課 <新しい言葉>
21.「どうして家の父親が二つ返事でOKしようとするのを阻止で
きなかったのか」
二つ返事
ためらうことなく、すぐ承諾すること
○ふたつ返事で引き受ける。
第五課 <新しい言葉>
22.「なにもよりによって、袴田邸の庭を引き受ける必要はなかっ
たんです。」
選りに選って
ほかに適当な選択が可能であるのによくない選択をして。
○よりによってこんな男と結婚するとは
○よりによって大晦日に泊り客が来る。
第五課 <新しい言葉>
23.「僕のろあくしゅみを引き出したのか、それとも、もともと僕の
中に潜在的にあなたに対する特殊な甘えがあったのか」
露悪趣味
自分の悪いところをわざわざとさらけだすこと。
第五課 <新しい言葉>
24.「どんな心理のからくりが働いたものやら、考えてみれば不思
議です」
からくり
①糸のしかけであやつって動かすこと。また、その装置。
○時計の内部のからくりを調べる。
②仕組んだこと。計略。
○敵のからくりを見破る。
第五課 <新しい言葉>
25.「さんもんの値打ちもないくだらない神経が愚かしくも研ぎ澄
まされテイクばかりです」。
三文
①わずかな金
○さんもんの値打ちもない
②値打ちのない
○三文小説
○三文絵
第五課 <言葉の学習>
1.なにかというと
「なにかきっかけがあるたびに」「何かのときは必ず」という意味を表す。後ろには
出来事や状態を表す表現などが続き、いつもその出来事が繰り返される。あるいはい
つもその状態であるという意味になる。「何かといえば」「なにかにつけて」ともいう。
○韓国や北朝鮮は、何かというと日本の統治時代のことを持ち出して、「日本人は酷いこ
とをした」「日本は朝鮮のものを盗んでいった」「日本は朝鮮を侵略して奴隷にした」と
か言います。
○何かというと血液型性格分析を持ち出す同僚がうっとうしい。
○治療で何かというと香辛料など刺激性の食物を避けよと言われるが、なにゆえ香辛料
が良くないのか説明してください。
○ 家の親父はなにかというと、その話をもってくるので、本当にいやだ。
○彼は何かにつけて私の悪口を言いふらしている。
第五課 <言葉の学習>
2.何も~ない
①「まったく~ない」「全然~ない」という意味。物や事柄や人間以外の動物に関
して用いられる。人の場合には「だれも~ない」、場所の場合には「どこも~
ない」
○外は暗くて何も見えない。
○そのことについて、私は何も知らない。
②後ろに「(そこまで)~しなくてもいい」「(そう)~必要がない」などの表現が続き、
「特にそうする必要はないのに」という気持ちを表す。相手がやりすぎている
ことをたしなめたり、非難したりする場合に用いられることが多い。
○何もみんなの前でそんな恥ずかしい話をしなくてもいいでしょう。
○ちょっと注意されただけなのに、何もそんなに気にすることはないよ。
○何も試合直前になって延期したいと言ってくることはないだろうに。
第五課 <言葉の学習>
2.何も~ない
③何も~わけではない
自分の行動に関して相手がどう考えているかを受け止めて、その考えが実
は正しくないと否定するのに用いる。多くの場合は相手の考えを推量してそ
れを否定するのに用いる。
○私は何もあなたがやっていることを非難しているわけではないんです。ただ
ちょっと注意したほうがいいと思って忠告しているんじゃないですか。
○私は何もこの仕事がやりたくないわけではないのです。今他のことがあるの
で、少し時間がほしいとお願いしているだけなのです。
第五課 <言葉の学習>
3.~ためしがない
動詞の過去形を受け、「今まで一度もそんなことはなかった」という意味。非
難の気持ちを伴うことが多い。
○慣れないベッドでは、よく眠れたためしがありません。
○マスコミが持ち上げる政治家によかったためしがない。
○そんなことは聞いたためしがない。
第五課 <言葉の学習>
4.~はおろか~も
「XはおろかYさえ/も/すら~ない」のように否定表現と共に使うことが多
い。もちろんのこと、いうまでもなくの意味で、程度の軽いものをXで示し、Yを
強調するのに使う。話し言葉では「…どころか」を使う。
○彼は日本に来て5年になるのに、漢字はおろか、ひらがなさえも書けない。
○こんな成績では進学はおろか、卒業だって危ないよ。
○私は海外旅行はおろか国内旅行さえ、ほとんど行ったことがない。
○この学生には単位は出せません。今学期はレポートはおろか出席さえして
いないんです。
○もし歩いていてピストルを突きつけられたら絶対に逆らわないでお金を渡し
なさい。さもないと金はおろか命までなくすことになる。
第五課 <言葉の学習>
5.~始末だ
①動詞の辞書形について、誰かの行為による困った状況や迷惑な状況が生じ
ることを表す。前半でその状況に至るまでにどんなことがあったかを述べ、そ
の結果としてその状況が起こったということをいうのに用いる。
○彼女は夫の欠点を延々と述べ上げ、あげくの果てには離婚すると言って泣き
出す始末だ。
○息子は大学の勉強は何の役にも立たないといってアルバイトに精を出し、こ
の頃は中退して働きたいなどと言い出す始末だ。
○あの二人は犬猿の仲で、ちょっとしたことでも、すぐ口論になる始末だ。
○離婚してうえに、首にまでなるしまつだ。
○友達に借金までするしまつだ。
○あの子は小さい頃から親の悩みの種だったが、ついに家出までする始末だ。
第五課 <言葉の学習>
5.~始末だ
②この始末だ
「この始末だ」は慣用的な表現で、何か問題が起こったときに、非難の気
持ちを込めてそれを指し示すのに用いる。
○山田さんはどうもこの頃学校に来ないと思ったらこの始末だ。バイクで人身
事故を起こすような学生にはもう退学してもらうしかない。
第五課 <言葉の学習>
6.~てでも
動詞の連用形につく。強硬な手段を示す言い方である。後ろに強い意志
や希望を表す表現を伴って、それを実現するためには、たとえそのような極
端な手段を用いるにしても、ためらわないという強い決意。
○僕はどうしてもアメリカへ留学したい、持ち家を売ってでも行きたいと思った。
○いざとなれば、会社をやめてでも、裁判で争うつもりです。
○今回は、しんどい思いをしてでも、ぜひ20代に経験しておいたほうがいい、5
つのことを紹介します。今現在、このような体験をしている人は、その苦労・
つらさはきっとあとになって自分のためになるはずだと思ってください!
○会社説明会の開催地が自宅から遠く、参加するかどうか迷っていますが、
一次選考を兼ねたものもあるとききます。無理をしてでも参加すべきでしょう
か?
第五課 <言葉の学習>
7.~次第だ
[名詞]
①物事が行われる際の一定の順序。「式の―を書き出す」
②今まで経過してきた状態。なりゆき。「事の―を話す」
③物事の、そうなるに至った理由。わけ。事情。「そんな―で明日は伺えない」
④能や狂言の構成部分の一。七・五、返句、七・四の3句からなる拍子に合った
謡。シテ・ワキなどの登場第一声として、また曲舞(くせまい)や乱拍子の序歌
としても謡われる。
⑤能や狂言で、シテ・ワキなどの登場に用いる囃子事(はやしごと)。大鼓・小鼓
に笛があしらい、続いて4が謡われる。
⑥歌舞伎囃子(ばやし)の一。5を取り入れたもので、能がかりの登場音楽として
用いるほか、「関の扉(と)」などの幕開きにも奏する。
第五課 <言葉の学習>
7.~次第だ
[接尾語]
①体言次第だ
名詞に付いて、その人の意向、またはその事物の事情のいかんによるという
意を表す。つまり「Nによっていろいろに変わる、左右される」という意味。
○結婚した相手次第で人生が決まってしまうこともある。
○この世の中は金次第でどうにもなる。
○あなた次第でどうともなる。
第五課 <言葉の学習>
7.~次第だ
[接尾語]
②動詞連用形しだい
「…したらすぐに」の意味で、ある事柄が実現したらすぐに、次の行為をするこ
とを表す。前半の文は自然の経過で起こることを表す場合が多い、後半の文
は自然の経過で起こることには使えず、話しての意志的な行為を表す文が
続く。
○受付のほうは「落し物が見つかり次第、お知らせします」と言いました。
○資料が手に入り次第、すぐに公表するつもりだ。
○事件の詳しい経過が分かり次第、番組の中でお伝えします。
○本が到着しだい送金する。
○満員になりしだい締め切る。
第五課 <言葉の学習>
7.~次第だ
[接尾語]
③動詞につき、形容詞の場合は慣用的な言い方として用いられることがある。あ
る状態に至った経緯、状況あるいは自分の行為の理由を説明するのに使う。
書き言葉的。
○やむにやまれぬ事情があるから、借金しなければならなくなりました。こうして
お願いする次第です。
○こんなことになってしまい、まったくお恥ずかしい次第です。
○今後ともよろしくご指導くださいますようお願い申し上げる次第でございます。
○昨日の夕方、部長から早く帰れという電話連絡が入りまして急いで帰ってきた
次第です。
第五課 <類語の学習>
1.~はおろか/~は言うまでもなく/~は言うに及ばず
名詞: ×
+
はおろか
~ も
は言うまでもなく
さえ
は言うに及ばず
まで
~
♪ 会話 ♪
佐藤:あれあれ、山田ったらおつりは言うに及ばず、万札までチップにしちゃ
ったよ。
李
:あんな美人ににっこりされて、すっかり舞い上がってるんだよ。相手は
商売なのになあ。
佐藤:そのうち財布の中身はおろか、鼻毛まで抜かれちゃうよ。あいつ、美人
に弱いからなあ。
第五課 <類語の学習>
1.~はおろか/~は言うまでもなく/~は言うに及ばず
解説
どれも「Aは言うまでもなく、更にBも~」という語感で共通している文型で
す。作文や会話の時は、先ずAを取り上げ、それよりも程度の高いBを取り上
げなくてはなりません。例えば、「彼は漢字は言うまでもなく、ひらがなも書け
る」は誤文になります。また、これらの中で「~はおろか」だけはマイナス評価
の文で使われる文型なので、プラス評価の文では「~は言うまでもなく/~
は言うに及ばず」を使いましょう。
○ その子は中学生なのに、かけ算はおろか、足し算さえできない。
× その子はまだ5歳なのに、足し算はおろか、かけ算もできる。
第五課 <類語の学習>
1.~はおろか/~は言うまでもなく/~は言うに及ばず
§ 例文 §
○こんな成績では進学はおろか、卒業だって危ないよ。
○腰が痛くて、立ち上がることはおろか、寝ているのさえ辛い。
○その地震は家や財産は言うに及ばず、家族の命まで無惨に奪い去った。
○「ゆとり教育」という言葉と裏腹に、小中学生は言うまでもなく幼児までもが、
受験戦争に巻き込まれている。
○言うまでもなく、事態は風雲急を告げており、一刻の猶予もなりません。<文
頭に現れる例>
第五課 <類語の学習>
2.~が早いか/~たとたん/かと思うと/やいなや
共通点:
いずれも時間的同時性や前後関係を表すものである。
第五課 <類語の学習>
2.~が早いか/~たとたん/かと思うと/やいなや
相違点:
①「~が早いか」は第三者のみに使うもので、前件とほとんど同時に後件が起こ
る。また後件には意志的行為が多く使われ、前後で行為主体が一致するも
のが多い。
○子供は学校から帰ってくると、玄関にかばんをおくが早いか、また外へ飛び
出していった。
②「~たとたん」で結ばれる前後の句または文は行為・自然現象・状態変化とさ
まざまである。文の重点は後件の変化にあり、意外だというニュアンスを伴う
。後件には意志的行為が使用できない。
○ドアを開けたとたん、犬が飛び込んできた。
○試験終了のベルがなったとたん、教室が騒がしくなった。
第五課 <類語の学習>
2.~が早いか/~たとたん/かと思うと/やいなや
相違点:
③「~かと思うと」は話し手自身の行為について述べることはできない。
○空で何かピカッと光ったかと思うと、ドーンと大きな音がして地面が揺れてい
た。
○家の子は学校から帰ってきたかと思うと、いつもすぐ遊びに行ってしまう。
④「~やいなや」は前件の動作や状態が「始まるか否かのうちに」後件が起こっ
たという意味上では「が早いか」と共通しているが、後件は意志的行為も状態
表現も可能。前後で行為主体が一致してもいい、しなくてもいい。
○店を開くや否や、お客さんが詰め掛けた。
○彼の顔をみるや否や、僕は第一にかけた言葉は、試験はどうだったという一
語であった。
第五課 <類語の学習>
2.~が早いか/~たとたん/かと思うと/やいなや
相違点:
⑤「なり」を用いる文は同一主体の意志的な事柄に限られる。また、その動作の
直後に予期しない出来事が起こる場合に用いられる。
○立ち上がるなり、目まいがして倒れそうになった。
○子供は母親の顔をみるなり、わっと泣き出した。
第五課 <練習>
一、次の文の下線部を辞書で引いて日本語で説明した上、全文を中国語に訳し
なさい。
1 私は中学校から短大までそろった私立の女子校に勤めている。
2 日ごろ、華やいだものとは無縁の生活を送っている。
3 哀れというより滑稽です。我ながら呆れている。
4 何か気のきいた物を買おうとすると、何にすればいいのかわらず、途方に
暮れる。
第五課 <練習>
二、文頭にあげた言葉の用法として、次の文の下線部ではどのように使われて
いるか。意味かその用法を日本語で説明なさい
1 ただ
①日本では大学進学がポピュラー化してしまったから、ただ皆が進学するから
というだけの安易な動機で、大学に行く学生が多くなってきた。
②ただ、有難いことに、あとから送られてきた「試合要領」に救いの神がいた。
③いくら開かれても返事せず、ただ考え事にばかりふけっていた。
④こんな過ちを犯したのだから、会社のほうがただではおかないだろう。
第五課 <練習>
二、文頭にあげた言葉の用法として、次の文の下線部ではどのように使われて
いるか。意味かその用法を日本語で説明なさい
2 かかる
①男は白いクロスのかかった机の下を覗き込んだ。
②夕立の晴れた空に虹がかかっていて、しばらくすると
③文句を言いながらも部屋の片付けにかかった。
④「地球」が文末までかからないということで、「が」が入るとことを説明できる。
⑤自動車がすぐそばを通ったので、泥水がズボンにかかってしまった。
⑥疑いが私にかかっているとはちっとも知らなかった。
⑦優勝がかかった試合だからみんなひたすら頑張った。
第五課 <練習>
三、次の文中の(
)に最も適切なものを一つ選びなさい。
1この島には、電話(
①はおろか
)、水道も電気もない。
②が最後
③までも
2彼女は怒っているのか、挨拶(
①はおろか
②とばかりに
3部長と課長は何かと(
①.よって
①とたん
)私の方を見ようともしなかった。
③なくして
④といえども
)意見が対立する
②.よると
4私は家に帰った(
④ですら
③いうと
④ いって
)お風呂に入った。
②とすぐに
③かと思うと
④かと思ったら
第五課 <練習>
四、次の中国語を日本語に訳しなさい。
1
小王半开玩笑半认真地说:“送我到车站吧。就这么分手我会感到寂寞
的”
(…とも…ともつかぬ)
2 他不能以平常心对待事情,张嘴就发牢骚。这样的生活态度,自己也觉
得很累吧。
(何かというと/さえも)
3 这是一项有发展前景的研究。我想即使学校资助一点,也应该让他们继
续研究下去。
4
(見込みのある/てでも)
那家建筑公司一赶工期就会偷工减料,这样干是不行的。
(納期を急がせる/始末だ)