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第 1115 号(1963 年 2 月 15 日第三種郵便物認可)
2015 年
3 月 10 日
でも﹁ただちに健康に影響はあり
原発震災から丸4年がたつ。今
なかったことにしようとしている
こんで、放射能汚染なんてまるで
しかし、そんな人間心理につけ
んていらない。なんでも自由に食
は、﹁ 福 島 県 民 に は、 摂 取 制 限 な
しかしこのシンポジウムの趣旨
べ る こ と は、 お 年 寄 り の 楽 し み ﹂
ません﹂と繰り返す枝野幸夫氏の
と い う の も 今、 福 島 で は、〝 原
﹁ 大 切 な 地 域 の 食 文 化 を、 子 ど も
べさせてほしい﹂ということら
発安全神話〟ならぬ〝放射能安全
たちにも受け継ぎたい﹂といっ
のが、政府や東電であるように思
事故後1年間は、福島の子ども
神 話 〟 の 刷 り 込 み が、〝 リ ス ク コ
た、もっともらしい理由を掲げて
姿を思い出すと、軽いパニックを
はだいじょうぶだろうか、なんと
ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 〟︵ リ ス コ ミ ︶
いた。
し い。﹁ 山 菜 や イ ノ シ シ な ど を 食
か避難できないものか、食品の汚
という名のもとで、頻繁に行なわ
えて仕方がない。
染はどの程度か等々、あれこれ心
れているからだ。
起こしそうになる。
配して夜もろくに寝られない日が
そして次々に、学者や医者が登
続いた。
でホットスポットが見つかろう
垂れ流され続けていようが、公園
あいかわらず高濃度の汚染水が
3月3日号に掲載︶。
た︵ 詳 細 に つ い て は﹃ 女 性 自 身 ﹄
れた、あるシンポジウムを取材し
﹁りょうぜん里山学校﹂で行なわ
実 は 先 日、 福 島 県 伊 達 市 の
の物理学者が、﹁低線量被ばくは、
ポーランド国立原子研究センター
ジウムのためだけに呼んできた
い﹂とか言い出す始末。
キノコを食べないほうが健康に悪
高 い ﹂ と か、﹁ 放 射 能 を 気 に し て
田中寿美子さんをしのぶ会事務局編(1000円)
場 し、﹁ 汚 染 さ れ た︵ 山 の ︶ キ ノ
が、﹁ ま た か ﹂ と 慣 れ て し ま い、
﹃出荷制限値100ベクレル/
「美しく立てり」
コを食べるより、自動車を運転し
それが日常になってしまう。
㎏は厳守しつつ、地元民の目安と
北沢洋子・清水澄子共著(1000円)
摂取制限なんていらない?
これはある意味、人間が生きて
むしろ体にいい!﹂と言ってのけ
「女性がつくる21世紀」
しかし、人間の緊張感はそう長
いくための本能かもしれない。何
しての摂取制限値の検討へ︵大人
50周年の歴史に学ぶパンフ(100円)
たのだ。
女性会議の本
ていて事故死するリスクのほうが
年も何年も、まるで原発事故直後
1000
「ジェンダー平等をめざそう」
また、安全を理由に、放射線の
影 響 を 受 け や す い 子 ど も に ま で、
汚染された山菜や山のキノコ、イ
ノシシなどを食べさせようという
議論が進み、筆者は正直、背筋が
寒くなった。
リスクを県民に押しつける
自然の恵みを食べられなくなっ
た地元民は、さぞ辛いだろう。し
かし、だからこそ、原発事故の責
任を追及し、放射性物質をまき散
らした東電や、原子力政策を推し
進めてきた政府の責任を追及しな
くてはならないのでないか。なの
に、問題をすり替えて摂取制限を
取り払おうなんて議論は、リスク
を被害者である福島県民に押しつ
けることにほかならない。
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උ̵͙̥ͭ́ͭ͘ȉ
くは続かない。
のような緊張状態が続いていた
/㎏︶﹄︵日本サイエンスコミュニ
Bq
挙げ句の果てには、このシンポ
ら、それこそ病気になってしまう
ケーション主催︶という長いタイ
トルのシンポジウム。一見、何が
言いたいのかわからないが、ひと
ことで言えば﹁食品の摂取制限値
を ゆ る め て、 汚 染 さ れ た も の で
も自由に食べられるようにしよう
じゃないか﹂ということである。
福島第1原子力発電所の事故以
降、政府は一般食品中に含まれる
放射性物質の規制値を、1㌔グラ
ムあたり100ベクレルまでと決
め、それを超えるものについては
〝出荷制限〟を設けている。
またこれとは別に、イノシシや
山菜、キノコといった特に汚染さ
れやすい食べ物については、極端
に規制値を上回る食品が検出され
た地域には、自分でとって食べる
ことも控えるようにと、政府が県
宛てに〝摂取制限〟の通達を出し
︵※2面につづく︶
日本婦人会議のあゆみ(750円)
Bq
ているのだ。
「大地に花を」
/㎏、子ども100
からだ。
りょうぜん里山学校で開かれたシンポジウムの様子。写真中央は、ポーランド
からやってきた「専門家」(和田秀子撮影)
〒113-0033 東京都文京区本郷 2-27-2 東眞ビル5階
TEL 03(3816)1862 / FAX 03(3816)1824
E-mail:[email protected]
http://www.joseikaigi.com/
毎月10 日・25 日発行
月額 300 円 ( 送料別 124 円 ) 年間 5,040 円 ( 送料込 )
郵便振替口座 00170-0-9 9031
発行所: 女性会議
福島原発事故から
4年
刷り込まれる放射能安全神話
リスクコミュニケーションという名の「洗脳」シンポジウム
フリーライター/『ママレボ』編集長 和田 秀子
しかも一般の人は、偉い学者や医者
に 言 わ れ る と、﹁ あ あ、 そ う か ﹂ と 納
得してしまう。仮に納得していなくて
も、専門家を相手に、論理だてて反論
をするのは難しいものだ。
の﹁原発出前授業﹂などでも、似たよ
うな話を読んだ、聞いたということを
耳にはさむ。
リスコミにだまされないために
日 朝、 警 察 か ら 遺 体 発 見 の 連 絡 が あ
う見つからなかった。そして、7月
た の に、 日 に 日 に 口 数 が 減 っ て い っ た。
り、原町警察署で対面した。
ち着かない様子になり、明るい性格だっ
平成5年に新築した家の住宅ローン・孫
浪江町のお墓を直し、納骨すること
になった。でも、それ以上に感動した
胸が苦しく、そして辛い悲しい気持ち
傍聴席にいた4時間は、聞いていて
たのだと思う。
かっていたから、なおさら悩んで辛かっ
たという。避難した当初から深刻さはわ
こったらばもう駄目だぞ﹂と口にしてい
でも、原発事故さえ起きなければ、喜
の か、 本 当 の 理 由 は 今 も わ か ら な い。
なぜ、喜一さんは自殺してしまった
歳 ︶ が、
2 0 1 1 年 7 月、 飯 舘 村 で 自 死 さ れ
の進学・家庭菜園の心配等々。そして第
が出来たのは2013年7月。線量が
浪江町から二本松に避難してい
た。妻栄子さんと孫の貴明さんは、東
2原発の資材管理会社に長く勤務してい
高く、容易に入れなかったからだ。
た 五 十 崎 喜 一 さ ん︵ 享 年
電を相手に謝罪と賠償を求め、福島地
た 喜 一 さ ん は、 昔 か ら﹁ 原 発 に 何 か 起
のは、原告の五十崎栄子さんと孫の貴
裁に提訴した。
まずは、どういう団体が主催してい
明さんの気丈で立派な本人尋問。
実際に、このシンポジウムでは、参
るのか、話している専門家が属してい
二本松市で高校が再開すると、貴明さ
これらにうっかりだまされないため
る組織はどこか、どういう経歴か、ト
代理人弁護士から、亡くなった喜一
んの進学に合わせて二本松市の借り上げ
貴明さんも、続く栄子さんも、気丈
加 者 は 青 と 赤 の カ ー ド を 持 た さ れ、
参加者の多くはご年配者だった。こ
ク す る の は 誰 か、 な ど を 調 べ て み る
さんの性格や生前の暮らしの様子など
住宅に移った。部屋は狭く、喜一さん・
で立派な本人尋問を終えた。相手側被
て!﹂と司会者に促されると、ほぼ全
員が青のカードを上げていた。
には、どうしたらいいのだろうか。
れはあきらかに、リスクコミュニケー
と答えが見えてくるかもしれない。ま
についての質問があり、最初に貴明さ
栄子さん・貴明さん・高齢の母シズイさ
﹁ 納 得 で き た 人 は、 青 の カ ー ド を 上 げ
ションという名の﹁洗脳﹂ではないだ
た、これまで行なわれてきた、公害訴
んが答えた。貴明さんは現在は宮城県
告の東電の代理人弁護士、そして裁判
かったのだと思う。
に 辛 く て 苦 し く て、 ど う し よ う も な
一さんは死なずに済んだと思う。本当
ろうか。
訟や原爆被害者の歴史にも学ぶべきだ
んとの生活には不自由したそうだ。
長・ 裁 判 官 2 名 も、 2 人 に 質 問 を し
ト レ ス で、 母 シ ズ イ さ ん は 認 知 症 を 発
貴明さんも、栄子さんも、望むこと
さんの長男である
た。
ば、喜一さんの死が無ければ、貴明さ
症。毎日幾度も﹁いつになったら浪江に
みにしていると、かつて〝原発安全神
んは自動車整備士養成の専門学校に進
話〟にだまされてしまったように、今
は﹁お父さん︵じいちゃん︶は、原発
急に生活環境が変わったことによるス
仙台市で飲食業界の正社員として頑
狙いは何なのか?
こんなシンポジウムを開いて、いっ
たい誰が得をするのか?
帰れるんだ?﹂と聞くので、喜一さんも
事故さえなければ死なずに済んだ。東
その代償を支払うのは、子や孫の世
実の父親を亡くして
りと申し述べていた。
ら い た い!﹂ と、 き っ ぱ
て、 き ち ん と 謝 罪 し て も
電には事故の責任を取っ
苛立って﹁俺だけでももう浪江に帰るか
学するはずだった。
ば く 裁 判 ﹂ の 弁 護 団 の 一 人 ︶ は、﹁ 被
代であることを肝に銘じて、みんなで
い る。 そ の た め、 喜
貴 明 さ ん は 早 く に 喜 一 さ ん・ 栄 子
度は〝放射能安全神話〟にだまされて
ばくに危険がないという社会認識を広
賢くなろうじゃないか。
しまいかねない。
めることは東電だけでなく、原発を推
五十崎さん自死事件裁判を傍聴して
原発事故さえなければ⋮
を楽しんだり、小学校から始めた野球
に﹁ じ い ﹂﹁ た あ ﹂ と 呼 び 合 い、 釣 り
の頼りになる優しい存在だった。互い
た喜一さんだったが、だんだんと口数が
元気を取り戻したかのような気配があっ
なった。二本松市に移ってから、当初は
う。 徘 徊 な ど も 始 ま り、 目 が 離 せ な く
ら!﹂と声を荒げたりの日々だったとい
の貴明さんを息子のように育ててき
一さん・栄子さんは長男を亡くし、孫
てきた気持ちが痛感できた。特に、喜
しても、子どもの成長を楽しみに生き
難者として、また2人の息子の母親と
一さんは貴明さんに
の応援や送迎、中学校・高校の部活の
た。一生懸命仕事をして弁当作りや身
私 は、 同 じ 原 発 事 故 避
応援などに出向き、喜一さんは貴明さ
減り、外出もしなくなったそうだ。それ
の回りの世話など、私以上にご苦労が
んを可愛がり、いつも見守ってくれて
でも、孫の貴明さんが高校生活最後の野
あったものと思うし、その気持ちは察
いたそうだ。
球の大会で先発ピッチャーに選ばれた試
さんとコインランドリーに行き、珍しく
傍聴参加応援を望みます。
ター NO. より転載させていただきました。
*﹁原発事故被害者 相双の会﹂ニュースレ
︵楢葉町からいわき市へ避難中︶
N・K
3月 日、結審する。多くの方々の
たように感じた。
きながら、少し目を潤ませて聞いてい
裁判長も裁判官2名も、時折うなづ
するにあまりある。
生前の喜一さんは、定年後も 歳ま
で働き、友人も多く、浪江町の仲間と
一緒に買い物をした。そして翌日7月
日、喜一さんは栄子
は昔からの趣味。定年後は、毎日畑に
日朝、隣で寝ているはずの喜一さんがい
フィッシングクラブにも参加し、釣り
通い季節の野菜を作っては家族や友人
なかった。車も無かった。栄子さんは気
晴らしにどこかドライブにでも出かけた
に配っていた。震災の年も、新しく作
しみにしていた。
も帰宅せず、心当たりに連絡し、警察に
のだろうと思ったそうだ。しばらくして
地震・津波・原発事故で人生が狂って
も捜索願いを出したが、その日はとうと
それなのに、2011年3月
しまった。避難所でもあまり眠れず落
日の
る野菜用に肥料を買ったり準備して楽
2011年7月
合には、なんとか応援についてきた。
23
週刊誌の記事中でもコメントをくだ
21
進したい勢力にとって好都合だ﹂と述
実はこのシンポジウム、ホームペー
ジ に 堂 々 と﹁ 参 加 す る 専 門 家 の 渡 航
費・交通費は東京電力が福島復興およ
びリスクコミュニケーションの一環と
して負担しています﹂と書いているの
だ。これでは井戸弁護士が指摘するよ
う に、
﹁原発を推進したい勢力にとっ
て都合のよいように進められている﹂
と 思 わ れ て も 仕 方 な い。 あ き ら か な
〝利益相反〟だ。
これほどあからさまなシンポジウ
ム も め ず ら し い が、 今 福 島 県 内 で は、
〝リスコミ〟という名のもとに、﹁汚染
を な か っ た こ と に し よ う ﹂﹁ 東 電 や 政
府の責任をうやむやにしよう﹂として
いるのか、と勘ぐりたくなるような講
演会やシンポジウムが開かれていると
聞く。また、福島県以外でも、幼稚園
に配布されるフリーペーパーや、学校
27
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22
65
11
さ っ た 井 戸 謙 一 弁 護 士︵﹁ 子 ど も 脱 被
歳。原発事故が無けれ
ろう。
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張っている。
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﹁専門家の言うことだから﹂とうの
■原子力情報資料室 http://www.cnic.jp/6317
とっては父親代わり
現在、福島県内の 18 歳以下の子の医療費は「子ども子育て
対策」として無料です。しかし、原発事故から4年が経過して
19 歳以上の人にも甲状腺ガンが見つかっており、その治療費
は大きな負担となっています。
女性会議では8団体(脱原発福島県民会議、双葉地方原発
反対同盟、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、全国
被爆二世団体連絡協議会、反原子力茨城共同行動、原発はごめ
んだ!ヒロシマ市民の会、ヒバク反対キャンペーン)が取り組
む「国の責任において 19 歳以上の甲状腺医療費無料化を求め
る署名」に一緒に取り組んでいます。ぜひ、皆さんのご協力を
お願いします。
詳しくは下記のサイトをご覧ください。署名用紙もあります。
べている。
19 歳以上の甲状腺医療費を無料に!
2
2015 年 3 月 10 日
第 1115 号(第三種郵便物認可)
福島原発事故から
4年
刷り込まれる放射能安全神話