Title Author(s) Citation Issue Date 道の途中で : くだもの 大貫, 惇睦 大阪大学低温センターだより. 163 P.21-P.22 2015-01 Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/11094/51262 DOI Rights Osaka University 談話室 道の途中で ―くだもの― 琉球大学理学部 大貫 惇睦* おいしいくだものと言えば桃、なし、柿、…と続々と名前があげられます。これらのくだものは 本土では馴染みのものですが、沖縄ではスーパー以外では見かけません。沖縄のおいしいくだもの と言えば、特に宮古が力を入れているマンゴーではないでしょうか。7月が最盛期で、冷やして食 べると、脂肪を含んだような甘さに思わず南国を感じます。マンゴーのおいしさを更に煮詰めてい くとくだものの王様、ドリアンにたどりつきます。 環太平洋物理学会に招待されてマレーシアを訪れたとき、ドリアンを初めて食べました。旅行ガ イドブックにヤシの実やドリアンが紹介されていたからです。でも,何か今一つそのおいしさが分 かりませんでした。その後、理学研究科物理学専攻の先生方と留学生の受け入れで、ベトナムを訪 れる機会に恵まれました。くだものの王様と言うからにはきっとおいしいに違いないと思い、最後 に訪問したダナン大学のソン先生にお頼みしてみました。市場に連れていっていただき、道路沿い に山と積まれた中から、ソン先生はこれはと思うドリアンを数個選びました。ソン先生は私のかつ ての研究室のお隣りの邑瀬研で学位を取られた方で、流暢な日本語で これなら間違いありません と断定され、他の奇妙なくだものも5種類ほど選んでくれました。ホテルでこれらのくだものを私 は夢中になって食べました。やはりドリアンは最高においしいくだものでした。種にまとわりつい たねっとりとした甘みは何とも言えません。腹一杯食べ終えた頃には、あたりに夕やみが訪れてい ました。ホテルが港に位置していたので、行き交う舟の音が耳に心地良く、窓から入ってくる風に 吹かれ、うとうとと眠りに落ちました。 さて、果たしてくだものと言って良いのか分かりませんが、パッションフルーツというものがあ ります。私の実家は栃木県の鹿沼市です。今から7年ぐらい前のことですが、暮れに帰ったときに 馴染みの床屋に行きました。その床屋は道路沿いで陽当たりの良いところにあります。座席横に盆 栽があり、つるが巻きつき、何と5個ぐらい卵の大きさの青い実がぶら下がっていました。初めて 見るものでした。床屋のご主人の話では、南国のものだが部屋の中で育てられるとのことで、挿し 木で増やしたものがありますのであげましょうということになり、一本の苗木を大阪に持ち帰るこ とになったのです。植木鉢を部屋の窓際において育てることにしました。春になると、芽というか 蔓の先がどんどん伸び、その行き先に困り果て、天井の電燈に向かって2本のひもを張りました。 すると、蔓の先端はそれに巻き付き、1ヶ月のうちに電燈の近くに到達しました。深夜に蔓の先端 を見ると、何やら動いているのです。そーっと360 回転してあたりを探っているのです。それを 見たとき何やら恐ろしくなってしまいました。季節が暖かくなっていたこともあり、心臓にも良く *大阪大学名誉教授 ― 21 ― ないので、ベランダに出しました。その頃、ベランダにはガジュマルなどもあり、その脇において 見守りました。大阪の冬はそれほど寒くないので、ガジュマルなどと一緒に冬を越し、翌年の初夏 に3個実がなりました。その後、退官とともに、それらのガジュマルやパッションフルーツ等は友 人にもらっていただきました。ただし、パッションフルーツの小枝を3本ほど挿し木にしておいた ので、それを沖縄に持って行きました。そして、小さい庭に植えたのです。ふるさとの土に戻った ためなのか、その中の1本がどんどん伸び、近くの木の上に張りついて、さらに屋根に向かって伸 びて行きました。3年目の夏には、7月初めから10月まで熟したら食べと、合計200個ぐらい家内 と食べたでしょうか。10月に来た大型台風ではほとんどの葉がちぎられ、同時に60個ぐらいの実 が落ちました。現在根元の幹の太さは7cm ぐらいです。 さて、パッションフルーツの実をどうやって食べるかですが、ドリアンとは全く異質なもので、 それほどおいしいと言う訳ではありません。あるホテルに泊まった時の朝食のデザートでは、真っ 二つに切られ、中の実をスプーンでそのまま食べるというものでした。暑い沖縄ですので、冷やさ れるとおいしく感じます。家内が仕入れてきた食べ方は、サイダーに入れて飲むと言うものでした。 どうもこれが良いようです。パッションフルーツを入れるとサイダーの甘みも感じ、何やら元気が 出てくるように思えるのです。 パッションフルーツ ― 22 ―
© Copyright 2024 ExpyDoc