著者と編集者から読者へ: 『経済学小説』を真に役立てるために

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著 者 と編 集 者 から読 者 へ:
『経 済 学 小 説 』を真 に役 立 てるために
た ち の く
著 者 口 上 :編 集 者 の 立 退 君 のおかげで、私 が準 備 した 12 の原 稿 (小 説 と
いってよいものかどうかわからないが…)に立 派 な解 題 が加 わった。また、立 退 君
は、さらに奮 闘 して、番 外 篇 に 6 つもの小 説 をあらたに書 き下 ろしてくれた。いった
んは、本 書 の編 集 を放 棄 した私 も、あらためて校 正 ゲラを読 んでみて、いろいろと
感 じるところがあった。そこで、私 自 身 の書 き下 ろし一 篇 を、読 者 から「蛇 足 !」
とのそしりを受 けることを覚 悟 して、ここに加 えてみたいと思 う。
たかが本 だとしても、というか、されど本 であるからこそ、読 者 は、これから読 もうと
する本 に対 して、あるいは、あやまってすでに読 んでしまった本 に対 して、「役 に立
つ」感 覚 を求 めるのだと思 う。それが、読 者 の性 であろう。
この最 後 の小 篇 では、ここまで本 書 を読 んできたことが、「なるほど、こんなふう
に役 に立 つのか」と感 じてもらえるようなものにしたいと思 っている。本 書 の小 説 群
で、あるいは、それに対 応 する解 題 で述 べられていたことが頭 の片 隅 に残 ってい
た読 者 に、「なるほど、あそこに書 いてあったことだな、これは…」とニンマリしてもらえ
るような、そんな素 材 を求 めていた。
そんなおりに、2015 年 3 月 4 日 の日 本 経 済 新 聞 朝 刊 に岩 本 康 志 先 生 が
寄 稿 した論 考 「賃 上 げ 2 巡 目 の論 点
『官 製 春 闘 』、経 済 攪 乱 も」を読 む機
会 を得 た。そこで考 察 されていたトピックスは、そうした素 材 にぴったりのものであっ
た。よって、「賃 上 げ」をテーマとしたい。
戸独楽戸伊佐
( To i s a T O K O M A )
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編 集 者 口 上 :校 了 間 際 になって、戸 独 楽 先 生 から、「賃 上 げとは?:ある左 派
政 党 幹 部 の鬱 病 (?)」という原 稿 (心 情 としては、玉 稿 とはいいたくない…)が
編 集 部 に送 られてきた。正 直 なところ、迷 惑 千 万 だった。しかし、先 生 の「『経
済 学 小 説 』を真 に役 立 てるために」という強 い(というか、わがままな)希 望 を入
れて、弊 社 としても、読 者 の便 宜 を深 慮 して、先 生 から唐 突 に送 られてきた玉
稿 、いや、単 なる原 稿 を、仕 方 なくというか、やけっぱちに、本 書 の最 後 の方 に
無 理 矢 理 押 し込 めることにした。しかし、先 生 からのぶしつけで急 な申 し入 れとい
うこともあって、校 正 の不 備 が多 々あると思 われる。その辺 は、読 者 の寛 容 を乞
う次 第 である。
立退矢園
( Ya s o n o T A C H I N O K U )
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