新保育制度について 新たな保育実践にむけての考察 2015.3.11 遠藤清

新保育制度について
新たな保育実践にむけての考察
2015.3.11 遠藤清賢
2015 年 4 月より新しい保育制度が始まります。すべての子どもたちが利用する施設
はこの制度によって具体的な施設運営を行うことになります。現状では今までの幼稚園、
保育園として運営する施設と新しい認定子ども園に移行した施設とが混在しています。
移行についてはそれぞれの施設の判断に任せられているように見えますが、実際は徐々
に新しい幼保連携型認定子ども園に移行せざるを得なくなるのだと思います。現実的に
は幼稚園とは保育園とはという議論をする段階は過ぎ去ったということです。新しい子
ども達の成長を支える施設としての認定こども園はいかにあるべきなのかという議論
に移行しなければならないと思います。しかし、当然、幼稚園、保育園の良さを見直し、
それぞれの課題に向き合いながら子ども達の成長を支えるより良い施設の有り方を、新
しい保育制度を実践しながら議論しなければなりません。
施設経営の視点から見れば幼保連携型認定子ども園に移行する方が断然に有利であ
ることは明白です。その理由として、保護者の就労状況に関係なく子ども達を受け入れ
ることができること。1 号認定の保育給付が高額に設定されていること。事業ごとに給
付が設定されていること。教育的な対応、養護的な対応をバランスよく提供できること。
他の関連施設との連携のための給付が受けられること。送迎バスを使用できること。利
用者との直接契約ができることも利点として掲げられると思います。今までの幼稚園や
保育園と比較すると子ども達の対応内容が豊富になり、それに従って職員が増員され、
給付が増額します。これを対応が複雑化し、事務作業が増え対応が面倒になると考えて
しまえばそれだけのことですが、施設としてさらに内容を拡大し、質を高め、子ども達
の成長を支えて行くと考えるなら移行すべきなのだと私は思います。
今次点で子ども達の受け入れが定められた定員を満たすのなら、移行は急いだ方が良
いかもしれません。遅くても 5 年以内には実施した方が良いと私は考えます。ただし日
本経済がこの状況を継続していることが条件になると思います。経済状況が悪化すれば、
この社会保障制度は見直さなければならないでしょう。それと子どもたちが少なくなり
その地域の子ども達の人数が、受け入れる施設の定員を割ってしまう状況になったら、
移行することのメリットはないかもしれません。そのような地域は今の制度では経営が
不可能であり、その場合は子どもたちの施設は必要がないという制度になっています。
すなわち、経営のできない地域での 3 歳以上の保育施設は簡単に淘汰されてしまう制度
になっています。具体的な利益が得られ経営のできるところがこの制度の恩恵に預かる
という制度設計になっているのだと思います。多数のための制度であるし、少数は切り
捨ててしまう制度のように見えます。この部分が大きな課題でもあります。ですから施
設の存続を願うのであれば、移行するのは遅くとも 5 年以内に、出来るだけ早く移行す
べきという結論になったのです。
私たちの社会は少子化に向かっています。極端な少子化になる前に幼保連携型認定こ
ども園としての施設基盤をしっかり確立して置くことが大切であると思います。施設基
盤とは、当然のことですが、養護と教育のバランスのとれた、表裏一体の子ども達への
対応です。そして、地域社会と施設利用者からの信頼を得るということです。表面だけ
の良さというのではなく施設職員の就労条件、内容も問われるということです。職員も
施設理念を中心として子ども達の成長を支えるという意識を確認しながら保育を行う
ことを喜び、使命感をもって働くことのできる施設環境を構築することです。そして少
なくとも減価償却分の積立ができれば良いのだと思います。良い保育、教育を行うため
には個人としての質の高い高度な保育技術が求められますが、そうではなくとも、たと
え一般的な普通の保育技術であったとしてもそれぞれの職員の意識と協力関係がしっ
かりしていれば、より良い子ども達の成長を期待できると私は確信しています。
日本では乳幼児を含めた子どもの保育、教育を資本主義経済の枠組みの中に組み込ま
れています。この枠の中でなければ成り立たない制度なのですが、これでは経済状況に
よって、保育や教育は大きな影響を受けてしまうことになります。景気が好調の時はい
いのですが、景気が悪化すると全ての社会保障制度はすぐに低下してしまうのです。こ
の点に大きな不安を感じています。未来のより良い社会を考えるなら、今の子ども達の
ための保育と教育を基盤とした社会の仕組みが不可欠であることは誰であっても理解
できると思います。しかし、現状は景気によって保育、教育は浮き沈みがあるのです。
現在の資本主義社会の仕組みは限界にきてしまっているということです。経済成長路
線を永遠に続けることは不可能です。成長するための原材料や燃料が枯渇してしまいま
した。そして燃料を供給することができなくなりつつあります。新たな経済の仕組みを
考えなければ、この国は破綻してしまう危険性があるということです。この新しい保育
制度は残念ながら、資本主義を念頭に置いている制度だと思います。できなら経済の良
し悪しに影響されない保育、教育制度を構築しなければならないと思いますが、これを
考える頭脳を私は持ち合わせていません。これはなかなか難しい事なのでしょうか。今
希望することはこの子ども達の成長を支える仕組みを国民全体が支え、国民全体が子ど
も達のより良い成長を人間社会の未来にとって不可欠であることを確認し意識できる
社会になればもっと素晴らしい社会になると思います。そのような社会を目指して私た
ちは保育者として働きたいと思います。