「アップとルーズで伝える」【H26 山本実践】

「提案読み」への第一歩
1
~筆者の説明方法を吟味することをとおして~
実践の概要
〇使用教材:
「アップとルーズで伝える」(光村図書・4年下)
〇実施時期(総時数)
:12月上旬(3時間)
〇目標:筆者の説明方法の工夫を読むことができる。
支援の視点
2
(1)
筆者を意識するための工夫
(2)
説明内容と説明方法をつなぎ、筆者の工夫に気付く工夫
実践の実際
【第1時の学びにおける、支援の成果と課題】
単元始めの感想を交流する際「筆者:中谷日出さんの説明文はわかりやすいかどうか」を観点として
示しました。この支援により、筆者を意識して説明的な文章を読み、身近な文章として捉えることがで
きました。
(1)筆者を意識するための工夫
①筆者を想定した発問をする
単元始めに、一読して、説明的文章の特徴について確認をし合った後「中谷さんが書いた『アップ
とルーズで伝える』は、読んでみてわかりやすかったですか。
」と問うと、ほとんどの子どもは「わか
りやすかった」と答え、一部の子どもは「少しわかりにくかった」と語りました。根拠を問うと「わ
かりやすい」と答えた子は「アップとルーズを比べて説明している」
「伝えられる、伝えられないを分
けて書いてある」からわかりやすいとし「わかりにくい」と答えた子は「七段落と八段落がこの『ア
ップとルーズ』に関係していないことが書いてある」からわかりにくいとしました。感想の差異から、
筆者が本当にそのように書いているのか(確かめる)
、筆者がなぜそのように書いているのか(筆者の
思い)課題意識をもっていました。
◎筆者を想定して発問することで、感想とその根拠について
・本当にその内容について書いているのか
・本当にその表現について書いているのか
・本当にその構成で書かれているのか
という筆者の説明方法を確かめて読もうとする意欲を喚起することができたのです。
【第2・3時の学びにおける、支援の成果と課題】
わかりやすいと答えた子の「アップとルーズを比べて説明している」という発言をもとに、比べ方を
音読や板書で可視化する支援により、筆者の伝えたいことを明確にできました。
(2)説明内容と説明方法をつなぎ、筆者の工夫に気付く工夫
①何がどこに書いてあるか可視化する音読活動を設定する
前時の学習で、四段落にはアップの伝えられることと伝えられないこと、五段落にはルーズの伝え
られることと伝えられないことが書いてあることを確認していました。四段落と五段落の役割を読み
取っていた子どもたちは、他の段落にアップとルーズのことがどう書いてあるのか考えようとしてい
ました。そこで、各段落でアップのことが書いているところは、立って音読し、ルーズのことが書い
ているところは、座って音読するよう促しました。すると、一段落のルーズのところで、立って音読
している子と、座って音読している子がいたため、それぞれの根拠を問いました。
②挿絵と本文とを対応させる板書をする(色分けし、線でつなぐ)
【色分けし、線でつないだ板書】
①の支援により、二段落で、
「中央に立って」ということ
を説明する子がいました。その説明に対して、なぜその言
葉がアップの説明になるのかというおたずねが出ました。
そこで、答える子が、挿絵を指さしながら説明をしたため、
「(指さしながら)ここ(中央に立って:叙述)の場面は、
ここ(挿絵)のことということかな」と問い返しました。
子どもが納得したので、叙述と挿絵を線でつなぎました。
すると、だから、アップのことなのか、と納得したり、一段落がアップかルーズかで迷っていた子が、
これはやっぱりルーズだ!と考えを深めたりする姿が見られました。
③表現の工夫がわかる板書をする(表現に線を引いたり、〇で囲んだりする)
【線を引いたり、〇で囲んだりした叙述カード】
①の支援により、一段落で座って音読していた子が説明
する際、発言に合わせて、青色で線を引いたり、〇で囲ん
だりしました。すると「全体」ということは、五段落にル
ーズで伝えられることが書いてあったから、ルーズのこと
だ!と叙述と叙述とを関連付けて発言したり、全体がわか
るのだから、広い範囲がとれるルーズのことだと経験から
発言したりする姿が見られました。
④筆者の工夫が見える化するように板書する
【筆者の工夫が見えるようにした板書】
子どもが挙げた「アップとルーズを比べて書
いている」という筆者の工夫に合わせて、アッ
プとルーズを対比させて板書しました。すると、
一段落と二段落が対応していて、それを三段落
でつないで、アップとルーズの違いを問い、四
段落と五段落が対応していて、六段落でまとめ
ている、だからわかりやすかったのか、と筆者の説明方法の工夫を感じる姿が見られました。また、七、
八段落の役割を考えた3時の始めはそれぞれの段落はまとめの役割をしているけども、七八段落の違い
が明確になりませんでした。その時、
「七段落はいらんのじゃない?」というつぶやきが聞こえました。
そこで、その発言をひろい、全体に意見を問いました。すると、たしかに、七段落は紹介のような感じ
…あまり重要ではないという意見が出ました。しかし、筆者は何のために書いたのかという意識があっ
たため、役割を考えようとする姿が見られました。最終的に、六段落の「テレビでは」、七段落の「写真
にも」
「新聞を見ると」
、八段落ではアップとルーズで伝えることのまとめが書いているとまとめた子の
意見が浸透しました。
このように、何がどこに書いてあるか可視化することにより、筆者の伝えたいことや伝え方が明確に
なることがわかりました。一方、読むだけでなく、より筆者の書きぶりのよさを実感するためには、限
られた時数の中でも、書く活動を盛り込む必要があると感じています。