考えるに 歩野 タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト http://pdfnovels.net/ 注意事項 このPDFファイルは﹁小説家になろう﹂で掲載中の小説を﹁タ テ書き小説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。 この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また は﹁小説家になろう﹂および﹁タテ書き小説ネット﹂を運営するヒ ナプロジェクトに無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範 囲を超える形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致し ます。小説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。 ︻小説タイトル︼ 考えるに ︻Nコード︼ N4139BP ︻作者名︼ 歩野 ︻あらすじ︼ 昔やっていたHPから張り付けたもの。なので考え方が若いなあ と思う所や語気が尖っている個所がありますが敢えてそのまま載せ ています。 1 愛 愛について語るほど物事をわかってはいない。あのゲーテをして 男は四十にして本当の愛を知る、と言わしめたのだ。俺のような若 造にわかる訳がない。 しかし俺なりに考えてみる。 愛は長くもって三年だと言われるが、あながち間違いではないだ ろう。 恋愛感情を抱くという事は、良い意味で精神状態が尋常ではなく なっているのだ。 残念ながら人間は恐ろしいほどに何事にも順応してしまう。いつ までも異常な精神状態が続くはずがない。 根本的に愛とはなんぞや。 恋は自分の欲求を優先し、愛は相手の欲求を優先させる。つまり 愛とは、自己犠牲を強いて相手の為に尽くすという事になるらしい。 難しい話である。 人間は己の欲望の為にしか動かないと俺は思っている。誤解のな いように言っておくが、自分さえ良ければいいという人もいれば、 人の役に立つことで喜びを感じる人もいる。 その人間の欲望がなんなのか、これが問題である。当然、世の中 いい人ばかりではない。しかし一時的にしろ愛と思える行動をとる。 なぜか? 精神状態が尋常ではなくなっているからである。 2 男と女の性 さが 生物の本能は子孫繁栄である。 さが オスの性は自分の種を残すことであり︵故に浮気をする男は圧倒 的に多い︶メスの性は子供を守ることにある︵子供には無償の愛を 注ぐが、旦那はどうでもよくなる︶ それをお互いの理性と妥協でなんとかやっていくものだと思う。 ついでに書くと、オスは子孫を残す使命が本能に刷り込まれてい るので、多くのメスとセックスしようとする。精子の数も多いし。 一方、女性は卵子の数が少ないので自分の理想とする精子だけを欲 する。この点で男と女のセックスに対する意識はだいぶ違うようだ。 3 結婚 結婚は勢いでするものだと言われるが、これは正しいと思う。 年齢を重ねた者は、勢いがなくなっているのに加え、分別がつい ている事で簡単には結婚に踏み込まない。 多くの男を見て感じるのだが、性欲と愛情を履き違えている者が 非常に多い。 これは断言できる。 性欲という下卑たものを、無意識のうちに愛情という高貴な響き のものと摩り替えているのだ。 もっとも性欲を否定はしない。フロイトによれば性欲は生の原動 力になっているのだから。 個人的に、結婚に良いイメージを持っていない。バックグラウン ドの違う二人が一緒に暮らすのだから難しいのは当たり前である。 それは毎年の離婚件数が如実に物語っている。 では良い結婚をするにはどうしたらよいか。 恋愛感情が冷めた後でも良きパートナーとしてやっていけるかと いうのを客観的に見る必要があると思う。 結婚について、ことわざ事典より抜粋 ︱ 片目をつぶって相手を見ることだ ︱ 人生の墓場だ ︱ ねずみ取りと一緒だ。入る前は入りたくてしょうがないが、 一旦入ってしまうと出たくてしょうがない ︱ 人間は判断力の欠如で結婚し、忍耐力の欠如で離婚し、記憶 力の欠如で再婚する ︱ 結婚をカネの為にする事ほど汚いことはないが、恋愛の為に する事ほど愚かな事はない 4 5 人間の体 ﹃象の時間、アリの時間﹄によれば、体重六十キロの生物の寿命は 約三十年である。実際、縄文時代の平均寿命は三十歳だったそうだ。 そう言われると、女の生理が十代前半に始まり、男の精力のピー クが十代後半である事実に納得がいく。 しかし現在では、医療の進歩で平均寿命が八十歳前後まで延びて いる。 性欲から早く開放されたいという思いもあるが、平均寿命に合わ せて男の性欲のピークもずれて欲しい、と思ったりもする。 仮にそんな事になっても無理があるかもしれないが。 というのも年齢と共に理性が発達するからだ。 本能と理性は逆行するもの。 性欲という本能は理性の発達により押さえ込まれていくのだ。 難しい問題だな。 誰か痺れるような答えを聞かせてくれ。 6 宗教 人が宗教を持つのは理解に易しい。 頼る物があると精神が安定するからだ。精神が安定すれば、何事 も良い方向に進む。 しかし俺は神のいる宗教を信じることができない。 歴史を見ても今の世の中を見ても、神がいるとは思えないからだ。 仮に神が存在するとしたら、そんな神などクソくらえだ。偽善とし か思えない。 俺が認めるのは仏教だけである︵新興宗教は認めないが︶ ニーチェは仏教を衛生的な宗教だと書いていたが、さすがにいい 事をいう。 仏教には絶対唯一の神がおらず、宗教というより哲学なのだ。そ の奥は深い。 かといって、坊主になる気はさらさらない。俺が坊主になること は、漱石が書いた小説の主人公と同じになることだからだ。 時には何かに縋りつきたくもなるが、そんな自分を嫌悪し、精一 杯自分に突っ張っている。 7 時代 人類の歴史は戦争の歴史である。太古の部族間の争いに始まり、 軍隊を編成しての戦となり、ついにはボタン一つで何百万人が死ぬ ところまできた。 暴力による戦争は一応の終焉を迎えつつある。 代わってやってきたのが経済戦争である。 いつの時代になるかは解らぬが、経済戦争もいずれ終わるだろう。 二十世紀に入り、人類はもの凄い勢いで進歩した。技術も、文化 も。それは異常ともおもえるスピードである。ライト兄弟の初飛行 が、二十世紀に入ってからの出来事なのだから。 人類が異常なスピードで進歩した為、今あらゆる面でその歪が噴 出している。倫理観、環境問題はその最たる物だろう。 これだけ技術や文化が進歩しても、人間の本能は原始時代のまま である。 もし、技術や文化に比例して理性が発達していたら、あらゆる戦 争がなくなっているだろう。 考えてみてくれ。地球は全人類を潤すだけの資源を持っている。 しかし地球の片隅では、飢えに苦しみ餓死する者が今でも後をたた ない。片や一機数十億円もする戦闘機が群れをなしている。 物価が異常に高い日本で、一人が一生をかけて稼ぐお金は二億円 ちょっとである。戦闘機一機で、物価の安い発展途上国の人間が、 何人一生を安泰に暮らせることか。 解決策は、世界中の軍隊を解散し、その軍事費を全人類の福祉に まわせばよいだけの、実に単純明瞭な話だが、そうは問屋が卸さな い。 なぜなら、それは政治だからだ。 世の中は政治で決まるが、その政治を司る人間が、あきれるほど に下劣な人間ばかりなのだ。 8 政治家の過半数がまともな人間になれば、あらゆる問題は解決さ れるだろう。 それが簡単でないのは百も承知だ。 政治すら経済になってしまった今日、そこには莫大な利権が渦巻 いている。 政治家の考える事といったら、利権を守ることばかりだ。 利権を侵そうとする者が現れると、あらゆる手段でつぶしにかか る。かのケネディ兄弟が、アメリカ政府に暗殺されたように。 現状ではどうする事も出来ない社会構造だが、もし日本にまとも な政治家が現れたら、我々有権者が黙殺しないよう心がけようでは ないか。 あらゆることに歪が生じているこの時代。 人類よ、急ぎすぎてはいないか。 今は立ち止まって、考えるべき時代ではないのか。 9 完璧主義者 人生を楽しもうと思ったら完璧なんて目指さないほうがいい。 芸術や文学界の人々は、自分の理想に完璧であろうとする。その 結果は、周知の自殺者数である。 たとえそれが一つの分野であっても完璧にするのは至難の業。こ れが理想とする人間に完璧であろうとすると絶望的である。結末は ヘミングウェイのようにライフル銃で脳味噌を吹き飛ばすしかない。 どこまでも理想を追い求め、それに応える才能と強い精神力を備 えた人間なんて稀有だろう。 なにごとも妥協が大切である。 理想を持たないのは問題だが、妥協を持たないのはもっと問題で ある。坂口安吾が書いたように、堕落することも必要だと思う。 俺のように堕落しきった人間では困るけども。 10 株というシステム 資本主義社会は、株というシステムに支えられている。 株の売買は、まがうかたなきギャンブルである。 つまり資本主義社会は、射幸心を煽られギャンブルをしている者 によって支えられている、という事になる。 変な話である。 株売買の仲介をするのが証券会社。どういうわけだか社会的地位 は高いようだ。 少なくとも日本の証券会社では、売れない株を売りさばく人間が 出世するらしい。 売れない株を売るという事は、客に損をさせるという事である。 うの 値上がりしないであろう株を言葉巧みに売りつける訳だから。 奴らの言い分はこうであろうか。 ﹁自分の情報を持たず、こちらの情報を鵜呑みにするほうが悪いの だ。儲けようと思ったら十分に勉強をして独自の情報網を確立すべ きだ﹂ でもそれって詐欺師の論理じゃないの。騙されるほうが悪いって いうのは。 実際やつらのやっている事は詐欺師と一緒だけどね。 変な世の中である。 何故そういう連中がいい目で見られるのか。ギャンブルは素晴ら しいと誰が評価するのか。 ばっこ 今の世の中、人を信じるなという悲しい常識があるのも、利己主 義者が跋扈するのも、資本主義社会の根本的な部分に問題があるん じゃないの。 もっとも、素晴らしい社会システムができたところでゲスな奴が この世からいなくなるわけではなかろうが。 11 12 権力者︵前書き︶ 森田健作氏が国会議員だった頃に書いたものです。 13 権力者 政・官・財、あらゆる分野において、矛盾と間違いは蔓延してい る。 しかしそれはなかなか正されようとはしない。 権力者どもが、自分が勝ち残ってきた世界を否定しようとはしな いからだ。 奴らは今の地位にしがみついている事が第一である。 大体、権力を志向する奴はゲスが多いからね︵勿論みんなではな い︶ ではそのシステムを健全な物にしようと立ち上がったとする。 例えば、森田健作という正直者がいた。 彼は健全な選挙活動を行い、政治活動を行った。 それはそれで評価する。 しかし彼の行っている事は効果をもたらさない。 そんな真似をしても、権力の中枢に上り詰めることは無理である。 むしろ除外されやすい。 本当に何かを変えようと思ったら、権力を持つか、権力者を説得 しなければならない。 説得する事はあまり考えないほうがいいだろう。ブタになにを言 っても無駄である。権力者になるほうが確実である。 おそらく健全なものを求める者は、ピュアな心の持ち主だと思う。 だが、山腹から湧き出る透水のような心では無理である。海のよう に綺麗な水も濁った水も併せ呑んで、浄化する心の持ち主でないと。 つまり清濁併せ呑む器がないと権力者にはなれない。心が潔癖症 だと初期段階で躓くだろう。 うまくブタどもに合わせながら、良心の呵責に耐え、権力の中枢 に上り詰めた時に、初めてメスをいれなければならない。 残念ながら俺にはその能力も器量もない。ついでに願望もエネル 14 ギーもない。しかも腹黒い。 ただただ素晴らしき権力者が現れるのを待つばかりである。 15 資本主義社会 俺は共産主義者ではない。マルクス論がひとつの理想である事は 認めるが、人間はその理想についていけないのだ。 欲がないと成長しないというのも事実である。それは歴史が証明 してみせた。 しかし政治も戦争も経済となってしまった資本主義社会も考えも のだと思う。 こんな事を書くと、変な宗教に入ってないか? とか、政治団体 に入ってるの? なんて思うかもしれないが、少し考えて欲しい。 世界がもし百人の村だったら、っていう話があるよね。あれを読 んで何も感じないか。 日本はアメリカ同様に恵まれた国だから、ピンとこないのかもし れないが、立場が逆転しても資本主義社会万歳と言えるか。 例えば、一生をかけて稼ぐお金をアフリカの人たちは一年で稼ぐ。 毎日食べていくのがやっと。靴を買うお金もない。子供を学校に通 わせる事も出来ない。しかしアフリカの人達は贅沢をして飽食の限 りを尽くしている。自分達に富やチャンスを与える事もせず、お情 け程度の寄付をしていい気になっている。 そういう状況になっても資本主義社会万歳と言えるか。 その状況からでも這い上がる、なんて口で言うのは簡単だよ。で も万に一つの可能性で這い上がる者は、家を離れ、国を離れ、慣れ ない文化のもとで生活しなければならない。 それでも平気か。 いつの日か、資本主義社会は終焉を迎えると俺は思っている。 それは発展途上国の経済レベルが先進国に近づいた時ではないだ ろうか。 違うかい、アメリカ政府さん。 16 PDF小説ネット発足にあたって http://ncode.syosetu.com/n4139bp/ 考えるに 2013年4月27日03時14分発行 ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。 たんのう 公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、 など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ 行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版 小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流 ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、 PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。 17
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