磁石は水を弾く!? ~反磁性による水の蒸発量の変化~ 文京学院大学女子高等学校 吉田 蒼泉(1 年) 門山 奈緒(1 年) 久保田 智萌(1 年) 担当教員 草薙 美生 「背景」 水は反磁性の物質である。反磁性とは、水に磁石を近づけたとき水の極性は近づけられた磁石の 極性と同じになることである。同極性どうしだと反発するため水に磁石を近づければ、水の蒸発 量に変化が現れるのではないかと疑問に思った。 反磁性とは? S N 水 水 磁場の向き 磁場の向き 近づけると・・・ … S N N S 水 N N S S 水 S 水が S 極に変化する =反発する 水が N 極に変化する =反発する 「目的」 水を吸わせたタオルに磁石を近づけ、蒸発量の変化における反磁性の影響を考察する。 「方法」 ① シャーレの底に極性の向きをそろえた磁石を敷きつめ、その上に水を一定量いれた容器を置 いた装置を(A)とし、磁石使用しない以外そのほかの条件をすべて同じにした装置を(B)とする。 ② 極性での蒸発量の変化をみる (A) と(B)を決めた時間に水の量を測定する。 この実験を数回行い、A、B の水の蒸発量の変化を比較した。 「結果」 今回の実験では装置(B)の水の蒸発量より、(A)装置の水の蒸発量のほうが微量だが多かった。 また、極性の違いによる水の蒸発量の差は、みられなかった。 「今後の展望」 今回は磁力を一定にして測定したが、今後は磁力に変化をつけて蒸発量と磁力の強さの関係を見 ていきたい。 濡れている物を乾かすとき乾燥機など電気を使用するのではなく、磁石の力のみで早く乾かすこ とができる装置を開発していきたい。 物理3-① 浮上式リニアモーターカーの研究 ~僕らのリニアモーターカーを目指して~ 東京都立科学技術高等学校 科学研究部 物理班 齋藤勇太(1 年)、工藤孝文(1 年)、越村佑太(1 年)、金子雅彦先生(担当教員) 1.研究動機 私達は先輩が研究していたリニアモーターカーについて興味をもった。先輩方の研究であ まりやっていなかった浮上式のリニアモーターカーを制作したいと思い、研究を始めた。 2.研究目的 浮上式リニアモーターカーにおける浮上装置を制作する。 3.浮上方式について 私たちは浮上方式としてコイルの磁気の吸引力を用いて車両を浮上させる方式と、永久磁 石を用いて車両の底面と側面で反発させ浮上させる方式の2つの方法を考えた。 4.浮上装置の制作 1.吸引力による浮上装置 電磁石に流す電流を調節して磁力を変化させ、浮上させるために次のことを行う。 ・電磁石の吸引力の測定 自作した電磁石による吸引力を測定し、車両の質量とコイルに流す電流の大きさを 調べる。結果は表 1 に表したとおり、1.0cm で約 2.2A,0.50cm で約 1.2A だった。 今後、arduino を用いた電流の調節をする回路の製作(概略図は図1)を制作し、最 終的には図 2 に表す装置を製作する予定である。 2.反発力による浮上装置 ・永久磁石を用いての車両の浮上 磁石を車両の底面の反発だけで浮上させたが、車両がずれてしまった。 (図3)また、 側面での浮上を試みたが、車両が重くなってしまい、浮上できなかった。今後はより磁 力の強い磁石を用いる予定である。 吸引コイル 車両 表1 5.今後の予定 図1 図2 図3 移動時に浮上装置の磁界が不均一になるため車両が安定しない。これらを解消し、安定走 行できる浮上式リニアモーターカーを制作していきたい。 6.参考文献 磁気浮上制御装置の製作(浜松職業能力開発短期大学校紀要第 16 号) arduino で始める電子工作(工学社:2012) 物理3-② 磁石による運動 茨城県立日立第一高等学校 金川 尚人(2年) 指導教員 関山大志 【はじめに】磁石による永久機関を調べていてやはり永久機関は実現不可能だと思い至った時 に磁石の動きに興味を持ちこのテーマに決定しました。磁石の性質を利用した装置を 作ることを目標にした。 【仮説】磁石の配置の仕方を工夫する事で磁石がある程度自立して動く。 【実験】①磁石の動き方を調べる 磁石の配置によって磁石の動きがどう変化するかを調べる。(この時磁石の極の向きも変える) 写真 1 写真 2 写真 3 磁石の規格(ネオジム磁石) 丸型 10×5θ(㎜) 角型 20×10×5(㎜) 【結果】 (1)写真 1 のように配置した磁石と台車の磁石が引き合うように配置したとき,開けてる側か ら閉じてる側に動き端を少し過ぎた所で止まり少し戻る。 (2)写真 1 のように配置した磁石と台車の磁石が反発するように配置したとき,どちらの端か ら始めても後方に動く、少し内側から始める閉じた側から開けた側に進んだ。 (3)写真 2 のように配置した磁石と台車の磁石が引き合うように配置したとき,端にたどり着 く前に止まった。 (4)写真 2 のように配置した磁石と台車の磁石が反発するように配置したとき,(2)と同じよう になった。 【今後の展望】実験①の結果(1)(2)を用いた装置を作る 物理3-③ ホバークラフトによる地震対策 茨城県立日立第一高等学校 藤田 拓海(2年) 指導教員 関山大志 【はじめに】 東日本大震災によって地震の恐ろしさを思い知り,地震による被害を減らすためにはどの ような手段を取ればよいのか考えた結果,建物を宙に浮かせればよいのではないかという結 論に至った。 【仮説】 地震によって振動するのはあくまで地面であり,地面から建築物へ揺れが伝わることで倒 壊等の被害が発生する。それを防ぐためには地面からの揺れの伝播を防ぐという方法が効率 的であると考えられる。よって,地面と建物との接触面をなくし,宙に浮かべることで揺れ の伝播を防ぐことができるのではないか。 【実験方法】 1.家屋の模型に送風機等を取り付け,ホバークラフト化する。 2.送風機を作動させた状態で揺れを起こしつつ,風を送り込む。 【まとめ】 ホバークラフトの構造を応用した家屋の模型を用いた実験により,一般的な家屋を宙に浮 かせることは可能であり,浮いた状態の場合揺れの影響が格段に減少するということが判明 した。しかし,風による位置ずれの問題や作動中の水道の配管及び電気の配線の問題が残っ ており,実用化のためには解決しなければならない課題が多い。 【今後の課題】 今後の課題は,上記の考えを実用化させるために,ホバークラフトの作動中の風の問題を 解決することと,水道等に悪影響を与えない仕組みを考案することである。 物理3-④ 「かまいたち現象」の検証 茨城県立日立第一高等学校 渡辺莉菜(2年) 担当教員 関山大志 【はじめに】 気づかぬうちに皮膚が裂けてしまう「かまいたち現象」は,様々な説があるが,まだその発 生理由が分かっていない。この実験では,諸説に基づき様々な観点から「かまいたち現象」を 検証する。 実験用の皮膚の代わりに造形用のウレタン樹脂で,人間の腕の皮膚と同程度の硬さと厚さに 調整した「疑似皮膚(疑似的な皮膚)」を作り,それをビーカーに張って使用した。 実験では,①気圧差(真空中で「かまいたち現象」が起こる説) ②静電気(電気によって皮膚が裂けてしまう説) ③衝撃波(落雷や火山噴火時に発生する衝撃波が「かまいたち現象」説) といったそれぞれの条件下で起こる反応を調べた。 【研究内容】 ① 通常状態の空間に置かれた疑似皮膚が真空状態に近づくにつれてどのように変化するのか を調べる。 ② 疑似皮膚に静電気と同程度の電気を流し,その時の疑似皮膚の変化を調べる。 ③ 防音シェルターの中に置いた疑似皮膚に向かって改良したピストルを使って大きな音を鳴 らし,変化を調べる。 排気盤と真空ポンプ 静電気の実験 衝撃波の実験 改良したピストル 様々な実験の結果から「かまいたち現象」は,単に1つの原因によって起こるものではなく, 複数の原因によって起こるものなのではないかと考えている。 【今後の展望】 「かまいたち現象」は信越地方のような寒い場所で起こるといわれている。また,小石が強 風によって飛ばされ皮膚に当たり,その時に生じる切り傷が「かまいたち現象」なのではない かという説もある。そのため,今後行うべき実験は,これら2つの説を合わせるような複合的 な実験であると考える。 物理3-⑤ リフターの原理解明と解析 1年 猿山佳威 3年 東京都立科学技術高等学校 宇津野僚平 長川晃希 担当教員名 金子雅彦 1.目的 ・リフターの浮上原理解明する ・リフターの浮上力向上を図る 2.動機 科学研究部に入部したときリフターが浮上するのを見て、リフターが浮上する仕組 みに興味を持ったから。 3.実験 私たちはリフターが浮上する原理はイオン風説であると仮説を立て研究を行った。イ オン風説を証明するためにリフターの電極付近で空気放電が起きているか調べた。さ らにリフターの電極付近で起きている空気放電は、コロナ放電であると考え、実験を 行った。また、リフターの浮力発生と湿度との関係性を調べるため、湿度を変化させ た実験環境を用意して実験を行った。 4.結果 電極の+、-を入れ替えると電流値上 昇開始電圧に変化がみられる。 湿度が高い方が低いときよりも浮上力が増 加した。 5.考察 リフターの電極の+、-を入れ替えると実験の結果のようになった。この結果は、 コロナ放電の特徴である電極の+、-を入れ替えることによって電流値上昇開始電圧 に変化があるという特徴と同じであるため、リフターの電極付近で発生している空気 放電はコロナ放電である可能性が高いとわかった。 また、リフターの浮力発生と湿度の関係性を調べたところ、湿度が高い方が低いと きよりも浮上力が増加した。湿度が高いと空気中の水分子数が増加するため、コロナ 放電が起こりやすくなるため、リフターの浮上力は増加したと考えられる。 6.今後の予定 ・電極付近、電極間の荷電粒子の分布が重要だと考え、荷電粒子の分布を調べるため にシミュレーションの開発を行う ・リフターの電極付近で放電が起こり始めると微弱な音が確認できた。この音がリフ ターの浮力発生とどのような関係があるのか調べる 7.参考文献 ・『高電圧工学』 安藤晃・犬竹正明 [著] 物理3-⑥ 朝倉書店 ヒカリモ観察用水槽の製作 茨城県立日立第一高等学校 藤咲慧士(2年) 指導教員 関山大志 【動機】 本校付近には,ヒカリモと呼ばれる黄金藻類の一種の群生地がある。しかし,ヒカリモ についてはいまだわかっていないことも多い。そこで,ヒカリモを飼育・観察できるよう な水槽を制作することで,ヒカリモに関する研究をよりやりやすくしようと考えた。 【構想】 ヒカリモは一定の条件下で浮遊相と呼ばれる状態になり,水面に立ち上がることが知ら れている。本校生物部の研究により,ヒカリモがどのような条件下で浮遊相になるのか, ということはある程度分かっている(図1)。今回はそれらの環境条件のうち水温と光に焦 点を当て,最終的にそれらを自動的に管理できるようなシステムを構築することを目指す。 図1.ヒカリモが膜を形成する環境条件 水温(℃) 照度(lx) 光量子束密度 pH (μmol m-2 s-1) 5~20 1500 程度 10~30 6 程度 【製作】 今回の水槽は一辺 10cm のアクリル立方体をベースに,各機能を追加していく形にした。 水槽の冷却にはペルチェ素子を利用した。しかし,ペルチェ素子単体では冷却能力が不足 したので,ファンとヒートシンクを取り付けて,冷却効果の向上を図った。保温・加熱に はセメント抵抗を利用した。また,照明には赤,青,緑の三色の LED を2つ取り付けて, それぞれの強さを変化させることができるようにし,さまざまな強さと色の光をヒカリモ に当てることが出来るようにした。また,冷却・保温の効率化のため,水槽周辺に断熱材 を取り付けた。 【今後】 自動化については,小型コンピュータでシステムを構築することを目指したい。また, 今後は製作した水槽で実際に実験を行いたい。 物理3-⑦ マスカラの秘密~きれいが一日中続く~ 文京学院大学女子高等学校 野上今日子(2 年),初根春菜(2 年)… 岩川暢澄 <背景> 普段使っているマスカラには様々な種類があるが、落ちにくさや見栄えに疑問 を持ったため、化学的に調べてみようと思った。 <目的> 4 種類のマスカラの成分とまつげに塗った際の形状の比較し、どのようなタイプ が落ちにくいマスカラなのかを調べる。 <方法> ① 同じつけまつげを 4 つ用意し、それぞれのマスカラを塗り、乾かした。 ② デジタルマイクロスコープを使って、4つのつけまつげの形状を観察した。(図 1) ③ 4つのつけまつげを約 40℃、5ml のお湯に浸し変化を観察した。 <結果> ① ボリュームマスカラはまつ毛をまとめて固めることによって太くなっていた。ロングマ スカラはマスカラの液に含まれている繊維がまつ毛の先に絡みつき、細く長くなってい た。 ② 4つのマスカラを塗ったつけまつげを約 40℃のお湯に浸したところ、お湯で落ちるマス カラは落ち、ウォータープルーフのマスカラは全く落なかった。 <考察> 結果①より、ボリュームマスカラでまつ毛の間を液で埋めることによりまつ毛の量が増えた ように見えると考えた。またロングマスカラは繊維の形状が細いためまつ毛が長くなると考 えた。また結果②よりお湯で落ちるマスカラとウォータープルーフのマスカラは液の成分が 違うと考えられる。 <結論> 疑問に思っていた4タイプのマスカラの違いがよくわかった。ウォータープルーフのマスカ ラがお湯では落ちないことがわかったことより、普段使用していて少し落ちてしまうのは皮 膚や目から出る人の汗や涙が原因なのではないかと考えられる。今後はウォータープルーフ のマスカラが何が原因で落ちてしまうのかを検証したい。 図 1 つけまつ毛の拡大画像(一部) 物理3-⑧
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