中国・全人代での経済運営方針に注目

Strategy Report
Mitsubishi UFJ Asset Management
中国・全人代での経済運営方針に注目
2015年3月6日
グローバル・マーケット・ストラテジー・チーム
チーフストラテジスト
石金 淳
 中国では、5日から全人代(第12期全国人民代表大会第3回会議)が開催され、李克強首相
は、今年の経済成長率目標を7.0%程度と昨年の7.5%程度から引き下げると発表しました。
 この経済成長率目標の引き下げ等は、中国政府が経済の質的向上のための構造改革を推
進しながら安定成長を持続するという、いわゆる「ニューノーマル(新常態)」を目指す政策ス
タンスを取っていることを改めて強く示したとみています。
 一方、投資の伸び鈍化、消費の新しい機軸の欠如、際立つ生産能力の過剰等からニュー
ノーマルへの移行が決して容易ではないことも示されました。
 しかし、中国政府は取り組むべき問題を明らかにし、改革への強い意欲を示すと同時に、金
融緩和等の景気支援策によって一定水準の経済成長維持を重視する姿勢をとっています。
このため、今後中国では生産設備の調整等の下押し圧力を受けつつも、景気は底堅く推移
し、中国株は比較的堅調に推移する見込みです。
全人代開幕、今年の経済成長目標は7.0%に引き下げ
中国では、5日から首都北京で全人代(第12期全国人民代表大会第3回会議)が開催さ
れ、李克強首相は政府活動報告で、今年の経済成長率目標を7.0%程度と昨年の7.5%程
度から引き下げることを発表しました(昨年の実績は7.4%)。
また、その他の指標の目標は、消費者物価指数が前年比3.0%程度の上昇、マネーサプラ
イ(M2)が同12.0%程度の増加、貿易額(輸出入)が同6.0%程度の増加に設定され、これ
らも昨年から引き下げられました。一方、財政赤字の目標は昨年の対名目GDP(国内総生
産)比2.3%と、昨年の2.1%から引き上げられ、また、都市部新規雇用増加数は1,000万人
以上に設定され、昨年と同水準に据え置かれました。
経済運営に関する目標
実質GDP成長率(前年比)
消費者物価指数(前年比)
マネーサプライ〔 M2〕(前年比)
2014年
7.5%程度
2015年
7.0%程度
3.5%程度
3.0%程度
13.0%程度
12.0%程度
貿易額(前年比)
財政赤字(対名目GDP比) / 対前年増加額
7.5%程度
6.0%程度
2.1% / 1,500億元
2.3% / 2,700億元
都市部新規雇用増加数
1,000万人以上
1,000万人以上
(出所)中国政府の政府活動報告等を基に三菱UFJ投信作成
当資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定
はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前
の連絡なしに変更されることがあります。投資信託は株式、公社債等値動きのある証券に投資しますので、基準価額は変動し
ます。したがって、金融機関の預金とは異なり元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金保険の対象とは
なりません。金融商品取引業者以外でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。本資料は当
社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。
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Mitsubishi UFJ Asset Management
中国政府は経済のニューノーマルに向けた取り組みを本格化
中国政府は、近年、環境汚染・破壊の進展もあって、経済成長パターンを量的・規模的拡
大による投資主導の形態から、資源・エネルギーの利用効率アップや個人消費拡大などを
伴う質的向上が主導する形態へと転換、即ち経済構造改革を目指しています(経済構造改
革には金融自由化や財政・税制・国有企業改革等も含まれる)。
そうしたなか、今回の全人代で経済成長率目標の引き下げ等が打ち出されたことは、経済
の質的向上と構造改革を推進しながら安定成長を持続するという、いわゆる「ニューノーマル
(新常態)」に向けて、中国政府が本格的に取り組み始めたことを強く示唆しているとみていま
す。
改革とともに一定の経済成長も重視する中国政府のスタンスは株価に好影響
一方、李克強首相は、投資の伸び鈍化(不動産市況の足取りの重さはその一端を示す)、
消費の新しい機軸の欠如、技術革新力の不足、際立つ生産能力の過剰等からニューノーマ
ルへの移行が決して容易ではないことにも言及しました。もし、経済構造改革を急ぐあまり、投
資の抑制や過剰設備の廃棄等が急激に推し進められた場合、中国経済の成長率が想定以
上に下がり、雇用等に悪影響が及ぶ恐れが生じると予想されます。
しかしながら、中国政府は最近利下げをはじめとする金融緩和等によって景気支援の姿勢
を鮮明にしつつあります。また、今回の全人代で発表された経済運営に関する目標について
は、一定の財政赤字の拡大(ここでは、財政支出の増加とほぼ同義)やマネーサプライの目
標上振れを容認した項目が盛り込まれています。これらのことを勘案すると、中国政府は改
革推進とともに、安定的な成長持続も重視する姿勢を改めて示したと考えています。
こうしたことから、今後の中国経済は生産設備の調整等の下押し圧力を受けつつも、上記
のような中国政府の姿勢を考慮すると、一定水準の底堅い経済成長が維持されるとみてい
ます。また、紆余曲折はあっても改革が徐々に進展するにつれ、将来的な成長基盤強化へ
の期待が浮上するなか、中国株は比較的堅調に推移する可能性も十分あるとみています。
(%)
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
中国 実質GDP成長率と経済成長目標
実質GDP成長率(前年比)
経済成長目標
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
(出所)中国政府活動報告、Datastream等のデータを基に三菱UFJ投信作成
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
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ます。したがって、金融機関の預金とは異なり元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金保険の対象とは
なりません。金融商品取引業者以外でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。本資料は当
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