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人と柔らかく接しながら力仕事を行なう高機能ロボット | 理化学研究所
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2015年2⽉23⽇
広報活動
プレスリリース(研究成果)
独⽴⾏政法⼈理化学研究所
2015
⼈と柔らかく接しながら⼒仕事を⾏なう⾼機能ロボット
2014
-移乗、起⽴補助などの研究⽤プラットフォーム「ROBEAR」-
2013
2012
この発表資料を分かりやすく解説した「60秒でわかるプレスリリース」もぜひご覧ください。
2011
2010
ポイント
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1998
1997
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イベント/シンポジウム
要旨
理研ブログ
理化学研究所(理研)理研-住友理⼯⼈間共存ロボット連携センター(RSC)ロボット感覚情報研究チームの向井利春チーム
※
リーダーらの研究グループ は、移乗介助や起⽴補助など、⼈との柔らかな接触と⼤きな⼒が必要とされる動きをロボットで
刊⾏物
同時に実現するための研究⽤プラットフォームとして「ROBEAR(ロベア)」を開発しました。
ビデオライブラリー
少⼦⾼齢化社会を迎えたわが国では、介護者不⾜が社会問題化しています。介護の現場ではベッドから⾞椅⼦への移乗などの
情報配信サービス
重労働により、多くの介護⼠が腰痛に悩まされており、ロボット技術による負荷の軽減が求められています。
これまでRSCでは、⼈間のような腕を⽤いて移乗介助を⾏なうロボットとして「RIBA(リーバ)」、「RIBA-II」を開発し
てきました。今回開発したROBEARは、それらの後継機です。ROBEARでは、⼩型化と⾼精度・⾼出⼒を実現するアクチュ
[1]
エータユニット
と、⼈との接触状態を検出するための①ひずみゲージ式の⼒/トルクセンサ、②関節ごとの電流トルク推定
お楽しみコンテンツ
施設⾒学
理研関係者向け
器、③⽪膚に相当するゴム製の触覚センサ(スマートラバーセンサ)の3種類の⼒覚系センサ、さらに⾼出⼒のインピーダン
ス制御
[2]
を採⽤しました。これにより⼤きな⼒を出すと同時に、接触状態に応じた微妙な動作調節や、ロボットの腕で⼈を
挟み込んで保持するような柔らかな動作が可能となりました。また横抱きに加え、⽴っている⼈を両腕で⽀えたり、⽴った姿
勢の⼈を抱きかかえたり、あるいは起⽴を補助するなどの複数の抱き⽅ができます。さらにアクチュエータユニットを中⼼と
動画配信
RIKEN Channel
した設計の⾒直しによって、重量を約140kg(RIBA-IIは約230kg)と⼤幅に軽量化し、 部品点数も約250点(RIBA-IIは約
750点)に減らすことができました。
[3]
これ以外にも、⾞輪アームが伸縮可能で⽀持基底⾯
を変えられる台⾞、距離画像を⽤いた⼈認識、柔軟外装のための切削
加⼯法などの技術も開発して⽤いています。
今回研究グループが開発した技術により、ROBEARでは⼈との柔らかな接触と⼒強い動作が可能になり、⼤幅な軽量化にも
成功しました。今後、介護やリハビリへの応⽤を⽬指し、引き続き当ロボットの研究を⾏っていきます。
※研究グループ
理化学研究所 社会知創成事業 イノベーション推進センター
理研-住友理⼯⼈間共存ロボット連携センター
ロボット感覚情報研究チーム
チームリーダー 向井 利春(むかい としはる)
ロボット制御研究チーム
チームリーダー 鈴⽊ 達也(すずき たつや)
ロボット動作研究チーム
チームリーダー 池浦 良淳(いけうら りょうじゅん)
背景
少⼦⾼齢化社会を迎えたわが国では、⾼齢者の増加に伴い介護者不⾜の問題が深刻化しています。介護者不⾜を補うため、ロ
ボット技術に⼤きな期待が寄せられています。特に、ベッドから⾞椅⼦への移乗は介護者にとって⼤きな負担となっていま
す。介護の現場では、1⽇約40回もの移乗介助を1⼈の介護⼠が⾏っているケースもあり、腰痛の原因にもなっています。
理研-住友理⼯⼈間共存ロボット連携センター(RSC)では2009年に腕を⽤いて移乗介助を⾏えるロボット「RIBA(リー
注1)
バ)」を発表しました
。さらに、重要な要素技術である触覚センサを改良し、ゴム製の触覚センサ(スマートラバーセン
サ)を⽤いて、床からの抱き上げも可能な「RIBA-II」を2011年に発表しました
注2)
。今回開発した「ROBEAR(ロベ
ア)」は、これらの技術を継承しながら、新たに、介護現場でよく⾏われている⽴った姿勢での抱きかかえ、起⽴補助、リハ
ビリなどの動作の実現を⽬標に開発しました。
注1)2009年8⽉27⽇プレスリリース「介護⽀援ロボットRIBA(リーバ)による移乗作業の実現」
注2)2011年8⽉2⽇プレスリリース「床から⾞いすへの抱き上げ移乗ができる介護⽀援ロボット」
研究⼿法と成果
ROBEAR (図1)は、RIBA、RIBA-IIと同様に、⾼出⼒動作が可能なアクチュエータと腕を覆う触覚センサ(スマートラ
バーセンサ)を搭載しており、ロボットに付き添う介護者の判断を触覚センサへの接触を通して取得し、動作を⾏います。
[4]
ROBEARの特徴は、⼈との柔らかな接触と⼤きな⼒を両⽴できることです。低減速⽐
でも⼤きな⼒を出せるアクチュエー
タユニット(図2)と、⼩さな⼒から⼤きな⼒まで多様な状況での検出を可能とする3種類の⼒覚系センサを組み合わせて⽤
いることで、⼈と柔らかく接して、必要に応じて⼤きな⼒を出すことを可能にしました。
アクチュエータユニットは、ACサーボモータ、ギヤ、モータドライバ、制御・通信基板を⼀体化したものです。これまでの
ものに⽐べ、減速⽐が10分の1程度の⾼効率なギヤを⽤いているため、各関節の回転の速さが2.5〜10倍、精度が4〜30倍向
[5]
上し、以前にはなかった、アクチュエータの出⼒側で受けた⼒が⼊⼒側に伝わるバックドライバビリティ
が確保されてい
ます。また、ギヤが密閉されているため安全性と清潔性が向上し、さらに、⼩型化、軽量化、部品点数の削減、静⾳を実現し
ました。
ROBEARは⼈と接しながら動作を⾏なうので、⼒覚系のセンサで⼈との接触状態を検出することが重要です。そこで、①ひ
ずみゲージを⽤いた「6軸⼒/トルクセンサ」、②関節のモータを流れる電流から関節のトルク(ねじりの強さ)を推定する仮
想的なセンサである「電流トルク推定器」、③⽪膚に相当するゴム製の「触覚センサ(スマートラバーセンサ)」の3種類の⼒
覚系センサを採⽤しました。この3種類のセンサの優位性を⽣かし、⾜りない部分を相互補完しながら統合的に使うことで、
⼈と接する時の柔らかさと安全性を確保しています。
両肩に設置した6軸⼒/トルクセンサは、腕に加わる⼒を⼒の⼤きさに関わらず全て検出できますが(図3(a)、(b))、動作時
には慣性⼒の影響を受けてしまいます。また、同時に複数箇所に⼒が加わった時には、それぞれを分離して検出できません。
電流トルク推定器は各関節の動く⽅向のみの⼒を検出するため、腕の先端に⾏くほど検出できる軸数が減ります。また、減速
⽐が⼤きいと摩擦の影響が⼤きくなり腕の根本(肩側)に近づくほど精度が悪くなります。さらに、動作時には動作のための
電流が加わるため、加わっているトルクを正確に知ることができず、⼩さな⼒は検出できません(図3(c))。触覚センサは、
腕の表⾯全てを覆ってはいないので検出できる範囲が限られますが、その範囲内では⼩さな⼒でも検出できます。また、圧⼒
の分布が計測できるので同時に複数箇所に⼒が加わっても分離して検出できます。しかし、⼤きな⼒では出⼒が飽和してしま
います(図3(d))。すべての特徴をまとめたものを表1に⽰します。
それぞれのセンサの具体的な使⽤⽅法として、⼩さな⼒にも反応し、接触位置を取得できる触覚センサを、触覚による動作指
⽰と抱き上げ対象である⼈の位置や体格に応じて⾏う動作修正に⽤いました。また、各関節の動く⽅向の⼒を検出できる電流
トルク推定器を腕の先端部4軸に設置し、電流トルク推定器では検出が難しい腕の根元部の2軸に⼒/トルクセンサを設置する
ことで各関節の柔らかさを実現しています。さらに、複数センサの値を照合し正常動作の確認を⾏えるようにしています。
⼒を調節しながら⾏なう動作の例として、両腕で⼈を⽀えながら⽴たせてソファーから⾞椅⼦に移す様⼦を図4に⽰します。
この動作では、ある程度⾃⼒でも⼒が出せる⼈のサポートを⾏うことを⽬的としています。そのため、⽴ち上がりに必要な⼒
を部分的にロボットの腕でサポートします。この時のサポート割合を⽰すため、⾃⼒で⽴ち上がった時とROBEARのサポー
トで⽴ち上がった時の床に加わる荷重の変化を図5に⽰します。起⽴中の⼒のおよそ半分程度をロボットが担っています。
ROBEARではこれ以外にも、横抱き(図6)や、⽴った姿勢での抱きかかえ(図7)、サポート⽤スリングを使った横抱き
(図8)による移乗も可能です。これらの動作でも、必要に応じて動作調節や柔らかさを⽤いています。また、縦抱きの際に
歩⾏に困難がある⼈のため、⾜置き補助板(図9)も追加できます。
この他にROBEARで開発した技術として、以下のものが挙げられます。
(1) 切削加⼯で製作した柔軟外装
これまで、柔軟で複雑な形状の発泡ウレタン製の外装を作るために⾦型を⽤いてきましたが、⻑い製作⽇数と⾼コストが問題
でした。切削加⼯で外装を作ることができればこれらの問題が解決しますが、従来は柔軟物を精密に加⼯すること、特に表⾯
を滑らかに仕上げることは困難でした。そこで、柔軟物加⼯⽤の切削⼯具を開発し、これを可能にしました。ROBEARの外
装(図10)製作では、切削加⼯後に変形に追従する柔軟性を持つ塗料を塗布する⽅法を⽤いました。
(2) ⽀持基底⾯を変えられる変形台⾞
ロボットの転倒を防ぐためには⽀持基底⾯が⼤きい⽅が望ましいのですが、ドアなど狭い所を通るためにはコンパクトである
ことが求められます。
ROBEARでは、アームの先に⾞輪を付け、アームを伸縮させることで⽀持基底⾯を変えられる台⾞(図11)を製作しまし
た。台⾞の4輪はそれぞれホイールインモータで駆動され、また、独⽴操舵が可能です。この動きの組み合わせで前後進、横
移動、その場回転などの任意の動きや、アームの伸縮を⾏います。
(3) 距離画像を⽤いた⼈の検出
ROBEARの頭部には距離画像センサを備えています。距離画像から、ベッド上で寝ている⼈や座っている⼈を⾒つけ、移動
⽅向と距離を求めることが可能です(図12)。これにより、介護者の指⽰の負担を減らします。
今後の期待
今回研究グループが開発した技術により、⼈との柔らかな接触と⼒強い動作が可能になりました。今後、これらの特性を活か
した新しい柔軟介護やリハビリ応⽤を⽬指し、引き続き当ロボットの研究を⾏っていきます。
発表者
独⽴⾏政法⼈理化学研究所
イノベーション推進センター 理研―住友理⼯⼈間共存ロボット連携センター ロボット感覚情報研究チーム
チームリーダー 向井 利春 (むかい としはる)
報道担当
独⽴⾏政法⼈理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 / Fax: 048-462-4715
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産業利⽤に関するお問い合わせ
独⽴⾏政法⼈理化学研究所 社会知創成事業 連携推進部
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補⾜説明
1. アクチュエータユニット
モータを動かすために必要なモータ、ギヤ、モータドライバ、制御・通信基板を⼀体化したもの。
2. インピーダンス制御
ロボットリンクの動きの柔らかさを表す機械的インピーダンス(慣性、減衰特性、剛性)の望ましい値を設定し、それ
をフィードバック制御により実現する⽅法。
3. ⽀持基底⾯
床と接している部分の⼀番外側を直線で結んだ範囲のこと。重⼼から下ろした垂線と床の交点がこの範囲内に⼊ってい
れば転倒せず、⽴っている状態を維持できる。
4. 減速⽐
モータの回転をギヤなどで減速する際の倍率。減速⽐が⼤きいと⼤きな⼒が出せるが、動きが遅くなる。また、摩擦が
⼤きくなりバックドライバビリティが失われる。
5. バックドライバビリティ
アクチュエータの出⼒側で受けた⼒が⼊⼒側に伝わる性質。ロボットのリンクに外界から加わった⼒がモータに伝わる
ことで、リンクが外界と衝突・接触したときに柔らかさを実現できる。また、モータを流れる電流から外界の⼒を推定
することも可能となる。実現のためには、ギヤの摩擦を低減することが必要。
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図1 ROBEAR
基本仕様:幅800mm、奥⾏き800mm、⾼さ1500mm、重量約140kg。
図2 アクチュエータユニット
2015/02/23 18:16