1 月雇用統計

経済分析レポート
2017 年 3 月 3 日
全6頁
Indicators Update
1 月雇用統計
労働需給はタイトな状況が継続
エコノミック・インテリジェンス・チーム
田中 誠人
エコノミスト 小林 俊介
[要約]

労働力調査によると、2017 年 1 月の完全失業率(季節調整値)は、前月から 0.1%pt
低下し、3.0%となった。失業者数は前月差▲9 万人と 3 ヶ月ぶりに減少した一方、就
業者数は同+5 万人と 2 ヶ月連続で増加した。また、非労働力人口は同+8 万人と 4 ヶ
月ぶりに増加した。

一般職業紹介状況によると、2017 年 1 月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から横
ばいの 1.43 倍となった。一方、新規求人倍率(季節調整値)は前月から 0.06pt 低下し、
2.13 倍となった。1 月の求人倍率の内訳について、求職側を見ると、有効求職者数は前
月比+0.4%と 6 ヶ月ぶりに増加した一方、新規求職申込件数は同▲0.1%と 2 ヶ月ぶり
に減少した。求人側を見ると、有効求人数は同+0.6%と 12 ヶ月連続で増加した一方、
新規求人数は同▲2.9%と 7 ヶ月ぶりに減少した。

先行きの労働需給は、非製造業を中心とする人手不足感の継続を背景に、タイトな状況
が続く見通しである。これは、12 月日銀短観において、雇用人員判断 DI の先行きが非
製造業と中小企業を中心にマイナス幅を拡大させており、企業が人手不足感の強まりを
予想していることからもうかがえる。ただし、ほぼ完全雇用状態に達しているため、就
業者数の増加ペースと失業者数の減少ペースが緩やかなものにとどまることで、完全失
業率の低下速度は鈍化するとみている。
図表 1:雇用関連指標の推移
2016年
8月
労働力調査
完全失業率(季節調整値)
%
一般職業紹介状況
有効求人倍率(季節調整値)
倍
新規求人倍率(季節調整値)
倍
毎月勤労統計
現金給与総額
前年比、%
所定内給与
前年比、%
9月
10月
11月
12月
2017年
1月
3.1
3.0
3.0
3.1
3.1
3.0
1.37
2.07
1.38
2.10
1.40
2.11
1.41
2.15
1.43
2.19
1.43
2.13
0.0
0.3
0.0
0.2
0.1
0.2
0.5
0.4
0.5
0.4
-
(出所)総務省、厚生労働省統計より大和総研作成
株式会社大和総研 丸の内オフィス
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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2017 年 1 月完全失業率:前月から 0.1%pt 低下
労働力調査によると、2017 年 1 月の完全失業率(季節調整値)は、前月から 0.1%pt 低下し、
3.0%となった。失業者数は前月差▲9 万人と 3 ヶ月ぶりに減少した一方、就業者数は同+5 万
人と 2 ヶ月連続で増加した。また、非労働力人口は同+8 万人と 4 ヶ月ぶりに増加した。労働需
給の引き締まりが続いていることが示された結果であり、良好な結果であったと評価できよう。
図表 2:就業者数・完全失業率、失業率の要因分解
失業率の要因分解
就業者数・完全失業率
6,550
6,500
(%)
(万人)
就業者数
6.0
完全失業率
(右軸)
0.4
5.5
0.2
5.0
-0.2
0.0
6,450
6,400
-0.4
4.5
6,350
4.0
6,300
3.5
6,250
6,200
0.6
(前月差、%pt)
3.0
200506 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17(年)
-0.6
-0.8
1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 (月)
15
16
17(年)
就業者要因
15歳以上人口要因
非労働力人口要因
失業率
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
産業別就業者数:
「建設業」
、
「卸売業、小売業」が大幅増
就業者数の動きを産業別に見ると(大和総研による季節調整値)、
「建設業」
(前月差+17 万人)、
「卸売業、小売業」
(同+17 万人)、
「不動産業、物品賃貸業」
(同+7 万人)、
「生活関連サービス
業、娯楽業」
(同+6 万人)、
「教育、学習支援業」
(同+5 万人)などが増加した。建設業は 3 ヶ
月連続の増加となった。同産業の先行きについては、2016 年 10 月に政府が策定した大型景気対
策の顕在化によって就業者数が増加することが期待される。卸売業、小売業は 4 ヶ月連続の増
加となった。商業販売額は緩やかな増加基調をたどっており、同産業の労働需要が高まってい
ることが背景にあると考えられる。
一方、「サービス業(他に分類されないもの)」
(前月差▲11 万人)、「製造業」(同▲9 万人)、
「情報通信業」
(同▲5 万人)、
「金融業、保険業」
(同▲5 万人)などは減少した。サービス業(他
に分類されないもの)は 2 ヶ月ぶりの減少となったが、12 月に同+16 万人と大幅に増加した反
動の影響があるとみられる。製造業は 3 ヶ月連続の減少となった。鉱工業生産は持ち直しの動
きが見られるものの、就業者数の増加にはつながっていない。
3/6
男女別就業者数:女性の就業者数は趨勢的に増加
就業者数の動きを男女別に見ると、男性は前月差▲1 万人と 2 ヶ月ぶりに減少した。男性の就
業者数はここ数年では横ばい圏で推移している。一方、女性は同+4 万人と 2 ヶ月連続で増加し
た。女性の就業者数はここ数年では増加基調で推移している。男女ともに生産年齢人口は趨勢
的に減少しているものの、高齢者および女性の労働参加率が上昇していることが、就業者数の
増加に寄与したとみられる。今後、
「働き方改革」の推進で長時間労働の是正など労働環境の改
善が進めば、育児や介護との両立が可能になることで、さらに労働参加率が上昇し、就業者数
の増加に繋がる可能性がある。
また、雇用者数の変化を雇用形態別に要因分解すると、2016 年初頃から女性の非正規雇用者
数は横ばい圏で推移している一方、女性の正規雇用者数が増加している。人手不足感の強まり
に対し、非正規雇用だけでは対応しきれず、企業が非正規社員の正規化や正規雇用の拡大に積
極的になっている可能性がある。
図表 3:男女別就業者数・完全失業率
男性
3,800
女性
(%)
(万人)
6.0 2,850
就業者数
完全失業率
(右軸)
3,750
3,650
6.0
5.5
5.5
2,800
5.0
3,700
(%)
(万人)
完全失業率
(右軸)
就業者数
4.5 2,750
4.5
4.0
4.0
2,700
3.5
3,600
3.0
3,550
5.0
3.5
2,650
3.0
2.5 2,600
2.5
200506 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17(年)
200506 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17(年)
(注)季節調整値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
図表 4:雇用者数の要因分解
男性
女性
(累積変化、累積寄与度、%、%pt)
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
(累積変化、累積寄与度、%、%pt)
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
-2.0
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1(月)
2013
14
15
正規雇用者要因
(注)季節調整は大和総研。
(出所)総務省統計より大和総研作成
16
-4.0
17(年)
非正規雇用者要因
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1(月)
2013
14
その他要因
15
雇用者数
16
(年)
17
4/6
2017 年 1 月有効求人倍率:前月から横ばい
一般職業紹介状況によると、2017 年 1 月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から横ばいの
1.43 倍となった。一方、新規求人倍率(季節調整値)は前月から 0.06pt 低下し、2.13 倍とな
った。今月は足踏みが見られたものの、有効求人倍率、新規求人倍率はともに高い水準で推移
しており、労働需給はタイトな状況にあると評価できる。
また、正社員の有効求人倍率(季節調整値)は前月から横ばいの 0.92 倍となった。ただし、
均してみれば、正社員の有効求人倍率も改善が続いている。
1 月の求人倍率の内訳について、求職側を見ると、有効求職者数は前月比+0.4%と 6 ヶ月ぶ
りに増加した一方、新規求職申込件数は同▲0.1%と 2 ヶ月ぶりに減少した。均してみれば、有
効求職者数、新規求職申込件数はともに減少基調が続いている。求人側を見ると、有効求人数
は同+0.6%と 12 ヶ月連続で増加した一方、新規求人数は同▲2.9%と 7 ヶ月ぶりに減少した。
均してみれば、有効求人数、新規求人数はともに増加基調が続いている。
図表 5:有効求人倍率と新規求人倍率、求人倍率の内訳
有効求人倍率と新規求人倍率
2.5
求人倍率の内訳
(万人)
100
(倍)
(万人)
310
290
90
2.0
270
250
80
1.5
230
70
210
1.0
190
60
0.5
170
150
50
130
0.0
40
90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(年)
有効求人倍率
新規求人倍率
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
110
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
(年)
新規求人数
新規求職申込件数
有効求人数(右軸)
有効求職者数(右軸)
5/6
先行きの労働需給はタイトな状況が続く
先行きの労働需給は、非製造業を中心とする人手不足感の継続を背景に、タイトな状況が続
く見通しである。これは、12 月日銀短観において、雇用人員判断 DI の先行きが非製造業と中小
企業を中心にマイナス幅を拡大させており、企業が人手不足感の強まりを予想していることか
らもうかがえる。ただし、ほぼ完全雇用状態に達しているため、就業者数の増加ペースと失業
者数の減少ペースが緩やかなものにとどまることで、完全失業率の低下速度は鈍化するとみて
いる。
春季労使交渉の行方に注目
先行きの賃金を占うにあたり、春季労使交渉の行方に注目したい。2017 年の春季労使交渉に
ついて、安倍首相は 2016 年 11 月の第 3 回働き方改革実現会議で「少なくとも今年(筆者注:
2016 年)並みの水準の賃上げを期待しています」と、2016 年並みの賃上げを要請した。これに
対し、経団連は年収ベースでの賃上げには前向きな姿勢を見せているものの、ベースアップに
は慎重姿勢を示している。安倍首相の求める 2016 年並みの賃上げを達成できるかが注目点とな
ろう。
図表 6:賃上げ率の推移
2.5
(%)
2.38
2.4
2.3
2.19
2.2
2.1
2.14
2.06
2.01
1.99
2.0
1.87
1.9
1.83 1.82 1.83
1.79
1.8
1.66
1.7
1.63
1.67
1.78 1.80
1.71
1.6
1.5
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
6/6
雇用・所得概況
有効求人倍率と雇用人員判断DI
完全失業率と欠員率
(%)
6.0
1.6
5.5
(DI)
(倍)
1.4
-30
-20
5.0
1.2
4.5
4.0
1.0
3.5
0.8
3.0
-10
0
0.6
10
2.5
0.4
2.0
20
0.2
1.5
1.0
0.0
94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
(年)
失業率
2000
02
04
06
有効求人倍率
欠員率
08
10
12
30
16 (年)
14
雇用判断DI(全規模全産業、右軸)
(注1)欠員率=(有効求人数-就職件数)/(雇用者数+有効求人数-就職件数) (注)白抜きは雇用人員判断DIの「先行き」。
(注2)2011年3月~8月は補完推計値。
(出所)厚生労働省、日本銀行、総務省統計より大和総研作成
(出所)総務省統計、厚生労働省統計より大和総研作成
求職理由別失業者数
年齢階級別完全失業率
(前年差、万人)
(%)
20
12
10
10
0
8
-10
-20
6
-30
4
-40
-50
2
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1
2012
0
200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17(年)
15~24歳
25~34歳
35~44歳
45~54歳
55~64歳
65歳~
(注)2011年3月~8月は補完推計値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
(前年比、%、%pt)
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1.0
-1.2
-1.4
2
1
0
-1
-2
-3
1 3 5 7 9 111 3 5 7 9 111 3 5 7 9 111 3 5 7 9 111 3 5 7 9 11
所定内給与
定年・契約満了
学卒未就職
失業者数
15
勤め先事情
収入
16
17
(月)
(年)
自己都合
その他
所定内給与の要因分解
3
13
14
(出所)総務省統計より大和総研作成
現金給与総額の要因分解
2012
13
14
所定外給与
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
15
特別給与
16
(月)
(年)
現金給与総額
(前年比、%、%pt)
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11
(月)
2012
13
14
15
16
(年)
一般
パート
パート比率
(出所)厚生労働省統計より大和総研作成
所定内