赤身肉ががんの原因となる可能性 WHOが発表

赤身肉ががんの原因となる可能性 WHO が発表
WHO の研究機関により赤身肉および加工肉とがんとの関係が確認されたという
世界がん研究基金は 2011 年、赤身肉および加工肉が大腸がんリスクを高めることを証明する強い根拠の存在
を結論付けた。PHOTO: ASSOCIATED PRESS
By KELSEY GEE And SHIRLEY S. WANG
Oct. 26, 2015 7:48 a.m. ET
赤身肉と加工肉ががんを引き起こす可能性のあることが WHO の研究機関によって発表さ
れ、食肉産業界からは科学的根拠が不十分として怒りの声が噴出している。
国際がん研究機関(IARC)の研究者パネルが月曜日に発表した結論によれば、サラミやベー
コンと言った加工肉製品には発がん性があり、たばこの煙やディーゼルエンジン排ガスと
同様の最も高いレベルのカテゴリーに分類されるという。
また、ステーキやローストなどの生肉に関しては、がんを引き起こす可能性があるとし
て、広く使用されているグリホセート除草剤と同じ発がんリスクカテゴリーに分類され
た。
発がんの原因を示す証拠を評価する権威である IARC は、肉の過剰摂取と、世界で 3 番目
に発生の多い大腸がんの発病との間には関連があるとする強力な証拠の存在を結論付けた
研究をその論拠とした。
「説明のつかない偶然や偏見、混同も発生するが、多くのデータと、様々な人種を対象と
した研究群に共通してみられる、大腸がんと加工肉の消費との一貫した関連性に基づい
て、作業部隊の多くが、加工肉の消費によるヒトへの発がん性を示す十分な根拠があると
結論付けた」と Lancet Oncology に発表されたレポートには記載されていた。
著者はレポート内で、加工肉の発がんリスクカテゴリー判定は、加工肉の消費と大腸・胃
がんとの関連を示す根拠に基づいており、また赤身肉のカテゴリー判定も大腸・膵臓・前
立腺のがんに関与している可能性に基づいたものであると述べている。
IARC によるレポートでは、有識者委員会による従前の推奨を正しいものとして認めてい
る。世界がん研究基金は、2011 年に赤身肉・加工肉のいずれもが大腸がんのリスクを高め
ることを示す強い根拠があると結論付けており、牛肉、豚肉、ラム肉のような肉の摂取を
週 500g 以下にとどめ、またハムやサラミのような加工肉はできるだけ摂取しないように推
奨している。
IARC のレポートには関与していないニューヨーク大学の栄養・食物研究・公衆衛生学の教
授である Marion Nestle 氏は、E メールの中で、「がんとの関連性は、説得力の高まりつつ
ある研究によって支持されている。気候変動など、牛肉の消費を減らすべき理由はたくさ
んあるが、がんというのはより個人的な心配事といえよう」と述べた。
10 か国から集まった科学者らで構成される 22 名のパネルによって示された結果には、肉の
摂取による利点についての研究に資金を投じ、そのような結論が出ることに長年備えてき
た食肉・食品関連業者や団体から、すでに批判の声が寄せられている。
「IARC の結論は、常識と、肉とがんとの関係性を全く示していない多くの研究、および肉
を含むバランスの取れた食物の摂取による健康への多くの好影響について示したその他の
研究を否定するものである」と、タイソン・フーズ社や JBS USA 社、ブラジルの大手食肉
パッカーの JBS SA 社などといった食肉メーカーを代表し、ロビー活動などを行う北米食肉
協会(NAMI)ワシントングループはコメントしている。
「古く、説得力のない、一貫性に欠けた、自己申告制の摂取データであるにもかかわら
ず、IARC の会合では多くのパネリストらがそこから一定の結果を導くことに必死であった
ことは明白だ。彼らは特定の結論を導くためにデータをゆがめたのだ。」と NAMI の科学
部門ヴァイス・プレジデントの Betsy Booren 氏は声明を発表している。
食肉業界は国内外の医療当局と、バランスの取れた食事における肉の立ち位置について、
また最近では、USDA と保健福祉省が定める、アメリカ国民の食事に関するガイドライン
(各機関の栄養教育及び食に関する補助プログラムのベンチマークとなるもの)をめぐって、
長きにわたる戦いを繰り広げてきた。
環境、動物福祉、公衆衛生などに関連する団体らは、消費者に向け、健康と環境に与える
影響を根拠に、肉を食べないようにメッセージを長い間発信してきたが、一方で食肉関連
企業は主食としての良い面―タンパクやビタミン、鉄分などの成分など―を訴えてきた。
全米肉牛生産者協会のヒトの健康部門ディレクターShalene McNeill 氏は 10 月にフランスの
リヨンで開催された研究者会議で立会人を務めた。
McNeil 博士は、「証拠の大部分は観察研究であり、結果に寄与するような他の要因(運動や
喫煙、その他、日常生活を構成するもの)のもつれを解く能力には欠ける。がんは深刻な疾
患で、軽視したくはないが、『関連性』は『原因』ではない。」とし、肉を食べることと
がんとの関係は他の要因にも影響を受けうることを説明した。
また、栄養士である同氏は、牛肉業界が費用の一部を負った最近の研究を挙げた。この研
究では肉とがんとの関連性を支持する証拠の力が弱まっていることを結論付けている。ま
た、McNeil 博士は、食事から肉を排除することで、『意図しない結果』を招く可能性があ
ると言った。「食事を減らしたからと言って、人は必ずしもそれをブロッコリーで補わな
い。」
アメリカがん協会の疫学部門ヴァイス・プレジデントである Susan Gapstur 氏は、アトラン
タに拠点を置く彼らもまた、他のタイプのがんとの関連性を示す証拠はより限られている
と認識しながらも、大腸がんとの関連性に基づいて、アメリカ人にそれらの肉の摂取を制
限するよう勧めているとコメントしている。
食肉協会のトップである Barry Carpenter 氏は、「ヒトの健康に単純にリスクアセスメント
を適用することはできない。なぜならそれは健康というパズルの 1 ピースだけを見ている
ようなものだからだ。リスクとメリットとを併せて検討しなければならない。」と述べ
た。
また、消費者に肉の消費を最低限にとどめるべきと推奨している公益科学センターの栄養
ディレクター、Bonnie Liebman 氏はこう述べている。「がんとの関連性において、科学が
決定的であることを食肉業界に説得できる団体は存在しない。なぜなら、攻撃にさらされ
ている業界は、証拠に対して疑問をぶつけてくるものだからだ。」
―了―