2015 年度 早稲田大学 法学部 (日本史) 解答解説

2015 年度 早稲田大学 法学部 (日本史) 解答解説
Ⅰ
解答
1=渤海
2=い
3=大極殿
4=お
5=お
6=あ
7=い
8=藤原広嗣
9=う
10=下野薬師寺
解説
《平城京の時代》
平城京の時代の政治・文化を題材にした大問である。長屋王の邸宅跡から出土した約3万 5000 点の木簡など、
最近の発掘や研究などの話題に関連した出題といえる。5が少々迷うだろうが、その他の設問は基本知識で解け
るから高得点が可能である。
2.木簡は国・郡の地方官衙や寺院など全国から出ている。
3.内裏・大極殿・朝堂院の区別は確実に理解してほしい。
4.法華寺の地はもと藤原不比等邸であり、娘の光明皇后がこれ寺院としたのが始まり。
5.い・う・えは正文と判断できるだろうが、受験生に「伝路」は聞きなれないであろうから、あとおで迷った
であろう。官道は国家が管理・修造する道路で、駅路とそれ以外の伝路があった。駅路は中央と地方を結び、
伝路は各郡家間などを結ぶ地方の道で、国司・郡司によって管理された。難問である。
Ⅱ
解答
1=閑院宮家
2=本末制度
3=い・お
4=う・お
5=定免法
6=あ・う
7=え
8=棒手振
9=中井竹山
10=あ
解説
《江戸時代の村落・都市》
江戸時代の身分社会をテーマにした大問である。
3.あ.近世後期になると名主を入れ札で選ぶ村も増えてきたが、常ではない。う.原則は米納である。え.集
落を中心に配置。
4.早稲田大学頻出の年代配列問題であるが、おの上げ米の制は「廃止」(1731)に注意してほしい。
「え→う→
い→お→あ」の順になる。
6.いの町人地と武家地の面積、うの「土蔵造」の知識が少々細かいが、
「2つ選べ」なので消去法を使って正
答を絞り込もう。町人地には江戸の人口の半分である約 50 万の人々が暮らしていたが、その面積は武家地の
およそ5分の1程度であった。
8.「天秤棒で担いで売り歩いた商人」といえば受験生は「振売」と答えるであろうが、漢字3字の指定がある
ため別名の「棒手振」と記述しなければならない。
9.
「中井竹山」は少々細かいかもしれないが、早稲田大学志望者であれば正答してほしい。
10.い.『仮名手本忠臣蔵』は竹田出雲の作品。う.
『春色梅児誉美』は為永春水の作品。え.『浮世風呂』は式
亭三馬の作品。お.「人情本」の第一人者といえば為永春水である。山東京伝は洒落本・黄表紙の作家。文化
史は人物と作品の暗記にとどまらず、内容まで理解しておいてほしい。
Ⅲ
解答
1=紀元節
2=う
3=う・お
4=坪内逍遙
5=え
6=北清事変
7=あ・お
8=い
9=お
10=え
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解説
《明治時代の政治・外交》 史料:ある法学者の妻の日記
史料(法学者穂積陳重に嫁いだ渋沢栄一の長女歌子の日記)を用いた明治時代の政治・外交史。①~⑧の史料
は年代順に並んでいないことと、史料文自体にヒントが少ないので、設問の文章と合わせて内容・時期を判断す
る能力が必要である。この問題に限らず、未見史料の場合は設問自体にヒントあることが多いので、まずは設問
(小問)から解いてみよう。それでも対処ができなければ、史料からキーワードを探す、それでもだめなら、読解
する。これが解法の手順である。
2.下線aの「宣戦詔勅」とはどの戦争を指すのか。設問の選択肢の「ロシア」や「日本海海戦」などから「日
露戦争」と判断できる。あ・い.宣戦の詔勅は満州がロシア領になってしまうことを警戒している。え.当時
の総理大臣は桂太郎である。お.日本海海戦は翌年(1905 年5月)である。
3.朝鮮国王(高宗)がロシア公使館に移ったのは閔妃殺害事件後(1896 年)であることを思いだせば、あ・い・
えが誤文だとわかる。
4.
「坪内逍遙」は早稲田大学教授である。関係者・出身者を出題する早稲田大学の一例である。
5.えはロシアではなくイギリスが正しい。
6.下線eの「我兵」とは日本兵であるから、
「北京に入り、公使以下無事なりとの公報」は、義和団が北京の
列国公使館を襲撃したことから発展した「北清事変」
(漢字4字もヒント)についてだと判断できる。
7.史料⑥は「9月5日」や「国民大会」「内務大臣官舎国民新聞社等に暴民襲撃」などから、ポーツマス条約
調印当日におこった日比谷焼打ち事件についてだと判断できる。あ.当時の勧業は農商務省の管轄。お.米騒
動では戒厳令(行政戒厳)は出されていない。
8.史料⑦の「東郷大将を始め凱旋の海軍将校方を招待し祝賀の宴開かるる由」から、日露戦争終戦直後の 1905
年と判断できる。選択肢で 1905 年はいのみである。
9.
「海軍大臣の演説」とは樺山資紀の蛮勇演説のこと。第1次松方正義内閣の第二議会の出来事である。
Ⅳ
解答
1=川路利良
2=治安警察
3=あ・う
4=特別高等
5=い
6=え・お
7=公安
8=自治体警察
9=あ・お
10=う
解説
《近現代の治安・警察制度》
近代から戦後の治安・警察制度をテーマにした大問である。2015 年は地下鉄サリン事件(1995 年)から 20 年
の節目にあたることや、特定秘密保護法施行(2014 年)などの話題から関連して出題されたと思われる。戦後史
の場合、現代の時事的な政治・社会情勢などに関連するテーマも出題されるので、普段からニュースなどに関心
を持ちつつ学習を進めてほしい。
3.あ「大杉栄」
・う「堺利彦」は、赤旗事件で有罪となって獄中にいたため大逆事件への連座を免れた。お「菅
野スガ」の「菅」は「管」の誤植。
5.他の選択肢が細かな内容であっても、いの「治安維持法」は 1922 年の時点では成立していないので(1925
年成立)誤りの文章と判断できる。
6.難問。いの「大正刑事訴訟法」は聞きなれないだろう。刑事訴訟法は 1890 年に治罪法を改訂して公布・施
行されたもので、1922 年にはドイツ法系の影響を受けた刑事訴訟法に改正された。これが大正刑事訴訟法であ
る。さらに、戦後の 1948 年に現行の刑事訴訟法に改正された。
7.難問。
「公安委員会」は警察の民主的・中立的管理を目的として 1947 年の警察法で設置された。
8.1947 年公布の警察法(1948 年施行)で「自治体警察」と「国家地方警察」の2本立ての警察制度が定めら
れたが、1954 年の改正で都道府県警察に一本化された(→設問6の選択肢うは誤文)
。
10.下線eの警察官職務執行法の改正案は岸信介内閣により提出されたが、
「デートもできない警職法」などと
揶揄され、社会党・総評などの反対運動が高まり、撤回に追い込まれた。うの「造船疑獄事件」は第5次吉田
茂内閣のときである。
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