14 神奈川県 南足柄市立北足柄小学校 6年 大野 藍丸

平成 26 年度「土砂災害防止に関する絵画・作文」作文小学生の部 優秀賞(事務次官賞)
「広島」
おおの
らん まる
神奈川県 南足柄市立北足柄小学校 6年 大野 藍丸
「広島で大規ぼな土砂くずれ、死傷者・行方不明者多数」8月 20 日、朝。まだ終わらない宿題をやろうか
やめようか、考えながらテレビをつけたぼくの目に飛び込んだ映像は、あまりに悲さんなものだった。割れる
ようにくずれた山。あふれ出る茶色い水。流されつぶれた家や車は、ありえない方向を向きどろにうもれて
いる。家にめりこむ大きすぎる岩が、おそろしさを増す。そこに映し出される全てのものが、茶色くどろにま
みれていた。ぼくは、「広島」というテレビの文字に、ドキッとした。今年の3月までお世話になったじゅくの先
生が、広島に引っこしていたからだ。でも、この地区ではないことがわかって、ホッとした。先生が無事なら、
良かったと思った。『良かった?』一しゅん、良かったと思ったぼくだったけれど、本当に良かったのか。今、
目の前で救助にあたっている方々がたくさんいる。まだ、行方のわからない方々がたくさんいる。必死にさ
がす家族たちがたくさんいる。『良くない。』全然良くないじゃないか。ぼくはきっと、自分には関係のないこ
とだと思っていたのかもしれない。知っている人ではないからいいや、と思ってしまったのかもしれない。1
つの命を救おうと、ギリギリまで手を伸ばすいくつものたましいに、ぼくは気迫と信念を感じ命の大切さを教
わった。
なぜ、土砂災害が起きたのか。この地区の地質は、「広島花こう岩」といわれる岩石からできている。広島
かこう岩は長い間、雨や風にさらされると砂のような、「まさ土」へと変化する。まさ土は、水分を含むと強度
が一気に落ちるといわれている。このような地質でありながら、山を切り開きしゃ面直下や谷の出口付近ま
で宅地開発をしてきたことや、水路の整備が不十分であったことも、土砂災害を起こした要因の1つだそう
だ。その他にも、気象条件や未明という時間帯であったこと、ひなんかん告がおくれたことなど、いくつもの
条件が重なったことも原因の1つだそうだ。
では、なぜひなんかん告はおくれたのか。今の時代は、けい帯やパソコンで何でも知ることができる。情
報はあふれているはずなのに、なぜあの日、もっと早くひなんかん告は出なかったのか。過去にも土砂災
害にみまわれていたのなら、地質・気象、条件が重なったときに起こる悲劇は、予測することができたので
はないだろうか。
なぜ、起きたのか。なぜ、あの日だったのか。なぜあの場所だったのか。悲しい災害が起こるたびにぼく
は、「自分の命は、自分で守るもの」と教わる。ひ害にあった方々が、自分たちの命をぎせいにして、ぼくた
ちに教えてくれているのだ。そんな命の忠告を、遠くはなれたぼくたちは、案外甘くみているのかもしれな
い。なぜあの日、あの場所で起きなければならなかったのか。そんなことは、誰にもわからない。「可能性」
を「現実」として、考えていなかったのかもしれない。早いひなんをしていたとしたら、助かる命は確かにあっ
た。しかし、責任がどこにあるのかを探すことを、ぎせいになった方々が望んでいるだろうか。ぼくはそれより
もきっと、これから先もそこに暮らす大切な家族や友達が、もう二度とこんなに悲しい思いをすることなく安
心して暮らしていける町作りを望んでいると思う。
命の忠告を、もう二度と無だにしてはならない。だからといって、ひなんかん告を出せばいいというもので
はない。いつ、どこへ、誰と、どうやってひなんするのか。体の不自由な人やお年寄りはどうしたらいいのか。
赤ん坊や小さな子をもつ家庭はどうしたらいいのか。身重な人はどうしたらいいのか。移動手段のない人は
どうしたらいいのか。「危ないのでひなんしてください。」と言うだけなら誰でも言える。みんなが安心して暮
らせるように、一こくも早い対策が必要だと思った。
少しでも早くこの地区に笑顔が戻ることを、ぼくはいのっています。