カタクリは寒い地方の植物です。千葉はカタクリが分布できる限界(南限)にあたります。昔 氷河期で地球全体が寒かったとき、カタクリは北から南へ分布を広げていきました。 カタクリ(ユリ科の多年草) 再び暖かくなると、“落葉樹に覆われていて、春に光が当り、夏から秋は涼しい丘陵などの北 斜面で、水のある場所にあったもの”だけが生き残りました。つまり 千葉のカタクリは“氷河 期の忘れ物”なのです。 1本の雌しべがある。花芯に カタクリの生活にとって一番重要なのは、早春の陽光です。木々が葉を茂らせるまでの 2~3 ヶ月の間に 1 年分の養分を貯えなくてはなりません。他の植物が休眠している早春に芽を出し、 日の光を独り占めして地下の鱗茎に養分を蓄えるのです。 6 枚の花弁、6 本の雄しべ, W型の蜜標(ガイドマーク) があり、昆虫に蜜のありかを 教える。 カタクリの蜜標 けれど、枯れ葉が積もったままだったり、アズマネザサが茂り放題になると、カタクリの種子 は積もった落ち葉の上でひからびて、発芽しても葉をのばすことができないまま死んでしまった りします。最近は昔のように堆肥にするために雑木林の落ち葉かきをすることもなくなり、カタ クリには厳しい環境の生育地が増えてきています。 千葉のカタクリは、生育環境が厳しいだけでなく、人の手入れが欠かせない“里山の植物”と して危機にさらされています。幸い、夏に比較的涼しい泉公園では、落ち葉かきや下刈りをするよう になってその数が増えてきており、珍しい白いカタクリも毎年数輪の花が咲くようになりました。 5月に種が落ちる 白花のカタクリ ↑種子を運ぶアリ 種子にはアリが好む物質 (エライオソーム)が付着 カタクリの一生 し、アリが巣穴付近まで運 ぶので、泉公園では斜面の 上部までカタクリが増え ている。 花・実をつけて養分を とられてしまうと、暑 くて呼吸消費量が多い 千葉あたりでは、毎年 は花をつけないものが 多い。 5月に種が 落ちる 種は次の年の春、松葉のような葉を伸ばして光合 毎年少しずつ大きな葉をつけ、養分を貯える。早くて 成をする。鱗茎に養分を貯めて2週間ほどで枯れ、 7年目、概ね 10 年程たってやっと花をつける株にな その次の年になって丸い葉を出す。 る。花がつく株には必ず 2 枚の葉がある。 (出典:2003 泉自然公園ガイドブック)
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