フィッシュアナライザの測定原理について魚用品質状態判別装置 DFA100「フィッシュアナライザ」は、生体電気インピーダンス法を用いて脂肪の測定を行っています。電気には、水分を多く含む組織には流れやすく、逆に水分を含まない組織には流れにくいという特性があり、水分をほとんど含まない脂肪に対しては高い抵抗性を示します。この特性を利用して、体内に微弱な電気を流した際のインピーダンス値（抵抗値）より組成を分析する方法が生体電気インピーダンス法であり、フィッシュアナライザが脂肪を分析するための基礎原理となります。図 1. 体内の電流経路について（上段）筋肉細胞は水分が多いため、筋肉が多ければ電気はスムーズに流れます。（下段）脂肪は電気を通さないので電気の流れは迂回し、電気は流れにくくなります。また、フィッシュアナライザは電気の流し方にも特徴があり、複数の周波数にて電気を流すことで、脂肪以外の組織の情報（主に筋肉量を細胞外液量）も把握し、これらの情報も同時に分析することで、さらに脂肪率算出精度を高めています。魚もヒトと同様に細胞の集合により体を形成していますが、この細胞が電流経路に大きな影響を与えています。細胞の表面を覆っている細胞膜には電気容量がありますので、周波数を変えることで細胞内に電流を流すことが可能になります。具体的には、低い周波数で電気を流した場合、細胞膜に蓄えられた電荷は消失してしまいますので、細胞は絶縁体のままで電気は主に細胞の外を流れ、逆に高い周波数で電気を流した場合、細胞膜に蓄えられた電荷は消失せずに内部を通過することができますので、細胞内にも電流が流れるようになります。このように、電気の流れ方を変え、細胞内外の状況から脂肪を分析することもフィッシュアナライザの大きな特徴となります。図 2. 周波数毎の電流経路について同じ筋肉細胞でも低い周波数では電気は細胞の外を流れ、高い周波数では細胞の中を流れます。大和製衡株式会社自動一般機器事業部一般機器開発課〒673-8688 兵庫県明石市茶園場町 5-22 TEL (078)918-5545 FAX (078)918-5562 尚、一度、冷凍して再び解凍した場合や腐敗が進んだ場合などは細胞膜の破壊が進むため、周波数毎の差が見られなくなります。この現象を利用して、フィッシュアナライザでは解凍品の見極めを行っていますが、一方で正確な脂肪率の測定が行えないのも事実であります。従って、フィシュアナライザで正確な脂肪率を測定できるのは鮮魚のみとなります。その他、フィッシュアナライザは、装置の構造として下部に 4 つの電極を配置しています。外側が電気を流す電流極で、内側が電圧を検出する電圧極です。生体電気インピーダンス法には主に 2 電極法と 4 電極法があり、2 電極法は左右それぞれの電流極と電圧極をひとつにした構造で、測定物との接触部の影響を大きく受けることから表皮の測定に優れているとされています。一方、4 電極法は電流極と電圧極を分けた構造で、電気の流れ始めの影響を除去できることから、身体内部の測定に優れているとされています。魚は表面が湿っている状態で測りますので、表面の影響を大きく受けてしまうと、脂肪が多い魚でも電気が流れやすいと判断され、正確な測定が行えません。そのため、フィッシュアナライザでは 4 電極法を採用し、身体内部のみを測定するようにしています。尚、基本的に内部の測定範囲は電圧間の距離分に相当しますので、フィッシュアナライザの場合、電圧間距離が 3cm であることから、表面から約 3cm の深さまで測定していることになります。一方、イワシやサンマのように厚さが 3cm もない魚種の場合、この電極配置では正確な測定が行えない可能性があります。そのため、アジを含めこれらの 3 魚種を測定する場合は、電圧間距離が 1cm のアタッチメントを装着して測定することになります。図 3. フィッシュアナライザの電極構造（4 電極法）最後に、生体電気インピーダンス法は迅速且つ安定して測定できる方法ですが、一方で測定に際し注意しなければならない点もあります。インピーダンス値が脂肪量以外に影響を受ける要因として、体内水分量変化、血流変化、体温変化、形状変化などが上げられます。特に、魚の死後すぐはこれらの影響を受けるため、正確な測定が行えない場合があります。従って、正確な測定を行うためには、死後 4 時間程度は氷蔵で保存し、その後、翌日までを目処に測定を行うようにしてください。また、フィッシュアナライザは魚体の一部分から全体を測定する局所測定法を採用しています。従って、電極を当てる位置によって脂肪率が変化する場合がありますので、所定の位置に電極を当てた上、測定を行うようにしてください。以上大和製衡株式会社自動一般機器事業部一般機器開発課〒673-8688 兵庫県明石市茶園場町 5-22 TEL (078)918-5545 FAX (078)918-5562