全体講評 論述力や文章力はあるのですが、医療費の財源問題にしてもTPPにしても、現状の分析だけで終わってい ます。例えば財源不足解決のために国や利用者、企業はどのような手段を講じる必要があるか、自分は混合医 療について賛成か反対かなど、それぞれの問題について自分はどう考えるかという部分が見えません。職場の リーダーに昇格するという試験の性格から考えても、現状分析だけに終わらせず、自分なりの意見や解決策を 提示していく姿勢が求められます。 このように一つの問題についてしっかりと意見を深めて書こうとすれば字数的にも足りなくなりますので、 取り上げる問題は、財源問題一つに絞ってもよいと思います。 次に気になるのは冒頭の前置き的な部分の長さです。第一段落から第二段落の中頃までは本論に入るまでの 前置き的な要素です。10 ページくらい分量がある論文ならば、このような書き出しから始めてもよいと思い ますが、今回は原稿用紙 2 枚程度の小論文ですから、早めに本論に入ってください。冒頭から「日本の現在の 医療制度が抱えている最大の問題は医療の増大である」と、いきなり本論に入ってもよいと思います。 最後の段落の結論の部分ですが、それまでの議論を受けたものになっていません。 「得意先の質問に答えられる」 「安定供給に応えられる」などの表現が唐突でとってつけたような印象を与えます。設問は、 「現在の医療問題と改 革について述べよ」と指示しているのですから、例えば「以上のような改革を日本の医療制度において早急に進め ていくべきである」など、小論文全体の流れを踏まえたものにしてください。 小論文は「○○の問題に対して私はこう考える。こういう意見だ。 」というように、自分の主張を相手に伝えるた めの文章です。そのことを意識して書くようにしてください。 論述力(40) B 説得力(30) C 独創性(30) 合計点(100) C 60 合格目標点 70 書きなおす上での注意点 それではどのような流れで答案を構成すればよいか一例をあげてみます。 第一段落…本題から入り医療における問題点を一つに絞って指摘する ・日本の医療が抱える最大の問題は医療費の急増。 ・平成24年度で40兆円弱。毎年1兆円前後も伸びている ・医療費を支えるのは保険料、税金、窓口負担。しかし赤字になる健保が続出し、国の財政も大赤字となって いる状況では改革はさけられない。 第二段落…問題はどこにあるのか、原因を分析する ・医療費が急騰しているのは高齢者の増加が最大要因。65歳以上の高齢者は人口の25%を占めるが、医療 費では50%以上を占める。今後も高齢化率は進みこのままいくと50年後には40%に達するとみられる。 ・問題を先送りしてきたことも大きい。 70-74歳の医療費の窓口負担は2006年に1割から2割に引き上げが決定。しかし、高齢者の反発を 恐れ凍結。そのために必要な費用2000億円は毎年税金で穴埋め。解決策を探さず借金による一時しのぎで やりすごした。 第三段落…どのような改革が必要なのか ・高齢者にも応分の負担をしてもらうことは避けられない。医療費1割負担は引き上げる。 ・医療費の一部は税金が賄っている。消費増税も避けられない。 ・医療費削減のため予防医療の推進。ジェネリック薬品の推進。 第四段落…先送りをせず解決する ・史上まれにみる高齢化で日本の医療費は今後も国民の大きな負担となる。財源不足は借金による先送りでは なく、保険料の値上げ、増税によって賄うしかないのは誰の目にも明らか。他方、予防医療や、ジェネリック の普及によって医療費を抑制する努力も不可欠。国民全体が現実から目をそむけず医療改革に乗り出さなけれ ばならない。
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