【事例】金型内情報直接計測による品質管理

特集
ダイカストにおける「可視化」最新技術
事例 10
金型内情報直接計測による品質管理
㈱ダイレクト 21 長 澤
ダイカストは、溶湯金属を凝固する前に強制的にし
理*
まず①は、これまではダイカストマシンの高速速度
かも瞬時にキャビティに充填させ加圧する必要があり、 が最も重要視され品質管理の項目に取り入れているが、
早すぎればバリが出て生産に支障をきたし、遅ければ
主役は溶湯であり、これが急冷される充填時間と充填
凝固が進行し製品不良となる。特にアルミダイカスト
されてから溶湯に圧力をかけ、圧力が上がるまでの昇
の不良率はほかの産業機械と比較すると非常に多く、
圧時間の管理を優先順位として上げる必要性がある。
品質管理が難しいとされている。
すなわち、この両方の時間を合計した時間を DC 時
また、この時間は大半のダイカスト製品(大型を除
間と表現させてもらい、この DC 時間=約 0.
1 秒が
く)ではわずか 0.
1 秒以内で勝負がつく。一般の品
量産品質の約 9 割を占めており、この時間内のさま
質管理方法としては、ダイカストマシンの射出速度や
ざまな挙動をいかに管理するかが良品率を向上させる
油圧圧力をモニタ計測し、溶湯もこの値に近似した状
と考える。
態で流動し加圧していると推定して管理していた。
さらに図 11)の波形の〇印部は製品充填後の二次充
ところが、ダイカスト方案全体で考えると、ダイカ
填現象である。この部分は今まであまり注目されてい
ストマシンが計測しているプランジャチップの動作、
なかったが、実は製品をつくるうえで重要で、この二
すなわち溶湯を押し出す側の先にはゲートという約
次充填はオーバーフローや真空ベントのランナーなど
1/20 に狭窄された関所があり、製品はその関所の先
への充填の際、溶湯がキャビティを充満させた後、溶
でつくられている。本稿では、射出動作とともに関所
湯に圧力がかかり出した時点で各オーバーフローやラ
の先の情報を検出して品質管理をする各種センサや計
ンナーの関(ゲート)が破れ充填する現象で、いわば
測事例を紹介する。
金型方案がつくり出す昇圧タイムラグとなる。これが
ダイカスト品質管理方法の見直し提案
発生すると製品に適切な鋳造圧力がかからなくなり、
内部欠陥(比重不足やひけ巣)が発生しやすくなる。
ダイカストの品質管理において、溶湯凝固を基準に
こうしたことから、二次充填時間を極力短くするた
し、製品をつくっている側の情報を取り込む 2 つの
めにオーバーフローや真空ランナーのボリュームは少
ポイントを以下に提案する。
なくすることが望ましいし、関の断面積も見直すこと
① DC 時間=溶湯充填時間+溶湯昇圧時間の管理
② 要求品質に応じた金型内の情報管理
*Osamu Nagasawa:技術部長
〒252−0303 相模原市南区相模大野 8−8−1
TEL(042)
705−2431
が重要である。
また、このことを踏まえ、品質管理の方法を図 21)
に示すようにダイカストマシン側から見た管理から溶
湯主体にした管理にすることが重要となってくる。
②については別途記載する。
型技術
第 30 巻 第 3 号 2015 年 3 月号
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