江 田 委 員 長 こ れ よ り 質 疑 に 入 り ま す 。 質 疑 の 申 し 出 が あ り

衆議院経済産業委員会速記録(議事速報)
平成27年5月27日
この議事速報は、正規の会議録が発行される
までの間、審議の参考に供するための未定稿
版で、一般への公開用ではありません。
後刻速記録を調査して処置することとされた
発言、理事会で協議することとされた発言等
は、原発言のまま掲載しています。
今後、訂正、削除が行われる場合があります
ので、審議の際の引用に当たっては正規の会
議録と受け取られることのないようお願いい
たします。
○江田委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許し
ます。宮﨑政久君。
○宮﨑(政)委員 自由民主党の宮﨑政久です。
きょうは、特許法の改正につきまして質問の機
会をいただきましたこと、委員長初め理事各位の
皆様に御礼を申し上げます。
さて、今回の特許法の改正、経済産業委員会で
こういった形で審議がされますが、知財戦略とい
うのは、この国の行くべき大きな歩みのポラリス
というんでしょうかね、目指すべき方向性だと私
は実は思っております。それを、経済産業政策と
いう形でこの委員会で審議をして前に進めていく
ということは、大変意義深いことだと私は思って
おります。
早速、具体的な中身に入りたいと思います。
まず最初に、ガイドラインのあり方について質
問をさせていただきたいと思います。
今回の特許法の改正によりまして、会社の従業
者等が職務上の発明を行った場合であっても、職
務発明規程をあらかじめ定めることによって、こ
の特許権を会社に最初から、これは原始帰属であ
りますけれども、原始帰属をさせることができる
ようになるわけであります。
この制度改正に関しましては、いろいろな声が
ある。例えば、発明者に認められていた権利やイ
ンセンティブの法的な基盤が失われてしまうんじ
ゃないか、そのことによって、中長期的には報奨
が引き下げられてしまうんじゃないかとか、そう
いうことを繰り返すことによって有為な発明人材、
こういうものが海外に流出してしまって、我が国
の国力をそぐことになるんじゃないか、こんな御
指摘もございます。
他方、この改正によって、権利関係の紛争を未
然に防いで、安定的な職務発明に関する知財の運
営ができるようになる。このメリットも、実際の
職務発明の現場、企業において、さまざまな製品
開発などをしていく前提となる我々の産業の基盤
という意味でいうと、この安定化のメリットとい
うのは非常に大きいところがございます。
従業者の側としても、あらかじめしっかり、こ
れは権利でありますけれども、相当の金銭その他
の経済的な利益というものを確認することができ
れば、逆に言えば、発明後のことに煩わしい思い
を持つことなく、安心して研究活動であったり企
業活動、日々の目の前の業務、こういうものに打
ち込むことができる、こういうメリットもあるわ
けであります。
著名な事件としては日亜化学の事件がございま
す。この裁判の中で、中村博士との間で、例えば
当初報奨金が二万円だとか、第一審の判決では二
百億円が相当だとか、高等裁判所で和解する段に
なったら今度は六億円だとかというような形で、
裁判所の認定額も含めて、争われた額、扱われた
額が大きく変動した、こういう事情もありました。
もちろん、日亜化学さんの方の主張としては、多
額の給料で処遇をしてきた面を考慮するべきであ
るという主張もありましたし、また研究者の側か
らすれば、それは発明の対価というか、今でいえ
ば報奨になるわけですけれども、これは対価では
ないじゃないか、こういうような主張がありまし
た。
つまり、この裁判に象徴されるのは、特許、発
明に関して、職務発明の分野において労使の間で
共通の認識を持っていない、持つような制度がな
いということによって、これだけの混乱と、事業
活動においても、また、働いている、発明をされ
ている研究者の方にとっても、さまざまリスクが
出てしまう、顕在化してしまうということであり
まして、この事例一つとってみても、きっちりと
した決まりがないということは、会社の側にも、
働く人の側にも、両方いい話じゃないということ
になるわけです。
こういう権利の不安定さを克服するという意味
で一定の指針が示されるということになれば、ま
さしくこれは職務発明の場面で、企業、使用者側
にとっても、発明をされる従業者側にとっても、
-1-
衆議院経済産業委員会速記録(議事速報)
平成27年5月27日
ウイン・ウインの関係が導けるということになり
ます。
問題は、「相当の金銭その他の経済上の利益」
という、三十五条三項の改正案の中にあるこの文
言が、どれだけの内実を持ったものとして定めら
れるかということになるわけでありまして、そこ
で、そのガイドラインというものの持ってくる意
味は非常に大きいと思うわけです。
発明を奨励して、イノベーションを創出して、
科学技術立国、知財立国日本をつくり上げていく、
こういう意味で発明者のモチベーションを保つ、
増進するというのが、ガイドラインをつくる上で
は非常に重要なことだと私は思っております。
このガイドラインの策定に向けた宮沢経済産業
大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○宮沢国務大臣 長らく弁護士としてまさに実務
に携われた宮﨑委員から今法律論的な御質問をい
ただいて、やはり弁護士さんだなと思いながら話
を承っておりました。
今御説明がありました。これからの日本の経済
とか産業を考えますと、サービス業を含めていか
に生産性を向上させていくかということが大変大
きな課題となっております。生産性を向上させる
ためには、やはりイノベーションといったものを
さらにさらに進めていかなければいけないという
中で、発明をされる方、発明者に対するインセン
ティブを確保するということが大変大事な政策だ
ろうと思っております。
今回の改正法案では、発明の奨励を目的とし、
発明のインセンティブを決定する手続に関するガ
イドラインを策定することを法定化しておりまし
て、このガイドラインというものが、おっしゃる
ように大変大事なものだと思っております。
ガイドラインにつきましては、発明者との協議
や意見聴取などのあり方について明示して、発明
者の研究意欲が湧くようなインセンティブを確保
するということとしております。
まさにこのガイドラインによって、しっかりと
手続を踏んでいただいて、発明に従事される、研
究に従事される方にインセンティブが湧くような、
そういうことをしっかり奨励していきたいと思っ
ております。
○宮﨑(政)委員 大臣、ありがとうございまし
た。
今大臣も繰り返し触れていただきましたが、や
はり、発明を奨励するインセンティブ、これが最
終的にはこの国が知財立国として大きく飛躍して
いくためのポイントになるんですね。ですから、
ぜひそこへの御配慮を十分にいただきたいと思い
ます。
二番目には、今度は、中小企業支援策はどうな
んだということについてお伺いしたいと思います。
特許をめぐる社内、要するに職務発明に関して
ですけれども、こういう点は職務発明規程を定め
るということによって調整できるわけです。大企
業は九九%がこれを整えている。しかしながら、
中小企業でどれぐらいなんだと調べたところ、こ
れは二〇%の会社でしかその備えがない。
私は、この二〇%しか職務発明規程が整ってい
ないというのは、単にこの規程を置いているかど
うかというような意味ではなくて、例えば、就業
規則のようなものであれば、モデル就業規則があ
ることによって、そういうことが示されることに
よって、中小企業においても零細企業においても、
常時十名以上の雇用をしているところでは、みん
な定められているわけですね。ところが、いろい
ろ中小企業でも発明にかかわっている会社でも、
なかなかこういう規程が置けていない。
この二〇%というのは、規程がどれぐらいかと
いうことが氷山の一角となって、つまり、現在の
知財をめぐる行政の支援が中小企業にどれだけ行
き渡っているのかということを示している数字で
もあると思うんです。
言うまでもなく中小企業というのは、日本の産
業の柱でありますし、イノベーションの先駆け、
パイオニア、大企業の下請をしているというだけ
ではなくて、市場をリードし、日本の国を引っ張
っていっているところであります。知財を扱うだ
けのマンパワーが足りない、情報が十分に行き渡
っていないということが、この二〇%に出ている
んだと思います。
お許しをいただいてお配りした資料の一枚目で
は、日本の特許出願件数に占める中小企業の割合
はわずか一二%だというようなことも調査で出て
きております。
中小企業にこそ、この法改正をもって、知財総
合支援窓口のような支援を十分に活用すること以
上に、新たなイノベーションを導く入り口をもっ
ともっとつくっていかないといけない。安倍政権
が今進めている地方創生の取り組みとも連動して
-2-
衆議院経済産業委員会速記録(議事速報)
平成27年5月27日
いくわけでございます。
そこで、山際副大臣に、これから知財の分野に
ついて、どういった形での中小企業支援策を進め
ていくか、その御所見を伺いたいと思います。
○山際副大臣 これはもう委員御指摘のとおり、
知財だけではありませんけれども、中小企業に対
しての支援策というものがいまだ不十分であると
いうのはおっしゃるとおりだと思います。一方で、
民間の企業が自分の力で業をなしていくというこ
とも大変重要なことでございまして、そのバラン
スをどうとっていくかということを、我々として
も、日ごろから御指導を賜りながら御支援申し上
げているところだというふうにしております。
今、中小企業に対して、知財の分野においてど
のような支援をしていくかという御質問でござい
ましたので、これからというより、今始めている
ところとして、中小企業が知財について気軽に相
談できる体制の整備、これは具体的には、全国四
十七都道府県に設置されている知財総合支援窓口
で活動する弁理士、弁護士等の専門家の活用を拡
大するであるとか、あるいはジェトロ等々も通じ
まして、世界に羽ばたきたい、こういった中小企
業の海外展開を一気通貫で応援するような支援メ
ニューというものも用意してございます。
また、今回提出させていただいておりますこの
法律案が成立した場合には、職務発明規程の重要
性を啓発するため、全国規模の説明会の開催や、
先ほど申し上げました知財総合支援窓口を通じて
職務発明規程整備のアドバイスなどを行う次第で
ございます。
また、支援策を活用した地域での具体的な支援
の成功事例を積み重ねて、それを横展開するよう
に情報を発信するというようなことも考えてござ
います。
○宮﨑(政)委員 山際副大臣、ありがとうござ
いました。
地方経済の主役は、都市圏以上に中小企業であ
ります。知財というものが中小企業においてもも
っと十全に活用される。それが、先ほど指摘をさ
せていただいたような、例えば規程の整備が二〇
%、申請が一二%しかないというところから大き
くジャンプアップして、結果としても出ていくよ
うな中小企業知財戦略というのが、この国の行く
末として大きいポイントになるだろうなと思って
おります。
次に、特許支援体制の充実の強化を図っていた
だかないといけないという点について質問させて
いただきます。
改正法の三十五条六項では、「発明を奨励する
ため、」という文言が入っているんですね。特許
法の目的というのは、第一条にあります。「この
法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、
発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与する」と
いうのが目的なんです。つまり、第一条で「発明
を奨励し、」というのが目的ですよということが
書いてある法律において、今度改正法で、改めて
「発明を奨励するため、」という文言を入れたと
いうことの意味は、実は私は非常に大きいんじゃ
ないかというふうに思っております。
きょう、お許しをいただいてお配りをさせてい
ただいた資料の三枚目を見ていただきますと、一
人の審査官が抱えている審査の処理件数、これが
日本は二百三十四件である。アメリカの約三倍、
欧州諸国の約五倍というようなことになります。
発明を奨励すれば、当然出願件数もふえてくる。
日本再興戦略二〇一四でも、世界最速、最高品質
の知財システムの確立を目指すとある。今まで以
上に出願件数がふえてきても、迅速、適切に処理
できる人的な体制、システムの構築が不可欠だと
思うんです。これをしなければ、絵に描いた餅に
なってしまう。
そこで、知財立国日本の確立という意味で、私
ども政治の現場から全力で応援をしていくことは
もちろんでありますけれども、特許庁にぜひ頑張
っていただきたい、そう思っているわけです。こ
の点に関する伊藤長官の御決意を聞きたいと思い
ます。
○伊藤政府参考人 委員御指摘のとおり、知財立
国を推進するため、審査体制の整備、強化を進め
て、諸外国からも信頼される世界最速あるいは最
高品質の審査を実現することが極めて重要な課題
であると認識しております。
人員面では、迅速な審査あるいは質の高い審査
を行うべく、平成二十七年度の予算において、百
名の任期つき審査官を手当てさせていただいてお
ります。
また、予算面でも、膨大な文献の中から効率的
に審査を行うための情報システムの整備、あるい
は先行技術調査を民間企業にアウトソーシングす
るといったような形で、効率的な審査を実施する
-3-
衆議院経済産業委員会速記録(議事速報)
平成27年5月27日
ための予算も確保させていただいております。
他方で、世界最速あるいは最高品質の審査を実
現するためには、現状の審査体制ではまだ十分で
はないと認識しておりまして、審査官の確保を含
め、人員、予算面からの環境整備を精力的に進め
ていきたいと思っております。
以上でございます。
○宮﨑(政)委員 ありがとうございました。
日本の国の進むべき道としての知財立国の実現
に向けて、私もこれからも全力で取り組んでいく
ことをお誓い申し上げまして、質疑を終わらせて
いただきます。
ありがとうございました。
-4-